異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話 作:もう万体
断続的に地面が揺れて、天井から埃が落ちてくる。
夜の闇を青白い剣の輝きが駆け抜けて、ムートーを斬り付ける。山のような巨体が咆哮し、暴れ、その腕や牙をトラムは掻い潜る。体格の差は、歴然である。トラムの白銀の腕と剣の光は、遠く離れた神殿からでも観測できるが、その光はムートーの巨体と比べるとあまりにも小さい。
まさに、人が山に挑んでいるかのようだ。
千年前、この戦いを制したトラムが伝説になるのも頷ける。
地上の敵はスピカとハルカで抑えられている。スケルトンやゴースト、ウェアウルフといった夜の魔物たちは、決して強い類の魔物ではない。スピカとハルカの連携で、十分に対処可能だ。
「マシュ、いけるか?」
「大丈夫です!」
盾を構えるマシュにマオが魔力を送り込む。
マオのヒロインの能力を無効化する力をマシュの盾を通じて放射する。これが襲いかかってくる魔物たちに効果を発揮した。
影のヒロインの影響で神殿を目指す魔物たちは、マオの力を浴びてたちまち本来の意識を取り戻す。ゴーストは形を維持できなくなって消滅し、スケルトンもばらけてただの骸骨に成り果てる。そして、ウェアウルフやワイバーンは、生物としての生存本能からスピカとハルカとの戦闘を避けて、我先にと逃げ出す。向かってくる戦闘意欲のある魔物だけをスピカとハルカは狙い撃ちにする。
マシュの盾はどうも聖性があるらしい。
夜の魔物にとってはそもそもマシュの力は天敵なのだ。
そこにマオの力が上乗せされるのだから堪らない。
それでも、逃散したそばから新手がやってくる。
マシュを基点とした結界で神殿を全体を守っているが、それも魔力が続かなくなればそこまでだ。
苦戦というほどではない。しかし、現状維持が精々で決め手がない。あるとすれば、太陽を待つくらいだろう。
少なくともこの地に集まったワイバーン以外の魔物は陽光が苦手だ。朝日まで持ち堪えれば、反撃ないし撤退の目処も立つだろう。
朝日が昇るまで、まだ七時間はある。少人数での持久戦となるのは、さすがに想定外だった。
「ん……く」
ヒルドがマオの腕の中で身じろぎした。
落ちていた意識が快復したのである。
「あ、あたし……」
「おう、目が醒めたか。悪いけど、取り込み中なんだ。もう少しじっとしててくれ」
マシュが額に汗の粒を浮かべて白亜の城を顕現させた。神殿一つを覆う巨大な城が、触れた魔物を退散させる。これで稼げる時間はどれほどか。宝具発動に必要な最低限の魔力で城を顕現させ、マオの魔力を通してヒロインの害意を無効化することで防御力を向上させる。これでも、マオの能力を上乗せしているので対ヒロイン用の守りとしては鉄壁だ。
「ああ、そうか。あたし、あいつに石にされて……あれ、どうして」
「石化なら俺が何とかした」
「何とかって……ほんとだ。手、動く」
ヒルドは石化したはずの自分の左手を見て、身体が元通りになっていることを確認した。
「石に、なってない。戻ってる……じゃあ、本当にあなたの力って」
「ここだけの話ヒロインの力なら、今まで無効化できなかったことはないんだよ。これ、一応、秘密だからな」
マオは、ヒロインを食らう、と予言された忌み子である。ヒロイン信仰が盛んな国で、そのような予言をされた日には、どんな白い目で見られるか。マオの前半生は、決して安穏としたものではなかったのである。
「じゃあ、あたしは間違ってなかったんだね」
「どうかな。とにかく、ここを切り抜けないと先はないぞ」
「分かってる。あたしも、手伝うよ。かっこ悪いところばかり見せてられないからね……」
ヒルドは身体を起こした。それでも立ち上がろうとするとふらつきがあって、マオに支えられなければならないくらいだ。
