※この作品はR-18です。

異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話   作:もう万体

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第三十五話(アテナ、セクストゥム)

 粘つく液体をかき回すような音がする。

 股間に絶え間なく与えられる快感と熱がマオの心を昂ぶらせる。

 月光を溶かし込んだかのような繊細な銀髪がマオの股間に埋もれている。

 

「ご、ぷ……じゅる……ちゅる……ちゅる……じゅる……ちゅぱ……ちゅぱ……ちゅぱ」

 

 小さな口を大きく開いてフェラチオに勤しんでいるのは女神アテナである。

 先日、時間を掛けたセックス(説得)の末に、快くマオのものになることを選んだヒロインだ。

 以前の尊大な態度は消えてなくなり、その身体はマオに奉仕するために使われていた。

 

「ん……ん……ちゅ……れろ……んふぅ♡ ちゅぱ……れろれろれろ♡」

 

 アテナは邪魔になる髪を耳に掻き上げて、ペニスに舌を這い回らせる。女神の涎で根元まで濡れたペニスはいやらしく脈打ち、先走り汁を滲ませる。

 アテナはアイマスクをしていて完全に真っ暗闇の中にいる。

 彼女に許された残る四つの感覚だけで、ペニスに奉仕することを強いられる。

 権能が使えたのなら、アイマスクなど何の意味もなかっただろうが、今のアテナにそれは叶わない。闇の女神でありながら、完全に目が見えないというのは、これが初めてであった。

 

「あむ、ちゅ……ちゅ……れろ……れろ……ちゅぱ……じゅるる」

 

 アテナは四苦八苦しながらフェラチオを続ける。

 口から出たペニスが暴れて頬を叩く。

 視覚に頼れないので、咥え直すのに一からペニスを探さなければならない。臭いと舌先の感触で舐めている位置を辿り、カリ首を舌で捕えてから、亀頭を咥える。

 

「その調子だ、アテナ。いいぞ、上手くなってきたな」

 

 まるで子どもの勉強を褒めるような口調でマオはアテナの頭を撫でる。完全に上下関係ができあがっていた。

 アテナはマオの与える快楽に逆らえない。

 処女神のアイデンティティを失い、未知の感覚であった快楽にすべて飲まれてしまった。アテナはアテナであるが故に性的快感だけは覚えてはならなかったのだ。

 愛歌の時と同じだ。

 元々の性質上性欲を知らない者にとっては、人間レベルの快楽ですら毒になる。

 まして、ヒロインを屈服させる力を持つマオに犯されては、本来の理性など荒波の前の小舟も同じだ。

 アテナは処女神の中でも特に強烈に性欲から切り離された神性だった。

 だからこそ、性欲は彼女の根幹を突き崩す劇薬となった。

 人間の中でも特に泥水を啜り、地べたを這いずり回りながらも前に進む力を持つ立香ならば、もっと我慢できたかもしれない。だが、アテナにはそれほどの行動原理はなく、あったとしてもヒロインの力を封じられた時点で神としてのあり方も封じられてしまう。

 人間から隔絶した存在ほど、力を封じられた時の影響が大きい。

 「まつろわぬ神」ともなれば、なおさらだ。

 

「あ、む……ちゅ……んちゅ……ちゅる……ちゅる……ちゅる……んふう……ふう……んむ……じゅぷ」

 

 アテナは唇を尖らせてペニスを吸っている。カウパー液を吸い出しながら、唇と舌でペニスを扱いている。

 知恵の女神とはいえ、神話から性に関することから距離を取ってきたアテナは性知識が抜け落ちていた。

 当然、フェラチオの存在は知っていても、その方法もペニスの扱い方も何も分からない。

 よって、マオがこうして時間を作ってアテナに一からフェラチオを教え込んでいるのであった。

 

「はむ……んちゅ……じゅる……れろれろ……れろれろ……れろれろ、ちゅ……ちゅ……ちゅぱ」

 

 裏筋を舐め上げて、鈴口に舌を這わせ、先端を強く吸う。

 さすがに学習能力は高い。 

 アテナ自身に試行錯誤をさせ、ペニスをしっかりと覚えさせるためにアイマスクを装着させたが、それが奏功した。

 アテナはペニスの臭いをしっかりと嗅いで、卓越した頭脳に覚え込ませている。舌技も超一流の戦闘技能を反映するかのようにメキメキと上達していて、涎を零しながらペニスにむしゃぶりつく様は性欲の女神といってもいいくらいだ。

 

「アテナ、出すから咥えろ」

「ん……んむ……」

 

 アテナがしっかりとペニスを咥えたのを見計らって、マオは射精した。

 

「ん――――んんんんんぅ♡」

 

 アテナの口内でペニスが跳ねる。

 どろどろの精液が女神の口内粘膜に染み渡る。舌の上でぷりぷりと弾ける精液をアテナはごくごくと飲んでいく。

 アテナの口にたっぷりと射精して、満足したマオは口からペニスを引き抜いた。

 それからズボンを履いてベッドから下りる。

 

