異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話 作:もう万体
羽波唯里がこの世界に召喚されたのは二年ほど前のこと。
ふと気づけば見知らぬ海岸にぼんやりと立っていて、前後の記憶も曖昧だった。
朝日が海の向こうから登ってくるので太平洋沿いのどこかだろうと当たりを付けながら海岸を歩きつつ、通りかかる人を探した。
少し歩いている内に、自分が獅子王機関の命を受け、絃神島に渡るための飛行機に乗るために空港に向かっていたことを思い出した。
タクシーを降りて精算したところまでは覚えている。その後、どうしてここに来たのかは分からない。
小一時間ほど周りを調べている内に、ここが日本ではないことが分かってきた。
日本語の標識が一枚も見当たらず、整備された道も見つからない。
朽ち果てた漁村らしきものは見つかったが、見たことのない文字の古びた本がいくつか見つかっただけだった。分かったことは、ここは日本ではないということと、そもそも世界からして違うということだ。
サバイバル技術を磨いていて良かった。
知識がなければ、早々に餓死していただろう。
幸いにして水源を見つけることができたし、早い段階で廃村を見つけることができたことも大きい。この世界には人間がいるのだと分かれば、希望は湧いてくる。どうなるか分からないが、人間のいない世界に投げ出されるよりはマシだと奮い立ち、まずは人里を目指すことにした。
その後は波乱の連続だった。
運良く七日後には小さな村に到着した。そこから、魔獣退治に協力し、情報を集め、さらに情報の集まる大きな町に行く。
自分と同じような立場のヒロインと呼ばれる人たちがいるらしい。できれば、そういう人にコンタクトを取って、もっとこの世界の事を知りたい。そして、いつかは元の世界に帰る方法を見つけるのだ。
「……元の世界には帰れない?」
ある日、とある聖堂で出会ったヒロインが言った。
この世界に来て一年ほどが経過していた。
「それってどういうことですか?」
そのヒロインは言った。
どうもこうも、この世界にいる自分たちは元の世界から迷い込んだのではなく、元の世界の自分たちを元に構成されたコピーなのだと。世界を移動したわけではないので、そもそも帰るという考え方自体が間違いなのだと。まったく実感の湧かない説明ではあったが、妙にしっくりくるものでもあった。この二千年、この世界から元の世界に戻ろうとした者は数多くいて、その尽くが結果を残せずに終わったということも聞いた。
元の世界には戻れない。
その意味もない。
元の世界には、自分の元になった本物の自分が普通に生活しているのだ。所詮はコピーに過ぎない自分たちは発生したこの世界は可能性の掃き溜めだ。行き先なんて何処にもないどん詰まり。とどのつまりは、どんなヒロインであっても、この世界にいる以上は、この世界で終わりを迎えるしかないのだ。
信じられない言葉ではあったが、どこか納得している自分もいた。
元の世界への思いはある。日本に帰りたいと何度も泣いた。それでも、居場所のない自分は働いて、戦って、自分の力で生活していくしかない。
幸い戦う力はあったし、この世界の多くは魔獣や盗賊の脅威にさらされていた。唯里の力は腐ることなく、元の世界以上に人々の暮らしを支えることになった。
元の世界に未練はあるが、ふて腐れて足を止めるのは性に合わない。前向きに前向きにできることを積み重ねていく他にないだろう。
「だああ!」
ごき、と派手な音がして男が倒れた。
村を襲った盗賊の隠れ家を強襲した唯里が盗賊の最後の一人を蹴り飛ばしたのである。
旅の途中で訪れた村は、盗賊に襲われた直後だった。数人の女たちが拉致されて、森の中に連れ去られたと聞いて、唯里は盗賊を追った。
盗賊たちに特殊能力者はいなかった。ヒロインもいなければ、魔法使いもいない。五人全員を纏めて相手にしても唯里が負けることは万に一つもなかった。
倒した盗賊を縛り上げて、人質となっていた娘たちを解放した唯里だったが、一人足りないことに気がついた。聞けば一番年下の少女が、逃げ出して森の奥に走って行ったのだという。