影のヒロインの石化に抗った結果、魔力の大部分を消耗している。サーヴァントにとってこれは、極度の飢餓状態、栄養失調とも言うべきもので、下手に動けば消滅に繋がる。
「ねえ、マオさん。あなたは、あたしと仮の契約をしてたよね」
「ああ」
「じゃあ、あたしにもっと魔力をちょうだい。そしたら、宝具で一気に片付けるから」
宝具はサーヴァントの切り札だ。一対一で効果を発揮するものから、広範囲を影響下に収めるものまで多種多様である。
ただ、どれだけ弱小宝具でも、それは神秘の結晶であり、常人は疎か高位の魔術師ですら及ばない奇蹟に近い効果を発揮するのが常である。
今、マシュが展開している白亜の城も宝具である。これに匹敵する力であれば、確かに状況を変える一手になり得る。
マオに拒否する理由はまったくなかった。
「ありがと」
ヒルドはマオの頬に手を添えると、背伸びをするようにしてキスをした。
ワルキューレの唇は人間のそれと同じ感触だった。
温かくて柔らかく、少し湿っている。
契約によって結ばれるマスターとサーヴァントの絆がより深く密接に絡み合う。ヒルドに送り込まれるマオの魔力量が増加して、ヒルドの霊器が補強される。
ヒルドの唇を軽く吸いながら、マオは舌でヒルドの上唇をなぞる。ヒルドはその意を汲んで、口を開き、自ら舌を伸ばしてマオの舌を迎え入れた。
「ん……んちゅ……ぁ……ん……ん……れろ……ちゅ」
ヒルドはおずおずとマオの舌を吸った。
ぬるぬるとしたヒルドの舌を舐め、上顎から内頬までねっとりと愛撫する。ヒルドはワルキューレの本能からか、すぐにこれを受け入れて自分から舌を絡ませる。
涎が溶け合い、魔力とともにヒルドの身体に吸収される。しっかりと細い腰を抱き締めて、深々と繋がりあう。
「はあ、んふう♡ はあ、はあ、れろ、れろ、れろ……あ、ん、ちゅ……はあ、ヤバい、ね。これ、ちゅ……んちゅ……れろ……キス、気持ちイイ♡」
ヒルドは瞳を潤ませて積極的にキスをする。興奮しているのか息を荒げながら舌を動かしている。マオの口内にヒルドの舌が入ってきて、歯茎をくすぐってくる。
マオの涎に含まれるある種の媚薬成分がヒルドを恍惚状態にする。この力は敵対関係にあるヒロインであっても、マオに刃向かおうという意欲を削いでいく。まして自ら受け入れようとしている者であれば、効果覿面だ。ヒルドは身体の力を抜いて、口付けに没頭する。
(嘘、ただキスしてるだけなのに、あたし、どうにかなりそう。頭の容量が、溢れる)
「ん……ん……んちゅ……あ、ふあ……あ、ん――――ふはぁ♡」
最後にヒルドの舌を思い切り吸ってから、マオはヒルドを解放した。
ヒルドは惚けた表情を浮かべて、口元から涎の雫を滴らせる。すっかりディープキスに魅了されたと見えて、瞳の奥には隠しきれない情欲の炎が浮かんでいる。
「あの、お二人とも、そろそろ……その、いいでしょうか」
マシュがおそるおそる声を掛けてきた。
魔力供給をしていたというにも情熱的な口付けであった。無論、自分が同じ立場であれば、ヒルドと同じようにマオを求めていただろうから強くは言えない。
「あはは、ごめんね、マシュ」
少しやり過ぎた自覚のあるヒルドは、居心地悪そうに頬を掻く。
キスを通じてパスを太くしたことで、魔力は十分に賄えている。
「よし、これでいける」
ヒルドは自分の髪をさらりと撫でる。すると、淡い魔力光とともに短かった髪が伸びた。先端が跳ねたセミロングが、ヒルドのもともとの髪型であった。
「さっきの神様に髪を半分盗られてたみたいだけど、マスターのおかげで呪縛も解けたよ」
どやらヒルドの髪が短かったのは、襲撃してきたヒロインの影によるものらしい。相手の髪を呪いに使うのはこの世界でも割とポピュラーだ。ヒルドの身体の一部である髪を媒介に、あの女神はヒルドの対魔力や白鳥礼装の守りを簡単に突破していたのだ。
