※この作品はR-18です。

英雄特典のエリス様   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

最近近所に喫茶店が出来ました。だから何だと言うことですが、私が垂れ流す理由なんてこんなもんです。

またお暇な時にでもお付き合いください。


この平穏な日々に優雅さを

ティータイム。それは喧騒の絶えない日常から、一時的に救われることが出来る時間。貧乏暇無しだった頃には考えられなかった事だが、今の俺にはそんな優雅な時間がある。

 

「はいカズマさん。今日も最高級の紅茶がはいりましたよ」

 

「うん、ありがとうアクア」

 

先日の監査は誤解と解ったお陰で、取り敢えず損失は保険により補填された。この世界に保険なんてあるのかって?俺を敵に回したくない権力が保険(賄賂)をかけたと言うことだ。まぁ、アクアはそれを知らないので今はメイド服で甲斐甲斐しく俺の機嫌を取っている訳だが、気分が良いので黙っておこう。

 

「うん、お湯!……アクア、お前最近浄化の確率上がりすぎじゃないか?」

 

「し、仕方ないじゃない!私はもう制限無しのマジ女神なんだもん。むしろそんな紅茶より、私の水を飲めるほうがありがたいレベルの上質な水なのよ?いっそティータイムを辞めて白湯タイムにしましょ?」

 

「いやしねぇよ!お湯はお湯だろ?!普通に味のするもん飲みたいわ!」

 

以前アクアが淹れるって言い出した癖に、最近半分くらいは水にしている。飲んでないのに高級茶葉が無くなるって、一体どんな嫌がらせだろう。

 

「カズマさんは料理スキルが最高レベルなんですし、いっそ自分でお茶を淹れるのは……」

 

「それが、紅茶とかコーヒーに関しちゃ水補正があるアクアには勝てないんだよ。たまにしか飲めなくても、やっぱりアクアの淹れた紅茶が1番美味くてさ……」

 

「えへへ…そう言われるとなんか照れるわね…」

 

そう、やはり水の女神が本気で淹れるお茶は美味い。水と茶葉しかない世界では純粋に技量だけが物を言う。味のセンスが関係ないとなれば水を自在に操れるアクアのほうが俺より上なのだ。ちなみに、砂糖とかミルクは任せてはいけない。それを任せるとろくなことにならない。

 

「しかし、それでお茶が飲めないのではやはり寂しいだろう?ほら、私だってお茶くらい淹れられるんだぞ?」

 

カチャッ

アクアの白湯の横に、ダクネスが紅茶を置く。ガチの貴族令嬢であるダクネスは、こういう最低限の社交界的な技量は持っているらしい。親父さんが教えるのに5年要したとか言ってたので、教育係の人は大変だったろう。お疲れさまです。

 

「でも不器用なダクネスが、女神の私にお茶で叶うはずが……」

 

「あれ?美味い!これアクアのより美味くないか?!」

 

「へ?!」

 

別に紅茶に詳しいわけではないが、これは実に飲みやすい!良い香りなのに渋みがなく、実に俺好みの味だ!

 

「アクアに水では勝てないが、紅茶の茶葉なら私のほうが詳しいからな。私が子供のときに飲んでいた飲みやすくて香りの良い茶葉を取り寄せたんだ」

 

「そんな?!最高級の茶葉が負けるなんて……」

 

まぁ、別に俺の舌は最高級じゃないし……あ、女神の味(意味深)が分かるから最高級かも?

 

「それなら、カズマさんはコレのほうが良いんじゃないかな?」

 

コトッ

「お、今度はあるえか?今日はまた随分と豪華なティータイムに……これは?!」

 

緑茶だ!しかも茶柱が立っている!

 

「カズマさんの故郷は紅魔に近い文化を持つだろう?なら、このお茶が1番馴染みがあるんじゃないかな?」

 

「た、確かにこれは懐かしい!めぐみんちで飲んだ時は何も思わなかったのに、凄く懐かしくて癒やされる!」

 

「まぁ、我が家ではソレをさらに5倍に薄めてますからね…」

 

うん、それほぼお湯!そりゃ何も思わねぇわ!

