異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話 作:もう万体
開戦から時間が経ち、状況が拮抗してくると厭戦気分が両軍に蔓延してくることになる。士気を維持するのは大変なことで、特に最前線ほど命の危機に直面しているのだから、多大な負荷が心身にかかっている。
目下のところノワールの戦いは予定通りではある。負けない戦いをして、相手に消耗を強いている。山に使い魔を放ち、マオの能力を拡大して大公軍の魔法を制限して味方の損害を大幅に減らしてもいる。
戦線は膠着しているが、実質的にはノワール優勢という状況で戦は推移している。
人の命のやり取りであり、何が起きるか分からないのが戦だ。国内にも不安がる人々はたくさんいるし、大事な人を戦場に送ってその帰りを待つ国民は少なくない。
まさに挙国一致でこの戦いに臨んでいる。
マオの能力とヒロインの力で勝利できる盤面ではあるが、それを知る者は多くない。
状況はコントロールできている。
戦場に送られた騎士たちにとってはそうではないが、ノワールの首脳部は落ち着いて全体を統括していた。
まるで騎士を駒のように扱っているわけだが、それは一国の領主の傲慢さではある。マオとてそういう気質が皆無ではないし、それくらいできなければ封建的な国家体制から脱却していくのは難しい。より多くの権限をマオに移行して政権を盤石なものとする。この戦は、そのための試金石だ。
マオがノワールの領主であるというのは、揺るがない。ただしそれはヒロインという強力な手駒がいるからである。そうでなければ、マオの立場は実のところ危うい。ノワールの貴族たちは独立志向が強く領主の権限を縮小しようとしてきた経緯がある。
マオの先代がマオの力を恐れて遠ざけたのも、貴族たちとの不和を嫌ってのことだったのかもしれない。ヒロインは神性な存在であり、強力な力である。領主とヒロインが結びつくのは、領主の力を強めることに直結するので権益を保持したい層からすれば避けたい状況だ。
それもマオがこれだけ多くのヒロインを獲得するに至った今にして思えば、妥当な懸念ではあっただろう。
実際、貴族たちのコントロールを今のマオは受け付けないほどの実力を身につけたのだから。
そして、この戦でクロガネ大公国が投入したヒロインたちを捕縛して、さらに大きな力を身につけることができるだろう。
きな臭いのはブリンクウォールの動き。そして、それに連動したイステネブルだ。イステネブルがブリンクウォールと繋がることは想定済みである。もとよりイステネブルは傭兵国家だ。各地で虐殺を繰り広げるブリンクウォールの政策方針と相性がいい。イステネブルはノワールと小競り合いを繰り返してきた歴史があり、一般的に「争いを知らない」と揶揄される平和な引きこもり国家のノワールにとって例外的な敵対国家である。
クロガネ大公国とブリンクウォール。この両国と密接に繋がるイステネブルが今回のクロガネ大公国の侵攻に協調する可能性は最初から高いと見ていたので国境の守りは固めていた。マーリンの千里眼もあって、北方から不意打ちを受けることはなかったが、ここ数日で奇妙な状況が発生した。
イステネブルの騎士たちに魔獣染みた怪物が混じるようになったという。その魔獣の放つ瘴気は精神を汚染する毒性があり、特に性的に興奮し理性を失わせるという。凶悪な淫魔系統の力だ。偵察したマーリン曰く、イステネブルは「終わった」らしい。
人ならざるヒロインがブリンクウォールからやって来て、一息に国ごと乗っ取ってしまった。しかも、多くの国民の命を収奪し理性を奪い、時に淫魔に作り替えているという。
ヒロインが一国を滅ぼすというのは、決してあり得ないことではない。
