異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話 作:もう万体
セレスアゴラの西方に、突如として現れる巨岩奇岩の森。石の柱が無数にそびえ立つ大絶景は、同時に人々の行く手を遮り物理的、心理的な壁としてこの地に鎮座してきた。
千年前、この岩石群を超えた先に、人々が暮らした都市があった。大戦の最中に都市機能が失われ、住民たちは退去を選択した。戦後も人が戻ることはなく、時の流れに身を任せ風雨に身をさらし続けて千年が経っていた。
「はあー。これはキツい」
ダグラスが膝に手を突いた。
セレスアゴラを出て三日が経ち、一行はいよいよ伝説の古代遺跡の目前までやって来ていた。比較的平坦な古代の道路を選んで進んできたものの、千年もの間放置されていた古代道は荒れ果て、ところどころ崩れた岩や大木で塞がって通れないなど、一筋縄ではいかなかった。
時に魔物にも襲われた。
初めて見るタイプの魔物で、この地に合わせて進化した新種のようだった。
新種の魔物がいるということだけでも、ここに来た甲斐があった。調査をしたはいいものの目新しいものはありませんでした、では報告としてつまらない。クライアントとしては、遺跡の安全性を確認したいというのがこの調査の一番の目的なので、危険な魔獣がどれくらいいて人間で対処できるのかどうかという点に関心があるのだから、新種の魔獣を発見したというのはいい評価に繋がるのではないか。
人間が去ったことで、緑は深まり、入り組んだ岩山が幾重にも重なる複雑な地形は、数多くの探索者の侵入を長らく拒んできた。
最初の半日くらいは、今も人が出入りしている気配はあった。普通の人間が入ってこないからこそ、盗賊の根城として利用されていたりもするようだ。だが、それも森の入り口までのことで、奥に行くにつれて人間の生活環境からどんどんと乖離していく。息が詰まるほど濃密な土と緑の匂いに、視界を塞ぐ圧倒的な木々と岩山。何の準備もなく入り込めば、道に迷い人里に帰ることもできず魔獣の餌食となるだろう。
幸い、こうした問題はマルコが得意とする補助魔法で解決する。
道具を一式揃えると金がかかるが、魔法が使えればその分を節約できる。もちろん、マルコに何かあったときのことを考えて、万が一の備えはしているが、それでも彼の魔法に頼る部分は大きい。
「マルコ、この方向で間違いないんだよな?」
「ああ、あってるはずだ」
マルコの手の平には、淡い光の矢印が浮かんでいる。それが、方位磁針の役割を果たしているのである。あらゆる世界の魔法や魔術で、方位は重要な要素であり、方位を知る魔法を持つ魔法体系も少なくない。マルコの家系に伝わる魔法も、例外ではない。
「て、言ってもな」
一行がいるのは岩山の中腹である。削れて洞窟のようになった場所に身を隠し、雨を凌いでいる。山の天気は変わりやすいとよく言うが、今朝から雨が降ったり止んだりを繰り返している。
視界は悪い。
目に映るのは木と岩ばかりで、古代都市はどこにも見えてこない。
「ま、予定どおりなら、後小一時間ってところでしょ。焦ってもいいことないし、気長に行きましょ」
火に当たっていたリオラが乾パンを囓りながら言った。
雨で冷えた身体はすっかり温まり、濡れた衣服も乾いた。天気を晴れにする魔法が使えればいいのにと内心で愚痴を言うも、そのようなことができるのはヒロインでも上位層だけだ。ヒロインの末裔というだけのリオラにそこまでの能力はない。彼女は自然干渉系の魔法を使うが、威力も規模も対人レベルに収まる。
「お、晴れ間が来そうだ」
「本当?」
ダグラスの声にリオラが空を見上げる。確かに、雲の切れ間から陽光が差している。青空も見えてきた。
「よし、雨が上がったら、出発だ」
雨上がりで気温の下がった山道を今度は延々と下っていく。
起伏の激しい獣道を這うように進み、時たま魔獣を打ち倒し、そしてようやく視界が開ける場所にやってきた。
「わぁ、すごい」
ユイが感嘆のため息をつく。三日間、道なき道を進んできた一行には、この光景だけでも十分な感動になる。
岩山に囲まれた盆地の中に大きな神殿のような建物が佇んでいる。その神殿を中心に東西に町が広がっていたようだ。
建物の多くは木造建築だったのだろう。今は朽ちて、その残骸が僅かに残るだけだ。しかし、道路や建物の基礎には石材を用いていたようで、千年前にここが大きな町だった痕跡をしっかりと残していた。
「まさに古代遺跡って感じね」
雨に濡れた石畳を歩く。排水路もきちんと整備されていたようで、路面は勾配がついていて水がきちんと流れるようになっている。
町には噴水設備や劇場があったと思しい広場もあり、その当時は文化的にも進んでいたものと思われた。
