※この作品はR-18です。

異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話   作:もう万体

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第四十六話(スピカ)

 ジャンヌ・オルタと契約し、バンビエッタを退けた後、マオは密かにミコトのトークンを魔女の森に差し向けた。

 イステネブルの領地のため、大々的な調査はできない。しかし、だからといって捨て置くわけにも行かない。なぜならば、魔女の森にいる魔女の身柄をイステネブルに確保されるわけにはいかないからである。

 ミコトのトークンは、狼の形状を取って森を調べて回った。

 魔女の森の結界が破られ、魔術的な守りは一切ないという状況である。

 魔女が住処としていたログハウス周辺は激戦地だったようで、木々の一切が吹き飛んで、クレーターだらけだ。この辺りは火災を起こす間もなく吹き飛ばされてしまったようだ。

 そして、小一時間の調査の終わりに焼け残った森の中で倒れている魔女を発見し、保護することに成功した。

 金色の髪の少女。

 人形遣いのアリス・マーガトロイドである。

 魔女の森を作り出し、時折町に来ては人形劇などして帰って行く。人里離れた森の中でひっそりと暮らすアリスにとって、バンビエッタの強襲は想定外のものではあっただろう。

 アリスの容態はよくない。

 爆撃を受けて身体中に火傷が見られた。頭を打っているのか意識も戻らない。保護したアリスはすぐにパラディクレールに運ばれ、治癒魔術による治療が行われた。

 ユイや愛歌といった治癒魔術の優れた術者がいるのは、こういった場面で役に立つ。

 治療の結果、アリスは一命を取り留めた。

 後、もう少し治療が遅れていたら彼女は手遅れになっていただろう。

 

「死んでしまったら、さすがに蘇生はできないわ」

 

 と、愛歌は言った。

 根源接続者の愛歌であっても、死者蘇生は実現できない奇蹟の一つだ。

 アリスは目を覚ました後、自分がパラディクレールにいることに驚いた様子だったが、事態を飲み込むとマオに感謝の意を伝えてきた。

 アリスの住まいであった魔女の森は、完膚なきまでに破壊され尽くしていた。自宅兼アトリエであったログハウスが建っていた場所はクレーターの中心で、その周囲も隕石が落下したかのような惨状である。

 

「お前がその力をノワールのために使ってくれるというのなら、衣食住を提供する」

「……選択肢なんてそもそもないんじゃないの?」

「これでも領主なんでね」

 

 マオに仕えるということはノワールの宮廷魔術師の一翼を担うと同時にマオの私的な軍隊に所属するようなものである。

 アリスの関心はノワールにはない。静かに人形を作り研究して暮らしていければいいのだ。

 だが、時流がそれを許さない。

 魔女の森を形成して引きこもっていても、結局、余所からやってきたヒロインがちょっかいをかけてくる。

 引きこもっているだけで、自分の生活を守ることなどできないのだ。

 

「分かったわ。どうせ、行き先もないんだし」

「受け入れてくれて助かるよ」

 

 生活の場を整えるのが何よりも重要だ。流浪の旅ができないわけではないが、好き好んでする意味もない。

 アリスは現実的にものを考えるタイプだと自認している。

 人間だらけの環境でどれだけ自分の今までの生き方を継続できるかは未知数だ。

 不満はあるが言っても仕方がない。

 助けてもらった上に部屋の準備など何から何までおんぶに抱っこだ。恩の一つも返さないで、悠々自適な生活に戻りますというのは虫がいいというものだ。

 マオのことも知らないわけではない。

 ブリンクウォールとイステネブル、クロガネ大公国という周辺諸国を比べれば、ノワールは規模こそ小さいものの、まだマシな部類だ。

 どこかに属するのなら、マシなところに所属して身の安全は確保したいわけだ。

 マオはアリスの力が欲しい。アリスは落ち着いて研究開発ができる環境が欲しい。互いに悪い取引ではない。アリスが仕事をきちんとこなして行けば、郊外に別荘を設けることもできる。

