※この作品はR-18です。

異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話   作:もう万体

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第四十一話(エロなし)

 背徳都市エルドラドの郊外に設置された収容所は、モラルの著しく低下したエルドラドの町における唯一の収容所だ。

 町の規模に比して施設が小さいのは、収容されるほどの大罪人がいないからだ。この町は一般的なモラルこそ低いものの、罪を犯す者は少ない――――一般的な犯罪もこの町では犯罪に当たらないからである。そのため、国家反逆罪などの政治犯以外は、よほどのことがない限り逮捕されない。この町に細かい法はない。「殺すな、盗むな、騙すな」、原則はこの程度で、それに従う限り目くじらを立てられることはない。

 犯罪が少ないということが治安が良いということに繋がらないのが背徳都市たる所以である。逆に、犯罪ではないことなら、何をしても良いという風潮すらある。

 昼も夜も変わらない。

 この町にトラブルのない日は一日たりとも存在しない。 

 例え法の縛りがあったとしても、罪を犯す者はゼロにはならない。

 エルドラドであれば尚のこと。

 郊外に形成されたスラム街では麻薬が蔓延り、スラムが「浄化」された後も薬物の汚染は留まらない。不正に持ち込まれた麻薬が闇ルートを通じて取引されている実態がある。

 市街地に立つ五階建てのホテル「グローリー」は、行商人御用達の低価格路線で人気だ。宿泊客の大半は国外からやって来た行商人であって、人身売買も大々的に行うエルドラドの特性から商品となる奴隷を管理する特別な部屋もしっかりと用意されている。

 団体客向けの大規模な宿泊施設は、この国の主要産業である性産業を支える重要な拠点であり、だからこそ犯罪行為が見逃される傾向があった。

 グローリーのエントランスには、砂塵で汚れたローブを着た宿泊客で賑わっている。時折、グローリーの制服を着た奴隷が男たちを案内している。エルドラドのホテルの多くは、性奴隷を所持しており、金を積めば彼女たちに旅の疲れを癒やしてもらえるのである。グローリーは宿泊料金を低額に抑えながら、こうしたオプションで収益を上げるビジネスモデルで成功している。

 日が暮れてからがエルドラドの本番だ。多くの性産業が昼夜逆転していることも珍しくなく、それが目当てでやってきた客層は、今がまさに遊び時である。 

 人の出入りが最も活発なこの時に、グローリーに足を踏み入れたのは、一人の少女であった。

 背が高く、ツインテールの髪は金色に輝いている。すすけたローブを来ているために体型は分からないが、細身であることは確かだ。

 顔立ちは飛び抜けて整っており、高身長の割には童顔だ。 

 男たちの視線が首元に向けられる。

 奴隷の証として一般的な首輪やチョーカーの有無をまっさきに確認するのは、この町では非常に重要だ。何せ、うっかり大物の所有物に手を出そうものなら、次の朝日を拝めなくなることもあり得る。身を守る上でも他人の奴隷に手を出してはならない。

 女の一人旅であろうか。エルドラドの悪名を知っていれば、この町に迂闊に足を踏み入れることもないだろうに。

 下心を隠さない男たちの視線を無視して、少女はエントランスを通り抜けて階段を上がっていく。

 目的の階は三階であった。

 少女は一番東側の部屋の前に立ち、ドアをノックした。

 十秒までも返事がないので、少女は苛立たしげに口元を歪めて、ドアを蹴り破った。

 粉々に砕け散るドアの破片が、すぐ後ろにいた男の身体に突き刺さり、さらに五メートルは跳ね飛ばした。不運な男は、血しぶきをまき散らして壁に叩き付けられ、二度と起き上がることはなかった。

 

「な、なんだてめえは!?」

「女!? いきなり、なんなんだ!?」

 

 部屋の中には身なりのよい男たちが集まっていた。

 テーブルの上には金貨が並び、その隣にガラス瓶が何本も置いてある。液体ではなく白い粉が封入されている。

 

「あー、はいはい、違法薬物の取引現場確定ですね」

 

 愛らしい声音で少女は呆れたように呟いた。

 

「こういうのは、陛下が直々に管理なさる物。売買は御法度ですよ」

 

 少女の言葉に全員が顔を青くした。

 背徳都市でも麻薬は厳しく制限されている。国家の機能を阻害する要因として認識されており、その取り扱いはリドルの許可を必要とする。当然、ホテルの一室で取引することを容認する理由はない。