この森の奥は魔物の巣窟で、盗賊たちも立ち入れない。だから、盗賊も追いかけることはなかったのだと。
唯里は村で待つ人々に人質の解放を知らせると、剣を片手に森の奥に踏み込んだ。
困っている人がいたら見過ごせない。
この世界で困っている自分に手を差し伸べてくれたたくさんの人たちがいたから、今までやって来られたのだ。
薄暗い森を進むこと三時間あまり。人間の気配を追跡する使い魔を飛ばして、進んでも逃げた少女には辿り着けない。
進む道に間違いはないはずだ。
それなのに唯里の足でまだ追いつけないというのは不可解だ。
そんな疑問が胸中に浮かんでいたとき、開けた場所に出た。
薄暗い森の中にポツポツと浮かぶ光の球。
それが、小さな人型の魔物だと気づいたのはこのときだった。
見るからに脆弱な魔物である。
身体は半透明で、蝋燭の火のように揺らめいている。性別不詳でふっくらした体型。背中には小さな羽がある。身長は二十センチそこそこであろうか。人間の赤子に羽が生えたような姿と言えばイメージしやすいだろうか。
「キューピットみたい」
見た目は可愛らしい生き物が、そのまま安全というわけではないことを唯里は知っている。とはいえ、彼らが脅威になるかというと、そうは思えない。おそらくは唯里が撫でるだけで死ぬ。何せ肉体がない。彼らの身体は魔力で構成されていて、吹けば消えるような淡い命だ。
この森に満ちる魔力が形を為したもの。魔物というよりは精霊や妖精に近い疑似生命といったほうがいい。
『おはながきた』
『かわいいおはなだ』
と、妖精たちの声がする。空気の振動による音声伝達ではない。唯里の頭に直接響く、念話に近い意思伝達方法だ。
「あなたたち、言葉が分かるの?」
『すこしだけなら』
『おはなのおはなしだいすきだよ』
『おはながおしえてくれるからわかるんだ』
と、妖精たちが口々に答えた。
彼らには相当高度な知性があるらしい。
「さっき、人間の女の子がこっちに来なかった? その娘を探しに来たんだけど、見つからないの」
『にんげんてなあに?』
『おはなのことさ』
『ちいさなおはなならあっちにいったよ』
『おとうさまのところだよ』
『おかあさまのところだよ』
ふわふわ漂う妖精たちが、舌足らずに話してくれる。
使い魔が指し示す方向と概ね一致している。彼らの話は間違ってはいないらしい。
妖精が唯里の周りを浮遊する。興味深そうに唯里を見ている。
『なんだこれ』
『ぶきというのだ』
『まもののちがついてるぞ』
『これはいけない。あぶないあぶない』
妖精たちは無邪気に笑い、飛び跳ねている。
外から来た唯里に興味津々といった様子である。
正直、大変落ち着かない。視線の数が徐々に増えている。敵意はまったく感じないが、妖精の数は十や二十ではないだろう。
(形を保てない子もいるみたい。そうか、この子たちは魔力の塊だから、魔力が足りないと身体を維持できないんだ)
唯里の周りにいる妖精は、多くの妖精未満の「力」に比べればずっと魔力が濃いほうではあるのだろう。
それにしても、この森でこれほど脆弱な妖精たちがどうして生きていけるのだろう。彼らは魔力の塊だ。魔獣にとってはいい魔力源になる。
「この辺には魔獣の気配が全然ないね」
『ほかのいきものはここにはきたがらないよ』
『おとうさまがいるからね』
『おとうさまはこわいから』
『おとうさまはやさしいよ』
「みんなのお父さん? 魔獣も寄せ付けないくらい強いんだ」
なるほど、と唯里は納得した。
妖精たちの父は、森のボス的存在なのだ。そのため、ボスの縄張りには他の魔獣も手を出さない。弱々しい妖精たちは父が形成した縄張りを生存圏として生きているのだ。
『ちいさなおはなはもうすぐさ』
『おとうさまとあそんでる』
『いっぱいのおはながさいてるよ』
『ぼくらはみつをわけてもらうんだ』
妖精たちに案内されて、唯里は森の奥に進んでいく。妖精たちは唯里を外敵だとは思っていないようで、友好的に話を進めてくれるのだ。
もっとも知性はあっても、知能は低い。会話のレベルは人間の三歳児くらいだろう。彼らは自分たちも含めてほとんど情報を持っていない。自分たちの種族が何なのかを語る術がなく、一日一日を生まれて消えるの繰り返しらしい。
