異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話 作:もう万体
愛らしい少女だとマシュは思った。
そして、同時にそれが見た目だけであることも分かった。
彼女が内包する神秘――――マシュの世界の観点ではあるが、それはまさに神霊級である。まさに規格外の存在であり現代の魔術師の基準で彼女を語るのは困難であろう。
ヒロインは数多の世界を生きた数え切れない女性たちが無作為にこの世界に召喚される。彼女のような超越存在もまた、その例に漏れないのだ。
トラムが人好きのする表情で歩み寄ってくる。自己紹介を求められたので、各々が名乗って握手をした。
「そうなの、あなたがハルカさんね。それから、スピカさんとマシュさん。ええ、皆さんのことは知っていましたよ。ミコトさんのトークンが持ってきてくれた手紙に書いてあったわ」
「トラムさんは、マオさんとは……」
「直接会うのは十年ぶりかしら。使い魔を通してお話は何度もしているのだけどね」
「十年ですか。そうすると、マオさんがまだ子どもの時ということですね」
「そうよ。まだ、ほんのこれくらいの時」
トラムは自分の胸元で手を水平にかざす。
そこが当時のマオの身長を表しているのだろうか。
「トラムは昔から変わらないな」
「それはそうよ。亜神だもの。千年、二千年じゃ外見なんてそうそう変わらないわ」
お茶目にウィンクしてみせるトラムだが、時間のスケールが違い過ぎて何の冗談だと思ってしまう。少なくとも、人間のマオやハルカ、マシュは百年も生きられればいいほうだ。スピカは神騎なので、もしかしたら彼女に近いかもしれない。
彼女が規格外のスペックを持っていることは分かった。だが、マシュにはそのことで一つ疑問が生じた。
「トラムさんもヒロインということですよね。でも、マオさんにお仕えしているヒロインにトラムさんのお名前はなかったような」
マオに仕えるヒロインは、ハルカ、ミコト、立香、マシュ、シオン、スピカ、愛歌である。あおいは直接仕えているというわけではないものの、管理下には置かれている。
国内外のヒロインの動向に目を向けるのは、統治者の基本である。特殊能力の有無だけではない。彼女たちがその半生で育んだ価値観すらも、要注意事項として扱わなければならない。
マシュがマオに仕えたのは、比較的最近である。それでも、ノワールに居住するヒロインの名前と顔は把握している。
「トラムは、ノワールのヒロインという扱いではないからな」
「そうなんですか?」
「そもそも、ここはノワールじゃないだろう」
「あ、確かにそうでした」
ノワールの国境は、双子の塔までである。その先は、国外という扱いだ。マオがミコトと共同で張った対ヒロイン用の結界も、ここには届いていない。
かつて、この地はサントルージュと呼ばれた地方である。ノワールとは頻繁に人が行き来し、活発な経済活動が行われていたのである。
そうした経済活動も千年前の大戦争で町が灰燼に帰してからは途絶えてしまった。今では荒れ果て人跡未踏の魔獣がひしめく大森林と化しており、これを開拓し、整備するコストを考えれば、支配者がいないからと手出しするのは割に合わない。
ノワールが領地を接していながらも、南下しなかったのは、この大自然に挑む地力がなかったからであった。
サントルージュのほぼ全域が、今や誰の所領でもないし、この神殿にトラムがいることを知る者もマオを初めとするノワールの一部だけである。
では、トラムがなぜ、この荒れ果てた最果ての土地にただ一人で暮らしているのか。
廃墟と緑に覆われたレイヨンの中で、ぽつんと神殿だけが美しく光り輝いている。
この神殿とトラムとの間に、何か魔術的な繋がりがあるのだろうか。
トラム自身の神秘性が高いので、マシュからは神々しい魔力の渦としか認識できず、神殿とのパスがどうなっているのかは分からない。