 

「陛下の騎士!?」

「なんで、そんなのがここに!?」

 

 麻薬の売買は禁止されているが、騎士階級も多くが腐っているのがエルドラドだ。蔓延する薬物犯罪を積極的に取り締まろうという者はごく少数であり、この部屋を提供したのも実は騎士の一人だったのだ。

 騎士を仲間に取り込んだ男たちは安心しきっていた。

 そこに突然、彼女が乗り込んできたのであった。

 テーブルを挟んで三人ずつ、計六人で金額交渉をしていたところで、すべての証拠がご丁寧にもテーブルの上に乗せてある。

 

「ま、待ってくれ。俺たちは別に麻薬の売買なんてしちゃいない。これは、こいつが勝手に持ち込んだもんだ。自慢げに見せてくるから、困っちまってたんですよ」

「て、てめえ何寝ぼけたこと言ってんだ!?」

 

 買主と思しい男がさも困ったというような顔で対面する男を指さす。当然、手の平を返された売主側は食ってかかった。

 

「違う、俺たちじゃねえ。こいつらが持ってきたもんだ。関係ねえ。これが悪いもんだったなんて、知らなかったんだ」

 

 今度は売主側が必死の言い訳をする。

 突入してきた少女は困ったような顔をする。

 

「ええ、じゃあ、これ、どっちが持ってきたものなんですか?」

 

 と、首を傾げる。

 どちら側もガラス瓶は相手が持ってきたのだと主張している。自分のものだと認めることはしないので、延々と罪の擦り付け合いが続くばかりだ。

 エルドラドの収容所に連れて行かれたら、どのような目にあうか分からない。必死にもなる。

 結局、どちらの話を聞いてもはっきりしたことは分からない。

 見苦しい言い訳に終始しているのは分かるが、つじつまは合わないし、真実からほど遠い話が続くだけで何の役にも立たず、聞いているほうは困惑するばかりだ。 

 

「えー、うーん、あなたたちの言っていることは、よく分かりません。けど、ここにいたのは事実ですし…………分かった。じゃあ、こうしましょう。喧嘩両成敗じゃないですけど、もう面倒だし纏めて死刑にしましょう」

 

 にこやかに少女は手を叩いて言った。

 言葉の意味を無視するのであれば、彼女の愛くるしい表情に見とれる者も少なくなっただろう。ただ、発言の内容はとてもまっとうとは思えないものではあった。

 

「女王の騎士様だからって冗談きついぜ。なあ、おい。こっちが下手に出てやってるからって図に乗ってんじゃ――――」

 

 男はソファから立ち上がり、少女に掴みかかろうとしていた。

 年若い乙女が一人で男たちの縄張りに入ってきたのだ。社会的な立場は彼女が上。だからこそ、大人しくしていたが、軽々しく死刑などと冗談めかして言われたので頭に来た。

 自分たちの命と立場を上から目線で弄ばれていると感じたのだ。犯罪者ではあっても、尊厳はある。騎士という身分だけで、何でも好きにできると思っている小娘に立場を分からせてやろうとすら考えた。

 しかし、男の思考はそこまでだ。

 彼が言葉を言い切る前に、その命は爆ぜて真っ赤な血肉となって、部屋一杯に飛散したからだ。

 首から上を失った男の身体がテーブルの上に倒れ込んだ。ガラス瓶が砕け、血を吸った粉がばらまかれた。

 

「うん、初めからこうしてればよかった。結局、皆殺しにするんだから、言質を取る必要なかったね」

 

 恐懼に震える時間も、男たちには与えられなかった。

 少女の身体から噴き上がった魔力は、彼女がまともな人間ではないことの証であり、男たちが装備した様々なマジックアイテムも鍛錬し身につけた魔法も一切意味を成さず、殺戮の嵐は瞬く間にホテルの一室を血の海に変えた。

 

「あはッ、あはははははははははははははははははははははははははははははッ!!」

 

 振り抜いた手刀で頭を飛ばす。

 武器を使うまでもなく、人間の男程度素手でバラバラにすることができる。

 天井まで届く血の噴水が、綺麗な花のように咲き乱れ、手足を落とし、腹に穴を開け、内臓がごろりとこぼれ落ちる。

 少女は金色の瞳を輝かせ、楽しげに笑った。 

 最初の三人は幸運だった。

 真っ先に頭を落とされたので、即死できたからだ。

 

