※この作品はR-18です。

異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話   作:もう万体

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第五十九話(シオン)

 勃起したペニスを女の肉が優しく包み込む。湿った膣内がペニスでかき回されて、いやらしい音を立てている。

 マオに背を向けて、腰を上下させているのはシオンだ。

 地下の工房に篭って研究に耽ることの多い彼女が、こうしてマオの元で性処理をするのは珍しい。

 

「ん……あ……んあ……あん……ふああ、あ、あ、んあ、ああん♡」

 

 艶めかしい声を上げてシオンが身体を上下運動させる。

 ベッドのスプリングを利用して弾みながらリズミカルにペニスを扱く。

 引き締まる膣肉がペニスの気持ちイイ場所を的確に愛撫してくる。

 今にも精液を吸い出されそうで身震いする。

 

「んふ……はあ……はあ……ふう、はあ……はあぁ♡ ん、ん、んん♡ くぅ……んあ、はあう♡」

 

 シオンはいつものツインテールを解いていて、長い髪が彼女の動きに合わせて揺れ動いている。

 理知的な顔はすでに余裕を失い、ふやけて快楽の虜になっている。

 

「ずいぶんと激しいな、シオン。最初からスパート掛けすぎじゃないか?」

「仕方ないじゃないですか。こんな、すごいの入れられたら、あん、ん、んん……我慢なんて、ナイ、ぁ、んあ、ああん♡」

 

 言葉もきちんと続かない。

 最初こそいつも通りを装ったシオンだったが、あっという間に快楽に悶えることになった。

 普段からマオと交わっていれば、まだマシだったのだろうが、シオンは研究ばかりでご無沙汰だった上にストレスから性欲を持て余していた。

 かつてのシオンならば、このような非理性的行為を無駄と断言しただろうが、マオに堕とされ、女の悦びを知った彼女にとっては、これが一番有意義なストレス解消方法となっていた。

 

「あへ、ふへぁ……んああ……すご、ぉ……これ、すごぃ、んああ♡」

 

 シオンは壊れたように腰を振った。

 舌を出して涎を零す。

 その表情に理性を見出すことはできない。

 子宮が求めるままに快楽を貪る。

 ペニスを挿入された瞬間に、シオンの認識はそういうものに変わってしまった。

 

「普段が普段だけに、こんなに淫乱になるとギャップがすごいな」

「申し訳ありませ、ん、ですが、あ、あ、はぁあ♡ これ、すごく気持ちイイので、へあぁ♡」

「これじゃなくてチンポだろう?」

「ち、チンポ! んお、い、イイ、はへ、んん♡」

 

 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、と淫らな音が大きくなる。

 シオンのマンコは分泌液でびっしょりになっていて、彼女の身体がどれだけ感じているのか一目瞭然だ。

 マオは背後からシオンの胸を鷲掴みにする。

 

「んひッ、あ、何」

「相変わらず大きいなと思って。柔らかいし、ハリもいいし揉み心地が最高だな」

「や、ああ、そんな、胸まで一緒なんて、んふぅ♡ 快感が強すぎて、ぉ、ふう、ぉあ♡」

 

 シオンの乳首を捏ねて、クリトリスも弄ってやる。そうすると膣肉がぶるぶると反応してペニスを締め付けてくる。

 マオはシオンの首筋を甘噛みする。

 

「ひッ……あッ」

 

 シオンの身体がびくんと跳ねる。

 少しの痛みが快感の呼び水になる。

 

「あ……ん、おおおおおおお♡」

 

 シオンが大きく仰け反って舌を突き出した。全身が強ばり、膣肉が何度も痙攣する。痺れるほどの快楽が絶頂を導いた。

 

「あ、ふへ……ああぁ」

 

 シオンは嬉しそうに微笑んでがっくりと脱力する。

 シオンが絶頂の余韻に浸って動かないので、今度はマオが腰を振ることにする。シオンをベッドに横たえて、正常位で膣を突く。

 

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、んあ、ふあ、ああ、んあ、あ、くあ、あ、ひゃあ」

 

 腰を動かすタイミングでシオンが喘ぐ。

 汗の雫が滴り、浮き上がるシオンの腰を押さえ込んでペニスで抽挿を繰り返す。

 