「あ……どこに行くつもりだ?」

「仕事だよ。アテナとするのもいいが、残念ながら確認することがたくさんあってな。夜にはまた抱いてやる。それまではここで大人しくしていろ」

「夜まで、だと……く……」

 

 アテナは唇を噛んで、それ以上の言葉を控えた。

 てっきり、このままセックスまでするものだと思っていたのだ。アテナの身体はマオを受け入れることを想定していたから、はしごを外された形になった。

 子宮が震える。

 マンコから愛液が滲んだ。

 身体が雄を求めてしまっている。恥ずべきことだ。大いなる大地の女神が、征服者に頭を垂れて、その精を受けることを悦び、期待するなどあってはならないことだ。

 だが、そんな女王のプライドも愛欲の前には霞む。

 欲望を覚えた肉体は意地より悦楽を大事とするようになってしまった。

 アテナの身柄はまだ自由ではない。

 移動を許されているのはベッドから半径二メートル程度で、それ以上動けば結界に阻まれる。部屋を出て行ったマオを追いかけることもできず、アテナは所在なくベッドの上に座り込んだ。

 

 

 

 ■

 

 

 

 ノワールからの遠征は成功し、南海路を解放することに成功した。

 このまま、マオはホープをノワールに併合することを決定した。ロドギルドに侵攻したクロガネ大公国もロドギルドに前線基地を築いて着々と占領している。

 アテナを手中に収めたので、全域の石化解除も可能だが、それを敢えてしていない。

 一気に解放してしまうとロドポリスの政治体制も復活しかねないからだ。

 ロドポリスの関係者は最小限の復活に留めて、ノワールへの併合を進め、ある程度完了したところで石化の大幅な解除に踏み切る予定だった。

 そんな計画だったので、ロドギルドをクロガネ大公国が占拠したのは実は都合が良かった。

 これで、マオが気にするのはホープとノワール軍が間に合った小さな集落だけとなった。ロドギルドには政策監もいる。彼女を復活させると政治的な折衝が発生して面倒だったので、これはこれで当面は放置することにした。

 今、石化を解除すればレベッカ政策監がクロガネ大公国の手に落ちるだろう。そうなるとホープへの進軍の口実を与えることになる。

 無意味な戦争をする気はない。

 クロガネ大公国と一戦交える準備もしていない。

 アテナを手にした以上、敗北はほぼあり得ないが、だからといって余計な敵を作る意味はないのだ。

 とりあえず、今は相手方と事務的な擦り合わせ中である。

 

「マスター、指定海域の魔獣掃討を完了しました」

 

 資料を読み耽っていたマオは視線を上げた。

 白髪の少女が佇んでいる。

 スレンダーな体型で、学ランを着たはかなげな少女はセクストゥムと名乗った。

 千年前、魔王と呼ばれた最悪のヒロインに仕えた魔王軍幹部の一人であり、アテナに封印を解かれた後は彼女に従い、マオと対峙した少女である。

 水の魔法と拳法を組み合わせるオールラウンダーであり、戦闘能力はノワールのヒロインの中でもトップクラスになるだろう。 

 そんな彼女の正体は、人造人間。あるいは人形であって、人間ではなかった。

 肉体の構造はまつろわぬアテナやサーヴァントと同じようなものだろう。魔力を主体としていて、マオたち既存の生物とは構成要素が異なっている。

 セクストゥムは人形である。

 自分の持ち主をマスターと呼び、その命令を忠実に実行する。

 千年前は魔王、数日前まではアテナ、そして今はアテナを下したマオが彼女の所有者だ。

 犯して屈服させるまでもなかった。

 人形は所有者を選ばない。

 所有者が変われば、新たな所有者に忠誠を誓うだけだ。

 

「何匹いた?」

「大型の個体が十四匹、中型が二十二匹です。何れも魔法障壁のない一般のガレオン船を転覆させうる脅威であり、外洋にのみ棲息するはずの魔獣です」

「大型が十四匹は、さすがに多かったな」

 

 大型魔獣は概ね三十メートル程度の魔獣としている。それくらいのスケールの魔獣は、近海には少ないもので、南海路にもほとんど棲息していない。運が悪ければ鉢合わせるという程度で、年に数回程度しか目撃例がないのが普通だ。

 それが一日で十四匹も退治されるのは異常である。

 原因はアテナがマオ対策で呼び寄せた個体が、そのまま居残ってしまったことだ。

 そこで、水を司るセクストゥムに討伐を命じた。

 海の中を自在に動き回る海獣も、セクストゥムならば適切に効率よく退治することができるからだ。

 魔獣の死骸から取れる皮革や鱗、骨などは高く売れる。特に大型の個体から採取される素材はどれもこれも一級品ばかりだ。

 十四匹分ともなれば、今回の遠征費を賄っておつりが来る。 

 簡素な報告の後、セクストゥムは、服のボタンを外しながらマオに歩み寄ってくる。

 

「マスター、本日のご奉仕をさせていただきたく」

 