「あの神殿以外は、もう何も残ってなさそうね」
リオラは剥き出しになった住宅の基礎を見つめて呟いた。
石畳の状態を見ると、石を加工する技術がなかったわけではない。むしろ、かなり高度な技術があったはずだ。パンゲア帝国は中央と地方で技術格差が凄まじかったというが、この遺跡――――セレスクラダは、中央とも近く、正規軍の駐屯地にもなっていた都市だったと記録されているので、この遺跡について言えば、中央政府と同等の技術力は持っていたはずだ。
「じゃあ、やっぱり神殿の中を探さないといけないか」
「これで何も出ないと、それはそれで拍子抜けね」
「いや、これだけの都市がずっと手つかずだったんだから、さすがに何かあるだろう」
「だといいけど」
クライアントは、特に何も出なくてもここに到達できたというだけで喜ぶだろう。彼の趣味は発掘と調査で、その第一歩がダグラスたちの先行調査だ。調査隊を送り込む時のリスクを最小限にするのが、一番の目的なので、とりあえずは安全性の確認と道順が分かれば収穫と言える。
道中の魔獣は、ダグラスたちでも対応可能な程度の力しかない。護衛の騎士を付ければ戦闘型のヒロインがいなくても大丈夫だろう。
もちろん、一回だけでは足りないので、今後、人数を増やしてさらに綿密な調査をしていく必要はあるだろうが。
セレスクラダの中で唯一、往時の姿を残した神殿をダグラスたちは最後の探索地とした。
表面は苔と蔦に覆われているが、建物自体はしっかりしている。
神殿の中は、光源がないので真っ暗だ。松明と光の魔法で光源を確保しながら、中の様子を窺った。
「見える範囲は大丈夫そうだな」
何処に何が潜んでいるか分からない。危険探知の魔法を使いつつ、ダグラスは中に入った。神殿の中は巨大な洞窟のようだった。さながら、怪物の腹の中といった感じだろうか。轟々と奥へ奥へと風が流れ込んでいく。
広間の左右の壁には何体ものヒロイン像が並んでいる。神殿と同じ素材の石像で、当時のヒロイン信仰を表すものだろう。
五メートルほどの高さの石像が、合計で十躯。そのうち、三躯は残念ながら倒れて、砕けている。
「これだけでも、相当なお宝だな」
「見る人が見れば、誰なのか分かるのかしら?」
「分かるんじゃないか。魔王大戦期のヒロイン像は、神話のヒロインかもしくは帝国軍で将軍をやってたヒロインの像ってのが相場だろ。お、ほら、こいつは分かりやすい」
「右手だけ籠手をつけてる……銀の腕のトラムね」
無事だった石像の一躯をダグラスとリオラが見上げて話をしている。
ユイと同じこの世界の住人ではないヒロインたち。千年前の戦争では敵味方に分かれて、死闘を演じたという。
「将来はユイの石像も建ったりしてな」
冗談めかしてダグラスが言う。
千年前に比べて、今のヒロインたちはずいぶんと俗化している。政争の火種になったり、国家の主導権を握ったりとその存在が人々を苦しめているという側面もある。現代のヒロインは、必ずしも善良な存在として扱われるわけではないのである。
「わたしの石像なんて建ったら、恥ずかしくて死んじゃうから」
ユイは頬を羞恥に頬を染める。
自分の石像なんて名誉を重んじる政治家でもあるまいし、困るだけだ。
ユイは人前に出て有名になりたいとか思うようなタイプではない。
ユイが羞恥に顔を紅くする様子を見て、ダグラスはカカと大笑した。
それから、ダグラスの視線は神殿の奥に向かう。地下に続く階段があった。
「地下迷宮なんてことになってたら、面白いんだけどな」
「こういうところは、武器庫として使われることもあるからね。もしかしたら、中に何か残っているかもしれない」
ダグラスと一緒に階段を覗き込むマルコが言う。
「古代の魔導具ってヤツ? それともヒロインが残したオーパーツとか? 何にしても、高値で売れそうね」
リオラも興奮冷めやらぬといった様子である。
本来、そういった遺物の調査や持ち出しはクライアントに譲るべきものなのだろうが、現時点では誰の所有物でもないお宝を持ち出すことを妨げるものはない。ダグラスたちサルベイジャーの臨時収入としては、こうした発掘品の売買が大きな比重を占める。時には一生遊んで暮らせる額になることもあるのが、ヒロインが持ち込んだ異世界の道具だ。もしも、そういった夢のある遺物があるのなら、少しばかり持ち出していきたい。ここまで来るのにかかった労苦を思えば、それくらいの収入はあってしかるべきだろう。
光球を引き連れたマルコが階段を下りていく。一行はそれに続いた。日の差さない地下は肌寒く、湿っている。壁から染み出た水で足下が滑りやすくなっている。
「ほう、これはまたずいぶんと大きな通路だな」
らせん状の階段を下りきると、左右に伸びる地下通路が姿を現した。
人工的に作られた通路は左右どちらも五十メートルほど先で曲がっているようだ。