「ふふ、とりあえず立ち話もなんだから、座ってお話ししない? わたし、人と直接話をするのは、十年ぶりなの。ちょっと、嬉しくなっちゃった」
さらり、ととんでもないことを言ってのける。
この神殿の中で十年も過ごしてきたということか。
それも一人で。誰とも顔を合わせることもなく。
「マオ君。頼んでいた美味しいお菓子は、持ってきてくれた?」
「もちろん。多すぎるくらい持ち込んできてやったぞ」
「本当!? すぐに食べましょう。ダメにすると悪いものね」
トラムは笑顔の花を咲かせて喜んでいる。
神の如き神性を有しながら、その言動は年頃の少女のそれだ。そのアンバランスさも亜神だからであろうか。
マオたちはトラムに案内されて、食堂にやって来た。
食堂にはテーブルが置かれ、すでに人数分の椅子が用意されていた。
トラム以外に人がいない神殿は、時の流れに朽ちることもなく往時の輝きを維持している。
食堂の床は寄木張りで、磨き抜かれた真っ白な壁を黄金の装飾が彩っている。絵画も色あせることなく、描かれた当時の彩色を残しているようである。
「この部屋はどうやって維持しているんだ? 俺がトークンを送るようになったのは、ここ二、三年のことだろう?」
「この神殿は、常に『現状維持』を続けているのよ。誰にも汚せないし、壊せない。今を遥か未来まで固定することで、サントルージュの聖域を守っているのね」
「人も近づけない土地を聖域にして何になるんだか」
「人が戻ってくるはずだったのよ。昔のわたしたちの考えが甘かったとしか言えないわね」
悲しげに表情を曇らせるトラム。
こうして見るとその美貌は人間離れしているものの、喜怒哀楽がはっきりしていて、親しみやすい。亜神という種族は、マシュやハルカたちの世界に馴染みがないが、この世界ではそういった人間ではない上位存在というのであればスピカの例もある。この世界に召喚されたヒロインの出自は様々で中にはまったく人間ではないヒロインも珍しくはないのだ。
そんな人外の超越種であっても、甘味には目がないようで、トラムは目を輝かせてマオが持ち込んだ菓子の数々を見つめている。
「これが、巷で噂のドーナツなのね」
「噂なんてここに届いてるのか?」
「ふふふ、亜神だからね。山一つ向こうに使い魔を走らせるくらいは造作もないことよ。でも、美味しいお菓子としか聞いてなかったし、手に入れる手段もなかったから、気になっていたのよ」
マオが持ち込んだ菓子は、あおいの店から取り寄せた各種ドーナツとチーズケーキである。
甘い物が食べたいというトラムの要望に添った選択だ。
「こんなにたくさん甘味が、すごい、夢みたいだわ」
「神様が喜んでくれて嬉しいよ」
「ハーブティーは合うかしら。わたしが出せるのはこれくらいでごめんなさいね」
「トラム手製のハーブティーってだけで、一生分の幸運を使い果たした感じだな」
「大げさ。ん……美味しい」
ドーナツを囓ったトラムは相好を崩した。よほど気に入ったらしい。
トラムの様子に一安心したマオはハーブティーに口を付ける。
清涼感のある香りと味わいが舌の上に広がって、頭が冴えてくるような気がした。
「いいハーブだな」
「そこで育てたのよ」
トラムは窓の外に目を向ける。
小さな庭園があって、ハーブが植えてある。
「トラムさんが、一から育てたのですか?」
と、ハルカが尋ねる。
「もちろん。今はマオ君のおかげでトークンが手伝ってくれているけど、以前はわたし一人だけだったからね」
「お一人、ですか」
「そう。でも、マオ君が来てくれて助かったわ。おかげで、わたしの問題も解決しそう」
トラムは、三個目のドーナツに口を付けた。
表面がシュガーコーティングされていて、中にはカスタードクリームが詰まっているというとびきり甘い一品である。
「トラムさんの問題」