 イメージのとおりに染み一つない透き通った身体だ。

 人形ということもあって、セクストゥムの肉体には無駄がない。非人間的、無機質な美しさは彫像が動いているかのようだ。

 だから、セクストゥムに男を誘う淫靡さはない。

 整いすぎた顔立ちに気圧される者すらいるだろう。

 

「ちゅ……れろ……ん……ぅ」

 

 セクストゥムは椅子に腰掛けるマオに唇を押しつける。

 しっとりとしたディープキス。舌をゆっくりと動かして、マオの口内を弄ってくる。

 

「ちゅ……ん、はあ……ぁ……れろ……」

 

 舌と舌を触れあわせ、互いを感じ合う至高の一時だ。

 

「マスター、わたし、いつでも大丈夫ですよ」

 

 ズボンを下ろしたセクストゥムは、誘うような視線で見下ろしてくる。

 人形と言いつつも、身体の機能は人間の女とほぼ同じだ。

 勃起させたペニスをセクストゥムは右手で擦る。甘い痺れが精巣を活性化させて、ペニスに血を送り込む。

 

「マスター、いただいてよろしいですか?」

「ああ、来いセクストゥム」

「ありがとうございます」

 

 無機質な言葉の中に僅かばかりの熱を込めてセクストゥムは囁く。

 マオの首筋にキスをして、舌を伸ばす。

 白い少女はマオのペニスに跨がって、身体を密着させた。

 

「あ……ん♡」

 

 瑞々しい膣肉がペニスを優しく包み込んで扱く。

 膣肉はしっかりとペニス吸着して、セクストゥムが腰を上げると、そのままペニスを引っ張り上げようとする。ずるずると肉襞がペニスをしゃぶり、腰を下ろすと根元まで咥え込む。

 

「んふぅ♡ はあ……はあ……んあ、はあ……ふう……あん♡ はあ……ふう……んん……ふう……あ、あ、ああ♡」

「セクストゥム」

「はい」

「気持ちイイぞ。最高だ。もっと、動いて」

「はい。もっと、ご奉仕いたします。あ、ん……んあッ♡」

 

 くちゅ、くちゅ、くちゅ、とセクストゥムのマンコから卑猥な音がする。

 温かいセクストゥムの身体を抱き締めて、密着する。ほんのりと汗ばんだ少女の身体がマオの身体に張り付くようで、腰だけがせわしなく上下に動いている。

 

「はあ、ん……マスター、この体勢では、あまり大きな動きが、ん……できなくて、申し訳ありません、ん、あん♡ よろしければ、後背位など、いかがでしょうか?」

 

 ふうふうと荒く吐息を漏らすセクストゥムは、瞳を潤ませて提案する。

 セクストゥムは人形ではあるが、その感覚は人間と変わらない。

 マオの前では人形も神も人間も等しい。

 

「それだと、俺が動くことになるな。ご奉仕するんじゃなかったのか?」

「……それは……申し訳ありません。そこまで気が回らず」

「いや、いい。セクストゥムからの提案だからな」

「ん、あん♡」

 

 セクストゥムからペニスを抜いたマオは、椅子から降りた。

 

「ほら、どうしたい?」

 

 意地悪く尋ねる。

 セクストゥムはペニスを見つめた後、机に手を突き腰をマオに向けた。

 

「マスターのペニスをわたしに挿入してください」

 

 無表情と思いきや、期待感を込めた瞳でマオを振り返るセクストゥム。まだ、彼女とはそこまで交わっていないものの、元々が人形として主人に仕えるように作られているからか、主人に対する感受性が強かったようだ。

 彼女は主人が求めたとおりの振る舞いをする。それを当然だと思っているし、そのように作られている。

 根っからの従順さがセクストゥムの特徴というべきだろうか。

 マオがセックスを求めるのなら、セクストゥムはそれにしっかりと応える。

 マオはセクストゥムの尻を撫でる。

 それから、愛液を滴らせるマンコではなくその上のアナルに指を入れた。

 

「え、あ……んんッ、あッ、マスター、そこは、生殖器では、ありません」

「もちろん、知ってる。だが、人間はここを使ってもセックスするんだよ。知ってるか、アナルセックス」

「……知識としては。しかし、意味があるとは思えません。性交の目的が子どもを作ることならば、生殖器を用いなければ目的を達することは不可能です」

「セックスをするのが子作りのためだと誰か言ったか? 他の動物ならばまだしも、人間のセックスは子作りのためだけにあるんじゃないぞ。」

「それは……では、いえ、しかし……」

 

 それは承知しています、とセクストゥムは言おうとして口を噤む。酷い自己矛盾を生じてしまいそうだったからだ。

 マンコを使ってセックスをするのは、極めて一般的なことだ。

 しかし、セクストゥムが承知しているとおり人間のセックスは子孫を残すためだけにあるのではない。セックスを通したコミュニケーション、愛を深めるために行うこともある。他の生き物にはない、娯楽としてのセックスも珍しくない。

 今、まさにマオとセクストゥムがしていたように快楽を得るためだけに交わるのだ。 

 この場合のセックスの目的は快楽を得ることだ。

 ならば、必ずしもマンコを使わなければならないというわけではない。

 

