異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話 作:もう万体
(しくじった……)
《森》に閉じ込められてから体感で二時間ほどした頃に、アニスはセラと出会った。狼の姿をしたカードモンスターに襲われていたところを助けたのである。どうしてこんなところに? とも思ったが、フィールド魔法の展開にたまたま近くにいた子どもが巻き込まれてしまったのだろうと解釈した。そうなると、自分達のトラブルが原因であるため、アニスとしても罪悪感が湧く。まして、年端もいかない子どもをこんな森の中に放置するわけにはいかない。アニスがセラを保護するのは、当然の判断だった。
ヒリヒリした焦燥感がアニスの肌を灼く。
巨木が豪快に倒れ、地鳴りのような音を立てる。切り株の直径だけで五メートルはあるだろう。魔法で生成された空間のため、樹齢も何もないが、もしもこれが自然の大木であれば、いったいどれくらいの年月をかけて成長したことになるのだろうか。
アニスが対峙するカードモンスターと思われる騎士が、この不条理を成し遂げた。
剣を横一文字に振るっただけで、軽々と大木を両断したのである。
背の高い、鎧に身を包んだ剣士である。
剣は両刃で、分厚く、刃には棘のような凹凸がある。剣と言うよりは金棒というほうが近い外観ではあるが、剛力でこれを振り回せば、直径五メートルにもなる大木すらも一溜まりもなく切り倒されることになる。
騎士が斬りかかってくる。
上段から大胆に、駆け引きもなく剣を振り下ろす。
「く……うッ」
アニスは横っ飛びでこれを避ける。茂みに転がり込み、態勢を立て直すが、さらに騎士は二度、三度とアニスが潜む茂みを剣で薙ぐ。直撃はしないものの、凄まじい膂力を目の当たりにして背筋が凍る。
(今使えるのはマナ・ブレイドだけだってのに、こんな物理攻撃しかない化物がいるなんて!)
アニスのマナ・ブレイドは物理攻撃に弱い。弱いといってもすぐに砕けるようなチャチな代物ではないが、それでも乱暴に扱えば砕けてしまう繊細さがある。騎士が振り回す金棒のような剣とぶつかれば、早々に使い物にならなくなる。
敵の目的も今一分からない。
ヒロイン生協の邪魔をしたいのは分かる。そのためにアニスたちをどうしたいのかが見えてこない。掴まえたいのか、殺したいのか、ただ足止めしたいのか。言葉を交わせる相手が出て来ないので、ただ迎撃するばかりで後手後手だ。
(まあ、こんな化物をけしかけてくる時点で殺意はありませんってことはないよね)
対峙する騎士は、一撃でアニスを殺せるような攻撃ができるカードモンスターだ。
アニス個人に対する恨みがあるとは思わないが、ヒロイン生協が相手でも容赦はしないという意思は見え隠れする。国家規模の勢力がバックにいる可能性はあるだろう。
(あの騎士そのものに意思は感じない。ステラみたいなヒロインとは違うってことかな)
カードから召喚されたモンスターは主の指示に唯々諾々と従うだけの存在だ。基本的に自我のない人形のようなものである。
騎士はアニスを探しながら手当たり次第に木々を切り倒している。
おかげでずいぶんと見晴らしが良くなった。
切り倒された大木の影に隠れながら、騎士の後ろに回る。
攻撃しか能の無い、というか自我のない騎士はアニスを効率よく探す知能がないようだ。主人からは見つけた敵を攻撃するようにとしか指示されていないのだろう。