 それに何より、この国には自分の知らない魔術・魔法を使う者がいる。自分一人の研究では、限界があるということも承知しているので、彼女たちの知恵を借りることができれば、今よりもずっと自分の能力を高めることができるのではないだろうか。

 

 

 

 ■

 

 

 新調したシーツの上にマオとスピカが横たわる。涼やかで怜悧な神騎は、普段の生真面目で引き締まった表情を崩してマオの身体にすり寄っている。

 神騎という人間ではない種族ではあるが、温かさも柔らかさも人間と変わりない。

 小柄な割に大きな胸が押しつけられる。スピカの肩を抱き寄せて、添い寝をしているとスピカはマオの胸に手を置いて慈しむように撫でてくる。

 

「マオ殿、最近、またヒロインが増えたようですね」

「不満か?」

「……マオ殿の戦力が拡充するのはよいことです。不満など……」

「嘘が分かりやすいな、スピカ」

「……ヒロインが増えるということは、マオ殿に抱かれる女が増えるということ。確かに、それは、あまり快くはありません」

「嫉妬か。可愛いな」

「可愛いなどと……わたしは、そうですか、嫉妬、なのでしょうか」

 

 スピカは横を向いて、マオに足を絡ませる。

 さらに、手をマオの下腹部に動かしてペニスを撫でる。

 

「熱い……少し撫でただけで、もう大きくなってます」

「スピカが欲しくて堪らんのだ」

「マオ殿……」

「舐めてくれるか?」

「はい」

 

 スピカは身体を起こしてペニスに顔を寄せる。ペニスを握って、勃起させてから、髪を掻き上げて邪魔にならないようにして、唾を垂らした。

 くちゅくちゅ、とペニスを扱いて唾を纏わせ、舌先で亀頭を舐める。

 

「んあ……れろ……れろ……れろ……れろ……れろぉ……ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぱ」

 

 裏筋にキスをして、竿を扱きつつ根元にしゃぶりつく。そこから舌を押しつけて先端までねっとりと舐める。

 チロチロと裏筋を舌先で撫でてから、ペニスを咥えてしゃぶり始める。 

 

「ちゅぷ……ちゅぷ……ちゅぷ……ちゅぷ……ちゅぷ……ちゅぷ……んじゅる……じゅるる……じゅるる」

 

 スピカは熱心にペニスへの奉仕をする。

 激しすぎず弱すぎない適度な刺激でスピカの口の温もりをしっかりと感じることができる。

 

「んん……んむぅ♡ じゅるる……じゅるる……じゅるる……れるちゅ……ちゅ……はあ、れろぉ……れろぉ……ちゅぱ♡ はあ、はあ、ん……あ……れろ……れろれろ♡」

 

 スピカの口の中で舌が大きく動いて、亀頭を舐めている。

 ぞくりとした快感がペニスから伝わってくる。

 ずいぶんとスピカはフェラチオが上手になった。繰り返し教えたからだが、これからますます上手になっていくと思うと堪らない。

 普段のすまし顔が、フェラチオをしているとすっかり下品に歪むのだ。

 

「んふぅ……ちゅる……ちゅる……ちゅる……んじゅッじゅる……じゅる……じゅるる……んむ……んむ……ちゅぶ……じゅるる」

 

 スピカはペニスから口を離して、亀頭を手で撫でながらペニスの根元に唇を押し当てつつ、こちらを見つめてくる。

 

「いかがですか、マオ殿、れろ……わたしのフェラチオ……ちゅ……れろ」

「ああ、いい。本当に上手くなった」

「本当ですか? よかった。ちゅ……れろれろれろ」

「スピカはそろそろ入れる」

「分かりました。はあ、わたしも、したかったです」 

 

 スピカはいそいそと立ち上がるとマンコをペニスに擦りつける。

 マオはスピカのマンコにペニスを挿入する。腰を下ろしたスピカはふやけた顔で快感に身を震わせる。

 

「はああぁ……あ、わたしの膣内、いっぱいにマオ殿のペニスが」

「スピカ、そのまま動かして」

「はい、ただいま」

 