『もうすぐそこにおとうさまがいるよ』
『ちいさなおはなもさいたころだよ』
『はやくついたこはみつをもらってるみたいだ』
『いそげいそげ』
『あまいみつがなくなるまえに』
妖精たちが我先にと駆け出した。
唯里もその後を追った。
彼らが走る先に、行方不明の少女がいるのは間違いない。
そうして辿り着いたのは、開けた空間だった。半径二十メートルはあろうかという円形の空間で、空は木々の枝葉で覆われて見えない。
この空間を形成している大木の壁は、どれも五十メートル以上はある巨木だ。自然に生まれた空間でないのは明らかで、見たことのない結界で守られている。唯里がこの空間に飛び込むまで気づかなかったのは、この結界による視覚阻害のせいだろう。
『あれがおとうさま』
妖精の一匹が巨木を指さした。ひときわ巨大な木だ。無数の太い木質の蔓が絡まり合って、一つの巨木になったような異形。目眩がするほどの強大な魔力は、まるで真祖の眷獣を相手にしているかのようだった。
「ッ……」
その威容、威圧に圧倒される。
これはまさしく人知を超越した生命体だ。
木の姿をしているが、それが植物ではないとすぐに理解できた。表面に僅かに見える赤黒い糸状の模様は血管のように魔力を全体に行き渡らせている。
『おはながさいた』
『みつがでるぞ』
『さきにでたみつがこくていいんだ』
そういって妖精たちが大木に群がっていく。
いや、妖精が群がっているのは大木ではなく、その根元だ。
一見すると奇妙なオブジェに見える。
人間の上半身が木から生えているような奇妙なオブジェだ。太ももまで太い蔓に巻き付かれていて完全に隠れている。だらりと腕は垂れ、顔は大木から伸びた花を首まで被っていて窺えない。
大木の威容に圧倒されていた唯里は、それが人間の女性なのだと気づくのに遅れた。
「何……え、何……?」
呆然とする唯里の前で、女性に群がった妖精たちは口から小さな舌を伸ばして舐め始める。
「――――ッ、――――ッ!!」
花弁の中からくぐもった声が聞こえてくる。女性の身体がのたうった後、乳首から母乳が、マンコから潮が噴き出す。
『おはなからみつがでた』
『もったいない』
『こぼすな』
妖精たちが女性の体液を啜っている。
この妖精の主食は人間の魔力なのだ。そして効率よく摂取するために「おとうさま」が捕らえた獲物からお裾分けをしてもらっているに違いない。
目の前に魔物に囚われている人がいるのなら、救わなければならない。見れば犠牲者は一人ではない。パッと見ただけで四人はいる。
唯里の
まずは大木と女性とを繋いでいる蔓を切断する。妖精たちに戦闘力はないだろうから、その大本である大木を幹から伐採する。この木のことはよく知らないが、人間に与える悪影響を考えればここで斬り捨てるのが吉と判断した。
「
霊力を迸らせて、唯里は武神具を起動する。
強力な空間切断能力を秘めた武神具を物理的に防御する方法はない。
愛らしい妖精と対立することになるのは残念だが、仕方がない。
人外の魔物に対して善悪を問う必要はない。
単に相容れないだけだ。
唯里が剣を振ろうとしたとき、不意に剣を握る手の力が抜けた。剣を取りこぼした唯里の異変はそれだけに留まらない。膝の力が抜けて座り込んでしまったのだ。
「な、何……ッ、どうして、身体が」
何をされたのかが分からない。
いつの間にか身体の中に自分のものではない魔力が入り込んでいる。甘い蜜のような香りが薄らと漂ってきて、それが神経に作用する呪詛の類だと気づいたときには唯里の自由は失われていた。
「ぐ……う……うう……」
(口もちゃんと動かせない。祝詞を唱えられない。このままだと)
脱力したのは手足だけではない。
呪文を唱えるための舌の動きも阻害されているのだ。意識は明瞭なのに、何もできないまま座っていることしかできない。
そんな唯里の眼前に大木が花を下ろしてきた。
長い蔦の先に大きな花が咲いている。桃色の花の中心は強烈な甘い香りのする蜜壺になっていて、白い樹液が零れている。
(すごいいい匂い。これ、だめ。絶対よくないヤツだ。気をしっかり持たないと!)