「理解しました。アナルセックスは無意味ではない、ということですね。であれば、マスターのペニス、どうぞわたしのアナルに挿入してください」

 

 セクストゥムは自ら尻をペニスに擦りつけて、挿入を促してくる。

 

「さすが、理解が早い。じゃあ、さっそくいただくぞ」

 

 指で解したアナルにペニスを押し込む。

 マンコとは違い、挿入を想定した穴ではない。本来の流れとは逆方向に異物が押し込まれるので、肉体には通常とは異なる刺激が与えられる。

 

「は――――あ、ん、あああッ」

 

 セクストゥムが握り拳を作り、苦しげに吐息を漏らした。

 彼女の綺麗な尻にペニスが潜り込んでいく。

 キツキツのアナルの中はびくッ、びくッと痙攣し、ペニスを排泄しようと躍起になっている。その抵抗がペニスを締め上げて、強い快感を生み出していた。

 

「ああ、いいぞ、セクストゥム。もっと、尻に力を入れろ」

「はい、マスター。ん、あ、あん♡」

 

 セクストゥムの尻穴が締まって、ペニスが圧迫される。

 セクストゥムのアナルは人間のそれとは異なる。

 というのも、セクストゥムは人形であり、飲食をしない。できないわけではないが、その必要性が今までなかった。

 当然、排泄もしない。

 彼女が摂取した飲食物は魔力に還元される。とどのつまりは、セクストゥムのアナルは基本的に用途がないのだ。人間をベースにしているから、同じ構造になっているだけで、使用することはない。生まれたままの未使用品だ。

 

「あ、ん、お、んあッ、あん♡ あ、あ、あ、ふあん♡ あ、んああ♡」

「セクストゥム、ずいぶんと乱れてきたな。初めてのアナルセックスで、そこまで感じるとは」

「ん、あ、申し訳、ありませ、あん♡ あ、すご……アナルが、広がって、あ、んあ♡ マスターのペニスが、深くまで、んく♡ はぁん♡」

「本当にいい具合だ。お前のアナル、人間と同じようには使わないんだろう。アナルセックス以外に使うことはあるのか?」

「ふぐ……あぅ、んふッ、ありません。本来、使徒に排泄の必要はなく、ん、く、本質的には、不要な器官になります。あん♡」

「不用な器官でも感じるんだな」

「ふぐぅ、んああ♡ アナル、抉れ、るッ♡」

 

 セクストゥムは髪を振り乱して快楽に喘ぐ。

 そんな彼女に体重を掛けてペニスを抉り込み、耳を甘噛みする。ぐちゅ、ぐちゅ、とアナルを犯し続けると、セクストゥムの太ももがぷるぷると痙攣し、マンコから潮を吹いた。

 

「は、ひぃぃ♡」

 

 情けない声が白い喉からあふれ出す。

 アナルが引き攣り、ペニスを搾る。

 確かな絶頂の感触にマオのペニスがいきり立った。

 この女をもっとイカせてやりたいと、マオの雄が俄然力を振り絞る。

 

「は、んはああああ♡ あ、あ、あ~~~~♡ ぃ、イイ♡ ふあ、あ、これ、アナル、感じる。お、んお♡ あ、ああ、おかしい、こんな機能、わたしに、あるなんて、あ、ああん♡」

「お前は、俺の物だ。そうだな?」

「は、はい。わたしは、マスターの所有物です。間違いありません、んん♡」

「お前のアナルもマンコも俺専用だ。俺のペニスを扱くためにある。オナホールだ。忘れるな。しっかりとインストールしろ。核まで刻み込め」

「んあ――――はい、承知、しました、マスター。わたしのアナルもマンコもマスター専用のオナホールです。どうぞ、このまま精液を注いでください」

 

 ふやけた顔をしたセクゥトスムは、涎を零して悦楽に酔う。マオの所有物であることを肯定し、自身の核にまで描き込んだ彼女は、人形は人形でもマオ専用のダッチワイフも同然の存在に成り下がった。それをセクストゥムは快楽とともに悦んで受け入れる。

 

「出す、ぞ、んぐ、くおッ」

 

 精巣が作り出す精液が、限界一杯までチャージされている。

 腰を引き、突き込む。直腸壁にカリ首が引っかかり、それが引き金となった。ぞくり、とした快感で力が緩み、ペニスが精液を吐き出した。

 

「あは、あ、出て、る……お、くぉ、んああああぁ♡」

 

 セクストゥムの中で今までにないほどの多幸感が溢れてくる。

 直腸が焼けるように熱く、絶頂の波が頭に何度も押し寄せた。

 

「あ、あ……あああぁ♡」

 

 セクストゥムの直腸が痙攣している。

 少女の身体が大きく弓なりに撓り、それから机の上にがっくりと崩れた。

 マオの精巣はポンプのように精液を送り、セクストゥムのアナルにしっかりと精液の熱を教え込んだのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 クロガネ大公国から北に七日進んだところに、ブリンクウォールという国がある。