 騎乗位となったスピカは腰を上下に動かして、ペニスを擦り上げる。

 マンコはびちょびちょに濡れているので、滑りがいい。

 しがみついてくる肉襞を引き剥がし、角度を変えてペニスを愛撫する。

 自分が気持ちよくなるために、スピカは腰を回し、快感を貪った。

 

「はあ、んはあ、あん♡ マオ殿、マオ殿ぉ、あはッ、あん♡ 気持ちイイ♡」

「スピカ、もっと腰振れ」

「はい。ん……はあ……マオ殿のペニス、気持ちイイ。最高です、あ、もう飛びそう、ふあッ、んあッ、あふッ、んああ♡」

 

 スピカと恋人繋ぎをしながら腰を突き上げるマオ。

 スピカは嬉しそうに天井を仰ぐ。

 天界神騎といえど、ここまで堕ちれば人間と変わりない。

 もともとは食事も排泄も不要な超越存在だったのに、愛欲を貪るようになってからは人間と同じ生活スタイルを確立した。今では空腹を初めとした生理的欲望を感じるようになっていた。

 

「スピカ、すごいぞ。腰使いがいやらしくなった」

「そ、そのようなこと言わないで、あ♡ ますます、気持ちよく、なってしまう♡」

「言葉責めで感じるのは変わらないな。もっと敏感になったんじゃないか、淫乱神騎」

「ひッ、ああ♡」

 

 スピカのマゾヒズムに火がつく。

 どういう訳か、スピカはこうして言葉責めをされると途端に身体の自由が利かなくなってしまうのだ。

 マオはスピカを抱き寄せた。

 しっかりとスピカを逃がさないようにして、腰を突き上げる。

 

「ひうう♡」

 

 スピカが耳元で愛らしく呻く。

 そんなスピカに、マオは囁いた。

 

「マンコがキツキツに締め付けてくるぞ。これで淫乱でなくて何なんだ?」

「ひ、あ、ちが、違います、わらし、淫乱じゃ……あ、ふえあぁ♡」

 

 スピカの耳を舐めて、さらに卑猥な言葉を流し込む。

 そのたびにスピカのマンコは締め付けを強め、腰振りが激しくなる。

 

「まるで犬だなスピカ。そんな格好で、腰振って」

「ひゃん♡ あ、申し訳ありません♡ あ、はあん♡ マンコの奥から、気持ちイイから♡ あん、んあん♡」

 

 スピカは余裕のなさそうな喘ぎ声をしている。はあはあと息を荒げて、マオにしがみついてくる。

 

「もうイキそうなんだな?」

「はい……い、イキます♡ あ、あ、イク、あ、へはあぁ♡」

 

 スピカの尻を叩き、ペニスを打ち込む。

 膣肉がうねり精液が吸い出される。

 精液の灼熱がスピカの膣を熱する。腰が跳ね逃げ出しそうになるのを押さえ込み、マオはさらに精液をスピカに飲ませる。

 

「おッ、おおぉ~~~~♡」

 

 情けない呻き声が聞こえる。

 スピカは快楽に蕩けきった表情をシーツに隠し、精液の胎内で味わっていた。

 一頻り、セックスで発散した後、キスをしたり身体を愛撫をしたりしながら夜を過ごした。

 

 

 ■

 

 

 

 うららかな午後の日差しの下をジャンヌ・オルタは歩いていた。

 服は漆黒の鎧から当世風のシンプルなワンピースに着替えている。

 服飾はそこまで流行っていないのか、一般住民向けの服は少なく、趣味嗜好を衣服に反映させるのは難しい。

 その上で、選んだワンピースは派手さが足りず、地味に見える。もう少し、ジャケットか何かを足したらマシになるだろうかと考えていると、海に出た。

 人通りが国内で最も多い海岸線の商店街。

 船乗りたちが多く訪れる地区なので、実用性を重視した商売をする鍛冶職人や陶芸家などの比率が高い。

 白い石で舗装された海岸線の道路を歩いていると、正面から見知った顔がやって来た。

 

「げ……」

 

 ジャンヌ・オルタはあからさまに嫌な顔をする。

 二人で仲よさそうに歩いてくるかつての仇敵。

 カルデアのマスターとデミ・サーヴァント。フランスの特異点で、ジャンヌ・オルタの復讐を阻み、世界を救った二人組であった。

 