「あ、んふ……んお! ふあ! あ、んあ、ああ、マオさん、そんな、強い、くぅ、はひ、んひぃ♡」

「シオンが一人で勝手に満足するから、俺は俺で満足させてもらうぞ」

「ひゃめ、そんな、お、おお♡ チンポ、そんな、激しくされたら、んあ、またイク、快感んんんんんんん♡」

 

 シオンの瞳がぐるりと反転する。

 分割思考など使用しようとも思えない。

 セックスに溺れて、何もかも思考を放棄する。

 アトラス院の錬金術師としては失格だが、今のシオンにはアトラス院で培った使命も誇りも関係がない。目の前の男に抱かれ、与えられる快感を味わい尽くすことこそが最重要だった。

 うねる膣肉がペニスを掴む。

 カリ首が幾重にも重なる肉襞を引っ掻いてマオもシオンも快感に呻く。

 昇ってくる快感にペニスが限界まで膨張している。

 すでに精液が漏れ出しそうだ。

 精巣はパンパンで、いつでもシオンを汚すことができる。

 

「シオン、このまま射精するぞ」

 

 それは許可を求めての言葉ではない。

 こう言えば、シオンの膣はぎゅっと締まる。

 精液の味を覚えた彼女の子宮も膣も、射精への期待だけで絶頂間際まで猛るのだ。

 

「ひッ、はッ、あ、は、ぃ、このまま膣内を汚してください。もう、どうなっても、いいですから」

 

 シオンは両足でマオの腰を固定する。

 全身を使ってマオにしがみつき、ペニスを根元まで深く挿入させる。

 

「シオンッ……!」

 

 マオの精巣がポンプのように精液を押し出した。

 ペニスを通じてシオンの膣内に精を送り込む。

 強烈な快感で頭が真っ白になる。それはシオンも同じだ。抽挿の果てに、精液が勢いよく子宮目がけて放出された。

 

「ふぅ――――あ、んふああああああ♡」

 

 がくんがくん、とシオンの身体が打ち震えた。

 精液の熱と魔力がシオンの身体中を駆け巡る。

 

「あ、あああ、イクッ、んあ、はあぁああ♡」

 

 マオにしがみついたまま、シオンは悶えて果てる。

 ギチギチとペニスを締め付ける膣肉の吸着感が堪らない。

 快感の余韻に浸るシオンに口付けし、そのままゆるゆるとペニスを抽挿する。

 送り込んだ精液を彼女の膣内にすり込むようにし、どくどくと追加の精を流し込んだ。

 

 

 

 

 ♡

 

 

 

 

 ブリンクウォールの圧力は日を追うごとに増している。レジスタンス活動をする国民やヒロインたちを追い立てて、少しずつ戦線が拡大している。

 ヒロインの戦闘能力を左右する魔力供給は途切れることなく、疑似聖杯を用いた潤沢な魔力供給によって戦力を十分に維持している。

 対するレジスタンスは人的損耗が激しくヒロインたちも連戦で疲弊しつつあった。

 ブリンクウォール国内の拠点が次々に陥落しているのが何よりも手痛い。

 国民の反ブリンクウォールの機運が十分に盛り上がらない。力によって叩き潰されるというだけでなく、国民間でもリドル・バージェスを支持する者とそうでない者とで分裂しているのだ。

 リドルが意図的にそうした状況を作っているのは明らかだった。

 ブリンクウォールは辺境への政治的な圧力を増大させる一方で、主要都市や人口密集地には手厚く富を分配している。

 地方で搾取し、中央で分配することで、国民の大多数が暮らす都市部を中心にリドルの指示が大多数となっているのだ。

 これではレジスタンス活動もままならない。 

 今のブリンクウォール国民にとっては、テロリストと変わらないからだ。

 富を齎す国主がいるのなら、国民に不満があろうはずもない。

 もともと、ブリンクウォールは全体的にモラルハザードが深刻な国ではあった。

 都市部の国民は辺境での出来事に関心を抱かない。

 人口の多くを占める都市部の国民がリドルに反旗を翻さない以上、レジスタンス活動には限界がある。辺境の弱り切った人々を兵士として訓練するのも酷ではあるが同時に、辺境の人々がレジスタンス活動に従事すればするほど、都市部の国民との軋轢は広がっていく。結果、リドルによる「辺境潰し」が国民の支持を受けることになり、レジスタンス活動は縮小せざるを得なくなる。

