ストーリー本編が終わろうとネタはまだ残っているので、また程々に書いていきたいです。
ちなみに、時系列はまた若き日に戻ります。
またお暇なときにでもお付き合いください。
この美しき盗賊と競争を
銀髪盗賊団。それは鮮やかな手口で宝を強奪する神出鬼没の盗賊団。その手口は常に鮮やかであり、子供たちは絶大な人気を勝ち得たもはやヒーローである。
「くそっ!そっちに逃げたぞ!」「追え!逃がすな!」「敷地から出すなよ!」
「残念でした。もう、外だよ」
その銀色の髪をなびかせながら夜をかける少女は、この国では最高額の賞金をかけられた盗賊。しかし、その名を知るものは存在せず、今も国中の警察組織が必死になって探している。その正体を決して悟らせないミステリアスなところも、彼女の魅力の1つと言えるだろう。
「出てきた!行くぞ騎兵隊!賊を逃がすな!」
「うわぁ〜流石にこれは不味いかも……」
ただ、どんなに身軽で俊敏だとしても彼女は人。流石に馬より速く駆ける事など出来ない。今回ばかりは衛兵の準備が一枚上手のようだった。
「第一隊は右の街道を!第二隊は左の街道を!第三隊は正面から!第四隊は先回りして城門を封鎖だ!」
「「「「了解!」」」」
「もう!今日は随分と準備が良いんだから!」
屋根の上を城門に向かって走る彼女は、徐々に追い詰められていく。眼の前の城門は既に閉じ始め、いくら早馬でも間に合わないだろう。しかし、それでも彼女は城門を目指すしか無い。完璧な指示の上で、そのように追い立てられているのだ。
「馬鹿め!城門は第四隊が封鎖済みだ!もうお前に逃げ道はないぞ!」
「しかし隊長…本日の警備任務は第三隊まででは?」
「そう言えば……しかし、城門は確かに封鎖されて…あれっ?!」
しかし、ここで衛兵の予想を裏切る事態が発生する。完全に閉じたと思われた城門は、何故か人が滑り込むだけの隙間を空けて突如その封鎖を止めた。そう、まるであえて逃走経路を用意したかのように、馬では通れぬ隙間を残して……
「ナイス助手くん!じゃあ、衛兵の皆さん!バイバ~イ!」
ズザー!
「「「そんな馬鹿な?!」」」
城門の封鎖をすり抜けた銀髪の少女は、そのまま外で待つ男の馬に飛び乗った。そう、まるで第四隊がいるかのように命じた、仮面を着けた男の馬に……
「あれは…銀髪盗賊団の仮面の男?!」「まさか、最初からそのつもりで?!」「くそぅ!またしてもやられたのか!」「あんな細い隙間を抜けるなんて…なんてペッタ「スレンダーだから!」あっはい、すみません!」
今日もまた、何処かの貧しい人々に財宝が届く。それが義賊の、銀髪盗賊団の生き様なのだ。
—ベルゼルグ中央新聞より抜粋—
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「また新聞に銀髪盗賊団の話が載ってるわ……良いわね〜あっちは景気が良さそうで……」
私はレンジャーのメリッサ。自分で言うのも何だけど、高い実力と最上級の美貌を兼ね備えた一流のトレジャーハンター。でも、最近はその実力を発揮する機会に恵まれていない……
「もう、なんでこんなにお宝の情報が無いのかしら…これじゃ商売あがったりよ…」
魔王討伐による魔物の弱体化。そのせいで魔物の略奪がうまく行かず、私が盗める宝がない。誰もが望み、そしてカズマが作った平和が、私としては致命的な状況を作るきっかけになってしまっている。まったく、本当に皮肉な話。
「でも、銀髪盗賊団みたいな悪徳貴族からの盗みは顔を見られたらおしまいだし、割に合わないのよね……」
別に自信がない訳ではないのだけど、得意の色仕掛けを使えば間違いなく容疑者にされる。それに私は冒険者でもあるから賞金首になるのは死活問題。そんなリスクを犯してまで、無理に盗みを働くのは割にあわない。
「では、盗みが成功すれば無罪と出来るとしたら、お引き受け願えますか?」
「くっ!検察官?!」
ガタン!