「いや、驚いたよ。まさか、オルタがここに来てるなんて。しかも、マオさんのサーヴァントなんだって?」

 

 と、立香は親しげに話しかけてくる。

 ジャンヌ・オルタは毒気を抜かれてそっぽを向いた。

 海辺のレストランは昼の忙しい時間帯を過ぎて、少し人が減ってきたところだ。一番景色のよい海側のテラスの席を確保できたのは、偶然もあるが三人が揃ってマオに仕えるヒロインという特別な立場だからだろう。

 特に立香とマシュは、ロドポリス解放作戦に参加していたので、町では顔も名前も売れている。

 

「驚いたのはこっちなんですけど。なんで、よりにもよってカルデアのご一行がここにいるのよ」

「まあ、いろいろあって」

「……やっぱり、あのマスターとヤッたわけ?」

「……え、あー、まあ、あはは」

 

 立香は頬を染めて誤魔化したが、ジャンヌ・オルタは舌打ちをしてテーブルに頬杖をついた。

 

「なんていうか、わたしを阻んだヤツがそろいもそろってふぬけにされてるの見ると腹立つわ」

「マオさんのサーヴァントになったのなら、オルタもそうじゃないの?」

「…………」

 

 ジャンヌ・オルタは答えなかった。

 確かに、ジャンヌ・オルタもまたマオにセックスで堕とされた身だ。

 快楽に抗えず契約を結び、マオをマスターとして認めてしまった。

 それはそれとして自分を倒して世界を救った立香が、男に絆されて堕ちているというのは、何とも腹立たしいことではあった。

 

「オルタさんがこちらに来たのは、一昨日と聞きました。もう、パラディクレールでの生活は慣れましたか?」

 

 と、マシュが尋ねる。

 

「慣れるも何も、まだ知らないところだらけよ。だから、こうして見て回ってるんだっての」

「じゃあ、港まで下りてきたのは初めてなんですね」

「そう」

「それなら、これから一緒に町を回りませんか? 美味しいお菓子のお店とか、いろいろあるんですよ」

「はあ? なんで、よりにもよってあんたたちと一緒に行動しなくちゃならないのよ」

 

 と、ジャンヌ・オルタは悪態をつく。

 ジャンヌ・オルタとしては、昨日まで敵同士で、しかも壮絶な殺し合いの末に自分を殺した相手の首魁が目の前にいる元カルデアのマスターなわけで、いきなり仲良しこよしというわけにはいかない。

 

「いいね、マシュ。そうしよう。じゃあ、次は二番街のクリスタルビーズでどう?」

「いいですね。この前、食べられなかったオレンジとレモンから攻めてみましょう」

  

 と、勝手に二人で盛り上がっている。

 ついでにジャンヌ・オルタもついていくことになっているらしい。

 

「あのね、別についてくとか言ってないんだけど」

「はい、オルタ」

「んぐ!?」

 

 立香が手元のジェラートをスプーンで掬ってジャンヌ・オルタの口に押し込んだ。

 爽やかな林檎の香りが口いっぱいに広がる。甘みと酸味の絶妙なバランスが堪らない。舌に残りすぎず、駆け抜けるように味わいが去って行く。

 

「美味しい?」

「美味しい……ハッ、そうじゃなくてね!」

 

 危うく絆されそうになったので、すかさず反論しようとするジャンヌ・オルタ。

 

「先輩、わ、わたしもそれ、食べてみたいです」

「これ? いいよ。はい」

「いただきます!」

 

 立香がマシュに林檎ジェラートを食べさせる。

 ひよこか、とジャンヌ・オルタは内心で毒づいた。

 

 

 クリスタルビーズは、住宅街の一角に居を構える菓子店だ。

 飴の専門店で、特に半透明な飴を生産することからクリスタルビーズという名になったらしい。

 品目は多岐にわたる。

 船の上でも摂取できる重要な栄養源として重宝されており、退屈な船旅の中で様々な味を楽しめる飴の詰め合わせは船乗りにとっては清涼剤だ。

 天井まで届く棚に所狭しと並べられた瓶の中に色とりどりの飴が入っている。

 オレンジやレモンはいいとして、ラム肉とか鯛、はてはイナゴまであるのは大丈夫なのか。瓶に入っている飴は、もう何年も放置されたままなのではないだろうか。

 