このまま逃げてもセラを連れての逃避行だ。いずれは追いつかれるか、別のモンスターと出くわすことになるだろう。
倒せる敵は倒せるときに倒しておく。
呼吸を整えて、アニスは騎士の背後から一気に飛び出した。
騎士までの距離は二十メートル弱。騎士が振り向いてアニスを捕捉し、剣を振るうまでにマナ・ブレイドを叩き込めるかどうかが勝負だ。
十メートルを切ったところで、アニスの気配に騎士が振り返る。もう遅い。アニスのトップスピードは常人とは比較にならない。騎士の反応速度を以てしても、懐に入るのを止められない。
「たあああああああああああああ!」
マナ・ブレイドの出力を上昇。一撃で胸に刃を突き立てるように渾身の力を込める。騎士はすでに大剣を振りかぶっている。
問題ない。
騎士が剣を振り下ろすよりもアニスが懐に飛び込み、マナ・ブレイドを叩き込むほうが僅かに速い。
アニスが凍えるような悪寒に震えたのは、騎士の攻撃範囲内に踏み入った瞬間だった。
(あ――――れ)
がくんと踏み込む足から力が抜ける。
マナ・ブレイドの出力が低下した。
騎士が剣を振りかぶっている姿が目に焼き付いて、心臓が締め上げられるように痛んだ。
「あぐッ……ああッ!!」
アニスは咄嗟に飛んで進路を逸らした。理解はできないが勢いを削がれたまま突っ込んでも、騎士の剣がアニスを斬り裂くほうが速いと感じた。その判断が奏功し、金髪が数本切れたが、首を落とされずに済んだ。
(何……今の……)
アニスは片膝をついたまま、マナ・ブレイドを構えて騎士に相対した。
明らかにアニスに心身に生じた異常は、今は消えている。だが、何らかに騎士の能力により、アニスはデバフを受けた。そんな気がした。
(あの騎士がカードモンスターなら、今のは効果ってヤツかな)
一筋縄ではいかない相手だと再認識する。自我がないのが幸いだろうか。効果の詳細が分からなければ、対処は難しい。マナ・ブレイドしか武器がない今、打てる手はほぼない。こうなれば逃げるのが一番だ。倒すのが難しいと分かったので、業腹だがセラを連れて一目散に逃げ回るのが最善だ。
「い゛ッ……」
立ち上がろうとしたとき、左足首が悲鳴を上げた。
急な方向転換で挫いたらしい。
(ヤバ、骨まではイッてないけど、けっこうキツい)
脂汗が一気に吹き出す。
左足に体重を掛けると飛び上がりそうなくらい痛い。
痛みを我慢するのは得意だが、人体の限界を超えるのはさすがに無理だ。
今のままならの話だ。
アニスは深呼吸の後、思い切り叫んだ。
自分の声は耳に届かない。全身の血液が沸騰するかのような錯覚。心臓がけたたましく鼓動を刻む。アニスの魔力が変質し、まったく別の膨大な魔力が噴き上がる。
奥の手
かつて竜に刻まれた、竜に至る呪い。
アニスを犯す竜の魔力を流用して、瞬間的に桁外れの魔力を生み出す。この時、アニスの肉体は人の形をした竜にも等しいものとなる。
足を挫いた?
竜にそんなものは関係ない。
「行くゾ」
舌が回らない。
常軌を逸した魔力は酩酊感を齎す。人を越えて竜に至った絶対的な全能感に酔う。一歩間違えば人に戻れない危険な誘惑だ。
マナ・ブレイドの魔力を充填。
身体能力は今までのアニスの比ではない。
騎士はアニスの変質にも動じず、大剣を構えている。
勢いよく地面を蹴る。
今度こそは、騎士を倒すと、マナ・ブレイドを握り込む。受けて立つ騎士が剣を握る手に力を込めた。アニスの動体視力が、騎士の一挙手一投足を具に見て取った。
(行ける。間に合う。でも、この剣を振り下ろされたら、わたしは死ぬ?)