「マオ君に伝えているから、もう大まかには聞いていると思うけれど、大きく二つ。一つはわたしの封印。もう一つは、魔獣の存在」
トラムは指を二本立てて、マオを呼んだ理由は改めて語った。
ハルカはこの地に来て長い。
ノワールに伝わる伝説も歴史も、人並み程度には知識がある。
トラムという名前も、伝説上の人物として知っている。
ヒロインの中には同一人物が召喚されることもあるし、異なる時代に同一のヒロインが現れることもある。
トラムはそうした同一の別人ではなく、千年前に活躍した「英雄トラム」と地続きの存在だ。
「マオ君からいろいろと聞いていたけど、英雄とか伝説とかって持ち上げられると恥ずかしいわね」
「千年前に、この地で大きな戦争があったとか。伝説だと、トラムさんはこの戦いで、天に帰ったと伝わっています」
「実際は地の底にいたんだけどね」
どこまで本気か分からないブラックジョークを飛ばすトラム。千年もの月日を封印された状態で過ごすというのは、誰一人として想像できない世界の話だ。
「誇張や後付けがあるのかもしれませんが、伝説として伝わっていることが事実だったというのは、驚きです。しかも、その当事者が目の前にいるというのは不思議な感覚ですね」
ハルカはこの世界にやって来てからというもの、この世界の歴史に目を通してきた。自分たちヒロインの置かれている立場や状況を把握するのに、必要だったからだ。
当然、同様の学習はマシュもスピカも重ねている。
純粋な人間ではないスピカや伝説や神話の時代に飛び込んで冒険したマシュに比べて、ハルカの感覚は一般人に近いのかもしれない。
「トラムさんの封印というのは、実際のところ、どのようなものなのでしょうか?」
口を開いたのはマシュであった。
「そうね。わたしの身体を礎にして、この一帯に聖域を展開するっていう封印ね。わたしを封印するためのものではなくて、結界を維持するための楔にするのが目的よ」
「それは……その……」
「簡単に言うと人柱みたいな?」
「全然簡単に言えるようなことじゃないですよ」
言い換えれば生け贄である。それもトラムは生きたまま封印されていたのである。
「ふふ、心配してくれてありがとう。確かに千年は長かったわ。でも、これ自体はわたしが言い始めたことなのよ。千年前、ここで起こった戦争は酷かったわ。わたしたちは何とか敵を退けたけど、損害も大きかった。わたし自身も、もう戦えないってくらいにボロボロだったし」
「そんなに、大きな戦争だったんですか?」
「大陸中を巻き込んだ戦争だったからね。ここでの戦いはその戦争の中の最大の局地戦だったのかな。あの頃のノワールは第二帝都だったから、標的になったのだと思う。わたしは怪我をして、もう無理だって思ったから、仲間に頼んでここに最後の魔法の壁を作った。それが聖域。二度目の侵攻に備えて、簡単にノワールに攻め込めないようにするためにね」
「じゃあ、その後ずっとここにいらしたということですか?」
「そう。それに、すぐに次の侵攻があると思ってたの。その時の時間稼ぎができればいいというくらいのものだったのだけど、結局、敵が攻め込んでくることはなかったわ。こっちに敵の応援が来る前に終戦したから」
そして、終戦後、トラムは伝説となり、ノワールの南方を守護する守護神として語り継がれることになった。
この神殿はトラムを祀るための神殿だ。
トラムを封印したヒロインが設計し、聖域を強化している。トラムに向けた人々の信仰を神殿で収集し、封印と聖域を維持するためである。
トラムは人々を守る礎として、この地で目覚めぬ眠りに就き続けるはずであった。
ところが、想定外の出来事が起こる。
レイヨンに人が戻らなかったのである。
大陸全土を巻き込んだ戦争は、大陸中の人々の生活能力を大幅に制限、停滞させた。発展した技術の多くが失われ、広範囲に不況と飢饉が広がった。