「で、おすすめは何よ。言っておくけど、変なの勧めてきたら燃やすわよ」

 

 なんだかんだでついてきたジャンヌ・オルタは、常軌を逸したラインナップに顔色を変えつつ尋ねた。

 

「わたしもゲテモノはいらないから大丈夫。そうだね。人気があるのは、王道のオレンジとレモン。この前売り切れたんだよね。林檎とハッカもいいよ。ブルーハワイ、はよく分かんない。そもそも何の味なんだろうね」

「じゃあ、ハッカ」

「お、当たりだね」

「何が」

「何となく」

「はあ?」

 

 ジャンヌ・オルタは支給された銅貨で支払いを済ますと、ハッカ飴を口に放り込む。

 悪くはない。

 立香とマシュは仲良く狙っていたオレンジとレモンを買って山分けしている。

 年相応に日常を謳歌しているといった感じだ。

 この町で平穏無事に生きていくという選択肢も、ジャンヌ・オルタにはある。

 アヴェンジャーとしてはあり得ない選択肢だが、そうなったらそうなったで構わないと心のどこかで思っている。

 本来あるべき、魂を軋ませるほどの復讐心が湧いてこないのだ。

 穏やかに凪いだ心の内では、恋い焦がれた破滅的な滅びへの渇望すらも遠い記憶の彼方だ。戦いの場で、マオの許可が下りたとき、初めてジャンヌ・オルタは復讐の鬼となって力を発揮できる。日常を生きる内は、さほど戦いに関心が向かない。

 それはとても奇妙な気持ちだ。

 復讐以外、存在しないのがジャンヌ・オルタの特性だったはずなのだ。

 こんなものは一時の気の迷い。マスターに性を封じられて仕方なくこうなっただけだと、理性では分かっているのだが、どうにも居心地がいいのが気味が悪い。

 

「オルタ、夕飯どこで食べる? 今日はわたしもマシュも非番だし、オルタも夜空いてるでしょ?」

「サーヴァントに食事なんていりませんけど」

「まあ、そう言わないでよ。せっかくの機会なんだし、奢るよ? これでも、しっかり働いてるからね」

 

 と、得意げに立香は言う。

 

「まあ、マシュのほうが実入りはいいんだけどね。親衛隊は手当がつくから」

「何、あんた。サーヴァントのほうが上司なわけ?」

「いや、所属が違うから上司と部下ってわけじゃないけど」

 

 マシュはその防御に特化した能力が評価されて親衛隊に所属している。そのため、給料に危険手当がついている。戦闘能力についても評価が高く立香よりも若干、収入が上なのだった。

 

「そ、そうです。別にわたしは先輩の上司というわけではありません。単に適材適所でこうなっただけです。わたしが先輩の上司なんて、そんなことになったら、たぶん大変なことになりますよ」

「何がよ」

 

 マシュの言い分の最後のところはよく分からなかった。

 オルレアンでは、生真面目で純粋無垢な感じだったが、その後の旅で幾分か変わったようだ。

 ――――やはり憎しみも恨みも感じない。もとより、ジャンヌ・オルタが憎んでいるのはフランスだったので、この二人は無関係ということもあるのだろうが。

 

「調子狂うわ」

「ピザにしよう」

「勝手に決めてんじゃないわよ。わたしに聞いたんじゃないの?」

 

 ジャンヌ・オルタは自由に話を進める立香にため息をつく。

 

「奢りは結構よ。あんたに借りなんか作りたくないわ」

 

 財布には銅貨が残っている。

 会って初日に、いきなり元敵に夕食を奢られるというのはさすがにジャンヌ・オルタのプライドが許さなかった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 夜更けにどうも騒がしいと思って目を開けてみれば、海のほうで火事があったらしい。船着き場の泊めてあった商船の一つから火が出て、ちょっとした騒ぎになっているようだ。