私に話しかけてきたのは、氷の女と言われた検察官のセナ。トレジャーハンターなんて仕事は、間違いなく潔白ではない。冒険者が影でやるような悪事は一通りやるし、同業者はそれがお互い様だからと犯罪行為を黙っている。しかし、本気で法律に照らし合わせられたら、少なくとも数年は出てこれない。まさか、私を狙ってあのセナが来るなんて……
「おっと…私がなんの準備もなくここに来たと思いますか?無駄な抵抗は辞めてください…」
「………へぇ、大した自信だけど、あんたが私を一人で捕らえられるとで…も………」
「なー?」
き、きゃわわわわ?!って駄目よ!こんなギルドのど真ん中で我を失う訳にはいかないわ!エリートトレジャーハンターとして、色んなモノを失ってしまうもの!
「そ、そんな可愛い猫で…私がどうなるとでも思っているのかしら?全然余裕なんですけど?何も意味とか無いんですけど!」
「そうですか。ではこの後私のオフィスでこの子と戯れながらお話をと思いましたが、仕方ないのでちょむすけと私だけで過ごすことにします。チュールもありますからね〜?」
「なー!」
え?引き下がるの?!こんな簡単に引き下がっちゃうの?!無理無理!そんなの無理よぉ!
ガシッ
「なんですか?服の裾を離してください」
「話だけでも…聞かせてもらうわ…」
ズルズル
……………………………………………
「えへへへ……うぇへへへ……可愛いでちゅねぇ〜美味しいでちゅか〜?もっとでちゅか〜?」デレデレ
「なぁ…」ドンビキ
あぁ!可愛い!たまらない!このイヤっぽい顔も可愛いすぎるぅ〜!
「……こんなに完璧にかかるとは……もう話を始めても?」
あ、検察官が呆れてる?!こんな可愛い生き物にデレないとか、あんた人の心とかないわけ?!でも駄目!ここで怒ればこの子とお別れだもの!そんなの嫌よ!
「どうぞ?」キリッ
「……えっと…先程の件ですが、盗みが成功した場合に限り無罪と出来る案件があります。ただし捕まれば貴女は終わりです。私達は関与を否定し、貴女の事を見捨てます。まぁ、失敗などしない貴女なら、これは得しかない取引ですよね?」
「……へぇ、それはとても興味深いけど、まずは無罪になるトリックを聞いてもいいかしら?」
「簡単な話です。盗んで欲しい物は神器であり、悪用すれば国が滅び兼ねないもの。その神器は元々国の管理品で盗品ですので、自分は最初から何も持って居なかった事にしたほうが利口ですよね?」
なるほど、それなら確かに無罪にするのは簡単ね。でも、それじゃ盗む意味なんてあるのかしら?
「それなら、私に頼まないであんたが踏み込んだら?」
「残念ですが、我々は物的証拠か令状が無ければ踏み込めません。今回も状況証拠を元に所在を割り出しただけで、残念ながら調書を用意すれば神器を隠すでしょう」
「なるほど……でも、やっぱりそれじゃ割に合わないわね。相手は神器を使えるんでしょ?」
と言うか、国の管理品を盗み出せるのが相手だなんて、絶対に盗難の対策をするでしょうし、危険が大きすぎる。無謀な賭けはしないのが1流なのよ。
「成功したら報酬は1億エリス。その場の些細な窃盗は目を瞑るという条件付きでもですか?」
「悪いけど、私はそこまでお金には困ってないの。それなら別の仕事をいくつかこなす方がマシよ」
「そうですか……では、この『あらゆる動物をメロメロにする伝説のブラシ』は他の方を使って……」
「受ける!!なんでその神器の内容を早く言わないの?!」
「あの、先に言っておきますが、これは返して貰う訳ですが……」
「それでも!それが本物か試してもいいのよね?!偽物じゃ困るものね?!」
「まぁ……多少の確認は必要だと思いますが……」
やったぁ!!これで私は、遂に動物に愛される!ちょむすけちゃんにスリスリされるぅ!!