ヒロインにはそれだけ強力な力がある者もいる。歴史上、多くの国がそうして勃興と衰亡を繰り返しているのだ。
今回のイステネブルは性質が悪い。
ブリンクウォールの手の者ということもあるが、価値観を共有できないヒロインは社会の敵だ。ヒロイン生協も頭が痛いだろうし、そんなヒロインが牛耳る国と国境を接するのは大変よくないことだ。
クロガネ大公国の案件が片付いたら、今度はイステネブルに対処しなければならなそうだ。
課題はそれだけではない。
物資補給の問題もある。
北方路と南方路の両方が戦で塞がっているので、使用できるのは海路のみだ。元々、ノワールは海路での商業活動が中心の海洋国家でもあるので、さほど影響はないしホープを手に入れたので南方からの商業ルートはしっかりと確保できている。ワルキューレに上空から海路を守らせることで流通は安定しているのだが、それでも平時以上の物資の消費量である。医薬品と食料品にマジックアイテム類も前線が必要としているので、徐々に値上がりしている状況であった。
戦況は優勢だし、何なら意図して引き延ばしているところもある。それは今後のノワールの内政を考えて必要な措置だ。
だが、その悪影響が国民生活にも影を落としている。
経済を維持しながら戦を継続するというのは、どうにも難しい。
マオは机の上に広げた羊皮紙に走らせていたペンを止めた。
ヒロイン生協への支援要請の手紙である。ヒロイン生協からやって来た三人のヒロインは事実上、マオの手中に堕ちているが今でもヒロイン生協所属であり、連絡役として重宝している。彼女たちを介して、ヒロイン生協からより多くの支援を引き出すのがマオの狙いであった。
ヒロイン生協はブリンクウォールに対抗するのにノワールを利用しているのだ。
クロガネ大公国がノワールを占領すればすべてが水の泡になる。
それを避けるためにも、ヒロイン生協はノワールを見捨てることはできない。
中立という立場は、この問題に関しては選択できない。より多くの支援をヒロイン生協から引き出すことも難しくない状況である。
マオはちらりと下に目を向ける。
下半身が温かく心地いいのは、足下に跪いたペットが丹念にフェラをしているからである。
元クロガネ大公国騎士団長のディアナである。
緑色の髪の美しい女騎士だったディアナは、すっかりマオに躾けられてしまった。
クロガネ大公国では一つの騎士団を束ねる団長というポストであったが、それも昔の話だ。
他の多くのヒロインと同様に、マオの力にねじ伏せられたディアナは尊厳も何も失い狂い果てた。マオに仕える悦びを知り、過去を捨て去って主人の性処理をするペットにまで堕ちていた。
ディアナの舌がペニスを舐る。
熱い吐息を吹きかけながら、ぴちゃぴちゃと音を立てる。その音に合わせてえもいわれぬ快感がペニスを猛らせ。
「ふう……はあ♡ んちゅ……れろ♡ はあ、はあ、はあ、れろぉ♡ ちゅぱ♡ れろ、れろ、れろ……ん、ふう、ん……ん……れろ、れろ、れろ♡」
ディアナは淫蕩な笑みを浮かべて、ペニスを舐め回し、頬張る。
美麗な顔を醜く歪ませて、頬を窄めて啜る。
睾丸から鈴口まで何度もキスをして、口の周りを涎で汚す。
「んはぁ……ああん……すごぉい、逞しい……チンポ、ご主人様の固くて美味しいれすぅ♡」
ペニスの臭気と味にすっかり理性が飛んでしまったディアナは頬ずりしながらオナニーを始めた。性欲に従順になり、ただマオに奉仕することしか考えられなくなった今の彼女にかつての凜々しさは微塵もない。
「はあー♡ はあー♡ チンポ、臭い、雄臭いすごい、んちゅ……れろ……どんどん臭って、んああ、臭いだけでイキます♡ んお、えぁ♡ んあ、あ♡」
鼻を鳴らして臭いを嗅ぎ、もっと欲しいと目と口で訴える。赤い舌から涎を滴らせて、何度もペニスに満遍なく塗りつけてくる。