 敵襲であれば大事だが、今回の火事はそういうわけではなく、船員の火の不始末が原因らしい。それで船が一つ燃えてしまうのだから、責任は重かろう。

 

「火はすぐに消し止められまして、他の船への延焼もなさそうです。怪我人は船員の中に軽い火傷を負った方がお二人いらっしゃいますが、それだけです」

「そうか。ま、大事がなくて良かった。せっかく、貿易が戻ってきたってのに水を差されたら堪らんからな」

「それと、お一人、ヒロインと思われる方がおりました」

「へえ、その娘はどうした?」

「……保護しました。どうも、様子がおかしく何らかの中毒症状の可能性もあります」

「奴隷か」

「おそらく」

 

 ハルカの顔が物憂げに沈む。

 ハルカ自身も幼少期に奴隷として売り飛ばされたことがある。この元の世界における日本の戦国時代の出来事だ。この世界の奴隷よりはマシということだが、果たしてどうか。

 ノワールは奴隷取引は他の国々に比べれば下火だ。

 長年の戦乱で故郷を追われ奴隷に身を窶した者と戦乱の影響で人手不足の深刻化により、労働奴隷は社会に必要不可欠な業種となった。奴隷というとあまりいいイメージはないが、一般的な奴隷は職業斡旋や貧困対策の面が強いのだ。

 その上でノワールは戦乱から距離を取り、経済は順調だったこともあり、労働奴隷を必要とする状況にはなかったのだ。

 需要がないので産業が育たない。

 ノワールで奴隷が普及していないのは、そのためだ。

 となると、逆にヒロインを奴隷として運んでいたその商船は何なのかという話にもなる。

 ノワールの貴族に直接売りつけに来たのだろうか。あるいは、どこかに運ぶ途中に寄港したのか。

 

「船員の聴取は続けさせるとして、その娘はどこに運んだ?」

「収容所の地下室に。何かあると危険ですから」

「異能者ってことか。この町で暴れるのはまずできないが」

「念には念をです。それに、中毒症状もありますからきちんと拘束できる環境があったほうがいいと思います」

「なるほど、そうだな」

 

 ヒロインを従える方法の中で魔術や薬物による洗脳は一般的だ。まともに戦っても勝てないので、そういった方法で精神を縛るのだ。もちろん、通用する相手は限られる。女神アテナのような規格外のヒロインには鼻で笑われるが、肉体的には人間というような者には通じる手段である。

 

「ちょっと、会いに行ってみようか」

「もう夜も遅いですが」

「構わん。どうせ、保護した娘が気になって眠れやしないんだからな」

 

 

 

 町外れの収容所。

 その地下にヒロイン専用の収容施設がある。

 魔法の燭台で昼のように明るく照らされる廊下を進み、少女が閉じ込められている扉の前に立つ。

 小窓から中を覗くと、栗色の髪の少女が膝を抱えて座っている。

 カタカタと震えていて、何かに耐えているかのようである。

 

「彼女を担当していた船員は、「もう扱いきれないから引き取ってくれ」といっているようです」

「酷い話だな、連れてきておいて」

「どうしますか?」

「話をしてみよう」

 

 ヒロインといっても千差万別だが、見たところ人間のようだ。ハルカが言うには異能者らしいが、どの程度の力を持っているのか。国一つ滅ぼす者もいれば、人を傷付けることもできないくらいに脆弱な力しか持たない者もいる。――――ハルカが警戒するくらいだから、戦闘型ではあるのだろう。

 扉を開けて中に入った。

 少女が顔を上げる。すっかり疲れ切って目の下には隈ができている。可愛らしい顔立ちで、栗色のボブカットの髪は火災の所為か煤けてしまっている。

 

「誰、ですか?」

「この国で領主やってるマオってもんだ。状況は理解しているか?」

「はい……はあ……ぁ、く……」

 

 さらに、一歩マオが前に出ると少女は悲鳴を上げて壁際まで退いた。

 ハルカがかがんで少女に話しかける。

 