「明かりがあれば、生活もできそう」
通路には部屋もあった。
その一つを覗いてみると、ちょうど人が一人生活できるくらいの広さである。錆び付いた剣や鎧が床に転がっているところを見ると、騎士の生活空間だったのかもしれない。
「そういえば、ここは帝国軍の駐屯地だったな」
「もしかしたら、兵舎として使っていたのかも」
「なるほどな。だけど、それならヒロイン由来の遺物も期待できるかもな」
と、期待感に胸を膨らませる。
暗闇の神殿探索。
こうした冒険を重ねてきたサルベイジャーにとっては、恐怖よりも好奇心が勝る。無論、一流のサルベイジャーはスリルを楽しみながらも深入りはせず、成果と生存の両方をつかみ取る。途中まで成果を上げても、最後に死んでしまえばすべてが意味を喪失するからである。
ダグラスたちは、これまでに多くの危険を乗り越えてきたし、危ないと思えば退いて体制を整える知恵も身についている。
彼らにとっての不運は、彼らの手に負えない魔獣の存在を示すような気配がまったくなかったことであろう。
神殿に入ってから今の今まで、ダグラスたちには魔獣の息づかいは疎か、餌食になった生物の骨も戦闘の痕跡も見いだせなかった。
神殿の暗闇に棲んでいたのはコウモリや虫、ネズミくらいのものであった。
「ん、なんだこりゃ」
最初にそれに気づいたのはダグラスだった。
探索の途中で足下に違和感を覚えた。光を当ててみると、床の材質が他と違う。氷の膜のようなものが、床を覆っていたのだ。
「え、何、これ?」
「ガラスみたいだな」
そこから先は、通路全体がキラキラと光るガラス質の膜に覆われている。表面は凹凸があり、光を当てると乱反射して虹色に輝いた。
「なんだか綺麗」
鍾乳洞を思い浮かべたユイは、思わずそう呟いた。
「いや、これはちょっとよくない。もどったほうがよさそうだぞ」
警告したのはマルコだった。
彼の手の平に浮かぶ球体が赤く発光している。
それは魔力を探知する魔法であった。人間よりも精密に、空間の魔力量を測定する魔法だ。優れた魔法使いなら肌感覚で把握するものだが、彼らはその域に達していない。何となく魔力量の多い空間だと思っても、その濃度をしっかりと可視化するには専用の魔法が必要だ。
球体が赤くなるということは、それだけ強い魔力が漂っているということだ。これまでは、これほど強い反応はなかった。
「何かいるってこと?」
ユイが尋ねるが、マルコは首を振った。
「分からない。ただ、このガラス質の何かが魔力を発しているのは確かだ。下手に触らない方がいい」
「なるほどな」
ダグラスは視線を巡らせる。ガラス質の膜は、これまで通ってきた通路の上に貼り付けてあるように見える。粘土を塗りつけて固めたような感じだろうか。それが床だけでなく、壁も天井も同じ材質でコーティングされているのである。
「分からないものに手を出すのは……」
「分かってる。ここまでだな。収穫はあった、帰ろう。後は、あの物好きが調べるだろうさ」
ダグラスが肩を竦めた。
強い魔力がそのまま危険というわけではない。
だが、魔力はあらゆる魔法の燃料であり、超自然現象を引き起こす原因となるエネルギーでもある。強い魔力に起因するであろう、よく分からない現象に対して、迂闊に触れず、より専門性の高い技術者に調べてもらうのがセオリーだ。
「あーあ、何かあると思ったんだけどなぁ」
「仕方ないよ。次、頑張ろう」
「あの道、また引き返すのも気が重いわ。なんかこう、空飛んで帰りたい」
「あはは、そうだね」
リオラの文句も分かる。
副収入に繋がるような手軽に持ち帰ることのできる遺物は見つからなかった。
これから三日かけて、元来た道を戻ることになると思うと気が重い。道中の険しい山道は、歩くだけでも大変なのだ。
神殿は夜露を凌ぐのにもちょうどいい。
外に出るよりも神殿の中で一晩を明かし、そこから辛く長い帰り道を進もうと、一行が雑談をしていたときである。
初めに気づいたのは、やはりマルコであった。
魔力測定用の光球が青から赤に変わったのである。
「何?」
「妙だ。急に色が変わった」
光球が赤色になったのは、ガラス質の膜だけのはずだ。帰り道は変えていないので、魔力の濃度に変化が起こるはずがない。
可能性があるとすれば、それは、魔力の発信源が移動している場合に他ならない。
緊張感が一気に高まった。
広い通路ではあるが、それは歩いて進む分にはというだけである。魔獣との戦闘となると、やはり狭い。その上ここは地下だ。下手に魔法を使って天井が崩れたら、一溜まりもない。
言葉を発することもできない緊張感に喉が渇く。
呼吸音すら憚られるほどの静寂が耳に痛い。ユイは白い杖を握りしめて、唇を噛んだ。やがて、ずるずると床を這いずる音が聞こえてくる。大きな何かがこちらに向かって近づいている。