地形が変わるほどの破壊活動が行われた土地に戻ろうとする人は少なく、避難先のノワールでの生活に馴染むにつれて、レイヨンの復興は後回しになっていった。
人がいなくなった後、この地は魔獣の王国になった。
とりわけ危険なヒロインたちの忘れ形見が野生化し、繁殖し、さらに在来の魔獣とも交配を重ねて独自の生態系を形成するようになるころには、ノワールの騎士団ですらレイヨンに足を踏み入れることができなくなっていた。
結果、トラムはただ一人でこの封印の地に取り残されることになった。
そして、千年の月日が流れ、マオがこの地にやってきた。
十年前のことだ。
マオの力で、トラムの封印が綻んだのである。
トラムの封印はヒロインの力によるものだ。マオの力でそれを無効化するのは不可能ではない。それでも、十年前はまだ目覚めたばかりの力で、トラムを完全に解放することはできなかった。
だが、今は違う。
成長し、ヒロインを一方的に陥落させるまでになった力は絶対的である。トラムの封印を解いて、千年の眠りから目覚めさせることは容易であろう。
そのために、マオは危険を承知でここまでやって来たのである。
護衛を任せるに足るヒロインが揃ったことや、領主を継いでからの内憂の整理が付いたことで、首都を離れても大丈夫だと判断できたことも大きかった。
「マオ君が約束通りに来てくれて、わたしはけっこうほっとしたのよ。十年も放っておかれたわけだし」
「放っておいたわけじゃないぞ」
「そうね、ふふ」
吹き出したトラムは、ドーナツの最後の一口を頬張った。
口いっぱいに広がる甘味を堪能し、噛み締めていた。
「トラム、魔獣の話は?」
「そうそう。それも大事なこと」
唇についた砂糖を舐め取って、トラムは神妙な面持ちとなった。
「この辺の魔獣はもう見たかしら?」
「ここに来る前にワイバーンを見たよ」
「ワイバーンは気をつけたほうがいいわ。人を見ると優先的に襲ってくるから」
「やっぱり、人を食うのか?」
「人を食べることもあるけど、ここのワイバーンの祖先が人を襲うように指示されて召喚された竜だからね。本能的に人を襲うのよ」
「戦争のために召喚された使い魔ってヤツか」
「マオ君なら大丈夫だと思うけどね」
トラムはマオの能力に全幅の信頼を寄せている。
それがヒロインに由来する力ならば、人外の生物にも効果は及ぶ。マオの能力を使い魔を先祖に持つワイバーンを弱体化させることは、ミコトのトークンを通じて実証済みであった。
「まあ、あのワイバーンくらいならノワールの騎士でも対処はできる。数と装備は必要だけどな」
「ノワールの騎士さんも心強いのね。安心安心」
「トラムが気にしてるのは、あんなのじゃないんだろう?」
「うん。もっと強くて怖い正真正銘の怪物よ」
△
荘厳な神殿の建造は千年も昔に遡る。
歴史ある古い都であるパラディクレールにも、千年を数える建造物はあるものの、ブラ・ダルジャン神殿のような大規模かつ魔術的意味合いを持たせた建造物は例がない。
神殿内部の空気感は、異質なほど澄んでいて、神気に満ちている。
もともとトラムは亜神という、元の世界では神に準じる力を持つ超常の存在だ。
そのトラムを祭神とする神殿は、まさにトラムを称え、トラムを思うための建物であり、同時にトラムをこの土地に拘束する静かな牢獄でもあった。
その牢獄の扉が少しずつ開かれようとしている。
トラムの友人が丹精込めて作り上げた聖域の要となる封印が、マオの力で解けていくのだ。
その感覚を魂の内側で感じながら、トラムはマオに手を伸ばす。
共に裸だ。
唯一、トラムの銀の義手だけが月明りを受けて煌めいている。
「わたしの腕、冷たくない?」
「不思議と温かいよ。お湯で温まったからかな」
マオとトラムは同じ湯船に浸かっている。
力から湧き出す天然の温泉を引いた湯船である。
本来は、祭神のトラムに仕える聖職者が身を清めるために設けたバスルームだ。