「ですが、これは貴女と貴族だけの戦いではありません。今回は……」
「銀髪盗賊団でしょ?分かるわよ。神器が相手って段階で、何処かで鉢合わせると思ってるわ」
「無論ですが、奪われてしまった場合も……」
「安心しなさい。だとしても、勝つのは私よ!」
さぁ、伝説の盗賊とやらに見せてやるわ!本物の一流が、どっちかをね!
___________
同時刻、カズマ邸
「ということなんで、また神器の回収を手伝って欲しいんだけど…」
「あぁ……なんだそっちか…別にいいぞ。それで事件が起きるより、先になんとかしたいからな」
エリスが朝からクリスの格好をしているので、俺はてっきりそういうことを期待した。しかし、残念ながら真面目な仕事の依頼らしい。いや、別にエリスに不満はないぞ?でもたまにはちっぱいも欲しくなるじゃん?男ってそうじゃん?
「でも、相手はその神器を王国の管理下から盗んでるわけだから、一筋縄ではいかないだろうね」
「だろうな。盗んだ経験があるなら、盗まれる方も警戒するよな…」
俺みたいに…
「うん、だから今回は最大限の警戒をして挑みたいんだ。カズマもその気でお願いね?」
「おう!任せとけ!」
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更に同時刻、アイリス邸
「なるほど、国を揺るがすほどの神器が……」
「はい…」
自分でも若干忘れていためぐみん盗賊団ですが、ここに来てまさかの大仕事が舞い込みました。しかも王女直々のご指名です。これを断るなんて選択肢はないでしょう!ということで、あるえとゆんゆんを招集したわけなのです!
「ねぇめぐみん?流石に貴族相手にこれは不味くない?顔がバレたりしたら……」
「ゆんゆん!街の人々の平安が脅かされているのですよ?!そんな神器を野放しにするなんて、善良な市民の皆様が安心して眠れません!貴女はそれで良いのですか?!」
「そ、それはそうだけど…」
まったく、まだまだ英雄としての自覚が足りませんね!
「不安と言うなら、実はめぐみんを野放しの方が市民は不安な気が……」
うっ…それは……
「ち、力に罪はないのです!それを扱うものの裁量で、それは守る力にも暴力にもなるのですから!」
「今のところ問題を起こしてない貴族と、何度も厳重注意を受けためぐみんさんじゃ後者の方が……」
「下っ端!ちょっと静かにして貰えますか!これは遊びじゃないんですよ!わかってるんですか?!」
「正論すぎてゴリ押ししたね……」
「大人気ないですね……」
辞めて!追い打ちしないで!
「しかし、めぐみんには負けても神器が危険なのは間違いない。これで何かあればカズマさんとエリス様、下手したらカズマさんのお母様が呼び出されることになる。事前に我々で手を打つことには賛成だよ」
「えっと…お母さんは喜んで来そうだけどね……」
そうですね。その分はカズマは消耗しますけど……
「と言う事なら、まず考えるべきは……」
「ええ、最初の議題は……」
「やっぱり……」
「「「チーム名!!」」」
ほほう!アイリスも分かってきましたね!ゆんゆんはまだまだですが!
「また私だけ置いてきぼり……私もう帰っちゃ駄目かな…」
「「「それは駄目!」」」
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「ねぇ検察官……」
「はい」
「これじゃ話が違うわよね?!この警備の数はおかしくない?!これじゃなんかあるってバレバレじゃない!」
夜、貴族邸を遠目から観察する私達の目に飛び込んだのは、信じられない数の衛兵達。そこには王都の精鋭まで揃っていて、コレじゃどう考えても何かあるのは間違いない。違法品を隠す貴族のやることじゃない!
「なんでも、紅盗賊団から大々的に予告状が届いたとかで、貴族関係なく衛兵隊が集まっているそうです」
「なにそれ?!とんでもない新星が現れたわね?!」
またはタダの馬鹿よそれ!そんな事したら、盗みにくくなるって分かるでしょ?!