死――――訳もなく、アニスは震えた。
感じたこともないほどの恐怖。
頭が真っ白になるほどだ。
意に反して身体が防御態勢を取った。
騎士が振り下ろした剣はアニスを斬り裂くことこそなかったが、アニスがばらまいた竜の魔力があっさりと両断されたのである。
「く……あああ!」
アニスは全身から竜の力が抜けていくのを感じながら地面を転がった。
転がりながら、理解した。
身体が勝手に守りに入ってしまう。
騎士を本能が脅威だと認識している。見た目以上に恐怖を感じる。理性的に見れば、騎士はアニスよりも弱い。勝てる相手だ。だというのに、どうしても恐怖する。
「竜を殺す能力……ッ」
アニスが感じた恐怖の源泉は彼女が持つ竜の力の天敵となる力だ。
騎士――――《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》に《竜殺しの剣》を装備した、竜族を屠ることに特化したモンスターカードだ。
言わずもがな、アニスという竜の特性を持つヒロインに対抗するために選ばれたカードだ。
アニスは本能的に《バスターブレイダー》に対して守りに入ってしまう。攻撃しようという意思に反して、防御を優先してしまうのである。
アニスの攻撃が常にちぐはぐになるのはそのためだ。
「わたし対策ってこと? 生協の情報管理、どうなってんのかな」
アニスはヒロインとしては新人だ。問題を起こして悪い意味で有名ではあるが、ヒロインというのは総じて我が強くトラブルメーカーになりがちだ。アニスが突出して目立つということはない。アニスが前線に出て戦ったこともないので、彼女の特性を知りうるのはヒロイン生協の中でも相当上位に位置するものだけだ。
「でもわたしはカードモンスターじゃないから、効果が完全に効いてるわけじゃないはず」
唇を切った。
血の味がする。
半ば自分に言い聞かせるように呟く希望的観測。しかし、ある程度は的を射ている気がする。もしも、あのカードモンスターの能力が竜を一方的に殺すようなものなら、今頃アニスは手酷くやられているはずだ。デバフを受けながらも戦えているということは、アニスに勝機が無いというほど絶対的な力関係ではないということだ。
騎士の力はアニスを恐怖させ身を竦ませる。思わず防御態勢を取ってしまうほどだ。そして、その防御の上から竜を叩き斬るのが本来の彼の力なのだろう。
奥の手は、むしろ危険。
それでも戦えないことはない。
「もう一回!」
再び、アニスは心臓を酷使する。
竜の魔力を呼び出して、全身から吹き出した。猛烈な魔力が空気を撹乱して、旋風が砂塵を巻き上げ木々を揺らす。
騎士が
(落ち着け。この恐怖心は、偽物。あの騎士の能力で与えられたものでしかない)
自分に言い聞かせながら、アニスはマナ・ブレイドを全力で振るう。下から上に、地面を掬い上げるように。それはまるでゴルフのように、マナ・ブレイドの魔力刃がかき回した大気とともに砂礫を騎士に向かって大量に浴びせかけた。
轟、と吹き荒れる突風には、砂礫の散弾が紛れ込んでいる。さながら、機関銃の掃射のように進路上のあらゆるものに風穴を開けて粉砕する威力がある。
もちろん、この程度の攻撃では《バスター・ブレイダー》はビクともしない。
固い鉄板に石ころが当たる音が響くだけで、半歩すらも後退していない。
《バスター・ブレイダー》の仕事は敵を斬ることだけだ。
それが竜であれば、優先的に殲滅する。
与えられた命令はシンプルで違えようがない。
生まれながらの竜殺し。
例え、粉塵で視界が覆われようと、その魔力、邪悪な気配を見逃すはずがない。
粉塵に隠れて斬り込んでくる竜の気配を、《バスター・ブレイダー》は人ならざる知覚によって捉えていた。
右側に回り込んできた竜に向けて《バスター・ブレイダー》は《竜殺しの剣》を振り下ろす。
茶褐色の粉塵の向こうで淡く輝く光の剣を、いとも容易く両断する。
斬り殺すべき竜の気配が霧散する。それと同時に、己の脇腹に衝撃を受けて身じろいだ。人格があれば、驚愕していたことだろう。
アニスがいつの間にか懐に飛び込んでマナ・ブレイドを突き込んでいたのだ。