十人は優に入ることができるであろう大きな石の浴槽に漫々と湛えた天然温泉から立ち上る湯気に、トラムの白魚のような肌がよく映える。
青白い月光を吸ったブロンドの髪が濡れた頬に張り付く様も、童顔のトラムに大人びた魅力を上乗せしている。
伝説に名高い銀の義手。
魔王軍幹部の竜王を討ち果たし、ノワールを救った伝説に直に触れて、マオの感激も一入であった。
「意外に柔らかい」
「手の平はね。固かったら剣が持ちにくいし」
「確かに」
神秘の力を用いない技術では、自由自在に動かせる義手を作ることはできない。
まして、鎧そのものの義手の運用方法など想像もできない。
「感覚もちゃんとあるのよ。だから、マオ君のもちゃんと掴めるの」
「ん……」
「マオ君のは、固くなってるよ♪」
どこか楽しげな様子でトラムは湯の中で大きくなったマオの息子を銀腕で握った。
子ども時から伝え聞く伝説の神様が、伝説に彩られた銀の腕で自分のペニスを扱いていると思うと、言い知れぬ興奮に襲われる。
「気持ちイイ?」
「気持ちイイ」
「そう、よかった。こういうの、経験なかったけど、やってみるものね」
「経験、ないのか?」
「千年間、ほとんど意識だけで神殿の中を漂っていたのよ? その前は戦争続きでそれどころじゃなかったし。だから、男の子がこんなに近くにいるのも初めてなんだから」
それは、大変に光栄なことだ。
トラムの義手に擦られるペニスが水中で脈打つ。
一定のリズムで棹を義手が扱き、腰がひくついてしまう。トラムから漂ういい香りが、ますますマオを興奮の渦に巻き込んでいく。
それを知ってか知らずかトラムは身体を寄せ、マオに密着する。マオの胸に頬を擦り、それから乳首にキスを落とす。
「ちゅぱ……れろ……男の子でも、乳首感じるんだって、聞いたことがあるんだけど、れろれろ、こんな感じ?」
「そんなこと、誰と話すんだ?」
「もちろん、一緒に戦った仲間よ。恋バナくらいするのよ」
「神様でも?」
「もちろん」
微笑んで、トラムは奉仕を再開する。
舌先でチロチロと乳首を舐める。左を舐めて、右を啄む。ペニスを扱く手を止めることもない。
「ちゅ……ちゅ……れろ……れろ……れろ……ちゅ……んちゅ……ちゅ」
小さく音を立てて、トラムはマオの胸に何度もキスをして舌を這わせる。
そんなトラムの頬をマオは撫でた。
傷つきやすい宝石を扱うように優しく、柔らかい頬の感触を確かめる。
亜神といいながらも触れる感触は人間と変わらないように思う。
トラムの頤に手を滑らせ上を向かせた。
「あ……」
と、トラムは吐息を零し、目を瞑った。
そっと口付けを交わす。
やはり唇の弾力も人間と同じだ。
トラムは緊張しているのか唇が震えている。
「トラム、口開けて」
「え、ええ……あ、んんッ」
トラムの口内に舌を差し入れる。
初めてのディープキスだ。
乱暴に口を味わってもいいのだが、今はトラムの気持ちを乗せるのが大事だ。
熱いトラムの口内を舌でゆっくりと舐める。
「あ……ん……ちゅ……れる……ちゅ……んん、ふぅ……れろ……」
トラムはすぐにマオの舌を受け入れた。
舌を吸い、舐め返し、マオが口内で舌を動かしやすいように口を開ける。
キスに没頭しながら、マオはトラムの身体を抱きしめる。
「ふう……んふう……ちゅ……ちゅ……ちゅぱ……れろ……んちゅ」
トラムの唇の涎で汚し、舌の柔らかさを堪能する。吐き出す吐息すらも味わいたいと思うほどの熱量で口づける。
「ん、ん、んん……ん、はあ……はあ……あ、マオ君、もっと」
ちゅ、とトラム自らキスをする。
「もっと、抱きしめて……マオ君」
トラムの瞳には隠しきれない情動の火が灯っている。
自ら進んでマオに身体を許したのは、封印を解きたいからというだけではない。