 

「しかし、これならアクアのお茶がなくとも優雅な時間が過ごせますし、今度から当番制でも良いのでは?」ハグハグ

 

「そ、そんなこと無いから!私のお茶が一番だから!」

 

いや〜、めぐみんは茶菓子食えれば水でもいいんじゃねぇかな……

 

「あっ、私もこれなら淹れられるわよ?」

 

「ウォルバクまでお茶を?!いやこれは、コーヒーか?」

 

続いてウォルバクが差し出したのは、ミルクをたっぷりといれたコーヒー。なるほど、ストレートで飲もうとしたから苦かったが、コーヒー牛乳なら確かに美味しく飲める。

 

「大人ぶってブラックで飲もうとして、牛乳と砂糖を足していったら量が4倍になってましたもんね……」

 

「めぐみん?!それは秘密だってば!」

 

最近分かってきたが、ウォルバクは見た目に反して大人っぽくはない。割と子供っぽい部分が多い。可愛いから問題はないが………

 

「でも、コーヒー淹れるのって難しくないか?よくこんな良い香りで淹れられたな?」

 

「あっ、うん……そっちはアーネスに教わったの……」

 

あいつマジで有能だな。「私はあくまで忠臣ですから……」なんて控え目にしているが、普通にそこらのエリートメイドより優秀だし。

 

「む〜〜!!」

 

「どうしたアクア?お湯の飲み過ぎでお腹痛いか?」

 

「ちっがうわよ!この浮気者!私のお茶を毎日飲みたいって言った癖に!」

 

「これなら毎日でも飲みたいって言うセリフ。カズマの数少ないボキャブラリーの1つなので結構使われますよ?私もこの前使われましたし……」

 

「ボキャブラリーが少ないは余計だろ?!」

 

否定出来ないけど!あと、前回使った内容もアレだけど!

 

「なら見てなさい!私のお茶が最高だって教えてやるんだから!ちょっとお茶っ葉買ってくる!!」

 

バターン!

「………何買っても浄化したら一緒じゃねぇかな?」

 

まぁ、俺のために頑張るっていうのは可愛いけどさ。

 

バターン!

「ツケを払ってお金無いからお茶っ葉代頂戴!」

 

いや締まらねぇなぁ……

 

____________

 

「それでアクアが茶店でバイトしてたのか……」

 

「マジかよ……あいつその為にバイトまで初めたのか……」

 

冒険者ギルドの隅。久々にダストと呑んでいると、最近アクアが酒場に居ないことが話題になった。別に家では普通だったので気にかけていなかったのだが、意外にもダストからの情報提供で行き先を把握したと言うわけだ。

 

「結局水にして悔しくて修行するなんて、アクアも中々可愛いところあるじゃねぇか。モテる男は辛いな?」

 

「つうか、なんでダストが知ってたんだよ?お前が喫茶店とか行くタイプか?ちっちぇコーヒーに400エリスとか出さねぇだろ?」

 

「ちょ、ちょっと調べたんだよ!縁があって……」

 

「……ふーん」

 

こりゃデートの下調べと見て間違いないな。早くくっつけよお前ら……

 

「しっかし、サキュバス店でウォルバクさんがコーヒー淹れてたし、ダクネスは紅茶専門店に入り浸ってるって言うし、お前そんなにお茶好きだったか?」

 

「ダラダラ寝てると文句言われるけど、優雅に茶を飲んでると文句言われないからな」

 

「いやそんな理由かよ……」

 

「大事な理由だろ?俺は基本的に楽をしたいんだ!」

 

まぁ、力強く言うことでは無いが…

 

「ふむふむふむ!それは中々に興味深い話であるな!」

 

「うぉ?!バニル、お前何処から来たんだよ?!」

 

俺はもう慣れたが、ダストはテーブルの下から現れたバニルに驚いている。多分、金になりそうな話を見通して待ち構えていたのだろう。じゃなきゃこんなところには居ない。

 

「意中の女の「あんたと行くなら、何処でも同じ」を、自分が空気を壊すと言う意味で捉えて凹んで眠れなかった男よ!残念だが、今お前には全く用はない!」

 

「べ、別に凹んでねぇよ!つうか、それならどんな意味だよ?!」

 

いや、それは流石に自分で気付けよ……

 

「さて小僧。お前が貧乏店主の為に考えたこれらの甘い調味料やタピオカとか言うでんぷんの塊であるが、残念ながら全く売れていないぞ?」

 

「嘘だろ?!まだタピオカ軌道に乗らねぇの?ストロベリーソースとかキャラメルソースなんて、普通に貴族にバカ売れする予定だったのに?!」

 

日本で精製方法を学んできたそれらの現代的調味料が売れないなんて、流石に俺も予想外だ。だってフルーツソースはどう考えてもソフトクリームに合うはずだし……

 

「飲食店で使えば味も広まろうが、貧乏店主のために独占販売にしたのが悪かったな。あの店主しか仕入れない商品など、誰が信用すると言うのだ?」

 

くそっ!なんて説得力だ!ウィズには悪いけど、それには納得するしかない!確かになんか欠陥を疑う!俺の名前を付けるべきだったか!