「ひ、ひいいいい!」

「あ、逃げちゃダメですよ」

 

 逃げようとした男の足が両断された。

 ひっくり返った男の捕まえた少女が、残された腕も手刀で切り落とした。

 即死を許されなかった三人も、結局は処刑される運命にあった。意識を最後まで残したまま、嵐のような殺戮を目に焼き付ける。

 部屋中に血の臭いが充満する。

 死体は踏み潰され、切り刻まれて解体され、肉の塊に成り果てた。

 一目では犠牲になったのが人間だと分からないほどである。

 過剰極まりない破壊活動は、時間にしてほんの一分足らずの出来事だ。

 

「あー、気持ちよかったぁ」

 

 少女は血のついた指先を舐めた。

 昂揚しているのか頬には朱が差している。

 人の血の臭いを嗅ぎ、その末期の怨念を吸って、彼女は力を高めている。殺せば殺すほどに、調子が上がっていくブリンクウォール最悪の粛正騎士である。

  

「……見つけましたよ。こんなところに寄り道をして、何をしているんですか?」

 

 背後から声をかけられて振り返る。

 

「メディア様、お久しぶりです!」

 

 血染めの少女は、ぱっと花が咲いたような笑顔を浮かべる。

 魔術師メディア。ブリンクウォールの宮廷魔術師である。可憐な少女の姿をしているが、その魔術の腕前は規格外というに相応しい。

 

「マスターへの挨拶が先でしょう。このようなところで油を売ってないで、早く登城してください」

「ごめんなさい。でも、ちょうどよく麻薬の売人を見つけたので」

「麻薬の売人? そうですか。それで……」

「男の人が、あー、ええと、何人いたんだっけ。まあいいですよね。麻薬は国を蝕む毒。持っているだけで、死刑確定です☆」

「可愛くウィンクしてもダメですよ。まったくもう、すっかり狂犬が板についてしまって。その様子だと、道中でも何人か食べてきたんでしょう?」

「どうでしょうか。もう、あんまり覚えてないです」

「血の臭いをプンプンさせてマスターの前に出すわけにはいきませんね」

 

 メディアは杖を振ると、一陣の風が吹き荒れて部屋の中に漂っていた血臭を一掃した。それどころか、肉片を一片残らず消滅させ、カーペットやソファに染み込んだ血も跡形もなく消してしまう。 

 

「お見事です。すごいですね」

 

 少女が目を輝かせて言う。

 彼女の血に染まったローブは新品同様に綺麗になった。

 神代最高峰の魔術師であるメディアにとって、この程度は造作もないことだ。

 

「寄り道はほどほどにしなさい。マスターはあなたの報告をお待ちです。まさか、大公様の援軍まで忘れてしまったわけじゃないでしょう?」

「それは、覚えてますよ。頑張って、ちゃんと記憶してきましたから、大丈夫です」

 

 少女は握りこぶしを作って言った。

 最近苦境に立たされているクロガネ大公国からの要請に応えて援軍に向かったのが彼女だ。

 彼女は命乞いなど一切通じない殺戮兵器。

 投入された戦場の敵を一掃し死を積み上げ、その怨嗟の声を貪り食らう死の化身だ。戦場に放り込めば、縦横無尽の活躍をしてくれることは間違いない。

 ブリンクウォールとしては彼女の性能試験も兼ねていたので一石二鳥であった。

 クロガネ大公国は、勢い付いてきた反体制派に対して彼女を送り込み、凄惨な虐殺を敢行した。

 目に映る者をすべて老若男女に関わりなく破壊する様は、送り込んだクロガネ大公すらも恐怖する程であったという。

 燃やした城は六基に及び殲滅した騎士は三千人を上回る。その過程で、不運にも目に止まった領民たちも彼女の手に掛かったと思われる。彼女は力任せに破壊をばらまくので、人体は原形が残らない。そのため、正確な犠牲者数は算出不能だ。

 川は血に染まり、腐敗臭は風下の町を覆ったという。

 

「準備ができたら、寄り道しないで来てくださいね。――――ブラダマンテ」

 

 メディアはそう言うや転移魔術で姿を消した。

 残された少女、ブラダマンテはかつてそこにあった命を蹂躙したとは思えないほど上機嫌そうにして、部屋を出て行った。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