ざらざらぬめぬめした舌がペニス上を行き交って、快感でペニスが痺れていく。
「ディアナ、咥えろ」
「あむ……んじゅるるるるる♡」
命令をすぐに実行するディアナ。
咥えた途端にものすごい力で吸引してくる。口腔粘膜がペニスに張り付き、舌とは違った感触を楽しませてくれる。
そしてマオの昂ぶる欲望は止まるところを知らず、ディアナの口内に解き放たれる。
「ん! んふううう! んぐ……ん、んんん!」
「出すなよ、そのまま飲み込め」
「んふ、ふう、じゅる、じゅる……んちゅ……んく……ごく……ふうー♡ ふうー♡」
鼻息を荒げてディアナは精液を飲み込んだ。何度も喉を鳴らして口の中に残る粘液を飲み尽くす。尿道の中からもきちんと吸い出して、一滴も残すことがなかった。
「ぷはぁ……はあ、飲みました」
「どうだった?」
「とても美味しかったです。どろどろでネバネバで、お腹の奥が熱くなります」
とろんとした表情で蕩々と感想を並べるディアナを褒めるように頭を撫でる。ディアナは気持ちよさそうに目を細めた。すっかり飼い犬に堕したディアナの心身には、マオへの忠誠と快楽が刻み込まれている。
差し出したマオの手を噛むどころか、自ら率先して舐め始めるほどに従順だ。敵国の重鎮だったとはとても思えない変わり身であり、事情を知らない者が見たら呆れるかディアナが初めからマオの手先だったと思うか、いずれにしても元クロガネ大公国騎士団長という肩書きは彼女を表に出すには危ういものだ。今すぐにディアナを表立って使うということはできないから、当面はマオの手元で飼い殺しにするほかない。
幸い、ディアナは事務官としても優秀なようだから、執務室の中だけでも使い道はあるのだ。
そういう意味では決して彼女の能力が腐るということはない。
♪
「――――あ」
小さく吐息を漏らした。
アリーシャの桃色の唇が音を発するのは実に五十時間ぶりとなる。
戦いに敗れて虜囚のみとなってから、どれだけの日数が経過したのか定かではない。色のない独房に日々の変化はなく、管理のためか常に光が絶えないために体内時計も狂っている。日の光から切り離されて、人工の光が二十四時間アリーシャを照らし続けているという状況は、さすがに心身に不調を来す。
話し相手もおらず、刺激といえば食事くらいのものだ。
ノワールは虜囚を飢餓で責めるということはしない方針のようでよかった。
提供される食事にも不満はない。
パンと野菜と魚が中心の質実とした料理だ。元王族かつこの世界でも高官として遇されていたアリーシャではあるが、過酷な旅を経験したこともあるので美味しい食事しか口に合わないなどといった甘えたことは言わないし、人間というのは環境適応能力が高い生き物だ。それが良いか悪いかは別として、独房の中での暮らしにアリーシャは少しずつ慣れ始めていた。
身体も心もずいぶんと弱ってきている、という実感はある。
脱出しようという意欲が薄らいでいるし、味方の助けを待つという気概すらも消えつつある。
独房にいても危害を加えられるということがない。戦場よりも独房が安全だと本能が知ってしまうと、立ち上がる気力が湧いてこない。外は危ないからである。理性ではこの状況に甘んじるわけにはいかないと分かっていても本能がここから出ようとしない。何かしら出られない理由を探してしまう。今のアリーシャは、極限状況の中で本能が理性を上回りつつあった。
時間感覚を狂わせる刺激の少ない独房生活が、思考能力を削っていく。
何と言うことはない。
人間を無気力にするのに大仰な施設は必要ない。
衣食住と安全を保証し、何の刺激もない環境に閉じ込めてしまえばいいのだ。
それだけで過酷な環境を生き抜くために培われた優れた思考力は停止する。
静謐も顔を見せなくなり、あの強烈な快感も過去のものとなった。