魔力刃は《バスター・ブレイダー》の脇腹から斜め上方向に貫いて、その身を両断していた。これは、間違いなく致命傷だ。
騎士の目から光が消える。
カードモンスターは何も言葉を残すことなく、魔力の塵となって消滅する。残されるのは、1枚のカードだけだ。
「はッ、ふはッ、ふう、はあ、はあ、うぅ、げほッ、けほッ」
アニスは緊張から解放されて膝を突いて咳き込んだ。かなり無茶をしたし、ギリギリまで追い込まれていた。勝利し命を拾った安心感で脱力した。
「はあ、はあ、何とか、なった、はあーー疲れた、しんどい、しんどいよ、ほんと」
アニスは汗を拭って、マナ・ブレイドを仕舞う。そして、地面に落ちているもう一つのマナ・ブレイドも回収した。
《バスター・ブレイダー》が、竜と誤認したものの正体だ。
アニスは竜であって人でもある。
アニスの賭けは単純だ。
竜の魔力をこれ見よがしに見せつけた後、巻き起こした砂塵の中に竜の魔力を込めたマナ・ブレイドを投じた。視界を奪われた《バスター・ブレイダー》がマナ・ブレイドを追うのと同時にアニスは
結果は、見ての通りだ。
竜殺しの騎士は、ただの人間に敗れて消え去った。
アニスはカードを拾い上げようとして、地面にあったはずのカードがないことに気づいた。
「あ、あれ、カード……」
確かにあったはずのカードがない。
顔を上げたアニスの前にセラがいた。
「セラちゃん……?」
果たして、それがセラなのかどうか、アニスには確信が持てなかった。
モンスターと戦闘に巻き込まれないよう、大木の洞の中で隠れているように伝えていた。戦いが終わったから出てきたというには、無防備極まりない。
セラはアニスが倒した《バスター・ブレイダー》のカードを持っていた。
「まさか、《バスター・ブレイダー》をやっつけちゃうなんて、驚いたよ。アニスお姉ちゃん」
「ッ……! あ、なッ!」
突如、背後から襲いかかってきた触手にアニスは絡め取られる。
粘着質の粘液が貼り付いてきて離れられない。
「まさか、セラちゃんがカードのマスター!?」
「うーん、ちょっと違う。わたしはマスターから借りただけだから。だって、ほら、わたしもカードモンスターなんだし」
「そ、そんな、嘘……だって、セラちゃん、普通にしゃべって……」
「ふふふ、わたしは蠱惑魔だから。人を騙して、誘惑して、食べちゃうモンスター。だからかな。こうして、人の姿をした
「く……ぁ」
触手と粘液はアニスを離さない。
(抵抗しようにも、もう体力が……魔力も限界……あの騎士に全力出しすぎた)
枯渇した魔力を強引に回復するには、もう一度竜の魔力を呼び覚ますしかない。ただ、アニス自身の魔力を呼び水にする必要があるので、そもそもアニスの魔力が枯渇した今、大した出力は期待できない。それどころか、竜の魔力にアニス自身が食われる可能性も否定できない。
だが、やはり黙って食べられるのを待つわけにもいかない。
一か八か、
「だーめ」
セラがアニスを指さすと、一際大きな触手がアニスの頭上に現れる。
ぱっくりと触手が口開けた。
そのままアニスの頭を呑み込む。
「むぐッ! ん、んぐうううううううう!」
アニスを粘液から引き剥がし、触手はアニスを身体を持ち上げると、そのまま丸飲みにしてしまった。
「ふふ、アニスお姉ちゃん、とってもいっぱい魔力があるからぁ、このままわたしの中で搾って搾って、搾り尽くしてあげる♡」
蠱惑的な表情で唇を舐めるセラ。
そして、アニスを呑み込んだ触手と共に巣に帰って行った。
♪
気がつけば、薄暗い部屋の中にアニスは囚われていた。
ジメジメとした息苦しい場所だ。
湿った土の臭いが充満していて、地下であることを思わせる。手足はヌメヌメした粘液に覆われ、身動きはまったくできない。
「お姉ちゃん、気がついたんだ。思ったよりも早かったね」
「セラちゃん……! ここから出して!」
「ダメよ。せっかく掴まえたのに」
セラは幼い顔に狂気を潜ませて、アニスに答える。
「何が目的?」
「んー、分かんない。あ、怒らないで、本当なんだから。わたしはマスターに召喚されただけだもの。美味しそうなお姉ちゃん達をやっつけて食べる。モンスターのお仕事はそれだけでしょ」
「じゃあ、何でわたしをわざわざ捕まえたの?」