 支配領域の中には五つの城塞都市があり、遊牧民族が闊歩する平原にあって、四百年の長きにわたってバージェス家が王として君臨してきた。

 この国は、平原を往く商人たちから平原のオアシスとも呼ばれる地域に建国された。

 五つの城塞都市の中心に、古来、多くの旅人の喉を潤してきたテチス湖があるからだ。

 大陸最大級の淡水湖であるテチス湖から発する大小様々な河川は、平原を駆け回る遊牧民にとって重要な水資源であり、その流域は南洋に達する長大な運河となって経済を支えているのである。

 そんなブリンクウォールの首都エルドラドは、都市全体を城壁でぐるりと囲んだ国内最大の城塞都市である。

 大陸中で戦乱が続くこの五十年の間に、さらにその構造は複雑化し、今や魔法障壁すら備える魔法要塞と化していた。

 大軍を以て攻めかかったとしても、真正面からこの都市を落とすのは至難の業だろう。

 エルドラドは、軍事的な力もさることながら、大陸屈指の色町としても名を馳せている。

 性産業が大きく発達していて、性奴隷の取引額は世界一。

 町全体に退廃的な雰囲気が漂い、真夜中でも魔法の外灯が道々を照らしている。

 見目のよい情婦が、道行く男に声をかけ、言葉巧みに店に連れ込む。また、別の場所では女を巡る男の諍いで血が流れる。

 そんなことは日常茶飯事だ。

 この国では性産業は規制されない。 

 むしろ、推奨されてすらいる。

 大陸でも最大規模の性奴隷オークションも、この町で行われるのだ。そこには例年、一人か二人は本物のヒロインが出品されるというから、世界各地から挙って金満家が集まって、何とか彼女たちをものにしようと大金を町に落としていくのである。

 多くの場合、ヒロインは国家が管理するものだ。

 彼女たちが持つ力は、国力を飛躍的に上昇させる。また、彼女たちの知識や経験、価値観は国家に悪影響を及ぼすこともある。あらゆる点で、統治者はヒロインを無視することができないのだ。

 その一方で、何の力もないヒロインも少なからず存在する。

 身よりもなく、一人で生き抜く力もないヒロインたちにとって、この世界は過酷すぎる。

 裸一貫で異世界に投げ出されて、異能を持たない普通の少女が生きていけるかといえば、それは難しいだろう。

 多くは人里にも辿り着けず命を落とす。

 力のない少女の中で、少しだけの運が良かった者が人身売買の対象になる。

 何とか拾ってもらって、生き長らえることができた少女の中には、異能を持たないが故に、「無害」「無価値」と判定される者がいるのだ。

 そういう少女の行き着く先は、「ヒロインである」ということが尊ばれる色町や性奴隷であり、性奴隷を取り扱うイザベラ商会は、大陸各地に根を張って、そういうヒロインを捜し回っているのであった。

 まさしく、人の欲望で経済を回している背徳都市。それが、エルドラドだ。

 これを理想都市という者もいるだろう。

 汚らわしい悪徳の都と唾棄する者もいるに違いない。

 だが、現実としてこの国は大いに栄え、行き場のないヒロインの受け皿になっているという事実はある。

 この世界の文化レベルで、深夜遅くまで煌々と町が明かりを絶やさないというのは、非常に珍しい。魔法のランプを外灯として、エルドラド最大の風俗街は不夜城となるのだ。

 住みやすさよりも盛り上がりを重視する、カラフルな外灯は、まるでテーマパークのように風俗街を照らしている。

 色とりどりの光が乱舞する中、長身の女が通りを歩いている。

 長いポニーテールと肩に担いだ長方形の黒く長い筒が特徴的だ。

 腕を組んで歩くカップルと思しい男女とすれ違いつつ、建物の壁際に沿って彼女は歩いた。その表情はあからさまな嫌悪感と怒りが凝縮しており、冬眠明けのヒグマのような凶悪な気配を漂わせている。

 迂闊に声を掛けようものなら、どんな目に遭わされるか分からない。それほどまでにとげとげしい雰囲気だ。

 女は大通りから路地に折れて、外灯の少ない区画に向かう。町外れの古いスラム街だ。町一番の風俗街と隣り合わせに存在した、背徳都市の中でも違法な店が軒を連ねた区画であり、今は当局の手によって、犯罪者たちが一掃され、多くが無人の建物となっていた。

 静寂の海に沈んだかつてのスラム街の中で女の姿は不釣り合いだ。

 

「戻りましたよ、秋山さん」

 

 平屋の家の前で女が声をかける。少ししてからドアが開いたので女は住宅の中に入った。

 家の中は一間しかない簡素な構造だ。屋根と土壁だけで成り立っているような、そんな家である。その壁もところどころに穴が開いていて、もう数年は住人がおらず放置されていることを伺わせた。

 家の中には二人いた。

 人とは紗矢華と同じく長身長髪の女である。メリハリのあるグラマラスな体型で、細面の美しい女だ。

 もう一人は背の低い少女である。

 年の頃は十代の前半くらいであろう。金髪碧眼で少し耳の先が尖っている。

 