この虚無に等しい空間の中では、快楽すらも得がたい刺激だ。オナニーをすれば、それが脳への刺激となってアリーシャの心身を維持することに繋がったかもしれないが、それだけは敵の思う壺ではないかと思って堪えている。
静謐の毒の壮絶な快感を知る肉体は、今にもオナニーを始めてしまいそうなくらいに刺激に飢えている。
それでも、アリーシャは部屋の隅に蹲って、心を無にして時の流れに身を任せる。
彼女が救出されるためには、クロガネ大公国がこの独房の位置にまで進軍しなければならない。ここがどこにある収容施設なのかは定かではないが、クロガネ大公国の国力ならばきっと辿り着いてくれる。
そう信じて待つ以外に、アリーシャにできることなど何もないのだ。
そうしている内にアリーシャは微睡みの中に沈んでいく。
起きているのか眠っているのかも最近のアリーシャには分からなくなってきた。
目を瞑っても開いても何も変わりがないからだ。
そんなアリーシャの意識を覚醒させたのは、凄まじい轟音だった。
驚いて顔を上げる。
何と言うことはない。独房の扉が開いただけだ。ただ、それすらも久しぶりのことだったので、アリーシャの耳には大きな音に聞こえたのだった。
やって来たのは見覚えのない男だった。
身なりはいい。黒髪で年齢は自分と同じくらいだろうか。
「思ったよりも元気そうだな。もう少し参っているかと思ったんだが」
「あなたは……?」
「マオ。ノワールの領主だ」
「……そうか」
アリーシャは内心で嘆息する。
尋問官ならばまだしも領主自身がやってくるというのは、あまりいい話とは思えない。
捕らえられてから今まで拷問もなければ聞き取りもろくにされていない。普通なら内部情報を得るためにあれこれを聞かれるだろう。それがないということは、その必要がないと判断されているということであろう。アリーシャの武器は、クロガネ大公国の内部情報だけだ。取引するにしても自分の身の安全を確保するにしても、情報をどう扱うかは今後を見据えた上で重要なことなのだが、それが不要と位置づけられてしまえばアリーシャに利用価値はない。
わざわざ領主がやって来たというのは、どういう意味を持つのか。領主自ら引導を渡しに来たのだろうか。彼にとっては憎い敵だ。アリーシャの立場を考えれば、責任を取らされることになるのは想像できることではあった。
「ノワールの領主様が、何用でしょうか」
「いや、何。ずいぶんと前に捕らえたクロガネ大公国のヒロインがいたなと思ってね。余裕ができてきたから、そろそろこちらも対応することにしたんだよ」
「……余裕ですか」
「君たちのおかげで、俺はずいぶんと忙しい日々を送っているのだ。想像はできるだろう?」
アリーシャは答えない。
この戦が決して自分たちに正義がない侵略戦争だということを理解しているからだ。クロガネ大公国という強国が隣国の小国に一方的に攻め込んでいる。皇子の仇討ちという名目があっても、その皇子の死にすらノワールが関わったという明確な証拠はなく、この戦の必要性や正当性には疑義がある。
アリーシャ自身すら、納得して参戦したわけではないからマオに責められたら言葉に窮してしまう。
「領主の立場で捕虜の下に単身でやってくるというのは、あまり褒められたことではないのでは?」
「そこはそれ。俺もそう無防備ではないからな。抵抗したければしても構わないぞ」
悠然と手を広げてみせるマオにアリーシャは警戒する。
見たところ、マオは鍛えてはいるようだが突出して身体的に強いというようには見えない。魔法や超能力といった外見では分からない異能がある可能性もあるが、少なくとも最前線を戦い生き延びてきた者に特有のすごみはない。力で成り上がったタイプではない。生まれついての貴種ということだ。ならば、素手で対応できる、とは思わない。ノワールの領主が敵国の捕虜と面会するのに護衛をつけていないはずがない。例えば静謐のハサンが霊体化してこの独房内に控えているということもあり得る。そうでなくても、アリーシャが反抗した瞬間に制圧する準備くらいはしているだろう。