「身体の具合はどうですか? 必要な治療もしますし、不便があれば用意します。治癒魔術師の方ももうすぐ到着しますから、簡単にお身体のことだけでも話してくれませんか?」

「……り」

「はい?」

「薬、薬を、飲ませて、あれがないとわたし……ひ、ぃ……はあ……はあ、こ、来ないでください。怖い、う、うう……」

 

 瞳の焦点が合わず、頭を抱えた少女はハルカにすら怯えている。

 

「お薬のことは、調べてみますね。わたしは鷹守ハルカと言います。お名前を教えてくれませんか?」

「……羽波、唯里です。薬、本当に? は、早く、お願いします!」

 

 唯里と名乗った少女は悲壮な表情でハルカにしがみつく。

 よほど心身に異常を来しているようだ。

 船員が手に負えないといったのも頷ける。精神不安定な異能者を狭い船の中で管理するのは相当なストレスになっただろう。一歩間違えば、全員揃って水の底だ。

 

「唯里といったか。一つ、確認したい。お前が飲んでいた薬ってのは、白く甘い蜜みたいなヤツか」

 

 と、マオは尋ねた。 

 唯里は大きく頷いて、それからまた顔を膝に埋めて震え始める。必死になって狂乱する精神と戦っているのだ。

 一時、マオとハルカは牢の外に出た。ハルカの表情は硬い。唯里の悲惨な状態が相当堪えたようだ。

 

「あの、あの娘が言っていた薬というのは……」

「薬ってわけじゃないな。たぶん、悪魔の血だろう」

「……悪魔の血?」

「千年前に魔王が作った悪魔の一つに、インクブス・ペタススってのがいる。主に、東側の雨が多い地域に生息しているらしいんだけどな。こいつの血が、麻薬として昔から出回ってるんだ。それが悪魔の血。あの感じからして、悪魔の血の中毒症状だな。有名なんだ」

 

 インクブス・ペタススは植物の姿をした悪魔だ。

 人間の女を含む哺乳類の雌を好んで襲う。この悪魔は相手を殺すことはない。悪魔の餌は生命力、すなわち魔力なので、強引にでも栄養を与えて生かしながらその生命力を搾取する。

 厄介なのは、そこに苦痛がないことだ。

 インクブス・ペタススに囚われた獲物は、まず悪魔の血()を与えられる。悪魔の血には強烈な媚薬成分が含まれていて、摂取した雌はたちまちの内に今まで経験したことのないような幸福感に襲われ抵抗できなくなってしまうのだ。しかも、この悪魔の血は定期的に摂取しないと禁断症状が発生する。悪寒に始まり強烈な不安感と人間不信が襲ってくる。この恐怖から逃げ出すには、悪魔の血を飲まなければならないので、獲物は自ら進んで悪魔に身体を捧げ続けるようになるのだ。

 

「唯里さんは、その悪魔の血を飲まされたということですか」

「人間になのか悪魔になのかは分からないけど、まあ、そうだろう。あれだけ強力な中毒症状出すのは、それくらいしかないし。船員があの娘を手に負えないって言ったのは、きっと症状を抑える悪魔の血がなくなったからじゃないか。悪魔の血がなければ、悪魔の血の中毒者は地獄行きだ。異能者なら、周りも巻き込むことになるかもな」

 

 麻薬全般に言えることだが、中毒が酷くなると、薬のために何もかもを擲つようになる。悪魔の血は世界最悪の麻薬だ。中毒症状から逃れるために、異能者がその力を振るって暴れ回る事例は何度もあった。

 悪魔の血は魔法や魔術による治療以外では対処できない。それも確実な方法として確立はしていない。悪魔の血に対抗できるだけの力を持つ術者と奇跡的に出会うくらいしかないのだ。

 残す手立てはただ一つ。

 そういう意味では、唯里は運がよかった。

 悪魔の能力に対しては、マオの能力が有効だ。

 

 

 




好きなエロ漫画家が一般誌に行くの悲しい。
でももっと悲しいのは、結局一般誌で17.5禁みたいなお色気漫画描いてるの。それもうエロ漫画で描けばいいじゃん。中途半端なことすんなってなる。
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