「なんだ、あれは」
ダグラスの言葉は四人全員の言葉の代弁でもあった。
通路の突き当たりを曲がってきたのは、巨大な魔獣であった。
マルコの光球が、これでもかというくらいに深紅に染まる。計測できる中では最大級の魔力濃度だ。毒々しい息が詰まるほどの魔力を発する魔獣は、通路の壁と天井に身体を擦りつけるほどの巨体だ。全身がぬらぬらとテカっていて、ぶよぶよとした細長い肉の塊といった風貌である。全身は粘液に濡れていて、頭から六本の触覚が伸びる。
端的に言って、超巨大なナメクジの怪物であった。
「ッ――――」
生理的嫌悪感に悲鳴を上げそうになるユイは、それでも口元を手で押さえて悲鳴を堪えた。
「こいつは、ヤバそうだ」
「逃げよう」
そうと決まれば判断は速い。
ナメクジの怪物の常として、動きが鈍い。如何に巨大な怪物であっても、あの動きではユイたちとの距離を詰めることは難しいだろう。大人の男が軽くランニングをするくらいの速さしかない。怪物は触覚を四人に向けている。すでに捕捉されているのは間違いなく、事実曲がり角を曲がって追ってきている。
通路を覆っていたガラス質のコーティングは、あのナメクジによるものだろう。こちら側は、縄張りではないのか普段は通らないので、コーティングされていないのだ。しかし、それにも関わらず、こちらの道に進んできたということは、ユイたちを狙う明確な意思があるということだ。
魔獣と戦う時は計画的に。無理だと思えばすぐに逃げるのが生き残る秘訣である。僅かでも判断が遅れれば、勝ち目のない戦いを強いられる。基本能力が人間を上回るのだから、当然ではある。そして、今回は、ナメクジが視界に入った時点で、致命的に遅かった。
階段に向かって走るダグラスの胸を青い光が貫いた。
あまりにも一瞬の出来事だったので、ダグラス本人ですらなぜ自分の胸に大穴が開いているのか理解できなかったであろう。つんのめって地面を転がる頃には、彼の脳に送られた最後の血液が抜けて、その意識は永遠の闇に帰っていた。
「ダグ――――」
悲鳴を上げるような余裕はなかった。ダグラスがなぜ倒れたのかを理解するよりも早く、青い光はマルコを襲った。
マルコの腕が爆ぜ、ついで腹と胸に穴が開く。抵抗の意思を示す間もなく、マルコは血の海に沈んだのだ。
「ヒールオール!」
ダグラスとマルコにユイは得意の回復魔法をかける。血塗れの肉体が治癒していくが、二人はピクリとも動かない。
如何にユイが優れた回復魔法を使えたとしても、死者を生き返らせることはできない。肉体が元通りになるだけで、彼らが目を覚ますことはない。
その事実を脳が理解するよりも前に、激情に駆られたリオラがナメクジを睨み付けた。
「ふざ、けんじゃないわよ!」
吼えるリオラの右目が赤く染まる。
彼女の異能。それは発火の魔眼だ。じくじくと痛む魔眼を爛々と光らせて、ナメクジの身体を炎に包む。焦点が合った場所から炎を噴き上がらせる強力な魔法だ。ヒロインの血を引く一族の中でも、特にその血が濃かったリオラは、火炎を操る魔法を得意としていた。
真っ赤に燃え上がるナメクジの巨体。発声器官を持たないのは普通のナメクジと同じなのか、紅蓮の炎が地下通路を橙色に染める中、身を捩るだけの魔獣は灼熱に悶えているように見えた。
「リオラさん!」
「ユイ、早くあんたは走って」
「リオラさんも」
「あいつを灰にしたら追いつくから! こんなところで、くたばって溜まるかってのッ!」
ダグラスとマルコは苦楽をともにした仲間だ。それが、こんなところであっけなく殺された。恐怖よりも怒りが勝った。リオラの魔眼が発する炎は鉄をも融かす超高温だ。魔力防御を持つ魔獣ですら悶絶し、焼死体となる切り札中の切り札。魔力の消費量が多いという欠点があるものの、それを抜きにすればヒロインにすら通じる強力な異能だ。
普段の彼女が冷静に観察すれば、炎の中のナメクジが未だ炭化すらしていないことに気づけたかもしれない。
炎はナメクジの表面を炙り続けているものの、その内部にまったく熱を届けていない。
ナメクジが口を開いた。そこには本来、葉を削り取る細かな歯舌があるのだが、このナメクジは違った。
リオラの魔眼が、ナメクジの口から伸びる触手を見て取った。魔眼発動中の動体視力は、通常時の五倍にもなる。ダグラスとマルコの命を刈り取った光の正体は、ナメクジの触手だったのだ。
鞭のように撓り、先端がガラスのように硬質化した触手を躱すだけの身体能力はリオラにはなかった。
リオラが九死に一生を得たのは、ユイのフローラルシールドのおかげだ。リオラの防御力を上昇させ、辛うじて即死を免れた。
だが、触手の一撃は強かにリオラを打った。跳ね飛ばされたリオラは、そのまま気絶してしまった。
「リオラさんッ」