 

「でも、独占市場のソフトクリームでさえたまに赤字を出すし、もう少しくらい専売商品が無いと辛いだろ?」

 

「あぁ、それは吾輩とて同じ気持ちである。吾輩たちのビジネスの失敗は、下手をすれば幸運の女神に存在価値を否定される事になりかねんからな……」

 

流石にそんな物騒なことにはならない……よね?

 

「と、言うことで……このNo.1給仕決定戦に貧乏店主をエントリーした!無論、審査員に小僧もな!」

 

「いや事後承諾かよ?!ていうかなんだよそれ!」

 

「そういやカズマは出掛けてて知らねぇのか。今度王様がアクセルに来るって話で、その為に臨時で給仕を募集するって話で盛り上がってたんだぞ?」

 

「あ、そう言えばまだアイリスの家にはメイドは居なかったな……」

 

まさか、ずっとティータイムがレインの生クリームタワーのパンケーキだったとか言わないよな?流石に同情するぞ?!

 

「この大会で力を見せることは、貴族にとっては使用人の出来を、飲食店にとっては店の出来を見せる事になる。当然、出場するのはツワモノ揃いであろうが……」

 

「別に俺達は勝てなくても、それなりに目立てば商品は売れるって訳か…」

 

「あぁ。そして、あやつらの競争にもいい加減白黒つけないと、あまり小僧が上の空では困るのでな!」

 

「べ、別に寂しいなんて思ってねぇし?!」

 

「いや、カズマ語るに落ちてるぞ……て言うか、俺から見てもたまに寂しそうだし……」

 

くっ!ダストにバレるとか重症だな俺!

 

「分かったよ。どうせ結果を出さなきゃ帰ってこねぇ連中だ。ここらであいつらの成果を見せて貰うとするよ」

 

「ふむ、いい覚悟である。では、精々体調には気を付けるが良い。当日は中々ヘビーであるからな」

 

そう言ってバニルは俺たちの前から去っていく。ビジネスの為とはいえ、俺があいつらに点数を付けるのは正直辛い。辛いが、俺はまた皆で賑やかに過ごしたいのだ。あいつら、ちょっと俺のためには頑張り過ぎる所があるからな……

 

「つうかよ。料理はともかく、カズマはお茶とかコーヒーの差なんて分かるのか?これ下手したら審査員のほうが恥かかされるぞ?」

 

「……あっ……ちょっと勉強してくる!」

 

_______3日後________

 

 

「私の記憶が確かなら、この街には王都にさえ負けぬ美食が溢れ、それを生み出す多くのシェフや給仕たちが多数存在していた筈……」かぷっ

 

アイリスが給仕を雇う以上、その開会宣言は勿論アイリスが行う。しかし、それ確か日本の奴だよな?誰が教えたか知らないけどピーマン齧ったし……

 

「……苦いです」プルプル

 

「あ、アイリス様!別に伝統だからって無理しなくていいですからね!ピーマン苦手なんですから!」

 

あっ、ただの天使だったわ。涙目のアイリス可愛いなぁ。

 

「と、とにかく!今日はそんな優秀な給仕を起用すべく、私達の前で存分に腕を振るってください!あと、出来ればピーマンはやめてください!」

 

「アイリス様の好き嫌いがなくならないので、それはそれで困るのですが……」

 

「い、良いから開始です!あとやっぱりお茶会にピーマンは使ったら嫌です!」

 

なんとも締まらない開会宣言で始まったのは、この街1番の給仕を決める大会。俺のなんちゃってお茶会とは異なり、貴族にとってお茶会とはもてなしや休息としてとても重要なのだ。だから、ここにいるメンツは相当本気の……

 

「では早速エントリナンバー1番!エーリカさんお願いします!」

 

「やほー!みんなのアイドル、エーリカちゃんだよー!」

 

いきなり色物スタートかよ?!ていうかここでも司会はルナさんなのか!

 

「おい、なんでエーリカがここに居るんだ?お前は給仕として採用されても困るだろ?」

 

「プロデューサーは何も分かってないね……今の、アクセルハーツの状況を……」

 

「な?!ま、まさか!不仲で解散とか言うのか?それとも、もう引退とか言うんじゃ?!」

 

しかし、再就職先を探しているならそれしか……

 

「リアもシエロもどんどん笑顔が上手くなって……最近エーリカちゃんへの可愛いが分散してる危機的状況を分かってないね!!」

 

「「「……は?」」」

 

何いってんだコイツ…流石にクレアとレインも呆れてるぞ?

 

「もう、あのイベント頻度と規模じゃ満足できないの……だから、可愛いって言ってもらう為に参戦したの!」

 

本当に何しに来たの?