 早晩、ブリンクウォール国内のレジスタンス拠点は一掃されるだろう。

 現在は国境沿いの廃城や廃村を改修して拠点としているが、一時期よりもブリンクウォール国内への影響力を低下させているのは明らかであった。

 ヒロイン生協が本腰を入れてくれば、この状況も大きく変わることだろう。

 だが、ヒロイン生協は動くに動けない。

 リスクとしては、現在進行形で災害をまき散らしている魔物への対処のほうが優先順位が高い。ブリンクウォールは未来のリスクでしかない。西部の最大勢力であるクロガネ大公国がブリンクウォールと接近している以上、ヒロイン生協が大々的に手出しするのは、困難だ。よほど、危機的状況にでもならない限り、大規模なヒロインの投入は難しいと考えざるを得ないし、敗色濃厚なレジスタンスに与する勢力もまた現れない。

 ブリンクウォールへの対処の必要性は分かりきっているというのに、どうしても動き出すことができないのが口惜しい。

 状況を把握しているヒロイン生協の関係者は誰もが臍をかんでいるだろう。

 

「アマゾネスが壊滅したって?」

 

 飛び込んできた急報に、顔を青くしたのはジャンヌたちヒロイン生協の関係者だ。

 アマゾネスはヒッポリュテが率いる遊牧騎馬民族の集団だ。以前からブリンクウォールと敵対関係にあり、ヒッポリュテを王に迎えてから精力的にブリンクウォールと対峙し続けてきた数少ないヒロイン生協の味方となる勢力であった。

 大義のためというよりも、ブリンクウォール憎しでの協調ではあったが、彼らの戦闘力は高く、ブリンクウォールの強化兵に引けを取らない戦力だった。

 

「それは、本当ですか? ヒッポリュテはどうしました?」

 

 ジャンヌが慌ててマオに尋ねる。

 マオは手元に届いた書簡に目を通し、詳細を確認した。

 

「ヒッポリュテはこちらに逃れてきたところを保護し、今はダンドゥリヨンの砦にいるそうだ。意識はないようだから、無事かどうかはまだ分からないが」

 

 ダンドゥリヨンはノワールの東にある国境の町だ。大きな町ではないし、山の向こうにある辺境の町で、主に行商人を相手に山越えのガイドや宿場で生計を立てるものが多い旅人の町である。

 

「それでも生きてはいるんですね?」

「ああ、とはいえ状況が状況だから、治癒ができる者を向かわせないといけないな」

 

 ダンドゥリヨンの医療では、ヒッポリュテを治療するのは難しい。

 サーヴァントの治療には、魔術の知識や魔力供給が必要になる。

 

「愛歌、行けるか?」

「ええ、ヒッポリュテの治療をすればいいのよね? 放っておくと明日までは持たなそうだし、いいわ。ちょっと行って診てくる」

 

 愛歌は持ち前の千里眼でヒッポリュテを視たようだ。

 転移魔術でこの場から消えた愛歌は、瞬時にダンドゥリヨンまで移動したに違いない。

 彼女の規格外の魔術は出力こそ低いものの、万能性においては突出している。ヒッポリュテの治療は、これで滞りなく完了するだろう。

 

「ブリンクウォールはアマゾネスの動きを警戒していました。アマゾネスの皆様の状況が掴めませんが、その程度によっては、より大規模な軍事行動も可能となるでしょう」

 

 ジャンヌが苦々しげに語る。

 機動力を活かした戦術とヒッポリュテを先頭にした突破力でブリンクウォールを苦しめたアマゾネスがいなくなれば、確かに軍事行動はしやすくなる。

 クロガネ大公国がブリンクウォールと敵対しない立場である以上、これを押さえるだけの力を持つ国は周囲には存在しない。

 ヒロイン生協にとっては一番嫌な状況になりつつある。

 ノワールにとっても、隣国が戦線を拡大していくというのは警戒せざるを得ない。ヒロイン生協の言うような世界の危機は置いておくにしても、ブリンクウォールが喫緊の脅威に成長しているのは実感するところであった。