「時間通りだな、紗矢華。それで、どうだった?」

 

 家に入ってきた少女――――煌坂紗矢華に答えたのは、長身の女である。

 秋山凛子という。

 その名の通り、紗矢華と同じ日本の生まれだ。

 ただし出身世界は違う。

 同じ国、同じ文化でありながら、辿った歴史はまったく異なるもので、異世界に来たということを紗矢華に強く実感させた。

 とはいえ、言葉は通じるし、出身国の背景が似通っているので親近感は湧く。見ず知らずの異世界人よりは、彼女のほうが話しやすい。

 

「予定通りに行けそうです。日付が変わる頃、北部城壁の排水口から外に出られそうです」

「そうか。なら、もうしばらくの辛抱だな」

 

 四方を城壁で囲まれた城塞都市に出入りするには、東西南北の城門を通るのが基本だ。ただ、当然ながらそこはセキュリティが厳しい。

 紗矢華と凛子の二人なら、出入りは容易だが、今はもう一人連れがいる。

 

「エーリカちゃん、もうすぐ外に出られるからね」

 

 と、紗矢華は少女に話しかけた。

 エーリカと呼ばれた少女は、口数少なく頷いた。

 彼女はもともとは地方領主の家に生まれた姫だ。生まれ育った領地はブリンクウォールとは縁がなく、遥か西方にある。

 では、なぜエーリカがこの町にいるのかといえば、拉致されたからであった。

 普通の奴隷商人が普通の商品を探すのは難しくない。今はどこの町でも貧困層がいて、声を掛ければ金で子どもすら手放してくれるからだ。

 だが、性奴隷となると話が変わる。見目麗しいという条件を満たす奴隷を手に入れるのは、存外難しい。時に非合法な手段で商品確保に動くこともある。ブリンクウォールは、そういった拉致監禁され、性奴隷にされた少女も数多く暮らしているのである。

 紗矢華と凛子は、エーリカの父に依頼されて彼女の行方を追ってここまでやってきた。

 優れた魔術の使い手である紗矢華と五感跳躍の法を用いて遠方を捜索できる凛子がいれば、行方不明の少女を探し出すのに時間はかからなかった。

 紗矢華も凛子も元の世界では潜入、暗殺の訓練を積んでいる。この町に忍び込むのも簡単だったし、首尾良くエーリカを連れ出して、この隠れ家に運び込むことにも成功した。

 後は、この町を出てしまえば一直線にエーリカの領地に逃げ帰るだけだ。

 

「秋山さんのほうはどうですか? 空遁の術でしたっけ。どこまで使えそうですか?」

「この町の中なら問題ないが、やはり内外を行き来するのは難しそうだ。抜け穴も探ってみたが、術で出入りするのは無理だな」

 

 凛子が特異とする空遁の術は、空間跳躍すら可能とする破格の能力だが、この町には結界が張られていて、術による移動が制限されている。

 おそらくは、この町の運営にも携わるヒロインの力によるものだろう。極めて緻密に構築された結界は、まるで城壁のような強度であり、凛子の空遁の術を阻害している。

 脱出するのなら、自分の足で出入りするしかないのだ。

 となると、後は時間との勝負だ。

 逃げられる場所と時間は限定されている。

 エーリカの不在にオークショナーが気づけば、追手が掛かる。時間稼ぎのための偽装工作はしているが、どこまで持つかは不透明だ。

 時間との勝負でありながら、時間が来るまで身を潜めていなければならないというのは精神的に苦しい。

 エーリカも不安を隠せず、黙したまま座っている。

 無理もない。

 箱入りのお嬢様が、ある日突然人さらいに誘拐され、連れ込まれたのがこの背徳都市だ。それも性奴隷としてオークションにかけられる寸前だったのだから、その心労はいかばかりであろうか。

 こんないたいけな少女が不安と恐怖で震えている。性奴隷などという下劣な扱いで不幸のどん底に堕とそうというのだから、許せるはずがない。紗矢華は怒りに狂いそうになる心を深呼吸で静めて、その時を待った。

 

 

 

 水の都でもあるエルドラドは、都市機能を維持するために排水機能も強化している。テチス湖の近くにあるということは、それだけ低地にあるということであり、町の中の余分な水を如何にして外に出すかというのは、避けられない課題なのだ。

 だが、馬鹿正直に川を作って排水するのは防衛上の弱点を作るのと同じだ。城壁で周囲を覆っている意味がない。

 そこで、エルドラドは地下に埋没した巨大タンクに水を溜め、一定時間毎に排水することで、セキュリティを高める方法を選択した。

 水門は日に三回しか開かず、八時間で溜まった水を地下の配水管を通じてテチス湖に流す仕組みだ。外に出てしまえば、凛子の空遁の術で距離を稼げる。

 貯水タンクは地下四十メートルにもなる巨大な施設であり、外と接続する排水管も大型の輸送トレーラーが悠々と通過できそうなくらいの巨大なトンネルだった。

 メンテナンスのために人が通る必要があるからか、配水管には人が通れる通路があった。タンクに溜められた水が流れ下り、排水管から外に向かって疾駆する。 

 紗矢華と凛子、そしてエーリカはその恐ろしい水の流れを真横に見ながら、外に向かって走った。大量の水を一気に流す都合もあって、最後まで十分な広さを維持してくれている。