 

「まぁ、確かに接客に彼女が居たら大抵の来賓は大喜びだろうな…国王がアクセルハーツファンかは知らないが……」

 

「だとしても給仕だぞ?!とてもお茶とか淹れられるようには……」

 

「さぁどうぞ」

 

カチャッ

あれ?普通に出てきた……

 

「意外ですね。エーリカさんがお茶を淹れられるなんて……」

 

「そして普通に美味しい。彼女がこれだけのものが淹れられるなら、多くの来賓が喜びそうだな……」

 

「予想外にマルチな才能ですね……」

 

「ふふ〜ん!可愛いを追求する私は、可愛いメイドさんにだってなれるように日々修練を欠かさないの!」フンス!

 

マルチな才能って言うか、可愛いを突き詰めすぎて逆にマルチになってやがる……

 

「いい香りもするし、こりゃ本気で候補として見ても良いかもな………ぶふぅ!!」

 

しょっぱ!なにこれ?!

 

「あっ!いっけなーい!プロデューサーのだけ砂糖と塩間違えちゃったぁ〜!ぴえん♪」ペロッ

 

なんで塩があるんだよ?!

 

「そう言う変なアピール辞めろ!ドジっ子は可愛いかも知れないけどな!王様にやったら首が飛ぶぞ?!」

 

「いえ、アイリス様の前でメイドにキレ散らかすなんて恥ずかしいでしょうから、むしろ我慢されてスベりますよ?」

 

「そんな?!ドジっ子メイドできないの?!それじゃこのカラシ混ぜたクッキーはどうすればいいの?!」

 

えぇなにそれ…やっぱり色物じゃん……

 

「クッキーに関しては、どう見ても色がカラシですよね……」

 

「アイリス、別にそれ食べなくていいからな?エーリカのギャグに付き合う必要は……」

 

「はいクレア。あ〜ん」

 

さくっ

「「「あっ」」」

 

このバカ!アイリスが出したらお前は何でも良いのかよ?!

 

「ごふっ!こ、これは冗談では済まない量だぞ?!」ケホケホッ

 

だろうね!黄色かったし!

 

「ごめんねクレアさん?エーリカドジっ子だから…」

 

「いやこれは故意だろ?!そんなので許されると思ったら…」

 

「ごめんなさいクレア…私がつい悪ノリを……」

 

「可愛いので許します!」

 

うん、クレアは何処までもブレない。

 

「しかし、これでは不採用ですね。いくら可愛くても、こんな悪ノリをするのではアイリス様に悪影響が出ますから…」チラッ

 

「なんでレインはこっち見て言うの?」

 

自覚はあるけどさ!

 

「え?もう終わり?まだ可愛いって沢山言って貰ってないのに?!」

 

「じゃあ、それは俺が後でたくさん言ってやるから……」

 

「本当?!じゃあ私帰るね!」

 

いや、本当に何しに来たんだよアイツ。王族主催で色物枠はおかしいだろ……

 

「えぇっと……予想外の方の意外な才能が露見しましたね。では、続いてはあるえさんの挑戦です!」

 

あ、やっぱり色物枠あるなこれ!

 

「おっと、私を見るなり色物だと判断するのは早計じゃないかな?今回は紅魔の古き良き伝統を用意したよ!」

 

「いや自覚あるのかよ…」

 

色物だと思われたくないなら普段の悪ノリを辞めてくれねぇかな……しかし、この道具なら期待しても良いのか?

 

「それ、あるえは茶道か……」

 

「あぁ、抹茶と和菓子は風情を感じる素晴らしい文化だ。生憎とある問題で今はあまり流行っているとは言い難いが、折角だから楽しんでくれたまえよ」

 

珍しく着物で現れたあるえの手には、日本の茶道の茶器。これは確かに楽しみだし、帰ったらその帯を引っ張るのも楽しみだ。

 

「これが伝え聞く日本のサドーなのですね…まさか、紅魔の里に本物が残っていたなんて……」

 

「そうですね。この和菓子というのも素晴らしく精巧で、表現力豊かな菓子です。これは大地に芽吹く新芽を表しているのでしょうか?」

 

薄く抹茶のかかった和菓子の上に、飛び出すように添えられたうぐいす餡。確かに芽吹きを表しているように見えるが、紅魔族だとなんか不安になるな……

 

「あぁ、それは養殖のときの首を刈られるのを待つトロールを表現しているんだ。夏の風情だよね?」

 

「「「は?」」」

 

いや風情どこよ?!