ユイがリオラに駆け寄って治癒魔法をかける。
リオラを背負ってナメクジの怪物から逃げるのは不可能だ。ユイにそれだけの筋力はないし、あの触手を防ぐ手立てもない。
このままユイだけ走って逃げれば、何とか生還の可能性はある。だが、それはリオラを見捨てるということだ。まだ、彼女は生きている。ここで、ユイが逃げ果せたとしても、近くの人里まで三日はかかる。逃げて助けを呼ぶということすらも、現実的な選択肢ではなかった。
ずるずるとナメクジが這い寄ってくる。
ユイが逡巡する僅かの間にも、重苦しい魔力の重圧が強くなる。
「あ……ぁ……ぁ」
リオラの服を掴んで引きずろうとするユイの視界いっぱいに粘液に塗れた肉の塊が迫った。
ナメクジの口から触手が伸びた。今度は数え切れないほどに無数の触手である。これが、瞬時にユイとリオラに巻き付く。
「い、いやああああああああああああ」
恐怖にユイは泣き叫ぶほかなく、華奢なユイの抵抗を無視して、ナメクジは大きく広げた口に二人の少女を飲み込んだ。
■
「う、ん……」
ユイは息苦しさに目を覚ました。
酷い夢を見ていたような気がする。
身じろぎしたユイは、すぐに自分の身体が動かないことに気づいた。
「な、なに、これ……?」
ユイは壁に背中を預けて座っている。周囲はぼんやりと明るい。ガラス質のコーティンが床にも壁面にも施されていて、それが淡く光を発しているからだ。
身体に力が入らない。手足が萎えたように痺れているのだ。
「あ、これ……そ、そうだ、わたし、あの魔獣に……なんで、どうしちゃったの?」
状況が全く掴めない。
ここが神殿の地下通路の奥だというのは分かる。だが、なぜ自分がここにいるのか。魔獣に丸呑みにされたはずなのに。
「ゆ、い……」
「リオラさん?」
リオラに名前を呼ばれたような気がした。どこにナメクジが潜んでいるか分からないので、声をできるだけ潜めた。
「ユイ、目、覚めた」
声はすぐ隣から聞こえてきた。
視線を向けるとそこにはリオラがいた。
「り、リオラ、さん……?」
リオラの姿にユイは絶句する。
服を剥ぎ取られたリオラは、四つん這いの姿勢を取っていた。もちろん、彼女の意思ではない。信じられないことに、リオラの手足はガラスのように透き通り、硬質化していた。それこそ、床をコーティングするガラス質と同じ材質である。
「そ、それ……どうして、何が」
「早く、あいつが戻ってくる前に、逃げて、助けを呼んで」
石化の呪いの仲間なのだろう。ユイにはそこまでの専門知識がないが、こうした呪いがあることは知っている。知識がないのが悔しい。ヒールオールでどこまで彼女を救えるか。手足のガラス質化を何とか防ぐ手立てはないのか。
「ん、く……」
手足に力が入らない。ユイの手足はまだ変化していない。助けるにしても、逃げるにしてもユイだけが逆転の可能性を持つ。リオラを助けるためには這ってでも逃げなければならない。
だが、そんな二人をあざ笑うように巣の住人が帰ってくる。
手足が固まったリオラも、何らかの毒によるものか手足が麻痺したユイも放置しても問題ないと分かっていたのだろう。そして、縄張りの見回りを終えて悠然と帰ってきたナメクジは、生意気にも抵抗した「食べ残し」に向けて触手を伸ばす。
「ひッ、あ゛あああああッ」
ずぶり、と太い触手がリオラのマンコに侵入した。
「り、リオラさんッ」
粘液塗れの触手はリオラの肉の質感を残すマンコを出たり入ったりしながら穿り回している。さらに、もう一本の触手でアナルを貫き、さらにリオラを責め立てる。
「あ、んあ、んほおおおおおおおおお♡」
リオラの表情が蕩けて落ちる。
恐怖も痛みも感じない。
彼女の脳を支配するのは、快感一色だ。
見たことのない友人の表情。赤く火照り汗の雫を浮かべ、気持ちよさそうに相好を崩したリオラの顔を見て、ユイは息を呑む。このような状況で浮かべる表情ではない。卑猥で淫蕩な、あり得ない顔は、明らかに発情している証であった。
「ユイ、ユイ、あ、あ、あ、助け、て、ひぐ、んひぃ♡ あ、この、化け物、止めて、あん♡ ひぃ、気持ちイイ♡ あ、そこ、擦るな、あひ♡」
「ぁ……ぁぅ……ぁ」
「ひ、あん♡ ひぃん♡ ああ、強い、んあ、いや、こんな化け物に、イカされる、ふぅん♡ あ、んああ、いや、いやあ、またイク、こんど、イッたら、わたし、ん、あああ♡」
ひときわ大きな嬌声を上げたリオラ。オーガズムに達したのである。その瞬間、ピキピキと音がして、リオラの手足がさらにガラス化する。
「そんな、まさか、それ……」
「これ、すご……ひ、んん♡ あ、イク、ダメ、イクと、固まる、ん、あん♡」
じゅぼじゅぼと汁を垂れ流しながらマンコとアナルを穿る魔物の触手に、リオラは強制的に発情させられた挙げ句に絶頂まで味わわされているのだ。さらに、イクごとに身体が固まっていくという最悪の能力に曝されている。