「これを好機とは思わないか」
「見え透いた挑発には乗らない。そもそも、あなた一人を倒したところで、ここから出られる保証はない。そちらの心証を悪くするだけだろう」
「心証は既に地の底だが?」
「だとしても、これ以上悪くする理由はない」
「大人しくこちらの沙汰に従うつもりか?」
首肯はしない。アリーシャとて生きることを諦めたわけではなく、ノワール側の裁きに異論があれば、敢然と自分の主張をするつもりではあった。ノワール側にとっては許しがたいことかもしれないし、命乞いをするわけでもない。
「なるほど、抵抗しないが従いもしないというわけか。まあ、賢明な判断だ」
ノワールの出方を窺いながら時間を稼ぐ。もしかしたら、状況が好転して大公軍が現れるかもしれない。自分の意図をぼかして会話を長引かせることで、マオから情報を引きだそうともしている。
外部との連絡の一切が遮断された今、マオは唯一の情報源だ。
「まあ、いいか。アリーシャの知りたそうなことを、とりあえず教えてやろう」
「わたしの名を」
「静謐から聞いてる。当然だろう」
「そうか。そうだな……」
「それに大公軍でもこちらに降服している者はそれなりにいる。お前の情報を素直にしゃべってくれる者も少なくはない」
ヒロインであるアリーシャはただでさえ目立つ。それが指揮官としていくつかの戦場の最前線で戦っていたのだから、大公軍の中で彼女を知らない者はいないのだ。
「さて、大公軍はお前が捕らえられた時からほとんど侵攻できていない。むしろ、俺たちが押し返している状況だ。大軍で来るからどれほどのものかと思ったが、思いのほか脆弱だったな。アリーシャ以外のヒロインも見つけ次第捕らえている。報告のある者ではベアトリクス・モンロー、ディアナ、クロメ、イレイナ……なかなかの立場にあるヒロインたちだな」
「皆は無事なのか?」
「捕まったことには驚かないんだな」
「……わたし自身も捕まっている」
「彼女たちの命の保証はしよう。うちはヒロイン信仰が篤い土地柄でもあるからな」
「そうか」
アリーシャは胸をなで下ろした。
とりあえず戦友たちが死んでいないというのは朗報だ。
マオの発言のすべてを鵜呑みにするわけにはいかないが、もしも真実を語っているのだとすれば、アリーシャに救援が来る可能性は著しく低くなった。主力ともいうべきヒロインたちの名が上がっている。彼女たちが本当に囚われの身になっているのならば、大公軍は危機的状況だ。魔法もないヒロインもないでは、戦力の大幅な低下は否めない。
「領主様がここに来た本当の目的は何でしょうか?」
「ノワールに降り俺の物になれ」
「……その申し出に頷くとでも?」
マオの発言はアリーシャの予想のとおりではあった。
戦えるヒロインの価値は非常に高い。戦力に引き込めるのなら誰でも勧誘するだろう。まして、ヒロインというのは基本的に外来の人間だ。その国に忠誠を誓い、命を賭けて尽くすという気概のある者がどれだけいるか。
それに加えて性的な奉公もさせようというのであれば、ますます頷きがたい。
「簡単に頷くとは思ってないな。だから、無理矢理手籠めにするというのも考えたぞ」
「ッ……外道、だな」
「ノワールに戦をふっかけてきたお前たちに外道と言われるのは心外だな」
「……ッ」
アリーシャ個人は別としてクロガネ大公国の将としての責任は確かにある。だが、だからといって性奴隷に堕とされるのを容認せよというのは無理な話だ。
「で、返事は?」