 

「で、でも!こちらの花火は普通に美しく……」

 

「あぁ、それは炸裂魔法でふっ飛ばされたゴブリンだね?」

 

「……すみません。解説は無しでお願いします」

 

あぁ、お茶会が酷い空気に……

 

「しかし、題材に難はあるが出来は素晴らしい。この文化が失われつつあるのはどういうことなんだ?」

 

「まぁ、それはこれから分かるよ……さぁお茶を楽しんでくれたまえ…」ガクガク

 

本来の茶道なら俺達もあるえの元に座るのだが、この世界にそんなマナーは広まっていない。そうなると、あるえはそのお茶をこちらに持ってくる必要があるわけだが……

 

「正座で足がやられてんじゃねぇか?!おい無理すんな!俺が取りに行くから!」

 

「駄目だ!茶道はこれに耐えるまでがおもてなし!私の奉仕精神は、こんなところで決して折れない!」ガクガクブルブル

 

そんなルール知らないし、生まれたての子鹿にそんなの言われても困る!と言うか、それ人数分用意する必要もないし、回し飲みするやつだし!無駄に時間かかって足へのダメージがエライことになってるし!!

 

「く、くそぅ!!」

 

バシャ

「あっつい!」

 

崩れ落ちたあるえのお茶は、そのままなら真っ直ぐにアイリスに向かっただろう。しかし、それはクレアの献身的な防御により防がれ、そして転倒しそうになったあるえも……

 

「あるえさん、大丈夫ですか?」

ぽふっ

 

「あぁ、ありがとうアイリス様……」

 

無事アイリスに抱きとめられた。つまり、見事にクレアは空回りした訳だ。今日は可哀想だなアイツ……

 

「しかし、いくら素晴らしい文化であっても、あるえさんがこんな辛いのならそれを望むことは出来ません。残念ですが……」

 

「そうだね。たしかに王様にぶちまけたら困るよね…」

 

「私も困るんだが?!」

 

しかし、あるえは予想外に本気で悔しそうだな。あれ、あの腕のはまさか?!

 

「おい、あるえ。次は俺にも相談しろよ。あんこを煮るのは重労働だろ?」

 

ぐいっ

あるえの腕を掴んで袖を捲ると、そこには小さな火傷の跡がいくつも並んでいる。和菓子に使うような餡は、煮詰まると気泡がはぜて飛んでくるのだ。和菓子なんて見たことなかったから不思議だったが、まさか自作とは恐れ入った。

 

「わ、私だって女の子なんだ……好きな人に美味しいものくらい出したいじゃないか……」

 

……ねぇ、この帯ここで引いていいかな?駄目?

 

「えっと…何故かカズマさんが主役になりつつある気がしますが、良いんでしょうか……」

 

「大丈夫です!お茶の美味しさよりお兄様がお茶会に来てくれる方が嬉しいですから!」

 

なにこれ天使?でも王様いるのはなぁ…

 

「では、主催が良いと言うので続行します。次はウィズ魔法具店のウィズさんです。あら、ついにお店を捨てて転職を……」

 

「違いますよ?!」

 

「採用します。精鋭部隊の給料に更に色を付けても構いません!」

 

うん、それ給仕関係ないな。でも、レインの目利きは間違いない。仲間にしたら凄く心強いぞ!

 

「レインさんも辞めてください!今回は新商品のご紹介を兼ねて……」

 

「不採用です。お帰りはあちらです」

 

「それは酷すぎませんか?!」

 

ごめん。それは俺もフォロー出来ない。

 

「こ、今回はカズマさんの製品で……」

 

「お兄様の望むだけ購入しましょう!」

 

「えぇ〜?!」

 

あぁ、やっぱり俺の周りって話進まねぇな!

 

……………………

 

「こ、これが……これが真の日本文化……」

 

「これがお兄様のおすすめ商品……」

 

「な、なんだこの彩りは、本当にパンケーキと紅茶なのか?!」

 

先程までの疑いの目なんてどこに行ったのか、ウィズの焼いたパンケーキとタピオカミルクティーを前に、全員が目をキラキラと輝かせている。ジャムを乗せる文化はあれど、それをソースにして美しくかける文化はまだ無かった。つまり、保存が効いて簡単にパッと使えるフルーツソース各種は、利便性と芸術性で間違いなく流行る。俺の予想はまさしく的中した訳だ。

 

「こ、このアイスティーの中のカラフルなツブツブは…」

 

「毒抜きしたキャッサバのゼリーです。黒は不評だったので、花の染料でカラフルに染めています。まぁ、味は砂糖で同じなのですが…」

 

タピオカだって別に黒い必要はない。黒糖を使わずに食紅で染めれば、少なくともウサギのアレとは言われない。ありがとう天使。お前のミーハーっぷりが役に立った。レインボータピオカってすげー文化だよな。

 

「こ、これは間違いなく優勝候補ですよ!ねぇ二人共?!」

 

「えっと、確かに見た目は美しくて味も良いのですが……」

 

「ふむ、これはかなりの甘党向けですね?やはりアイリス様もカレーが欲しくなりますか?」

 

いやなんでそこでカレー?!まぁ、確かに一緒に食べるもんじゃないよな。甘いの2つは……

 

「カレーは要りませんよ?!ただその、お父様は高齢ですし、これは少し砂糖の量が気になると言いますか…」

 

「「「あっ!」」」

 

確かに、これを高齢の人に出すのはキツイ!若者向け商品に特化しすぎた!