目の前で仲間が辱めを受けながら、彫像に変わっていく。その酷い有様を見ていられなくて、ユイは目を背けた。
「ひ……」
そして、また絶句する。
ユイが視線を背けた先に待っていたのは、完全に固まって物言わぬ彫像と化した少女たちであった。この化け物に捕食され、リオラと同じ目にあった少女の像が放置されている。その姿形は様々だが、顔は一様に最後の絶頂を迎えた瞬間のまま時を止めている。
彫像の中には、苔むしたものもある。
どれほどの年月をこの姿で過ごしてきたのか。
「あ、あ、あ、んあ、あひ、んあ、ひう、ひぎぃ、あ、んおおお♡」
雄叫びのような声を上げるリオラの声が耳に響く。
「あ、あ、あ、イク、イク、いや、イキたくない、固まる、こんな、風になりたくない、い、あ、ひい、助けて、助けて、ユイ、あ、いや、あ、来る、やだ、やだ、あ、気持ちイイのやだ、もう、あ、あ、ああッ、ひああッ」
その絶叫は最後まで続くことはなかった。今までで一番の絶頂は、ガラス化を促進してしまったのだ。バキン、と音を立てて、リオラは頭のてっぺんまでガラス化してしまった。物言わぬ彫像となったリオラが、ユイの前で佇んでいる。
「あ……リオラ、さん……そんな」
もはあ、ユイは何をすることもできない。ただ、その尋常ではない状況に唖然とするばかりだ。
彫像となったリオラにもう興味がないのか、ナメクジの触手がユイを襲った。
「ひぃ……」
気色の悪いぬるりとした感触が肌を舐める。
ユイの服をビリビリに引き裂いて、大量の触手がユイに巻き付いてくる。
「いやあああああああああああああああ」
目一杯の抵抗をナメクジは簡単に制圧する。
手足は動かず、スキルも使えない。そんなユイを汚すのに、何の苦労もない。
触手は恐怖に叫ぶユイの口に強引に入り込んでくる。
「ふぐ……ん、んんんぅ!」
ぞわりと背筋に鳥肌が立つ。
苦みのある粘液が口の中いっぱいに広がって、さらに触手が喉に侵入する。嘔吐感すらも、触手はねじ伏せる。
異物を吐き出そうと反射行動を取るユイの喉奥に、ナメクジはどろりとした液体を流し込んだ。
「んぶ、んぐぅううううう!?」
味を感じる余力すらない。何かを飲まされたという事実だけがユイを打ちのめす。
(わたし、何を飲まされたの?)
よく分からない。気持ちが悪い。吐き出さないと、よくないことになるのは明白だ。
「んく……んく……ん……ん、ちゅぱ……」
喉が舌が痺れて熱い。
「んちゅ……ちゅ……ちゅぷ……んちゅ……ちゅう」
ユイの舌が触手に絡む。涎が口の端から零れる。うねる触手の蹂躙をユイの口は受け入れてしまっている。
(なんで、口が勝手に、こんなの吸いたくないよぉ)
ユイの意思とは裏腹に、粘液を摂取した身体はあっという間に熱を帯びた。
恐ろしいほどの強制力を持って、触手はユイの口内粘膜に自分の粘液をすり込んでいる。ユイの身体は半ば本能的にこの粘液を求めてしまう。
ユイの喉に流し込まれたのは、強力な媚薬成分を持つ分泌液だ。体内に吸収された媚薬成分は脳に作用し、強制的に快の感情を引きずり出す。どれほどユイが生理的嫌悪感を抱こうとも、それを塗りつぶすほどの快感が、彼女を蝕むのである。
「んちゅぱ……ちゅぱ……れろ……ふあ……ん、ちゅ……れおぉ」
口から抜けようとする触手に強く吸い付くユイ。ちゅぱ、と音を立ててユイの口から触手が抜ける。ユイの口元は粘液と涎でベトベトに汚れてしまっている。
「はあ、はあ、はあ、熱い……ふう、んふう……はあ、いや、このままじゃ、わたしも……」
ユイの理性は抵抗の意思を示している。
この怪物が仲間たちの命を奪った。けっして許してはならない魔獣であり、屈することはあり得ない。
そういう理性が、ユイをギリギリのところで踏みとどまらせている。
ナメクジの魔獣は、ユイの心にはまったく関心を持たず、触手を伸ばす。ナメクジの触手は、ユイの衣服の中に潜り込んできて、蛇のようにユイの腹部を撫で擦り、腰に巻き付いた。さながらユイの肌を味わうように次々と触手が伸びてユイの手足や首、乳房に巻き付く。
「い、いやああああああああ! 気持ち悪いッ! 離して、ああああああ!」
ビリビリと服が破かれる。
触手の力は強く、強靱なゴム製のロープのようだ。
毒で麻痺し、まともに動かないユイの身体で抵抗できるものではない。
邪魔な布地を破り捨てて、ユイを裸に剥いた触手は、すぐにユイの陵辱を再開する。粘液塗れの表皮をユイに塗りつけて、ずるずると肌の上を這い回らせる。
触手は、魔獣の舌が変化したもので、ざらざらとした味蕾がユイを愛撫する。
「はあ……ああ……ん、ふう……んあ、ああ、離して……」