「残念だけど、これじゃ流石にどうしようも無いわ。ここに突っ込むのはもはや自殺行為よ。ほとぼりが冷めてからの方が……」
「おい!屋根の上に誰かいるぞ!」「真っ赤な服!あれが紅盗賊団なのか?!」「いや目立つなあの格好!」
「では、あれは自殺未遂でしょうか?」
「いえ、アレはもうただの馬鹿でしょ…」
真っ赤なマントに派手派手のマスクって…どう考えても動きにくいでしょう……アレで盗みなんて…
「ははははは!我が名はある……アルエーヌ!衛兵達よ!私を見つけるとはなかなかやるな!」
いや、むしろ見つけられなかったらクビでしょ…先にギャラリーが見つけてたくらいだし…
「しかし、少し遅かったようだな!例のモノは……既に我が手にある!」
「うっそぉ?!」
そのバカの右手にあるのは、金色に輝くブラシのようなモノ。いや、まさかそんな事って……
「ははは!無能な衛兵共め!さぁ、ここまで来れるなら……」
バサッ!
彼女の背中に突如伸びたのは、まるでコウモリのような漆黒の羽。いや、でも生えてる場所が随分と高いような気も……
「羽だ!」「黒いけどスゲー!」「赤じゃないけどかっけー!」
「…追ってくるがいいさ!!」
シュバ!
「「「「飛んだ?!」」」」
なにあれ凄い!まさか悪魔?!いや、なんか後ろから抱えられてる?!
「でも好都合ね!これならアイツから奪えば…」
「いえ、あれは恐らく囮です。まず領主の側近の私兵は一人も追ってませんから、あの神器は偽物でしょう。それに、随分と優秀な演出家のようですが、あの位置は西門の警備からは見えません。そして、巡回してる兵士が誰も西側に居ないタイミングを狙っています。気になった残りの2人が彼女を見るために移動したら、さて西側はどうなりますか?」
「……私、マジでアンタは敵に回したくないわ」
「それはどうも。ほら、まだ西門から入れますよ。新参の盗賊に取られるとか論外ですよ?」
「わ、分かってるわよ!あと、私はトレジャーハンターだから!盗賊じゃないから!」
あの新人が何者か知らないけど、今回の競争相手はどっちも相当な強敵って訳ね!面白いじゃない!誰がNo.1か教えてやるわ!
………………
「離せ!こら離すのです!せっかくの衣装がボロボロになります!」
「もう!めぐ…リーダーが余計なことするから!」
「そっちが大声でツッコミを入れるからですよ!私の動きは完璧でした!」
屋敷内に潜入してほんの十秒。一人の私兵が、女の子二人を捕まえている。いや、あの赤い服ってまさか……
「うるせぇ!自分で警報装置のボタンを押して捕まるとか舐めてんのか?!しかも光の屈折魔法の中は服真っ赤じゃねぇか!目立ち過ぎだろ!マジで馬鹿なのか?!」
「……ボタンがあったら押すものでは?」
「それで捕まる馬鹿は初めてだよ!」
もしあの赤いのが紅怪盗団だとしたら、私はこの馬鹿のせいで苦労させられている事になるのよね…どうしよう。一発ぶん殴ろうかしら……
「おぉ!どうだ?賊は見つかったか?」
「領主様。それが赤い服の小娘だけです。しかし、この赤いマスクは魔法で固定されておりまして、身元はまだ……」
「うわっ赤!しかし、この格好は予告状を出した紅盗賊団って奴らに間違いないだろう。予告状を出す辺りから頭が悪いとは思っていたが、まさかここまでとは……」
うん、それには全面的に同意するわ。
「おい!人の予告状を頭が悪いとは失礼なやつですね!どこら辺が頭が悪いと言うのです!」
「いや、まず出すところ!内容もなんかダサくて痛々しい感じだったけど、そもそも普通出さないだろ?!」
「……は?予告もなしに盗んでも卑怯じゃないですか!私は、空き巣みたいなコソ泥にはなりたくないんです!」
「どっちも変わんねぇよ!人の物盗みに来た奴が言うことか?!」
べ、別に私のは卑怯じゃないし!こっちも命がけだし!