 

「まった、止まれ」

 

 と、凛子が静止し、柱の陰に身を潜める。

 前方に人影がある。

 革製の鎧に身を包む騎士だ。水辺での戦いを想定して身軽な衣装だ。武器は長剣が一本だけだ。

 門を覗けば唯一外界と繋がるのがこの排水管なだけあって、やはり警備は置いているようだ。

 魔術で気配を消しているので、まだこちらには気づいていない。

 紗矢華と凛子は目配せをして、そして同時に柱の後ろから飛び出すや、愛剣の一振りで三人の騎士を一瞬で打ちのめした。

 峰打ちで意識を刈り取っただけだが、一週間は軽い痛みが残るだろう。手を抜いた物の、金属の塊で殴ったのだから、無傷とは行かない。

 一応、水に落ちるといけないので壁際に運んでから、紗矢華はエーリカを手招きした。

 

「お姉ちゃんたち、すごいんだね」

「ふふん、まあね」

 

 と、紗矢華は得意げに胸を張る。

 少しくらい大げさに振る舞った方が陰鬱な雰囲気を解すことができる。

 子どもを安心させるのだから、少しくらい緊張感がないくらいの口調がちょうどいい。

 

「二人とも、時間がない。行くぞ」

 

 小さく笑って、凛子が言う。

 排水管の出口までもう少しだ。

 扉が閉まると警報装置がすべて再起動する。そうなると次の開門まで八時間も待つことになり、脱出計画を見直すことになる。

 いよいよ、トンネルの出口が見えてきたところで、月光を背後に背負った人影が現れた。

 

「ハーフエルフの奴隷がいなくなったって商会の連中が騒いでるもんだから、どんなヤツが忍び込んだのかと気になってたんだ。まさか、二匹もネズミがいるなんてな」

 

 逆光になって分かりにくいが、立ちはだかったのは金髪の女だった。背丈は紗矢華より少し低いくらいだが、佇まいは油断ならぬ武芸者の気風を漂わせている。少なくとも瞬殺した騎士とは比較にならない力があるに違いない。

 

「何者だ?」

 

 と、凛子が尋ねた。油断せず、刀を構えて目を細める。

 対して問われた女は吹き出した。

 

「よそ者のお前が尋ねるのかい。まあ、いいさ。外から来た連中はあたしの顔なんざ知らねえだろうから、教えてやる。あたしはリドル・バージェス。ヒロインのあんたたちは、知ってるかい?」

「……この国の女王が、まさか貴様だというのか?」

「へえ、さすがにそれくらいは調べてるか」

 

 リドルは否定しない。が、紗矢華も凛子もさすがに驚いた。リドル・バージェスは凛子が言うように一国の女王なのだ。

 間違いなく深夜の排水管の中で出会うような人種ではない。

 

「一国の女王が、こんなところまで出てくるだと?」

「あたしはフットワークが軽くてね。それに、そのハーフエルフは明日の目玉商品だ。あたしも投資してるオークションだからね。つまらない傷を付けられたくないのさ」

 

 傷付けられたくないのはエーリカのことなのか、それともオークションの看板のことなのか、あるいはその両方か。

 ともあれ、エーリカが拉致され、人生を壊されようというのに、リドルは悪びれもせずニヤニヤと笑っている。

 

「あんた、人の心ってのがないの? こんな小さい子に売春させようなんて、巫山戯るのも大概にしなさいよ!」

「あんたらヒロインは余所者の中の余所者だ。何も知らん小娘が、余所の正義を振りかざしてうちの経営に口を出すなよ」

「何ですって!?」

 

 煌華麟が煌めく。この世界にやって来たとき、衣服と共に彼女の傍らにあった相棒だ。

 

「怪我しても知らないわよ!!」

 

 紗矢華が煌華麟を振るう。それと同時に排水管を流れる水の中から水の弾丸が飛び出してリドルを襲った。煌華麟はあくまでも囮だ。視線を紗矢華に引きつけて、水中から背後を狙う。激高したように見せて、紗矢華の理性は冷静に戦術を組み立てていた。

 

「ふん」

 

 対して、リドルはつまらなそうに鼻を鳴らした。

 紗矢華の目の前で、水の弾丸が消滅した。

 

「嘘ッ!?」

「どんなもんかと思えばこの程度か? その馬鹿でかい剣は見せかけかよ。こんなことなら――――」

 

 どすん、という鈍い音がした。

 

「が……あ……なに」

 

 リドルの口から血が溢れだした。

 凛子の刀がリドルの心臓を貫いていたのだ。

 リドルの目には凛子が一瞬で目の前に現れたように見えた。移動の過程はまったく分からなかったし、反応もできなかった。

 凛子の空遁は空間跳躍すら可能とする。

 ほんの十数メートルの距離など、存在しないに等しいのだ。

 紗矢華の魔術が効かなかった時点で、凛子は任務達成のためにはリドルを排除するしかないと結論づけた。女王を切り伏せるのは大問題だが、もとより敵対関係になるのは織り込み済みだ。