マオの力で、それが解除されたことでヒルドは自分の髪を取り戻したのであった。
「その髪も可愛いな」
「あ……ん……もう……なんか変な感じ」
ヒルドは不意を打たれて頬を染めた。
自分の中に芽生えた強烈な感情の意味を理解できないまま、ヒルドは窓から飛び出す。
冷たい夜気が火照った身体を冷やす。
月明りの下に蠢く無数の魔物の気配を感じる。
ヒルドに気づいたワイバーンたちがヒルドに狙いを定めた。もとより、彼らの第一目標はヒルドだ。ヒルドが外に飛び出せば、自ずと彼らの注意を引くことになる。
ヒルドは不敵な笑みを浮かべた。。
白鳥礼装は問題なく起動している。重力の枷から解き放たれたヒルドの機動力は、ワイバーンの比ではない。以前は魔力不足と疲労でまともに抵抗できなかったが、今、ここにいるのは、その時のヒルドとはまったくの別人なのだ。
ワイバーンの灼熱の息吹が一斉にヒルド目がけて放たれる。
「もう、そんなもの、全然効かないよ!」
白鳥礼装を装備したヒルドに生半可な攻撃は通じない。超高速での飛行能力とBランク以下のあらゆる攻撃を無効化する防御能力という破格の性能を有するこの宝具を前に、ワイバーン程度の火炎で目的を達することなど不可能なのだ。
避ける必要すらなく、ヒルドは火炎の中を突っ切り、すれ違いざまにワイバーンを斬り捨てる。光り輝く槍は、竜鱗を軽々と断ち切り、その命を散らせていく。
「すごく、調子が、いい! これが、マスターと契約したサーヴァントの力!」
凶悪なワイバーンの群れがヒルド一人に翻弄される。
まさに手も足も出ないとはこのことだ。
旋回能力、最高速度、どれをとってもワイバーンはヒルドに遠く及ばない。空中格闘戦で、速度と小回りで有利となるヒルドは、まさに無双の強さを誇った。
ヒルドはワイバーンの頭を蹴って、上昇する。遥か上空から、槍を逆手に持って構える。ひときわ強く光り輝く神槍、
「いくよ。宝具解放!
落雷のようにヒルドの槍が地上に向けて放たれる。
スルーズとオルトリンデが石化した影響で、本来の性能には及ばないものの、その性質は変わりない。その光に触れた邪悪なモノを瞬時に退散させる対魔宝具だ。
光の槍に貫かれたワイバーンの残党が、軒並み墜落して死を迎え、槍を中心に展開された結界の中で、あらゆる魔性は強制的に消滅させられる。神殿に集まったスケルトンもゴーストもウェアウルフも例外なくヒルドの宝具に巻き込まれて消失していった。
■
聖なる結界の気配を背後に感じながら、トラムはムートーの懐深くに飛び込んでいた。
あまりにも巨大な怪獣に対し、剣一本で戦うトラムは明らかに無謀な挑戦をしているように見える。
人間は人間大の野生動物と戦う時ですら、知恵と武器なくしては勝利できない。まして、クジラよりも巨大なムートーに少女が立ち向かうというのは、あまりにも非現実的な光景であった。
「はああああああああああああッ!!」
それでも、トラムの斬撃はムートーを深々と斬り裂いた。雄叫びを上げるムートーの右前腕が、木々をなぎ倒し、トラムを襲う。
「しぶとい」
トラムは額に冷や汗を浮かべてムートーの攻撃を掻い潜る。ムートーはその巨体の所為で、近くを駆け回るトラムを捕捉できていない。人間が蚊や蜂に悪戦苦闘するようなものだろうか。
「傷が塞がっていく。もう、そんなの昔はできなかったじゃない!」
毒づきながらトラムは木々の影に隠れつつムートーの背後に回る。
(やっぱり、わたしの知ってるムートーじゃないわね)
初めからおかしいとは思っていた。いくらムートーが凶悪な怪獣であっても、骨の状態から復活するなどあり得るのだろうかと。
まして、彼女は千年前にトラムが胴体を両断したのだ。千年の月日を経て白骨化した後で、一昼夜のうちに蘇るなどというのは信じがたいことである。