 

「そうですね……確かにこれは国王の糖尿が悪化します。では此処から先は個人取引なのですが、ウィズ様。フルーツソースはリットルおいくらですか?」

 

「リットルですか?!」

 

取り敢えず広告と言う目的は果たしたが、日本というチートを使っても王家を納得させるには届かなかった。ティータイムと言うのは、どうやら俺の思ったより奥が深いようだ。ちなみに、今んとこ全然お茶の違いは分からない。ていうか、そもそも淹れるのが下手なやつはここに来ないんじゃないだろうか。ていうか王様糖尿なの?!

 

「さて、此処から先はチーム参加です。最初はサキュバス店より、ウォルバクさん、アーネスさんのペアです!」

 

「いやサキュバス店って……」「表向き喫茶店なだけでしょアレ?」「一体何飲ませるつもりだよ…」「媚薬とかじゃない?」「それはそれで飲みたいな…」

 

店の名前を出した以上、このギャラリーの反応は予想通りだ。確かに以前はろくなものを出してなかった。でも、あの悪魔とは思えない頑張り屋と、万能型チートが手を組むとどうなるか、お前らはここで知ることになるだろう。

 

「ウォルバク様、準備はよろしいですか?」

 

「ええ、任せて!」

 

アーネスが手に持っているのは、俺が大人ぶりたくて作ったエスプレッソマシン。結局濃いコーヒーは苦くて飲めず、一応ここは喫茶店なんだしとアーネスにあげたものだ。まさか使いこなしていたとは……

 

「ふむ、かなり濃厚なコーヒーの香りがするが、これは甘党のレインや、苦いのが苦手なアイリス様には辛いような気がするな……」

 

「の、飲めます!子供扱いしないでください!」

 

「カズマ様も苦いのは苦手ですよね?」

 

「じゃあ子供でいいです!」

 

「可愛い!天使か?!」

 

確かにあんまり苦いのは勘弁願いたいが、おそらくウォルバクが手に持っているのは牛乳だ。先程から魔法で泡を立てているので、カフェラテにでもするのだろう。それなら、確かに子供から大人まで美味しく飲めるのではないだろうか。

 

「ウォルバク様!コーヒー入りました!お願いします!」

 

「これで仕上げるわ!『ウィンドブレス』」

 

「そうか!それで泡を!」

 

コトッ

ウォルバクがミルクを注いだ液面には、可愛らしい葡萄が描かれている。まさか、魔法で可愛らしいラテアートを添えるなんて、まさにおもてなしの精神ではないか。

 

「あ、アイリス様のトレードマーク?!これを牛乳の泡で描いたと言うのか……」

 

「これはコーヒーなのにとても飲みやすく、しかも目でも楽しめます。きっと国王も喜びになりますよ!」

 

「一緒に出されたお茶菓子のクッキーも、かなりの高品質です。これは日常的に買いたいです!」

 

それサキュバス店に売ってるけど、アイリスが買いに来たら困るかな……

 

「これは間違いなく優勝候補!流石はカズマさんの所の数少ない常識枠です!」

 

あ、ルナさん的にもそう言うカテゴリー分けなんだ。どうしよう否定できない……

 

「ありがとうアーネス。貴方のコーチのお陰で、なんとかここまで来れたわ…」

 

「私はあくまで忠臣、主の望みを叶えるのは当然です。また何でもお申し付けください」

 

「うん、これからもよろしくね」

 

そして、なんて美しい主従関係!全く、どこぞの馬鹿に見習わせたいくらいで……

 

「おっと!前座は終わりましたか?早く作業スペースを空けてもらえないと困るんですがぁ?」グイグイ

 

「ちょっ?!あんた天使としてそれでいいのか?!」

 

いや天使……もうどっちが悪魔か分かんねぇわコレ……

 

「えっと…空気を壊しての登場となりましたが、次が最後の枠。天使さんとアクアさんのペアです」

 

「いや、アクアはなぁ…」「味の好みが微妙だもんな…」「腕は確かなんだけど…」「味覚が伴わねぇからなぁ…」

 

いや、よく考えたらこの組み合わせはヤバい!料理において味覚がおかしいのが唯一の欠点のアクアに、味覚だけは最強の天使が揃うって言うのは、まさに鬼に金棒ではないか?!それに、今のアクアは尋常ではない。すごい集中力で周りに目もくれない!