気持ちが悪くて仕方がない、と頭では考えているのに、身体はどんどんと熱くなっていく。触手に撫でられたところが敏感になって、どうしても感じてしまうのだ。
触手が乳房を搾る。ぬるぬるとした粘液に濡れた乳房は、それ自体がクリトリスになったかのようだった。
一番敏感な感じるためだけの器官に匹敵、あるいは凌駕する挿すような快感が乳房全体に発生する。
「ひッ、んひぃぃん♡」
ユイの嬌声が反響して響き渡る。ユイ以外には誰もいなくなった古代都市の地下世界にユイの嬌声は広く響いていく。
「はあ、んひあッ、ああん♡ いや、なにこれ、嘘だよ、こんな、感じ、感じちゃ、あ、あひゃあ♡」
乳房をぎゅう、と搾られると猛烈な快感で頭が真っ白になる。腰が勝手にひくついて、メスの臭いを漂わせる。
発情したユイのマンコは、もうすっかり挿入を待ちわびて濡れている。
「こんな、こんな、魔獣に、ん、ふう、ひあう……ん、ん、ふう、んんッ」
ユイを責め立てる怪物の触手は、正確にユイの快感ポイントを突いている。
(感じたく、ない。こんな、魔獣の触手で、感じるなんて)
ユイは忸怩たる思いであった。
どうしようもなく火照る身体は、自分のものではないみたいだ。
二本の触手の先端が四つに分かれる。口を広げた触手の「花びら」には無数のざらざらとした粒が並んでいる。まるで人間の舌を四枚、根元で貼り合わせたような形状である。それが、ユイの乳房に食らいついた。
「ん――――ひいいいいいいいいいいいい!?」
ただでさえ敏感になった乳房が、ざらざらとした触手に吸われ、搾られる。その快感は、それ以前の愛撫とは比較にならない。触手は乳房にしっかりと張り付いて、粘液を塗り込みながら揉みしだいている。さらに細かな触手が内側で乳首を愛撫している。乳房を揉む動きと乳首を吸う動きがそれぞれ別になっていて、ユイは休む間もなく責め立てられる。
「いや、いや、止めて、吸わないでッ、んああ♡ ひあ♡ 、ああ、ダメ、ああああ!」
ユイの叫びを聞きとがめる者は誰もいない。人里離れた古代都市の地下深くで、誰がユイの嘆きを聞き止めるだろうか。誰も助けてくれないし、ユイがここに来ていることすら誰も知らない。助けは絶対に来ないということは、ユイ自身がよく理解していた。
「ひッ、あッ、ひああああ! 乳首、乳首はッ、あ、敏感だから、んん、ふはッ、あ、もう、ほんとに、いやなのぉ♡」
涙を零してユイは悶えた。
ぐりぐりと乳房が触手に飲まれていて、乳首を舐め回す触手の動きにユイの腰が自然を跳ねる。
「あ、あ、あん♡ ひう、んん、あああ♡ やぁ、あ、来る、来ちゃう♡ あ、胸、胸で、魔獣にイカ、され、あひぃぃいいいいいい♡」
こんな化け物にイカされたくないとユイは必死の抵抗をしたものの、肉欲はブレーキが壊れたかのように湧き上がってくる。おまけに刺激を与えられ続けるので、理性で止められるものではない。身体はユイの意に反して、いとも簡単に絶頂してしまう。
「ひぁ……んふ……はあ……はあ……はあん♡ むね、むねで、イクなんてぇ♡」
オーガズムの経験がないわけではない。男性経験のないユイは、一人で自分を慰めることしかしていないが、これがどういう感覚なのかは知識がある。
(オナニーより、気持ちイイなんて……)
オナニーでイク感覚とは比較にならない快感がユイを満たしていた。
ナメクジの怪物に責められるという屈辱も少しずつ蕩けてくる。一回、絶頂を味わったことで、ユイの中の心理的ハードルが下がる。我慢という最後の盾がなすすべなく破壊されたことで、ユイの抵抗手段がなくなったのである。
助けは来ない。
仲間は殺され、ガラスに変えられた。
ユイにはここから無事に脱出できる未来が思い描けない。
(このまま、この魔獣に……)
汚されて、リオラのようになってしまう。その可能性のほうがずっと高い。周囲で物言わぬ彫像となっている少女たちも、自分と同じ目にあったのだ。目の前でリオラが彫像になったように、このナメクジは、女を犯し、快感に落とし込んでガラス化する異能を持っているのだ。
「あ――――」
ユイの目が絶望に曇った。
足が膝までガラス化していたからだ。
「あ、ああ、あああああああああああああああ!」
足の感覚がないのだ。
動かないし、通路の冷たさも感じない。完全な無である。
「んああああ♡」
乳首への愛撫がさらに強くなった。
ユイは仰け反り、舌を突き出した。
「やめへ……もう、イキ、たくない。いや、ガラスになって、なりたくないの、お願い、許して、もう、許してッ」
ナメクジの動きに変わりはない。ユイを見下ろし、口から伸びる無数の触手を手繰るだけだ。当然、その顔に人間的感情は表れない。彼の意思の有無すらも読み取れない。根本的に思考回路が違うのだ。