「お姉ちゃんが一番魔力を持ってる人だから。他のお姉ちゃん達をやっつけるのにも力がいるでしょ? だから、お姉ちゃんから燃料を分けてもらうことにしたんだ。マスターは召喚しっぱなしで、魔力の面倒まで見てくれなかったからね」
「へえ、そりゃ、困ったマスターさんだね」
会話から何とか情報を引き出し、脱出の糸口を見つけたいアニスだが、セラは本当は召喚されただけで情報らしい情報を持っていない。使い捨ての傭兵のようなものだ。あまり、セラは情報源としては期待できなそうだ。
ただ、セラの背後にいる誰かの目的は分からなくてもセラの目的は理解できる。
アニスを魔力源として扱いたいのである。
魔力がすべての動力源だ。アニスの力もセラの力もこの世界は同一の魔力によって運用される。異なる世界のヒロインの能力でも、ここでは同一の燃料が用いられるのである。莫大な魔力を精製できるアニスは、セラにとって大きな外付けバッテリーのようなものだ。アニスの魔力を流用できれば、セラは自分で魔力を消費する必要はなくなるだろうし、自分の魔力を上乗せして力を使うこともできるだろう。
「それで、わたしの魔力をどうやって奪うっていうの?」
と、アニスはセラに尋ねた。
「もちろん、アニスお姉ちゃんの身体から直接だよ」
ぴちゃぴちゃという水音が延々と響く。
肌を這うセラの舌が、アニスの汗を舐めていく。
「飽きない?」
「全然!」
「そう……」
裸にされたアニスをセラはずっと舐め回している。頬から首、鎖骨、胸、臍、太もも、デリケートゾーンもだ。アニスの身体中がセラの涎で濡れている。少しずつ、魔力を舐め取られているのが分かる。どうもセラはアニスの魔力が気に入ったらしい。こうしてずっと小さな舌を肌に這わせて、汗と一緒に魔力を摂取している。
モウセンゴケ、という食虫植物を思い出した。
前世の記憶の片隅にそんな植物の知識がある。
食虫植物に特別興味があるわけではないので、粘液で獲物を捕らえて消化吸収する植物という程度にしか知らないが、セラの雰囲気や粘液を出して捉えられている自分の状況が、モウセンゴケの捕食を彷彿させた。となると、自分は囚われた虫といったところだろう。
「一番美味しいのはどこかな? 脇とかどうかな? くすぐったい? あはは、可愛いね、アニスお姉ちゃん。もっと感じて。いっぱいお汁出してね、ぺろぺろ」
「く……う……変なとこ、舐めないでよ」
「変ってどこ? お姉ちゃんが気持ちよさそうにしてるところを舐めてるんだよ。乳首なんかも好きだよね?」
「好きじゃ、ない……ん、んんッ」
「嘘つき。こんなにビンビンにしてるのに」
「きゃッ、あ、んんんッ!」
乳首に犬歯を突き立てるセラ。強い刺激にアニスは思わず仰け反ってしまった。そんなアニスの様子を窺いながら、セラは舌先でさらに乳首を舐め続ける。
「やめ、て、あふ、ぅ、乳首、舐めるの……いや、あ、あ、ふぅぅ♡」
「乳首好き? 乳首もっと舐めてって言って?」
「ふう……う、んん……くぅ」
アニスは首を横に振る。
弱々しい抵抗は、かえってセラの嗜虐心を煽る形となった。
「乳首は嫌なんだ。じゃあ、こっちはどうかなぁ?」
「あ……ダメ、そこはッ」
セラはしゃがみ込んでアニスの股間に顔を寄せる。
充血したマンコがセラの前に広がる。むわっとした女の香りを嗅いでセラは舌舐めずりをした。
「お姉ちゃんの魔力が垂れ流しでもったいない。いただきまーす」
「やめッ、あふぅううう♡」
セラの口がアニスのクリトリスを吸った。
その甘い刺激は乳首の比ではなかった。
腰が引けて、くねくねと尻を振ってしまう。
「お姉ちゃん、逃げちゃダメ。もう、悪い娘なんだからぁ。れろぉぉ」
「んひッ、何して、入って、くる、ちょっと、それは、な、何? 何が、あ、ひゃあああ♡」
セラの舌が伸びてアニスの膣内に入っていく。どれだけ腰を振っても逃げられない。膣の中をねっとりと舐め回されて、愛液を魔力と一緒にしゃぶり出されている。
アニスは嫌々と首を振る。快感から逃げようと必死だ。それでも、火照った身体は焼けるように熱くなり、快楽とともに魔力が抜け落ちていく。分泌される愛液をセラはじゅるじゅるとわざと音を立てて吸い出している。