「お断りします」
「だろうな」
マオとて、そんなにもあっさりとアリーシャが首肯するとは思っていない。肩を竦めるだけで残念そうにもしないのは、初めから解答が分かっていたからだろう。
「とはいえ、お前をこのまま閉じ込めているだけというのも無駄だからな」
「首を落としますか?」
「まさかだ。無駄な血を流しても仕方がない。だから、手籠めにする」
「ッ……卑劣な」
「自分を善人と思ったことはない。それに、俺に抱かれている内に考えが変わるかも知れないぞ。ディアナみたいにな」
「ディ……アナ」
合図と共に入ってきたのは、まさしくディアナその人だった。
アリーシャとも交流があるクロガネ大公国の騎士団長。凜々しく涼やかな面持ちの素晴らしい剣士であり、指揮官だ。
アリーシャが愕然としたのは、そんなディアナの変わりようである。
容貌はそのままで見間違えようがない。しかし、衣服はと言うと半透明なピンク色のネグリジェで、その下には何も着ていない。乳房も乳首も丸見えだ。上気した頬、潤んだ瞳はまるで恋する乙女のようで、マオのほうを盗み見ては太ももを擦り合わせている。
「大公のところにいた頃には、何度か会ったことがあるんだろう?」
と、マオはディアナに尋ねるとディアナは頷いて答える。
「はい。何度も手合わせをしました。彼女は前線にも臆せず出ますし、よく市井の人々とも交流していましたから人柄は保証できます」
「なら、やはり手元に置きたい人材だな」
信じられないものを見たとばかりに目を見張るアリーシャにディアナは艶然と微笑んだ。
「驚かせてしまいましたね、アリーシャ」
「なぜ、あなたほどの方がそんな……」
「なぜって、見ての通りです。ご主人様のものになったんです。わたしは、ご主人様に愛していただいて、身体も心も捧げることにしたんです」
「な、何を言って……意味が、まったく……」
「そうでしょう。理解は頭ではなく心でするものです。ご主人様のものになればどれだけ幸せか、あなたにも分かって欲しいんです」
「あ……!」
ディアナはアリーシャを突き飛ばしてベッドに倒した。
「軽いですね。きちんと食事は摂っていますか? ご主人様のお相手は体力がなければ務まりませんよ」
「あ、相手などするものか! ディアナ、目を覚ませ! 本当のあなたは、こんな情婦のような……んん!!」
するりと伸びたディアナの手をアリーシャの頬を掴んで、次の瞬間にはアリーシャの唇が塞がっていた。
ぬらりとしたものが口の中に入ってきて、反射的に顔を背けそうになる。
(これは、まさかディアナの舌!? 女同士でキスなんて!?)
アリーシャの抵抗をディアナは力尽くで封じる。
長い牢生活で体力をなくしたアリーシャを押し倒すことなど造作もなかった。しっかりとディアナは唇を重ねてアリーシャの口腔内を舌でじっくりと犯していく。
「ふぐ……んぐ……ちゅ……ぐ……ん、んん! ん……んふぅ……んう、うううう!」
逃げようとするアリーシャの抵抗が弱くなっていく。
甘みのある涎が流れ込み、ディアナの舌先が上顎をくすぐる。さらに舌の裏側に入り込んで舐め上げ、絡みつくように何度も舌を弄んでくる。人間の舌はこれほど複雑な動きができるのかと戦慄するほどであった。
アリーシャは次第にとろんとした目になっていく。口の中を蹂躙されながら、ディアナの舌技に翻弄されている。
(わたしは何を……いけない。このまま彼女の思い通りにしては、何とかして正気に戻さないと)
「んちゅ……れろ……ん……ぷはッ、ディアナ、待っ、ん! ふあ……待て、んん! ん、んんん!」
言葉を発することすら許されない。ディアナの熱烈なキスはアリーシャを絶対に逃がさないとばかりに強引で執拗だ。呼吸のために口を離しても、すぐに塞がれてしまう。そうしてアリーシャとキスを繰り返しながら、ディアナの手がアリーシャの太ももを擦る。そして貫頭衣の裾を捲りながら、内股を愛撫して、ついにまマンコに触れた。