あの巨体は記憶に鮮明に焼き付いている姿そのものだが、かつて戦ったときに比べてずいぶんと弱く脆い。トラムの剣で簡単に傷がつく。おまけに、漂う腐臭。
「アンデッド。ムートー・ゾンビってところかしらね」
自分のいた世界でもドラゴン・ゾンビという魔物がいた。竜族の死体を加工して作られる凶悪な魔物である。今、目の前にいるムートーは、それと酷似した雰囲気を感じる。ムートーの骨を触媒にして、肉を継ぎ合わせた怪物。それが、ムートー・ゾンビだ。
おそらくは、先ほど現れた女神が関わっているのだろう。彼女は死と再生の神の一柱だ。ムートーの骨を使い、強力な使い魔を作り出すことなど造作もなかっただろう。
「本当に悪趣味。早く終わらせてあげないとね」
多くの苦渋を味わわされた相手とはいえ、このような骸に成り果ててはいっそ哀れだ。
早急に打ち倒し、今度こそ終わらせなければならない。
ムートー・ゾンビの瞳が爛と輝く。
「しま……!」
ムートー・ゾンビの右前腕が禍々しい赤色に染まり、地面を叩く。強烈な電磁パルスがトラムを襲い、木々が瞬時に燃え上がった。ワイバーンの炎にすら耐える特殊な進化を遂げたサントルージュの森の木々も、強力なマイクロ波で内部から破壊されることまで想定はしていないのだ。
「あっつ」
じりじりと肌が焼ける感覚に苛まれ、トラムは顔を歪めた。
千年前、数多の都市がムートーの電磁パルスで滅んだ。
ヒロインが持ち込んだ知恵と技術はパンゲア帝国に、産業革命をもたらした。建国から千年が経った頃には、電子工学が発達し、航空機も潜水艦も実用化して久しく、首都カナンには高さ六百メートル級の石の塔が立ち並んでいたというほどであった。
その大半がムートーの電磁パルスによって壊滅した。
電子機器が破壊され、使い物にならなくなったことでパンゲア帝国は混乱し、初動が遅れ、魔王軍の侵攻を許した。
現代まで当時の詳細が伝わっていないのも、すべてはムートーが記録媒体を破壊してしまったからだ。
そして、電子機器を破壊する電磁パルスは、そのまま攻撃にも転用できる。
彼女が発するマイクロ波が、電子レンジのように水分を含むあらゆるものを加熱するのだ。ただの人間が直撃を受けると、どろどろに融解してしまうほどの高威力のマイクロ波だ。軽く火傷をしただけで済んだトラムは、防御力が図抜けているだけで普通は死んでいる。
「マク・ア・ルーイン!」
剣を握るトラムの傷がみるみる癒えていく。自分の戦闘能力を向上させるだけでなく、自動回復能力も併せ持つ、汎用性の高いスキルだ。
(電磁パルスは昔ほどじゃない。右腕しか使えてないからかしらね)
本来は両腕から発する電磁パルスだが、ムートー・ゾンビは右前腕しか使っていない。左前腕は引きずるようにしていて、ほとんど機能していない。その原因は肩にあった。左前腕はゾンビの再生力で腕を繋げようとしているのだが、抉れた肩の傷がいつまでも癒えないのだ。傷を塞ごうと血肉が盛り上がると、砕けて血しぶきをまき散らす。まるで、壊れているのが正しい形だと言わんばかりである。その原因にトラムは心当たりがあった。
「詩歌に感謝ね」
千年前共に戦った戦友の顔を思い出す。
気弱そうで抜けたところのある愛らしい少女だった。
おどおどとしていて、引っ込み思案でありながらも、芯の通ったしっかり者の面もあって、ほうっておけないカリスマ性があった。
戦いにはとても向かない性格に反し、彼女の能力は「万物を破壊する雪を降らせる」というものであった。
その力は絶対的かつ強力無比。
時空すら歪め、問答無用で破壊する吹雪は、ムートーが引き連れた魔王軍の大半を完膚なきまでに破壊し尽くした。
サントルージュの森では至る所に時空の歪みや、引きちぎられた地盤が見て取れるが、七割くらいは詩歌の力によって空間が概念レベルで引き裂かれた痕跡だ。