「お姉ちゃん、すごいいっぱい出てるよ、エッチなお汁がほら、糸引いてる」
「いちいち、言わないで……くぅ、ふう……うう、何か変、何をしたの」
「お姉ちゃんの弱々おマンコの中にちょっと《しびれ薬》を塗っただけ」
「しびれ……にゃに……そりぇ……んお♡ お!? お、お腹のおく、ヒリヒリすりゅ、ぅ、ぁ♡」
呂律が回らなくなる。痺れ薬が全身の筋肉を弛緩させているのだ。特に塗り込まれた膣内は深刻だ。
「おマンコがゆるゆるになって、お汁がいーぱい出てくるよ、ほら、ほら、ほらぁ!」
「い、きゃああああああ♡ しびれ、しびれてるから、膣内、かき回さないで、あ、あ、ああん♡ 電気、ビリビリ、すりゅ、あ、変なの来てるからぁ♡」
本来マンコが緩いというのはマイナスだ。男との性交についてはだ。だが、セラはアニスから多くの分泌液を吸い出そうとしているので、マンコから愛液が垂れ流しになっている状況は望ましい。もちろん、それ以外の汁でも何の問題もない。
「れろれろれろれろれろれろ、ほら感じてる感じてる。おマンコの中からどんどの出てくる。甘い蜜。魔力と一緒に垂れ流し」
「ひぐ……んあああああ! 魔力出る♡ 吸われる♡ セラちゃんに、全部♡ おほおおおおお♡」
「気持ち良くなれ♡ イケ♡ 終われ♡ 魔力出せ♡」
「いやあああああ! ヤダヤダヤダ、もう無理、魔力、限界だからぁああああ♡ ぃ、イグ! んお♡」
ポルチオを責められたアニスは抵抗空しくオーガズムに襲われる。魔力ががくんと抜けていく。快感がこぼれ落ちた魔力の穴を埋めるようにアニスに多幸感を与えてくる。味わってはいけない快感だ。一方的な陵辱で快感を感じているという事実がアニスを打ちのめす。
「ちゅーちゅー、れろ……れろぉ、涎も美味しい♡」
濃厚なディープキス。セラの涎は植物のモンスターだからか甘い蜜の味がした。アニスの口の中を舐め回したセラは、アニスのマンコに指を入れてくちゅくちゅをかき回す。
「あッ、あう……んああ、もう無理……休ませて、限界……ふう……んあ……あ、あ、あ、イクッ、あ、イクから、ん、んふ、あ♡ あ♡ ああん♡」
指だけでアニスはイッてしまうほど敏感になっている。
「お姉ちゃん、まだ全然だよ」
「な、なんで、もう十分、でしょ」
「何言ってるの。お姉ちゃんからはもっといっぱい魔力を吸い出すよ。限界の限界の限界まで、ずっとね。それに、まだしゃべる余裕があるんだもん」
「く……ぅ……」
「じゃあ、もっとお汁出して。ほら、まだ出してないのがあるよね」
「これ以上、何をするって言うのよ……」
「おしっこ」
「へ……え?」
「わたしは植物族のモンスターだからお水で魔力を吸い上げるの。お姉ちゃんのお腹に溜ったお水。全部、わたしの栄養にしたいなぁ」
「じょ、冗談じゃ……ない……そんなこと、ぉ、う……んん!」
粘液で滑る触手がアニスのマンコを舐める。そして、愛液を啜りながら膣内を犯す。
「お潮だけじゃなくて、おしっこも全部出せ♡ お漏らししろ♡ ほら、尿道ペロペロしてあげる♡」
「あッ、あッ、あーーーー♡ ダメ、ダメダメ、それ、ふぐ♡ う、うううう♡ ほんとに、ダメ、だから、弄っちゃ、ダメ♡」
「いっぱい溜ってるのが分かるよお姉ちゃん。ずっと出してないもんね。いいよ、思い切り出してすっきりしちゃえ♡」
「やめて、やめて、待って、いッ、く……んく、ううぅ♡」
セラの刺激に促されて、アニスの尿意が高まっていく。
《しびれ薬》でマンコ全体で力が入らないのも相まって、尿意を堪えることができない。
今、アニスが必死に抵抗しているのは、偏に意地だ。
意地を張って抵抗して、必死に尿道を締めている。ところが、尿道口を触手が舐め回す。早く漏らせと急かしてくる。最悪なことにアニス自身の尿意もまた、排尿を急かしている。快楽と羞恥と排尿本能で頭がどうにかなってしまいそうだ。
(嫌だ、こんなところで、言いようにされて、こんな、恥ずかしいこと)
歯を食いしばって精神力を振り絞ってアニスは耐えに耐える。
「強情だなぁ。じゃ、もう無理矢理掻き出しちゃうおうか。このちっちゃい触手で」
「な、何を……」