 

「さぁ、アクア様……過酷な特訓の集大成を今こそ!」

 

「えぇ、私は最高の一杯を淹れるわ。それが私の生きる意味だから……」

 

過酷な特訓って何したの?!何か大切なものを見失ってないか?!

 

トポトポ……スッ

「どうぞ…」

 

やべーよ。これ血液とか入れられてもおかしくない感情の死にっぷりだよ。これで本当にまともにお茶なんて……

 

「こ、これは?!」

 

「何というか香り!そして甘み!ストレートティーなのに複雑な味わいがあります!」

 

「こんな完成度のお茶など飲んだことがない!どうやって淹れたんだ?!」

 

「大したことはしていません。ただ、彼女がブレンドし、私が引き出しただけのことです……」

 

感情のないアクアが差し出したのは、40種類はあるであろう紅茶の茶葉。そこから適量を取り出し、合わせて淹れたのがこのお茶ということなのか……天使め!その技能を先に教えてくれればタピオカで使えたのに!!

 

「ふふふ……出来の良い茶葉を60種類飲み比べ、遂に最高の組み合わせを見つけました。この組み合わせは、クセも無く、後味も良く、そして香りが実に立つ……これが天使の献身です!どうだ悪魔!どちらの献身が上か、これで思い知るがいいです!」

 

「くっ!ここまで上質な香りが漂ってくる!天使め!まさかこんな能力を持っているとはな!」

 

いや、もうウォルバクとアクア置いてきぼりじゃん……

 

「うふふ…そう、これが美味しい紅茶…私にはもう飲みすぎて味がわからないけど、きっとこれが美味しい紅茶なの……」

 

これ、なんかへんな扉開いてるよね?!

 

「おい天使!そのポット貸せ!」

 

「へっ?はい…どうぞ……」

 

「おい、アーネス!エスプレッソ一杯淹れてくれ!」

 

「はい!すぐに!」

 

全く!なんでお茶入れるだけでこんなに自分を追い詰めてんだアクアは!お茶会ってそういうもんじゃないだろ!

 

トポトポトポ

「お兄様は随分と高い位置から紅茶を注いでますが、あれは……」

 

「お茶に空気を含ませると、より香りが立つと聞いたことがありますね……」

 

「と言うか、カズマの奴すごく手際が良いな……」

 

俺だって実はお茶を淹れられるし、なんなら過去にバイトの経験もある。でも、やっぱり嬉しそうにアクアが差し出してくれるお茶が、俺はやっぱり1番好きなんだ。

 

「ウィズ!調味料借りるぞ!」

 

「は、はい!」

 

まぁ、でも今くらい俺が淹れてやるよ!元気のないアクアのために、俺の得意なのを一杯な!

 

「クリームにキャラメル?!」

 

「魔法で冷やしたり、紅茶にコーヒーを混ぜるなんて有りなんですか?!」

 

あぁ、別にルールなんて必要ない!高い完成度だって別に要らない!俺たちのパーティーがやべーもんのかき集めなんだから、今更そんな綺麗なもん用意しようなんてつもりはない!

 

「おらアクア!クワトロベンティーエクストラコーヒーバニラキャラメルへーゼルナッツアーモンドエキストラホイップアドチップウィズチョコレートソースウィズキャラメルソースアップルクランブルフラペチーノだ。さっさと飲め!」

 

「「「「商品名ながっ!!」」」」

 

いや、でもこれ正式名称だし……

 

「クワトロベンティーエクストラコーヒーバニラキャラメルへーゼルナッツアーモンドエキストラホイップアドチップウィズチョコレートソースウィズキャラメルソースアップルクランブルフラペチーノですって……まさかカズマ様!あの暗黒時代のスタバでバイトを?!」

 

「あぁ、ノリでクソ長い注文が流行った頃に散々作ったよ!コーヒーショップ店員の称号欲しさにバイト選んで後悔したわ!」

 

「と言うか、天使様もそれを言えるんですね……」

 

まぁ、話題になったから……

 

「こ、これはお茶じゃない……こんなの、お茶会で出せない…」

 

「良いから飲んでみろよ。ヤバいから……」

 

色んな意味で…

 

コクッコクッ…

「なにこれ甘くて美味しい!もう何かわからないけど美味しい!」パァァ!