かつての戦いでムートーは辛うじて詩歌の破壊の雪から逃れた。しかし、それでも左肩だけは雪を浴びて砕かれていた。その影響が今でも残っている。ムートー・ゾンビの左肩はその概念からして破壊されている。
「新たなる輝きの剣」
コストは十分に貯まった。
トラムは剣の力を最大限に解放する。
青い炎が噴き上がり、トラムの性能を著しく強化する。
銀腕で剣の柄を握りしめ、ムートー・ゾンビと相対する。
巨大な山と見紛うムートー・ゾンビの遥か頭上に、ヒルドに抱えられたマオが流星のように舞い上がったのをトラムは見た。
「マスター、この辺!?」
「ああ、もういける!」
ヒルドに連れられたマオは、グローブを填めた右手をムートー・ゾンビに向ける。
ムートー・ゾンビがヒロインの力で動くアンデッドならば、マオの能力が通じるのが道理である。
あれほどの巨大質量に自分の力が効くのだろうかという不安はある。しかし、通じないという理屈もない。むしろ、これまでの実績を踏まえれば十分に勝算がある。
魔力をグローブに充填。
加速した黒い魔弾が、ムートー・ゾンビの首に放たれる。
「――――――――!」
ムートー・ゾンビの目が明滅する。
マオの力を打ち込まれた瞬間に、生と死を司るヒロインの力が著しく弱体化したのである。仮初めの肉体が朽ちて、融け落ち、骨が現れる。
「よし、効いた! トラム、後は任せた!」
崩れる巨体の前でトラムは剣を掲げる。
「さようなら、竜王。今度こそ、お別れよ」
トラムが放つ最大出力の閃光が、千年を超える因縁を斬り裂いて、跡形もなく焼き尽くした。
■
影のヒロインが送り込んだ魔物という魔物はヒロインたちの奮戦によって退けられた。特にヒルドの宝具の相性が頗る良く、魔物を退け、即死させる聖なる結界は、長い年月を経て染みついた雑念を浄化し、土地に焼き付いた怨念すらも癒やしていた。森全体で見ればごく一部でしかなく、スケルトンもゴーストも夜の間に湧いて出ることに変わりはない。
しかし、神殿の周辺に関してはその心配はいらなくなった。
ヒルドの宝具で土地が浄化された上に、ヒルドは原初のルーンを周辺に撒いて魔物が近づけないように結界を張ったのだ。
当面は、これで安心して眠ることができる。
ヒルドという思わぬ収穫があった反面、闇の女神に目を付けられるなど、想定外の事案も発生したが、トラムの復活とムートーの完全停止に成功したので、レイヨンでの活動は終了だ。
滞在予定を超過することなく、帰路につくことができる。
「しかし、疲れた」
想定外の働きが重なって、さすがに疲労を感じる。
立場上命の危機は慣れたものだが、それでもぞろぞろと湧いて出てくる魔物の群れは精神に悪い。
浴場で汗を流して、ベッドの潜り込む。
ランプの火を消したとき、ドアがノックされた音で眠気が飛んだ。
返事をすると入ってきたのはヒルドだった。
「もう寝るところだった?」
「寝るところだったけど、眠気が飛んだ」
「あ、ごめん。なんだったら、安眠のルーンでも使おうか?」
「そんなのあるのか。便利だな」
「うん。すぐにできるよ。じゃあ」
「待て待て、その前に要件は?」
ヒルドが虚空に文字を描き始めたので、マオは制止した。
安眠のルーンがどういったものかは分からないが、話の流れからすると、あれを受け入れると寝落ちしてしまうだろう。
ヒルドがわざわざやって来た理由が分からないままだ。
「あ、うん。それはね。改めてお礼を言いに来たんだ」
「お礼?」
「うん、助けてくれてありがとう。あなたがいなかったら、あたしは今頃石にされてたから」
ヒルドの力だけで、女神を名乗るヒロインには勝てない。マオがいなければ、どこまでも追い立てられてやがては力尽き、石像に変えられていただろう。
「だから、お礼を兼ねて正式契約して欲しいなって」