「取り敢えず、こいつらはどうしますか?衛兵に引き渡しますか?」
「いや、少なくとも飛んでいった仲間が居るだろ?人質にするから教育部屋に繋いでおけ。後で私が直々に教育をしてやろう……」
「はっ!では直ぐに!」
「いやぁ!離してぇー!」「くっ!我にそのような事をすれば後悔しますよ!」
「ほう、盗賊としては2流以下だが、女としては良い声で泣きそうだな…楽しみだ…」
「「ひぃ!」」
あれは絶対にクズの外道の顔ね……お嬢さん達、ご愁傷さま……
「さて、例のブラシを用意しておけ、私は女性に苦痛を与えるのは趣味ではないからな?」
「えぇ…ベッドメイクもしておきます。ですのでその……」
「あぁ……お前にも片方使わせてやろう……」
「ありがとうございます!」
人質になった2人の身体が震えているけれど、今の私にはどうすることも出来ない。恨むなら、安易にこの世界に踏み込んだ自分を……
「こ、こんなベタな小悪党がまだこの世に?!良く今まで隠してきましたね?!」
「ちょっと辞めて!今怒られせたら危ないのは私達だから!状況わかってんの?!」
「もう遅いわ!お前らで朝まで楽しんでやるからな!」
「ひぃ?!」
うん、ご愁傷さま…
「りょ、領主様!銀髪盗賊団です!敷地内に突然銀髪の女が現れました!」
「良し!手の空いた私兵達を全員向かわせろ!あいつを捉えれば、1等地に別荘が立つぞ!」
「ほう、これはなかなかの大物が釣れたではありませんか…私達も負けていられませんね!」
「いやお前には言ってねぇよ?!そもそもお前とっくに負けてるから!人質の自覚ないのか?!」
「ふふ、何を馬鹿な。私は別に銀髪盗賊団とは無関係……つまり、今はただの野次馬です!」
「じゃあもう黙っててくれない?!」
なぜかしら。ここまで来ると、なんか大物な気がしてきたわね…あの馬鹿…
ガチャ
「「あっ!」」
不味い!馬鹿に気を取られて、外から戻る私兵に気付かなかった?!
「ふっ!」シュッ!
「あぶねっ?!」スッ!
しかも渾身の蹴りを躱された!こいつ!身のこなしが素人じゃない?!
「『スリープ』!」
「うそっ…まさか…甲冑を着た…ウィザード…なんて…」
どうやら私も…ここまでみたいね……
どさっ
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「……へぇ、随分といい趣味じゃない……」
目が覚めると私は見知らぬ部屋にいて、私の両手は天井に吊るされ、両足は床に縛られていた。完全に吊るすなら分かるけど、この地味にお尻を突き出した形と言うのはきっとコイツの趣味なのね…
「おや、お目覚めかねメリッサ。まさか、慎重な君が貴族の家に盗みに入るとは思わなかったよ。銀髪盗賊団は取り逃がしたようだが、まぁ君が手に入れば十分だ」
「私も、貴方にこんな趣味があるなんて思わなかったわ。悪い噂は聞いてなかったのに…」
この部屋にあるのは大量の檻に拘束具。どうやら、セナの読みは大正解だったみたいね。さっきの二人も隣で晒し板に四つん這いで止められているし…
「当然だろう?私は合意の上で関係を持っているんだ。何もやましいことはしていないよ?」
「あら、それなら私も無傷で帰れるのかしら?」
「あぁ、傷を付けるつもりはない……まぁ、初めてでは傷物にするかも知れないがね…」
さわっ…ビクッ!
「んっ!」
な、なに今の?!腰を撫でられただけで私が声を?!
「驚いたかな?このブラシは特別な逸品なんだ。この快楽の前では、どんな動物も、それどころか人でさえも抵抗の意志を失ってしまう。続け様に味わえば、そのうち使用者に逆らえなくなるのさ……」
な、なんてエグいアイテムなの!これで生き物を意のままに操ろうなんて最低だわ!恥を知りなさい!