 今までは、その活動は国内に留まっていたが、国外に積極的に兵を出すようになれば、ノワールもまた戦火を免れない可能性は高くなる。

 ブリンクウォールもヒロイン生協がノワールに潜伏し、機を窺っているのは把握している。つまり、現時点でノワールはブリンクウォールの敵として認識されていると考えるべきだ。

 大陸西部で大きな動乱が巻き起こる。

 その予感は未来視がなくとも十分に感じ取ることができた。

 

 

 

 △

 

 

 

 

 クロガネ大公国の急速な弱体化は、ガラニア王国の独立によりさらに加速し、連鎖的に独立国家を生み出していた。

 強大なヒロインを失い、大公のカリスマ性も損なわれている。今まではトップが暗愚でも、その軍事力が脅威となって大陸西部の覇権を維持できたが、今はそうではない。

 ホープ市を巡ってノワールと争い、多くの兵を失ったことは記憶に新しい。

 クロガネ大公国の軍事力の低下は誰の目から見ても明らかだ。

 独立を宣言した諸勢力は、クロガネ大公国の反撃を恐れて互いに連携し、反大公連合となっている。

 保有する兵力では、未だにクロガネ大公国が圧倒的ではあるものの、時勢に乗った反大公連合の支持は辺境からじわりと中央に伝わっている。

 政情不安が国内の士気を低下させ、独立勢力を後押ししている。

 こういうときは勢いに乗ったほうが勝つ。

 盟主の力が衰えた今ならば、他の諸勢力とともに立ち上がれば完全な独立を果たすことも夢ではない。

 反乱の広がりは、そうした夢に突き動かされている面もあったのだ。

 

 

 噎せ返るほどの血の臭いが充満している。

 切り刻まれた人間の遺体は果たして何人分になるのだろうか。

 美しい調度品も、見る者を癒やした観葉植物も、無残にうち捨てられ、血の海に沈んでいる。

 ここはクロガネ大公国を構成するイシハラ辺境伯の政庁である。

 クロガネ大公国の東にあり、数メートルから数十メートルの高さになる純白の石柱が何万基も立ち並ぶ絶景からイシハラと呼ばれるようになったという。

 イシハラ辺境伯はクロガネ大公国にとっては国境の要であり、近年の独立志向の高まりの中で去就を明らかにしていなかった諸侯の一人だ。

 こうしたどっちつかずの態度は、中央政府にとっては不敬と映ったのであろう。

 守りを固めていなかったこともあり、あっさりと中枢に刺客の侵入を許すことになった。

 まさか、こうまで苛烈な対応をしてくるとは思っていなかったのだろう。斬り伏せられた辺境伯もその側近も、死してなお信じがたいといった表情のままだ。

 

「どうして、こんな酷いことをするんですか!」

 

 殺戮の現場にあって、怒りを露わにする少女が一人。赤い髪をした小柄な少女は、まっすぐに事件の主犯を咎めている。

 その怒りの矛先は、返り血に染まった美貌の剣士に向けられている。

 細く鋭い剣の切っ先を天井に向けて、少女は酷薄に微笑んでいる。

 

「どうしてか。それは、シンプルな質問だね。これがわたしに与えられた任務だからだ」

「任務って」

 

 絶句する赤毛の少女は、斬り捨てられた人たちから目を背ける。

 怒りが先んじているが、彼女はこういった凄惨な現場には慣れていないのだ。

 本当なら、嘔吐して逃げ出したいとすら思っているくらいだ。

 

「なるほど。臆した心を奮い立たせて拳を握るか。話に聞いたとおりの人となりだよ、エスカルビー」

「……どうして、わたしの名前を?」

「わたしはこれでもスパイなんだ。キミは気づかなかったようだけど、もう何ヶ月も前からこの政庁には出入りしていたし、キミとも話をしたことがあるんだよ」

「だったら、ここの人たちが悪いことなんて考えてないって分かってたでしょう! こんな酷いことされるような人たちじゃなかった!」

「そうだね。だからこれはいい悪いではなくて、シンプルに戦争だということを理解しているかどうかだ。彼らにはその自覚がなかった。個人としての善悪に意味はない。彼らはもっと速く旗色を鮮明にすべきだった」