大木――――悪魔インクブス・ペタススの蜜は理性で抗えるものではない。薄めた香りだけで雌を魅了し抵抗できなくさせる。その原液ともなれば一滴だけでもまともな人間は発狂する快楽信号を発生させる。
その蜜をたっぷりと湛えた蜜壺が唯里の頭をすっぽりと飲み込む。首のところで口を締め、蜜が漏れないようにすると唯里の顔を蜜に漬け込む。
「が、ご……んあ、ああ――――――――!!」
唯里の身体が壊れたマリオネットのように跳ね回る。
一瞬で唯里の思考が熱く燃え上がり消し飛んだ。人間の言葉が脳の中から消える。身体は快楽に反応するだけの人形に成り果てる。
蜜壺の中には触手があって、それが唯里の口に入ってくる。最初の蜜漬けで抵抗の意思は削がれている。触手は難なく唯里の口内に侵入を果たすとさらに喉を犯す。二股に分かれて気道と食道に入り込んだ触手は、そこから蜜の蒸気混じりの空気を肺に送り込んで呼吸を確保しつつ、胃には人間に必要な栄養素を含んだ蜜を流し込むことで餓死させないようにする。
肺からも胃からも薬物を注ぎ込まれた唯里は堪ったものではない。
「おッ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお♡♡」
人生で味わったことのない快感は苦痛と同じだ。手足をもがれる拷問を受けたほうがまだ生ぬるい。
(死ぬッ、死んじゃうッ、こんなの持たない! 誰か助けて! 気持ちイイ! 身体中全部が気持ちイイ!!)
唯里は仰け反って絶頂を繰り返した。
潮吹きもお漏らしもしてしまう。下着から足先までびしょびしょだ。
唯里の匂いに妖精たちが釣られてくる。
『あたらしいおはながさいた』
『ちいさいおはなよりもえいようがおおいぞ』
『いっぱいみつをだしてくれるにちがいない』
『しんせんなうちにたべよう』
『これがじゃまだな』
『はげばいい』
『はいじゃえ』
妖精たちが唯里の身体に群がる。
邪魔な服を引きちぎって、同年代では大きい方に入るであろう形の良い乳房に噛みつく。
「んおお、おおおお、ふおおおおおおおおおおおおお♡」
唯里にとって不運だったことは、それでも理性を残していたことだ。常人ならば発狂する蜜を大量摂取しても、獅子王機関で身につけた毒耐性は簡単に発狂することを許さない。そのため、唯里は自分の身体が壊れていく様をまざまざと体感する羽目になった。
(だめ、だめだめだめ、今さわっちゃだめなの、嫌ぁああああ!)
妖精は唯里を餌としか認識していない。
妖精の舌が細く鋭い針に変化する。小さな一ミリにも満たない針を乳首に刺す。
「ひやああああああああああああああああああああああ!!」
全身に電撃が流れたようだった。
妖精の毒針はインクブス・ペタススの蜜毒と同様の成分の毒を微量ながら注入できる。
蜜毒を注入された乳首は瞬く間にぷっくりと膨れて母乳を滲ませ始める。
『みつがでた』
『おいしいみつだ』
妖精たちがペロペロと母乳を舐める。ただの母乳ではなく、唯里の霊力の雫である。同様の処置がクリトリスにもされる。
(もうゆるして、イキたくない、おっぱい気持ちイイの無理なの、あそこもおかしくなってる、全部きもちよくてあたまがこわれるよぉ)
快楽に溺れながら唯里は腰を振る。快感は彼女から理性を剥ぎ取り、獣欲を表出させる。剣巫などと呼ばれたのも昔の話。全身の細胞をくまなく性感帯に改造されたに等しい唯里は人としての尊厳すらも踏みにじられて妖精に霊力を吸われ続ける運命にある。
唯里から吸い出された霊力は、やがて新たな妖精を生み出す。そして次の犠牲者を招き寄せるのだ。
唯里を逃がさないように、しっかりと蔦が下半身に巻き付いて木質化する。蜜壺を被った唯里は先に捕まった被害者たちに並べられ、妖精たちに身体を啄まれることになった。
悦楽に溺れ、気持ちよすぎて発狂し、発狂しすぎて正気に戻るのを延々と繰り返し、やがては声を出すこともなくなって静かにイキ続ける日々を過ごした。
唯里が救い出されたのは、それから一ヶ月後のことだ。インクブス・ペタススの雌を捕食することに特化した蜜毒は雄には通じない。捕らえた獲物は、定期的に訪れる人間の男たちに「収穫」されてしまうのだ。
蜜毒に狂った女は従順な性奴隷として売りに出され、蜜毒そのものも薄めた上で女性用の麻薬として高値で取引される。
この邪悪な商取引に唯里も巻き込まれていったのであった。
本作の唯里は原作よりも二歳ほど年上でいい感じのお姉さん(薬中)。