※メリッサは過去を振り返らない。
「さて…メリッサが可愛らしく泣いたところで…せっかくだから君たちにもお裾分けをしよう。私はどんな子も分け隔てなく愛してあげるから、安心して快楽に身を委ね給え……」
「や、辞めろ!私にはもう心に決めた相手が!」
「わ、私だって、あの人以外にそんなの!」
「安心しなさい。直ぐに忘れさせてあげるよ……脳が溶けるほど愛してねぇ!」
そ、そんな子供にまでその神器を?!最低だわ!こいつ最低の屑だわ!
※メリッサは以下略!
さわさわ…
「んっ…くぅ……そ、そんな…」
「はははは!我慢するな!折れてしまうが良い!」
さわさわさわさわ!
「くっ!そ、そんな…ぷっ!あははは!」
あれ?なんか私と反応違くない?!
「そ、そんな馬鹿な?!ではお前は?!」
「あっ…く、くすぐったい…ぷふっ…クスクス」
こっちもなんか全然平気そう?!
「馬鹿な?!生まれたての子猫さえ発情させるアイテムだぞ?!お前らなど直ぐにでもトロトロになって股を開く筈じゃないのか?!」
「領主様!銀髪盗賊団は敷地内に現れたとの報告です!もしや、既にブラシが偽物の可能性も……」
「そんな筈はない!見ろ!メリッサの奴はこんなに反応するぞ!」
さわさわ…
「んっ!や、辞め…私は…屈しないんだから…あぁん!」
駄目…我慢しても勝手に声が盛れちゃう…無理やり絶頂まで押し上げられちゃう…こんな中年に…悔しい…けどぉ!
「それは、その女が敏感で欲しがりなビッチなだけでは?先程の2人は反応してませんでしたよ?」
「では、お前がこの女に触れてみろ!わ、私はそっちの二人でもう少しだけ試す!」
助かった……けど、もう思考がまとまらない。この男が私に触れてる間に、何とかして回復を……
さわっ
「はぁんっ!」ビクンッ!
え……嘘でしょ?!いま、指先で撫でられてイッたの?!と言うか、一瞬で下着から溢れたんだけど?!
「腰を撫でられただけで太腿まで濡らす売女ですよ?それ、やはり普通のブラシでは?」
「ま、待て!高まった所にトドメになっただけかも知れん!それなら、比較すべきはそっちの二人だ!」
そ、そうよ!私が男に腰を撫でられて逝くなんてありえないもの!間違いなく神器の力よ!
「では、こちらでも……」
「ふっ!無駄なことは辞めるんですね?色気振り撒くだけ振り撒いて彼氏のいない寂しい女と私は違うのですよ!」
「そ、そうよ!私達はそんな欲求不満じゃないもん!」
こいつら…やっぱりぶん殴ってやろうかしら!別に欲しくないし!作らないだけだし!
「まぁ、それは触れれば解る。そら…」
さわっ……
「「はぁん!」」ビクンビクン!
「「うっそぉ?!」」
そのあまりに異様な光景に、私と領主の言葉が被る。確かにこの二人はあの神器を物ともせず耐えていた。いえ、むしろ耐えるほどの快楽を与えられても居なかったのに、こんな簡単に甘い声を?!
「し、信じられん!その発育の良い方はもはやメリッサよりエロい声で鳴いているではないか!歴戦の風俗嬢か男を喰い漁る人妻のレベルだぞ?!」
「ちょ?!辞めてください!新婚ですし一途です!」
「やはり、領主様のそれは偽物です!こんな調教された小娘二人が落ちないなどありえないですよ!」
「馬鹿な!これは王国保管の神器だぞ!形状も非公開で偽物なんて作れる筈がない!銀髪盗賊団は既に何度かここに来て居たとでも言うのか?!」
よし。これで間違いなく神器だと確定したわね。これで逃げれば間違いなく無罪を獲得できるわ。まぁ、逃げる方法が無いんだけど…
「ふっ!ついに認めましたね!アナタのそれが、国から盗んだ神器だって事を!」
「し、しまった!この状況に油断した!しかし、メリッサはこの偽物のブラシでも快楽に堕ちるんだ!これで堕とせば全ての罪をこいつに押し付けられる!」
ま、不味いわ!もう下着ぐしょぐしょだし…ここでそれをされたら困る!というか、この赤いのマジで余計なことしか言わないわ!