「砦を取られた?」

 

 急報を受けたマオは、手紙を書いていた手を止める。

 

「イステネブルとの国境にあるネージュ砦にいつの間にかヒロインが住み着いていたみたいなの」

 

 と、報告するのは愛歌である。

 愛らしい顔を曇らせて、どうしましょうと困り顔だ

 

「ネージュ砦は、確かこの前の戦で焼けて破棄する予定だったところだな」

 

 ネージュ砦は見晴らしのよい高台にあり、イステネブル方面を見渡すことのできる立地にある。ただし、水場がなく手狭なので、見張り台としては有用でも、防衛戦には不向きであり、現在は廃棄が決定していた。

 

「あそこは人を配置してなかったからな」

 

 すぐ近くに同様の立地の砦があり、防衛機能としては代替できることもありネージュ砦は無人の廃墟となっていた。

 防衛能力もイステネブルに攻められた際に壊されたままになっていたので、万が一、イステネブルの再侵攻によって奪われても大きな問題になるとは考えていなかった。

 

「どこの誰だ、あんなとこに乗り込んできたのは? そこまでは分かっているのか?」

「ジャンヌ・オルタっていうサーヴァント。クラスは珍しいアヴェンジャーね」

「サーヴァント系のヒロインか」

 

 サーヴァント系というだけで、高い能力があることが想像できる。

 騎士を駐在させていたところで、サーヴァントには敵わない。抵抗しても砦を奪われていただろうから、これはこれでよかったのだ。

 

「とはいえ、放っておく訳にはいかないな。廃棄が決まった砦とはいえ、うちの持ち物だ」

「そうね。砦を取られるということ自体、よくないことだものね」

「と、するのならさっさと取り返すに限る。何を目的に砦を取ったのか知らないが、別の勢力を引き入れるためだったら大変だ」

 

 相手がヒロインであれば、マオの敵ではない。ジャンヌ・オルタというサーヴァントの脅威度は不透明だが、結界の効果が薄い国境付近ということ差し引いてもこちらが有利だ。

 放置はできない。

 砦をヒロインが落としたとなれば、反体制派が動き出すのも時間の問題だ。反体制派はどこにでも湧き出す。うかうかしていると、よからぬ騒ぎを起こしかねないし、他国の侵攻にも影響する。早急に対応する必要があった。




ブラダマンテ(オルタ)
【クラス】 アヴェンジャー/ランサー
【ステータス】筋力B 耐久A+ 敏捷A 魔力A 幸運E 宝具B
【属性】混沌・悪
【スキル】
・対魔力A
 Aランク以下の魔術を無効化する。
・魔術解除A
 自身にかけられた魔術効果をBランクまで自動で無効化する。Aランク以上の魔術  
 は幸運判定次第。
・復讐者A
 自分に向けられた負の感情を力に変えるスキル。ブラダマンテは男性に対して強
 烈な殺戮衝動を抱く。
・歪曲A
 本来のクラスを歪められ、別クラスの特性を与えられた証。反面、元のクラス別
 スキルが低下するがブラダマンテの対魔力は第二宝具に由来するランクのため実
 質影響なし。
・忘却補正E
 復讐者は決して忘れないのだが、制限をかけられたブラダマンテは復讐対象を長
 く記憶できず、復讐心だけがこんこんと湧き続ける。
・魔力回復A
 復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。
・最期の善性
 メディアが保護するブラダマンテの善性の欠片。心の奥底で、変わり果てた自分 
 を呪い続ける。彼女の苦悩は、復讐者スキルによって自己強化に転用される。
・黒羽の騎士B
 白羽の騎士が変質したスキル。元は頑健スキルの一部と戦闘続行スキルの複合ス 
 キルだったが、そこに低ランクの吸血スキルが追加されている。反転した彼女は
 他者の嘆き、呪詛を血を介して積極的に吸収する。
・クレルモンの勲
 反転した際に喪失した。

 
 元はランサークラスで限界し、レジスタンスとして活動していた少女騎士。囚われの身となった後、霊器を改造されてアヴェンジャーに変質した。
 魔術が効かない上に本人の精神が強靱なのでメディアも苦労した。
 そのままで堕とすのは無理だったので、根本から弄り回した結果、理性が飛んで血に飢えた狂犬に生まれ変わってしまった。
 霊器改造の影響で記憶力、知性が若干低下している。
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