 

 剣士の姿が消える。

 

「……ッ」

 

 火花が散る。

 視界の隅に映り込む銀色にエスカルビーが咄嗟に反応した。

 少女の刺突を、持ち前の動体視力と身体能力を駆使してエスカルビーはすんでのところでこれを回避してみせた。

 

「よく凌ぐ。これはわたしも認識を改めないといけないね」

「はあ、はあ……負けない。これ以上、酷いことは絶対にさせないから」

 

 エスカルビーは拳を固めて少女に対峙する。

 

「いいだろう。わたしは、バーサークセイバー、シュバリエ・デオン。狂乱に身を委ねた我が剣にどこまでついて来られるか、試してみようじゃないか」

 

 

 

 

 石造りの長屋の上を胡蝶カナエは疾駆する。

 クロガネ大公国から独立しようとする勢力は、いずれはブリンクウォールとも敵対する。それ故にヒロイン生協はこうした独立派の諸勢力とコネクションを作るべく奔走していたのである。

 イシハラ辺境伯にはエスカルビーというヒロインがいてくれたおかげで、窓口には困らなかった。

 カナエがこの町に来て七日目の今日、異様な気配とともに血の臭いが風に乗って流れてきた。

 遠く響く戦いの音は、エスカルビーと何者かの戦いが起こっていることを示している。

 

「今行きます、ルビーさん」

 

 この世界にやってきたばかりで、まだ現実を受け入れられていないにもかかわらず前向きな彼女にカナエは好感を抱いていた。

 こんな町中で戦闘が勃発するとなれば、それは軍による襲撃ではなくヒロインか、それに近い戦闘能力を持つ者による強襲であろう。

 クロガネ大公国かブリンクウォールかは不明だが、強力な力を持っているはずだ。

 エスカルビー一人に任せるわけにはいかない。

 何よりも人命が優先だ。

 ブリンクウォールの手の者であった場合、一般人への被害も甚大な物になりかねない。

 

「ッ!!」

 

 背筋を凍らせる殺気を感じて、咄嗟にカナエは身を翻して抜刀する。

 甲高い金属音が響き、火花が散った。

 

「これは、クナイ」

 

 足下に転がる刃には見覚えがあった。

 元の世界でも、似たような武器を使う仲間がいたからだ。

 忍の武器としても有名な投擲用の刃物である。

 

「こんなものを投げつけるなんて、危ないじゃないですか」

 

 音もなく現れた女にカナエは声をかけた。

 白銀の長い髪を一つ結びにした美女だ。

 眼は血のように赤く、肌は白磁のような白さだ。

 

「一つくらいは、当たるかと思ったんだけど。強いね、あなた」

「どちらのヒロインでしょうか」

「さあ、所属まで言う必要はないよ。でも、呼び方に困るなら、春霞でもリバースでも好きに呼んで」

 

 春霞と名乗る女は艶消ししたクナイをくるくると弄ぶ。一見すると隙だらけに見えるが、カナエはそうとは思わない。

 

「あなたたちは、この町で何をするつもりですか?」

「あなたたちが見てきたこと。いろいろと見て回っているんでしょ、生協の人は」

 

 ほとんど予備動作のない投擲をカナエは斬って捨てる。会話の合間、呼吸の隙間を狙ってクナイが飛んでくる。

 僅かな油断が致命傷になり得る。それほどの達人だ。

 

「ヒロインの人がいたら、連れてくるように言われてるんだ。うっかり死なないでね」

「それはこちらの台詞です。あなたの裏にいる人……大凡察しはついていますけど、きっちり白状してもらいますよ」

 

 春霞の接近を剣を振るって牽制し、カナエは一歩踏み出す。そこを逆にクナイで縫い止められる。牽制と急所狙いの攻撃が同時に襲ってくる。

 春霞は対人戦闘の達人と言ってもいい。鬼を相手にしてきたカナエにとっては、人間を相手にするのは気が引けるし、何より経験が浅い。殺さないようにと手加減すれば、一方的に倒されてしまうだろう。

 エスカルビーのことも気に掛かる。

 内心の焦りをかみ殺し、カナエは大きく息を吸い込んだ。 

 

 

 

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