「ふあ、あ、ま、待て、そこ、んむ!? んーーーーーー! んんんんんんんん!!」
触れられてはいけない場所にディアナの指が触れる。
アリーシャはディアナを押し返そうとするのだが、どうしても身体に力が入らない。
クリトリスをディアナが引っ掻く。その刺激で腰が跳ねてしまう。
「あッ、あああッ!?」
強烈な快感にアリーシャは驚愕する。
「イキましたね。クリトリスを撫でただけですが、相当溜っていたみたいですね」
「ち、違う、今のは……んひゃッ、ああ、止めてくれ、ディアナ! これ以上は!」
「ダメです。ご主人様があなたを十回イカせたら、わたしを可愛がってくれるって言ったんです」
「な、じ、十回。今のを」
「今のなんてまだ序の口です。静謐さんからいただいた毒をさっき口移しで飲ませました。どんどん身体が敏感になっていきますからね」
「~~~~~~~~~~~~~~~♡」
アリーシャは最早言葉にならない悲鳴を上げた。
ディアナの指がGスポットを抉ったのだ。腰を浮かせてブリッジしながら、潮吹きする。
「しぇ、しぇいひつのどく、だと、お、ふお、おおおん♡」
「効いてきましたね。どうですか。気持ちイイでしょう? 早くイッてください。あと九回もあるんですから」
「ひゃめ、ひゃめろ、おほおん♡ お、う、うあああああ♡ い――――きひぃ、あ、ひゃああ♡」
「可愛い声ですね。我慢しないでください」
「い、嫌だ、こんなところでイキたくな、ああん♡ ひい、あ、あ、上がってくる、あ、ああ、でぃ、ディアナ、ダメだ、こんなことぉ♡ 止めてくれ、止めてぇーーーーー!」
ぶっしゃああああああああ♡
激しく腰を跳ね上げてまた潮吹き。
毒が回って感度が数千倍にまで高まったアリーシャの肉体はあらゆる刺激を快感に変貌させる。少し触れただけで、恐ろしいほどの快楽に思考が溺れてしまう。
「乳首がビンビンですね。ふうーーー♡」
「ひゃあ、あ、それ、いやぁ」
アリーシャは泣きそうになりながら首を振る。
乳首に息を吹きかけられただけで腰をヘコヘコ振ってしまう。焦らすような弱い快感ですら、気を抜くと一瞬で絶頂する。
「あと八回。いっそ一気に駆け上ってしまいますか?」
「ひぃ、こ、こんなの続けられたら、し、死んでしまう。死ぬ! 死ぬから! おかしくなってしまうから!」
「大丈夫ですよ。おかしくなっても、ご主人様は愛してくれます。ほら、わたしが良い例でしょう?」
「ダメだディアナ、正気に戻ってくれ。こんな酷いことを、もうしないで」
「酷いなんて失礼ですね。こんなに気持ちいいじゃないですか。あなたのマンコはわたしの指に張り付いて、締め付けてきています。ほら、いやらしい音がこんなにたくさん」
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ、とディアナはアリーシャのマンコをかき回す。愛液を掻き出して、Gスポットを抉り、クリトリスも捏ねた。アリーシャは舌を突き出して仰け反り絶頂するが、イキながらさらにディアナの責めは続いた。
「おッ、おッ、おおおおお! おひぃいいい♡ あ、あああ、い、イグ、イッてる、お、んは、ひぎいいいいい♡ イグ、お、また、おおん♡ お、あああああああ♡」
声を堪えるという発想はない。
ディアナの苛烈な手マンはアリーシャの理性を上書きしていくのに十分な快感を叩き込んでいる。
絶頂の波が引き切る前に、さらに絶頂を重ねる。
喉が焼けるほどアリーシャは叫んだ。
そのアリーシャの嬌声をディアナがキスで封殺する。
「んちゅ……んお、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお♡」