トラムを縛る封印は強力だ。それでも今のマオならば解除は簡単にできる。肉体を重ねるのは、都合のよい言い訳でしかない。マオとそしてトラムの両者がそれを分かって、肌を合わせた。
「十年、待ったんだから。ん、ちゅ」
今度はトラムの舌がマオの口内に入ってくる。
マオと出会った時、マオはまだ子どもだった。トラムにとっては数え切れないほど出会ってきた子どもの一人に過ぎないはずだった。
だが、千年の月日はトラムの精神に想定外の負担を強いていた。
誰も訪れずに放置されて、どれくらい経ったのかも分からない神殿の中でトラムは夢見心地のまま意識だけの存在となって漂うしかなかった。
偶然にもマオがやって来て、そこでやっと自我を取り戻し、肉体を一時的に解放するまでに至ったのもつかの間、マオはノワールの騎士に連れられて立ち去ってしまった。
それから、また一人で過ごすことになった。
マオが連絡を寄越す前にさらに数年を要したからだ。
マオが来てからの十年は千年の月日よりも明確に苦しさを募らせた。
意識があるというだけで自由はなく、毎日同じ景色の繰り返し。会話をする相手もおらず、聖域の外は魔獣がひしめく野生の王国である。
おまけに千年前に再建を夢見たレイヨンは、すっかり放置されて風化に任せた遺跡となっていた。
意識が覚醒しただけで、大きな行動制限がかかっている状態である。人恋しさで頭がどうにかなってしまいそうだった。
封印からの解放を望むようになるのは、当たり前のことであった。
この十年はマオを待ちわびるだけの十年だった。
軋んだ心はマオとの連絡だけを清涼剤とし、いつしかマオに想いを寄せ、約束通りに解放しに来てくれることを待ち続けた。
「もっと、もっとぎゅってして。離さないで、んちゅ……れろ……」
トラムは甘えるように何度も口付けをせがみ、互いの唇が涎でベトベトに濡れた。
「トラム、やろう」
「うん。来て、いいよ」
トラムははにかみながら結合を了承する。
トラムからすれば、望むところだ。
この十年、トラムを苦しめ続けてきた寂しさという猛毒は、他者に依存することで軽減する。抱きしめられるよりもずっと深く繋がりたいという思いは、もはや止めようがない。
トラムの銀の義手がペニスを掴む。
固く屹立するペニスに跨がったトラムは、ためらわずに腰を落とした。
「ふぅ、あッ、ん、ふ……ああああ!」
マンコを押し広げるペニスの感覚にトラムは甘い嬌声を上げた。わんわんと浴室に響くトラムの喘ぎ声にマオのペニスはさらに興奮させられた。
「ふぐ……ん……ふう……あう」
「トラムの膣内、キツいな」
「マオ君のが大きすぎるの。う、んんぅ……ふうぁ♡」
しっかりと腰を下ろしたトラムは、ゆるゆると腰を前後させる。ペニスを咥え込んだマンコは、うねり、吸い付き、ペニスの棹から亀頭までを満遍なく締め付けてくる。
「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、んん♡ ふはぁ、ああ、ぅ、ぅ、ん、あふぅ♡ はあ、はあ、ああ、んんん♡」
ちゃぷ、ちゃぷと水面が揺れる。
トラムの腰を抱き、マオは垂れ懸かってくるトラムを受け止める。
小柄な上に水中ということもあって、トラムは思いのほか軽い。それでも、彼女の膣内はしっかりとペニスを飲み込み、食いついて、奥深くまで挿入されている。トラムが腰を動かすたびに、甘く蕩ける快感がマオを襲った。そして、それはトラムも同じだ。瞳を情欲に潤ませて、トラムは激しくマオを求めた。
「トラム、イクぞ」
「いいよ、来て、んッ」
トラムの中で果てる。それがたまらなく魅力的に思える。トラムを抱きしめ、腰にひときわ強く力を込めた。ペニスが脈動し、精液が湧き上がる。
「あ、んんん~~~~~~~~♡」
トラムの膣内で、マオは射精した。
何度も脈打って、精液を流し込む。トラムの膣は精液を求めて、収縮を繰り返し、甘美な快感でペニスにさらなる射精を促した。