 

よし、アクアが戻った。まぁ、それが美味しいかは議論の余地があるが……

 

「ったく、やっとお目覚めか?また変な修行しやがって…」

 

「だ、だって!張り切ると水にしちゃうから…お茶のことだけ考えれば水にしないし……」

 

「だからってそんな顔で出されても美味くねぇよ!俺は、ドヤ顔でも笑顔でも、アクアが楽しそうに出してくれるお茶が飲みたいんだ。だから、もうそんな顔になるまで頑張るなよ?」

 

ナデナデ

「か、カズマさん……うぅ…カズマさぁん!」ダッ!

 

ひらっ

「ぶふっ!なんでそこで避けるの?!」

 

「いや、ごめん。鼻水付けられそうだったから……」

 

「そこは普通に抱きとめてよ?!」

 

いや、元気になったのは嬉しいけど、そこは別じゃん?

 

「やれやれ、やっとこれで元通りだな。すまんアイリス。アクアのお茶は候補から外してくれ。女神にあんな顔させて給仕なんてさせられないからさ…」

 

「そうですね。私もあんなアクアさん見たくありませんから、次の手を考えるとします。まぁ次点で言えばウォルバクさんにお願いしたいのですが……」

 

「ごめん。私ちょっとエーリカの所で笑顔の練習してくる!楽しそうにお茶淹れる練習もしてくる!」ダッ!

 

「ウォルバク様!私もお供します!」バサッ!

 

お前らも今の笑顔で満足なんだけどなぁ……

 

「えっと……そうなるとですね?」ジー

 

……あっ!なにこれ嫌な予感!

 

_________________

 

 

「いやぁ、まさかこんな形で望みが叶うとは……ありがたい話だ」

 

「王様に喜んで頂けて何よりです。まぁ、これ日本のモノを持ち込んだのですが……」

 

「なに構わないさ。本場の味に文句などあるはずもない」

 

アクセルを訪れた王様の要望は、まさかのコーラである。なんでも過去の勇者候補にクラフト系チート持ちが居たらしく、一度飲んでから忘れられなかったそうだ。そして、お茶請けはと言うと……

 

「やはりコーラにはポテチであろう。国王に似つかわしく無いと止められていたが、日本のこれを食せばその愚かしさが嫌でも分かる。やはり、本場ののり塩ほど美味いものはない!」

 

「お父様。このコンソメを忘れては困ります。やはりポテチはコンソメこそ至高です!」

 

「ふっ、アイリスはまだまだ子供だな。この上質な芋に、そんな複雑な味付けなど不要。足せばいいという訳ではないのだ」

 

すみません!それめちゃくちゃ安いカル○ーの奴です!大袋で買ってきてすみません!と言うか、アイリスと王様と俺だけって精神的にきついんだけど?!クレアとレイン遠いんだけど?!

 

「ふむ、まさか国王の望みを叶える方法がこんな身近にあるとは……」パリパリ

 

「コーラとポテチに関しては、以前からアイリス様に要求してたそうですよ?ついでに、今回の一件で工場を王都にも作る契約をするとかで…」パリパリ

 

「仮面の悪魔が言ってた通りになったな。国王相手に給仕をしたがる命知らずなんていないと思ったが、カズマを抱き込む為の策だったとは……」

 

「こらクレア。聞こえますよ?今回はまさしくハッピーエンドです。カズマ様の胃に孔が空いたとしても、ご機嫌なアクア様が癒やしてくださいますから」

 

くそぅ!なんか俺の身内しか参加してないと思ったらそう言うことかよ!最初から俺を抱き込む算段で、一番得したのはエスプレッソマシンとか茶器とか各種トッピングを売ってるウィズの店って訳か!あの悪魔!俺のストレスを対価に商売しやがって!

 

「あっ、またお忍びでくるから、その時も頼むよカズマ君」

 

「はい喜んでー!」

 

あぁくそ胃が痛い!

__________

 

翌日、アクアの買った大量のお茶っ葉の代金に、もう一度俺の胃に穴が空くのだが、それはまた別のお話。そして……

 

「つ、ついに見つけたぞ!これが伝説のお茶の葉だ!!」

 

「やりましたね!これで、二人が仲直りすると良いのですが……」

 

ダクネスとめぐみんが、辺境で伝説の茶葉を見付けたのが新聞に載るのだが、これもまた別のお話。

 




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

お茶会と聞いて緑茶を想像する私と、紅茶を想像する友人、コーヒーを想像する母のアホなすれ違いを思い出してネタにしました。こんな感じの馬鹿な垂れ流しをまた続けていくと思いますので、またお暇な時にでもお付き合いください。

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