呻き声が口内で反響する。
アリーシャは白目を剥いてビクビク震えている。
独房生活の中で自然と禁欲生活をしていたからか、久しぶりに味わう静謐の毒とディアナの手マンのコラボレーションは壮絶な絶頂体験となった。自分でコントロールできない快感はオナニーでは味わえない。これ以上続けたらおかしくなるというラインを容易く飛び越えて、絶頂を強要されるのだ。イキ地獄も同然であった。
「早く、早く十回イッてください。もう、わたしも我慢できませんから!」
ディアナ自身もお預けを食らっているのだ。アリーシャどうこうよりも自分の性欲が満たされない飢餓感こそが問題だった。アリーシャが快楽を拒否すればするほどディアナのおあずけが長くなる。だからディアナはアリーシャの訴えに耳を貸さないし、どんどん苛烈な責め苦を与える。
「あ、あぎ、ひ、んお、お、お、お、おお、お、おく、指、届いて、んへええ♡」
「アヘ顔になりました、はあ、はあ、奥がいいんですね。ここならすぐにイクんですね?」
「ひぃ、あ、お゛お゛ん♡ い、く、そこ、ひいん♡ あ、あ、おおお♡」
「見つけましたよ弱点。アリーシャの弱いところで、イキ狂わせてあげます」
「あ――――ああ、あああああああああああああああああああああああああ♡」
何度も何度も潮吹きしてアリーシャは絶頂し続ける。
ディアナの手マンは決して上手いとは言えないが、感度が跳ね上がった今のアリーシャを絶頂させるのは造作もない。
イキ続けてアリーシャは意識を半ば手放している。
白目を剥いて舌を出して、快感に反応して嬌声を上げるだけの人形のようだ。
十回絶頂を終えたとき、アリーシャは完全に脱力してひゅうひゅうと息をするだけになってしまっていた。ベッドを体液で汚したまま、快楽の向こう側に旅立って戻ってこない。
「あ……あ……ああ……んあ……へぇあ……あ……」
アリーシャは時折痙攣しては、小さく呻いている。
そしてアリーシャを責め立てたディアナは、瞳に悦楽の炎を宿してマオを見る。
「ご主人様、アリーシャを十回イカせました」
と、嬉しそうにディアナは報告する。
二人の交わりを見てマオのペニスも膨張している。
こういうのを観戦するのも悪くないと思いを新たにしたくらいには、ディアナとアリーシャの絡みを気に入った。
「ディアナ」
「は、はいぃ」
ディアナは蕩けた表情でベッドの上に座り込んだ。
マオに名前を呼ばれただけで、軽くイッたらしい。
ぶるぶる震えて絶頂の余韻を味わっている。
「騎士団長とは思えないな、その姿は」
「騎士団長じゃありません。そんなのはもう辞めましたから。今はご主人様の犬でしかありません」
「ああ、そうだな。よく分かってるじゃないか」
ディアナの頭を撫でて、頬を撫で、そして頤を上げさせる。唇を寄せてキスをする。
「んちゅ……れろ……ちゅぱ……ん……ん……れろぉ……ちゅ……ふぁ……」
キスを楽しんだ後、ディアナはだらしなく笑う。
「ご主人様とキス、しちゃいましたぁ」
「嬉しそうだな」
「はいぃ、それはもう……最高です」
「なら、セックスはしなくてもいいな」
「あ……そんな、意地悪しないでください。ご主人様とエッチしたいです。オマンコ、ご主人様のおちんちんで、いっぱい虐めてほしいです」
縋り付いてくるディアナをマオは抱き締める。
ディアナはアリーシャに口移しで静謐の毒を飲ませた。当然、ディアナ自身にもその媚毒が回っている。マオを敬愛するディアナはマオに抱き締められたことで多幸感に苛まれる。マンコが熱くて仕方がない。頭は幸せでいっぱいだ。唯一、子宮だけが寂しさを抱えている。もうセックスすることしか考えられない。ディアナはマオに抱きついて、本能の赴くままにディープキスを求めた。