「マスターとサーヴァントの?」
「そう」
窓から差し込む月明りにヒルドの肌がぼんやりと浮かび上がる。
衣服を脱いで、無垢な身体を惜しげもなく曝した美麗な姿だ。
均整の取れた身体は、清廉な少女性を感じさせる。
もちろん、こんな風に誘われてマオが乗らないはずがない。ヒルドほどの美少女が眼前に裸になっているのだ。肉体的にも精神的にも疲れ切っていたとしても、抱いて愛すのが筋というものだ。
「ん……ちゅ……ちゅ……ん、ん……ふう……んんッ」
ヒルドを抱き寄せて唇を重ねる。待っていたとばかりにヒルドも舌を伸ばしてきた。様子見のキスはいらない。最初からディープキスだ。
「ちゅぱ……ちゅぱ……れろ……んふぅ♡ んあ……れろ……れろ……ちゅ、ん、はあ……んんぅ……ちゅ♡」
ヒルドはマオの首に腕を絡めて唇に吸い付いてくる。よほどキスが気に入ったらしい。強引に唇を重ねて、舌をマオの口内に押し込んでくる。ヒルドの舌が上顎をくすぐるので、マオは彼女の舌を舌で絡め取って、思い切り吸う。ワルキューレは人間ではないというが、こうして交わってみると人間の少女とあまり変わらない。
「ん、ん、んぁ……はあ……はあ……はあ……あ、ん」
ヒルドの乳首に触れる。大きすぎず、小さすぎないほどよい大きさの乳房を手の平で包み、その柔らかさを堪能する。
ヒルドは、乳首をコリコリと愛撫されると堪らないとばかりに腰をくねらせる。
「あ、あたしも、する」
ヒルドはもう一度マオに口付けしてから、そっと顔を下にずらす。マオの首元を甘く噛んで、ペロペロと身体を舐め始める。マオの乳首を吸い、舌を這い回らせる。少女の紅い瞳が青く澄んだ月光の中で妖しく光る。ちゅ、ちゅ、と音を立てて優しく肌を啄むヒルドは、さすがに勇士に奉仕することがインプットされているだけのことはある。
胸から腹までキスをして舐めるヒルドは、ついにペニスに辿り着く。すっかり血流が加速して固くなったペニスを前にヒルドは僅かに怯む。
「ん……はあ、すごい臭いがする。……もう、こんなに固くして。あ、分かってるよ。今、するから」
マオの無言の促しにヒルドは応える。
ペニスを口に含むことに嫌悪感はない。
亀頭を咥えてから、一気に根元まで飲み込む。
「んじゅる――――んふぅぅ♡」
じゅるり、と口内にペニスが入り込む。
熱いヒルドの口の中は、涎一杯でとろとろに蕩けているようだ。口内粘膜に包まれたペニスは、咥え込まれたままざらつく舌の洗礼を浴びることになる。
「んむ……んむ……んむ……じゅる……れる……れる……じゅるる」
ヒルドの舌がペニスに絡みつき、激しく愛撫してくる。頬を窄めて唇を棹を扱く動きは手では再現できない。この熱、ぬるぬるした感触、鼻息も荒くペニスに吸い付く美少女という光景。どれをとっても替えの効かない至福である。
「ちゅぷ……じゅるる……んふう……れろれろ……ちゅぱ……んあ……大きい。ちょっと、顎疲れちゃう。れろれろれろ……ちゅ♡」
ヒルドはそう言いつつもフェラチオを止めない。
舌先で裏筋を舐めて、鈴口を穿る。そして、もう一度亀頭を咥えて、口内でもごもごと弄ぶ。
ぞわぞわとした快感がペニスを襲う。
ヒルドの舌が裏筋を舐めた時、はち切れんばかりに膨れ上がっていたペニスが我慢の限界を迎えた。大きく脈打って、ヒルドの口内に精を迸らせる。
「ん――――んん♡」
ヒルドは口内で射精したペニスをしっかりと咥えて、その精液を啜る。そうすることが当たり前だと言わんばかりに、ヒルドはペニスを吸って尿道に残る精液も吸い出した。
「んく……んはッ。ふう……すごい、いっぱい出したね」
「ヒルドのフェラが気持ちよかったからな」
「ふふふ、ありがと」
ヒルドは亀頭にキスを落とす。
絶頂直後で敏感なペニスは、その刺激だけで臨戦態勢を整える。