「ただの触手だよ。今までのよりもずっと細いだけ。これで、アニスお姉ちゃんの強情な尿道口を開いちゃいます♡」
「なぁ!? な、待って、ダメ、そんな!」
腰を振るアニスの無駄な抵抗を触手は許さない。
立ち上がる葉の表面に数え切れないほどの毛が生えている。その一本一本が、髪の毛ほどの細さの触手だ。その葉がアニスのマンコに貼り付く。無数の触手がざらざらとクリトリスやマンコの入り口を撫で回す中、その一部が尿道口に突き刺さる。《しびれ薬》で弱まった筋力では、触手の侵入までは防げない。アニスの意思は最早意味を成さない。
「いやあああああああああああああああ!!」
ダムが小さな穴から決壊するように、アニスの膀胱は一気に僅かに開いた出口に向けて尿を押し出す。
同時に敏感になった身体は強烈な絶頂を味わうことになった。我慢に我慢を重ねた末の排尿は、恍惚の快感をアニスにもたらした。嫌悪感を掻き消すほどの爽快感。膀胱に溜った分が魔力と一緒にごっそりと抜け落ちて、セラが用意した植物ポットに回収される。ウツボカズラの筒のようなそれは、アニスの尿を含まれる魔力ごと吸収するものであるらしい。
「いーぱい出したねぇ。すっきりした?」
「……ッ」
アニスは悔しげに唇を噛んで目をそらす。
それがアニスにできるせめてもの抵抗だ。
「ふふふ、アニスお姉ちゃん素直じゃなーい。じゃあ、今度は、どうしようかな。もっと、たくさん、お姉ちゃんを味わいたいな」
「もう、離して」
「ダメー。まだ全然、これからだからね。お姉ちゃんの仲間も掴まえてないし。おっぱいにしよう。おっぱい出してよ」
「出ないよ」
「おっぱい大きいのに。お姉ちゃんのおっぱい飲みたいなぁ」
セラは挑発するかのように甘い声音で囁きながらアニスの乳首を舐める。
「出ないものは出ないから。妊娠、してないんだから」
「ふーん、じゃあ、妊娠すればいいの?」
「は、あ?」
「人間ってそういうものなんだね。赤ちゃん、お姉ちゃんが作ればおっぱい出るんだね」
「な、何、考えて、るの?」
アニスは最悪の予感に背筋を凍らせる。
それは、アニスが最も忌み嫌いものでもある。
「マスターから預かったカードにお姉ちゃんと交尾できるのがあったかなぁ?」
「あ、じょ、冗談言わないでよ」
「冗談じゃないよ。おっぱい飲みたいから」
「だ、だ、だからって、モンスターなんか、で、できるわけないでしょ。人間と、そんなの」
「やってみないと分かんないじゃん」
「できないから! 本当に止めて! 絶対ダメだから、冗談じゃない。巫山戯るのも大概にしてよ! この、こなくそ、こんのおおおおお!」
「もー、黙って」
触手がアニスのマンコとアナルに再び侵入する。内側から膣と直腸を拡張されて、アニスは仰け反り苦悶の声を上げる。
セラは麻袋の中を漁りながら、アニスの反応を楽しむように独り言を呟いている。
「でも、確かにお姉ちゃん、人間だしね。妊娠するのも時間が掛かるのかぁ」
「あ、くひゅ……ふう……あぐ、ぅ、当然、でしょ……お、くぅ」
「あ、いいの見っけ」
と、セラが麻袋から1枚のカードを取り出した。
アニスにはカードの知識はないが、この状況で使用されるカードがいい結果になるとは到底思えない。セラはアニスをいたぶり、魔力を吸い出すためだけにカードを使う。効果はどうであれ、アニスに今まで以上の苦痛と屈辱を与えるのは間違いない。
「《DNA改造手術》。知ってる? カードモンスターの種族をまるっと変えちゃう罠カード」
「DNA、改造……?」
DNAという言葉には聞き覚えがある。
アニスの世界では、関わりのない知識ではあったが、そのさらに前――――前世を生きた世界では常識というべき概念だ。
もしも、このカードが差すDNAがアニスの知るものと同じなら、「DNA改造」という単語はもはやか恐怖でしかない。
「そんなに怖がらなくても、大丈夫だよ。わたしたちみたいなカードモンスターじゃないお姉ちゃんには、種族を変えるなんてできないよ。まあ、体質をちょっとエッチにしちゃうくらいが限界だと思うよ」
そう言いながらセラはカードに魔力を込めた。アニスから搾り取った魔力だ。燃料を注ぎ込まれた罠カードが起動して、セラの周囲にカードに描かれたものと同じ人影が現れる。