ナメクジの悪魔クリュスタルス・レクスは、千年前の大戦期に魔王が生み出したと伝わる悪魔の子孫とも生き残りともされる特殊な種族である。人間の男を殺し、女は辱めて彫像に変えるという生態は、かつての大戦時にも大いに恐れられた。
魔王が生み出した悪魔たちは軒並み女を陵辱し、辱める能力を持っていた。それは魔王のサディスティックな趣味を反映したもので、魔王に敗北したヒロインたちは、例外なく辱めを受けて屈するか、あるいは、屈辱的な死を迎えるかの二択を迫られたのである。
戦後、悪魔たちは帝国軍とヒロインたちの手で尽く狩り尽くされたが、今もこうして、生き残りが細々と血を繋いでいる。
クリュスタルス・レクスはユイに特別な関心を抱いてはいない。
縄張りに入ってきた女を本能のままに襲い、捕食しているだけだ。
ユイを絶頂させるのも、彫像に変えるのも、遺伝子に刻まれたルーティンでしかない。だからこそ、ユイの懇願が彼の耳に届くことはないし、理解する機能もない。淡々と、ユイをイカせる最適解を選択し続けるのである。
連続絶頂で潮を吹いたユイのマンコを触手で舐める。
「ひ、あ、ダメ、それだけはッ、それだけはお願いッ、それだけは――――ああああああ!!」
ずるり、とユイのマンコに触手がねじ込まれる。力強く脈打つ触手をユイのマンコは排除できない。膣壁にみっちりと張り付き、粘液を塗りたくる気色悪さが、快感に押し流される。媚薬成分が膣全体に染み込んで、ビリビリとした快感に子宮が悦んでしまう。
「いやあああああああああああああああああああああ♡」
処女を奪われた絶望が瞬時に快楽に塗り替えられる。
最も敏感な部位が直接刺激され、女を蕩けさせる媚毒が塗布されるのだ。今の時点で全身くまなく媚薬行き渡り、絶頂を繰り返した肉体に、これを堪える力は残っていない。
「んあああ♡ ああん♡ ひぃ、あはぁ♡ んはあ♡ あ、あ、あ、あ、いやん♡ ああん♡」
ユイの身体がくねる。
くちゅくちゅとマンコから淫らな音を鳴らして、身を捻る。ガラス化は太ももまで進んでいて、ユイの動きはほんの僅かでしかないが、その腰の動きは触手を拒否するのではなく、より気持ちのイイ体位を探っているかのようであった。
「あ、んあ……ふあ♡ あ、あ、そこ♡ あ、んあ、あ、気持ち、イイの♡ あ、イク、あは、イク、イッちゃう、ふあ、あ、あ、ああ♡」
ぐちゅり、とポルチオに触手が押しつけられる。指では絶対に届かないところに触手が吸い付いている。その瞬間の理性が真っ白に押し流される深い快感にユイの目が色を失う。
「あはぁ♡」
蕩けきった嬌声。
ほんの数分前まで、必死になって魔獣に抵抗していた少女の姿はそこにはない。
仲間を失い、助けを期待できない環境でたった一人、ナメクジの魔獣に汚される。体内から媚薬で発情させられた今、ユイが縋れるのは、この快感だけだ。
恐怖も絶望も快感だけが癒やしてくれるのだ。
「あ゛あ゛ぁ、もっとぉ♡」
はしたなく腰を振る。
ついにユイは魔獣に懇願する。
止めてくれ、ではなく、もっと汚してくれと。
「もうイイ、もうイイから、あ、あ、もう、何でもイイから、気持ちイイの、もっと、おまんこ、ぐちゅぐちゅにしてぇ♡」
魔獣に媚びる。
言葉は通じていないが、ユイが抵抗を止めたことは伝わっている。魔獣の攻勢が一気に早まり、ユイはマンコもアナルも貫かれる。
「あ、ひあああああ♡」
ユイは快感に顔を歪める。
涎を垂らし、歓喜の声を上げた。
身体が固まってきたのが分かる。絶頂する度に大切なものが失われる。感覚が鈍くなり、動きが緩慢になる。
「イクッ、イクッ、イクッ、あ、あ、あああああ♡」
もうどうでもいいと思った。
終わるなら早く終わらせて欲しい。この泥のような快感に溺れて、終わりたい。感覚がなくなれば、この苦しみも終わるだろう。
消えていく触覚に反して、身体の熱はいつまでも消えない。マンコもアナルも硬質化していないのだ。どうも、性的興奮を引き起こす部位が固まるのは最後らしい。
「んはあ、イク♡ あ、あ、あ、もう、終わる、あ、イク、あああ、き、気持ち、いぃ♡」
最後の瞬間までユイは快感という幸福の中に身を浸していた。
かくして、快楽を受け入れて、悶絶し、悪魔に縋り付いたユイの最後の姿を反映した彫像ができあがった。
かつては、ヒロインを屈服させ、その最後の姿を永遠に留める悪辣な能力は、見せしめとして有効に機能した。今となっては、政治的な意味合いなどほとんどないが、クリュスタルス・レクスには関わりのないことである。
物言わぬ彫像となったユイを放置して、悪魔は巡回に出かけた。
彫像となったユイが日の目を見るのは、この古代都市が再発見され、悪魔が討伐される日が来るのを待たなければならなかった。
プリコネのユイちゃんの等身大アヘ顔人形の完成でした。
魔王にはこれからも舞台装置として頑張っていただく。