「おぉう、すぐ大きくなった」
「そりゃ、もうこんな状況だからな」
「じゃあ、もう、しようか」
ヒルドのほうも準備ができていた。マオの精液を飲んでから頭がぼうっとして、靄が掛かっているようで、細かいことがどうでもよくなってきた。
マスターとの正規の契約を結ぶのであれば、ここまでの接触をする必要はない。だが、ヒルドとしてはお礼をしたいし、セックスがマオを喜ばせるのであれば、積極的に実行するべきだとも考えている。
ヒルドはペニスの固さを確かめると、股に跨がる。
マンコにペニスを宛がったまま腰を下ろして、根元まで結合する。
「ん……んんんん♡」
ギチギチとマンコの中を押し広げるペニスの感覚にヒルドは呻く。
濡れてゆるふわのマンコに包まれたペニスも痺れるような甘い快感に苛まれた。
肉襞が寄り添うようにペニスを握る。人ならざるワルキューレのマンコは、もとより勇士を喜ばせるためのものだ。
ヒルドの膣の感触をもっとしっかりと味わいたい。
マオのペニスは血流を早めて、さらに大きく膨らむ。
「あ、んんッ、ん、おっき、んッ」
ヒルドは腰をグラインドさせてペニスを扱く。上下運動の前の準備運動だ。それでも上下左右にせわしなく動くヒルドの腰の動きは、ペニスを予期せぬ快感に包み込む。
「はう、んん♡ ん……あ……ん……ん……ふう……はあ、んん♡」
ヒルドの艶めかしい声がマオの耳朶を打つ。
とびきりの美少女が自分の腰の上であられもない姿を曝しているというだけで、十分に絶頂ものなのだ。それが、ペニスをマンコで扱きながら、快楽に溺れた表情で見下ろしてくるのだから堪らない。
「はあ、はあ、はあ、んああッ、あん♡ はあう、ん、あ、ああ♡」
ヒルドの腰を掴んで、マオが突き上げる。
ヒルドは甲高い嬌声を上げて、天井を仰ぐ。
マンコはぐじゅぐじゅに濡れて、動く度に愛液を滲ませている。
ワルキューレでサーヴァントといっても、生理的な反応は人間と同じだ。感じる部位も概ね把握できた。
「あ、んんう……ふう……はあ、あん♡ マスターのすごい、あ、か、固い、ひぃん♡」
「ヒルドの膣内も気持ちいいぞ」
「あ、ん、あり、がと……あ、んあ、ダメ、ん、んん♡ これ、ずるい♡ あ、んん、マスターのおちんちん、ぃ、イイとこに、当たる。んああ♡」
ヒルドの大きなストロークで、ペニスがずりずりと扱かれる。カリが肉襞をひっかき、それに反応してヒルドが身を捩った。
快感はヒルドの頭脳を簡単に犯す。
ヒロインを屈服させる運命にあるマオを受け入れたことで、ヒルドはただの少女も同然の身体になった。ワルキューレやサーヴァントといった特殊性は何の意味も成さず、ただ快楽を貪る雄と雌以外の何者でもなく、
「ひ、ひぃん♡ あ、ふはん♡ あん、あん、あん、あん、んん……んああ♡ あ、い、イイ♡ あふ、んあ、これ、イイよぉ♡」
ヒルドは感じ入って腰をぐりぐりと押しつけてくる。
ペニスを子宮の入り口まで強引に咥え込んで、激しく上下の動かす。
「ああ、ヒルド。このまま膣内に出すぞ」
「うん、来てッ、あたしのおマンコに、マスターの精子いっぱり出して!」
求められるままにヒルドの膣に精液を注ぐ。
爆発的快感の波に意識が洗い流されるようですらあった。
汗ばんだヒルドの身体をしっかりと抱き締めて逃げられないようにして、ペニスを突き上げる。
「あ、あああ♡ ひい、あ、射精しながら、突き上げは、ダメ、イクって、あ、んはぁあ♡」
ヒルドの意に反して、彼女の身体はマオの精を貪欲に求める。肉襞がペニスに絡みつき、それがヒルドにさらに快感を与えて狂わせる。
射精が止まらない。
勃起が治まらない。
ヒルドの膣にペニスを吸引され、発生した過激な快感がマオの頭に靄をかける。
このままヒルドと繋がっていたい。そう思ってしまうほど、ヒルドのセックスは気持ちよかったのである。