 心臓の拍動が刃の先で停止したのを感じた。

 

「ふう……」

 

 数多の敵を斬り伏せてきた凛子にとって、命を奪うというのは息をするのと同じくらい身近なことだ。敵と見定めた者を斬ることに罪悪感はない。リドルが如何にもな悪人ムーブをしていたのだから、躊躇することもなかった。

 凛子は愛刀石切兼光を抜こうとして、

 

「おいおい、あたしの二つ名を知らんってわけじゃないだろうが」

 

 その手をリドルに鷲掴みにされた。

 

「貴様、なぜ!?」

「調べが足りなかったか? それともジョークか何かだと思ったか? こっちは不死身のリドルなんて、堂々と吹聴してんだから、もうちっと警戒してくれないと張り合いがねえだろうが」

 

 凛子の刃は確かにリドルの心臓を貫き、その活動を停止させた。今も、リドルの胸には深々と刃が突き立ち、大量の血を流している。

 だというのにリドルは血を吐きながら獰猛に笑っている。

 

「く……!」

「ハハッ、逃がさねえよ」

 

 凛子をリドルは抱きしめた。刃が強く深く胸を抉るのも関係ない熱い抱擁だ。

 そして、べきべきと嫌な音が響いた。

 

「あ、ぎゃあ、かはッ」

 

 凛子が白目を剥いて、崩れ落ちる。

 鍛え上げた対魔忍の肉体がいとも容易く砕かれた。凛子の二の腕、肋骨が強引にへし折られ、血を吐いて痙攣する。

 

「秋山さん!?」

「人の心配してる場合か? 次はお前だぞ」

「ッ……!」

 

 紗矢華は歯がみした。

 リドルは胸の刀を引き抜いた。驚くべきことに胸の傷が塞がっている。不死身のリドルというだけのことはある。確かに事前にリドルのことは調べていたが、まさか、ここまでの不死身だとは思わなかった。

 

(不死身の理屈は何? あいつは人間だ。魔族じゃない。生まれついての能力じゃないはずだから、治癒魔術? それとも心臓を別に用意してるとか?)

 

 不死身の敵と戦うのなら、相手の不死身を支える根幹を把握しなければじり貧になる。倒す手段がなければ、それだけで不利なのだから。

 リドルの右手が挙がる。魔力が集まり、紫電を発する。正体不明ながら何らかの能力の行使だ。

 

「煌華麟!」

 

 紗矢華は剣を振るった。

 煌華麟の能力は次元切断。

 空間そのものを切り裂き、あらゆる物体を硬度を無視して両断するという凶悪な武神具である。そして、攻撃は最大の防御というように、煌華麟で薙いだ空間は、一瞬だけ時空の風穴となって、敵の攻撃を吸い込んでしまう。 

 どんな攻撃も時空の穴を乗り越えることはありえない。

 リドルの電撃は、紗矢華には届かない。そのはずだった。

 

「くああッ!?」

 

 強烈な電流が紗矢華の身体を貫いた。

 全身に張り巡らせていた魔術防壁も一瞬で消滅する。煌華麟を地面に突き刺して何とか踏ん張るのが関の山であった。

 

「な、にを……この力」

「直撃のはずだが、倒れなかったのか。存外、根性が座ってるじゃないか。ま、何にしても最初からお前らに勝ち目なんてないんだから、さっさと諦めてしまえ。なあ、エーリカ」

 

 ばちん、と紗矢華の背中に衝撃が走った。

 

「え……?」

 

 力が抜けて倒れた紗矢華が目にしたのは、魔力の残滓を右手に揺らめかせるエーリカの姿だ。

 

「どうして?」

「ごめんね、お姉ちゃん。でも、リドル様のお言いつけだから」

「まさか……そんな」

 

 初めて、紗矢華は理解した。

 エーリカは紗矢華にも凛子にも心を開いていなかったのだ。それどころか、自分の居場所すらリドルに伝えていたのである。

 

「これからオークションに出そうってんだぜ。まさか、なんの調教もしないってことはないだろ。お前らは来るのが遅すぎたのさ。もう少し早く来てれば、展開は変わってたかもな」

「あ、あんた、許さない。こんな酷いこと、あがッ」

 

 リドルは紗矢華を踏みつける。

 エーリカの魔法で拘束された紗矢華は全身が痺れて動かないのだ。

 

「反抗的だな、不法入国の犯罪者風情が。まあ、それくらいのほうが盛り上がるってもんだ。さっきの女と一緒にしっかり調教してやるから、覚悟しておくんだな」

 

 リドルは不敵に笑う。

 彼女にとっては、見目麗しい女が自分の縄張りに勝手に飛び込んできたようなものだ。この状況を活かさない手はないとすら思っている。

 紗矢華は嫌な予感に打ち震えながら、瞼を閉じた。

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