「ほれほれ!ここがいいのだろう?」
さわさわ…
「くっ!…べ、別にそんなの…なんとも無いんだから…」
駄目!もう本当に堕ちちゃう!これ絶対に本物よ!ブラシで腰を撫でられただけで女の部分が本気で疼く!
「領主様、私はこの二人を頂きますので、先にベッドに向かわせて貰いますね?」
「あぁ、後で発育の良い方は貸してくれ。その底なしの色気を、メリッサと比べたいからな…」
普段なら私が上だって言うけど、今は敗北でも良いからここから逃げたい…こんな中年に思うようにされて…勝手に脚が開いちゃう……
「しかし、私でもメリッサ程の女を堕とせるなら、むしろ偽物のほうが好都合だ。あれはブラシ以外で達してしまえば、徐々に支配力が弱まるからな…」
さわさわ…
「へ、へぇ…それはまた…随分といかがわしい神器があったものね…くぅ!」
駄目…もう身体が勝手に求めてる…領主のモノになりたくなってる…はやく、はやくグチャグチャになるまで抱かれたい…
「はぁ…はぁ…くぅ……」
「ふふふ…もう限界と言う顔だな…早速抱いてやるから有り難く思え…」
私の後ろで、領主がベルトを外す音がする。こんなの屈辱的なだけなのに、もう拒む意志も起こらないなんて……
「さぁ、優しくしてあげよう…」ハァハァ
あぁ…こんな初体験なんて、望んでなかったのに…
「悪いな。俺は優しくしてやれないぞっ!」
「な?!仮面の男?!おふぅ!」
どさっ…
「ようトレジャーハンター。また随分といい格好だな?」
「銀髪盗賊団の仮面の男…まさか、商売敵に助けられるなんてね…」
私の前に回り込んで来たのは、国を騒がせる大泥棒の一人。まさか、こんな形で出会うなんて、恥ずかしい限りだわ。
「取り敢えず拘束は外すけど、この神器の効果はもう受けてるのか?」
「……そうよ。今でもそのクズに抱かれたいと思ってる。言ってて嫌悪感さえ湧かないんだから、これは完全にかかってるでしょ?」
「マジかよ…これ凶悪だな…」
でも、それで流されれば私は絶対に後悔する。こんな方法で女を墜とすような男が、私の初めての相手に相応しい筈がない。それなら、せめて……
「ねぇ……あんた女を抱いた経験ある?」
「いきなりなんだよ…まぁ、人並みには……」
「じゃあ、アンタが私を抱きなさいよ…こんなクズにくれてやるくらいなら、アンタに散らされた方が釣り合うってもんだわ…それに、達した分だけ洗脳が解けるって話だし…」
まぁ、それでもあんな神器を知ってしまった私は、生半可な方法じゃどうしようも無いとは思うけど…
「そうかよ。その覚悟があるなら、直ぐに洗脳が溶けそうだ。メリッサ、お前の大切なものは、お前の心を盗んだやつに捧げろ。俺もお前も盗賊だ。施しなんてゴメンだろ?」
「へぇ、随分と自信家なのね…抱きもしないで私を逝かせようなんて、私は何をされちゃうのかしら……」
「ヘソを使う」
「……は?ちょっ?!へそって…あっ…はぁん!!」
らめぇぇぇーー!