緑色の手術着を身につけた影が表情もなくアニスに迫る。
「こ、来ないでよ。止めてよ、止めて、来ないで、きゃ、あああああああああああああああ!」
アニスの悲鳴は押さえ込まれてすぐに消える。手術のために麻酔でも使われたのだろうか。触手に拘束されて身動きが取れないアニスが罠カードから逃れることはできない。
アニスの身体にメスが入る。本当に切られるわけではない。カードが生み出した形だけの手術である。メスが肌を切っても傷一つつかない。だというのに、アニスは明確に身体の何かが変わったと自覚できてしまった。
麻酔から醒めたアニスは、それまでと変わらない姿勢で拘束されていた。
目で確認できる範囲で変化はなく、全身が酷い倦怠感に支配されている。
「もう起きた? 早いね。終わってから二、三分くらいしか経ってないよ」
「わたし、どうなった、の?」
セラがアニスを見上げている。幼い顔に狂気を浮かべて、舌舐めずりをしている。捕食者の目だ。
「手術は成功したよ。ほら、こうして」
セラがアニスの乳房を掴み、ぎゅっと搾る。
「う、あッ、くぅぅ♡ あああ♡」
アニスの口から甘美な苦悶が漏れ出る。今まで以上に胸が痺れる。痛みと快感が同時に押し寄せて、セラの手の平を白く汚した。
「あ……嘘、そんな」
信じられない物を見たとばかりアニスは目を見開く。
セラは手の平についた白い液体を舐めて満足げに微笑む。
「甘いね、アニスお姉ちゃんのおっぱい」
「ち、ちが、そんな……!」
「違わないよ。アニスお姉ちゃんは、おっぱいが出る体質になったんだよ。人間にできるのはここまでだけど、これでアニスお姉ちゃんからいっぱい魔力が吸い出せるようになったね」
アニスの大きな乳房をセラが乱暴に搾る。ぴゅ、ぴゅと母乳が吹き出た。おまけに言葉にできない快感が頭に響いた。
母乳が出ることに恐怖でもなければ羞恥でもない、快感を覚えてしまっている。敏感になった乳首がさらに強い性感帯になり、母乳が出る刺激だけでイキそうになっているのだ。
「ふふーん、それじゃお待ちかねのおっぱい、いただきます」
「ひぃ、あ、吸っちゃ、やめ、へ、ああああああああああああああ♡」
セラが乳首を吸い、母乳を吸い出す。赤ちゃんが母に甘えるようにちゅうちゅうと。同時にマンコとアナルを犯す触手が粘液を塗りたくりながら体内を蠢く。
「ふぎいいいいいいいいいいい♡ お、おおおおお♡ イグ、おっぱい、吸われて、魔力、抜ける、ひぐ、イグ、身体がおかしく、なるううう♡」
身悶えしながら、穴という穴から魔力が吸い出されていく。無力化していく自分を感じながら、入れ替わりで快感を叩き込まれている。
「き、気持ちイイ……気持ちよく、なっちゃう、やだぁ」
「ふふ、いいよ、なって。お潮もおしっこもおっぱいも垂れ流して、魔力吸われて、気持ちイイを覚えて、おかしくなっちゃえ」
「う、お、んおおお♡ しゅわれ、てる、いっぱい、いっぱい、わたしの魔力、お、お、んああああああああ♡」
ぐるりとアニスの瞳が反転する。
快感が強烈すぎて処理しきれなくなったのだ。
気絶してもアニスの魔力源としての役割は終わらない。膨大な魔力を持つ彼女をセラが解放するはずがない。乳首に触手を吸い付かせ、マンコとアナル、そして口にまで触手を挿入して、魔力を徹底的に吸い上げる。ビクビクとイキ続けるアニスの肌を恍惚の表情で舐めていると、地表に張り巡らせた探知網に反応があった。
「ようやく次のお姉ちゃんだ」
アニスが一番の魔力源だ。あと二人だが、ステラはセラの獲物ではないので狙えるのはティアナだけだ。
マスターから預かった事前情報では、ティアナはアニスほどの危険性はない。あくまでも事務面での優秀さが特筆されたヒロインだ。戦えるが魔力量的にもアニスの代替にはならない。餌としての価値は高くないが、この世界の人間を何人も捕食するよりはずっと効率が良い。
召喚されて、いつかはカードに戻る身ではあるが、自我を持った今このときは本能に従って敵を喰らい尽くしたい。
召喚者の悪意に染まったセラは、来る獲物を捉えるためにアニスを地下に残して地上に出て行った。