……………………
「うぅ…本当にヘソだけで…こんなの知らないぃ……」ビクンビクン
まさか、本当にヘソだけで逝かされるなんて……しかも15回も連続で……
「さて、完璧に洗脳も溶けたみたいだし……後は頼んだぞ?隣の部屋で寝てる二人を起こせば、片方はテレポートが使えるはずだ。急がないと、衛兵が踏み込んでくるからな?」
「分かった。今日のところは助けられたし、あの迷惑な馬鹿2人の面倒も見るわ。でも、最後に少しだけ仮面を取ってよ。私にこんな切ない想いをさせておいて、顔も見せずに去るつもり?」
「残念ながら、これを外すのは相方の前でだけなんだ。それに、大切なモノは奪ってないだろ?」
ピンチを颯爽と助けられて、私が傷付かないように優しく抱かれて……悪いけど、私はもう大切なものを奪われているのよ。全く、本当に鈍いんだから……
「そうね。なら……」
ちゅっ
「へ?!メリッサ?!」
「うふふ、助けた相手だからって油断した?こんな状態でも、唇くらいなら簡単に奪えるのよ?今日のところはこれで許してあげる。でも次はその仮面を、その次はあんたを奪ってやるわ…」
まぁ、今のは奪ったふりをして、捧げたんだけど…
「ったく…流石は1流のトレジャーハンターだよ。なら、いつかこの仮面を奪ってみせろ。そしたら、俺の名前でもなんでも教えてやる。じゃあな!」
その言葉を残して、仮面の男は去っていった。盗賊同士の関係なんて、きっとこれが丁度いい。まぁ、私はトレジャーハンターだけど、今だけは仮面の男に免じて盗賊でもいいってことにしておこう。
「さて、あの馬鹿2人を叩き起こして、逃げるとしますか…」
_______________
「お疲れ様です。無事に逃げ果せたようで何よりですが、やはり銀髪盗賊団は強敵でしたか……」
「ええ、流石は国1番の大泥棒だわ。冒険者としても、盗賊としても勝てなかった…まぁ、次は私が勝つけどね?」
無事に街に戻った私は、検察官の家で事の顛末を説明している。今回は間違いなく私の敗北で、残念ながら報酬はない。まぁ、逃げるついでに3000万相当の宝石を詰め込んできたから、これで当面は安泰だけど……
「神器は匿名でエリス様の元へ送られ、無事に封印を施されたとのことです。そして、領主は下半身丸出しの所を、銀髪盗賊団を狙って踏み込んだらアイリス様により確保されました。そこには神器についてのメモが残っていたので、彼はもうおしまいでしょうね」
うん、そのメモを残したのは私だけどね。流石にあんな外道が牢に繋がれていないのはおかしいもの。
「さて、これで私達の関係は終わりでしょう。このような危険な目にあった以上、慎重派の貴女が次の仕事を受けるとは……」
「受けるわ」
「はい?」
あら、氷の女がそんな顔するなんて、面白いものが見られたわね。
「約束したのよ。いつか仮面の男の仮面を奪うってね?だから、私は神器回収の依頼は今後も受けるつもりよ」
「……分かりました。銀髪盗賊団の逮捕にはご尽力頂けそうにありませんが、神器の確保は今後ともお願いします」
「えぇ、任せなさい。でも、その代わり私の身辺調査はやめてよ。彼を捕まえた後にまとめて逮捕なんて、あまりにも寂しいわ」
「そんな手は使いませんよ。それにしても、あなたは随分と変わりましたね…」
「あら?そうかしら?」
「ええ、何というか、さらにキレイになりました…」
「うふふ、それはそうかも……」
変わったとしたら、それは大切なものを仮面の男に奪われたから、見てなさい!いつか、私が奪ってやるんだから!
……………
「いつか……絶対に捕まえて…んんっ!」くちゅ…
おヘソ触りながら一人でするようになった責任も、絶対に取らせてやるんだからぁ!!
※メリッサは週4のヘソニーが新習慣になった。
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そしてカズマ邸では……
「「「「もう二度としません!心から反省してます!」」」」
紅魔の三人娘と、アイリスが絶賛正座中だったりする。
「なぜ私まで……」
なお、協力して飛んだアーネスも一緒である。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
このファンのメリッサは実は持ってますが、折角なので紛らわしい立ち位置のヒロインに追加です。
最終回後にヘソニーを普及する業の深い私ですが、またお暇なときにでもお付き合いください。