異世界ヒロインが召喚される世界で好き勝手する話 作:もう万体
身体が熱を持っている。
心臓から押し出される血潮が沸騰しているかのようだ。真冬の海風に肌を曝しても、きっと寒さを感じないだろう、と思うくらいには。
ユニオニア行政庁舎の総長室でカリムは羊皮紙に走らせていたペンを止める。
体調不良というわけではないが、精神面で若干の変調があるのは認めるところだが、それは決して表には出さない。
三代ぶりにヒロインの総長となったカリムは、まだ二十代前半という若さだ。この世界にやって来てから五年しか経っていないスピード出世なので、事情を知らない者たちからのやっかみもあるし、政治的な問題から来る心労は極めて大きい。
何せ遡れば二千年の歴史がある大組織。一国に匹敵する政治力と軍事力を持つまでになったヒロイン生協は、カリム個人で動かすには大きすぎるのである。
それでもカリムが総長に任じられることになったのは、政治的な要因やそれこそ伝統に纏わるしがらみの結果である。
近年、大陸各地の情勢は混迷を極めた状態にある。
帝国が崩壊してから群雄割拠の時代に突入しているので、当然の流れだが、それが加速している。ヒロイン生協に求められることも軍事支援や戦争の仲介といった内容が増えていて、否応なしにヒロイン生協が傭兵国家のようになってしまっている状況だ。
本来の役割から、大きく逸れているということを実感しつつも、処理しないわけにはいかない。
特に懸念すべきは大陸西部の情勢だ。
ブリンクウォールを食い止めなければ、大陸全体に破滅的な被害をもたらしかねない。
不確かな予言に頼るまでもなく、様々な調査結果がそれを物語っている上に、ブリンクウォールの非人道的な実験や国内統治方法、戦争介入時の残虐行為といった問題点は議論の余地のない悪である。
ヒロイン生協にとって、大陸の治安維持は本業ではない。
だが、ヒロインという強大な戦力を多数抱える総本山という立場やヒロイン地位向上、権利保護の観点からも世の中に貢献しなければならない。
本音を言えば、椅子に座って書類仕事などしている場合ではない。
今すぐにここを抜け出して船に乗って旅に出たい。
そんな衝動を押し殺してカリムは事務を進めている。
「カリム様、ジャンヌさんからです」
右腕とも言うべきティアナが持ってきた羊皮紙には、意味不明な記号がインクで羅列されている。
ヒロイン生協で実験的に用いられている手紙だ。
ノワールに派遣したジャンヌとカリムで同じマジックアイテムを持っていて、一方が入力した文字が記号に置き換わってもう一方から羊皮紙に出力されるという仕組みだ。言わば魔力を用いたファックスである。記号化した文字情報は予め登録された魔力の持ち主が触れることで本来の字形に変化し、文章としての意味を成す。
ノワールからもたらされる最前線の情報は、ヒロイン生協にとっても今後の方針を決める重要な要素だ。
カリムは受け取った羊皮紙に目を通して、嘆息する。
「何か悪い知らせですか?」
「そうですね。ノワールの状況は変わりないのですが、むしろ、イステネブルですね。どうやら、国家として破綻したようです」
「……破綻?」
「ブリンクウォール側のヒロインが侵攻し、首都を制圧した模様です。詳細はまだ分かりませんが、イステネブル国内で何らかの毒が撒かれている可能性があるようです」
「な……毒」
ティアナは絶句する。
「どうして、そんなことを」
「今はまだ分かりません。ノワールもクロガネ大公国の対応で手一杯でしょうし、詳細が分かるのはいつになるか」
「わたしがノワールに到着したら、ただちに調査します」
目を怒らせてティアナは強い口調で進言する。
元々正義感の強いティアナは、今の荒れた大陸を憂いており、何とか弱い人たちの力になりたいという思いが強い。
この世界に来たことで執務官になるという夢は絶たれたが、それが弱い人々のために力を尽くしたいという純粋な気持ちを呼び覚ますことに繋がっていた。
意気込みを聞いたカリムは苦笑した。
「素晴らしい意欲ですけど、ノワールが第一ですからね」
「……わ、分かってます」
「ノワールは対イステネブルの最前線にもなりますから、あなたの気持ちは無駄にはならないでしょう」
「はい」
「出立は五日後ですよね」
「はい、船の支度に時間を取られてしまいましたが、しばらくは天候も安定しそうですし、早ければ二十日とかからずノワールに到着すると思います」
空を飛んでいけばすぐに到着するが、ティアナは飛行魔法は得意ではないし、数千キロもの長距離飛行など不可能だ。まして、ヒロイン生協からノワールまでまっすぐ行けばクロガネ大公国やブリンクウォールの領土を通過することになるので、海路で移動する他に手段がない。
幸い、ノワールは港町であるホープ市を植民市にして管理しているし、貿易を通じて南海路の国々とも国交がある。
海路での移動は陸路や空路に比べて遥かに安全性が高く確実だ。
「それで、カリム様。ノワールに向かうのは……」
「ああ、そちらの準備もできました。リストが、ここに……はい、これですね」
羊皮紙のスクロールをカリムはティアナに渡す。
それはノワールに向かう第二次使節団の参加者リストだ。第一次使節団は、その一部がブリンクウォールと繋がるという由々しき事態を引き起こした。そのため、徹底した身元確認や思想調査が行われた上で選抜されている。
人手不足のヒロイン生協だ。大規模な使節団を編制するのは難しく、今回は少数精鋭となる。それでも、ヒロインがティアナ一人というわけにはいかないので、調整に調整を重ねて戦闘可能なヒロインを見繕った。
「ステラさんとアニスフィアさんですか」
「知ってる?」
「名前くらいは」
ステラは元々は対屍戦線で活躍したヒロインだ。エクソシスターという死霊系の魔物にめっぽう強い性質を持つ魔法使いである。
その能力から屍を相手に圧倒的な戦果をたたき出していたのだが、とある戦いで彼女を残して部隊が全滅したことを契機に、事実上の引退状態となっている。手の空いたヒロインということなら、確かにそうだろう。
もう一人のアニスフィアもまた、一癖も二癖もあるヒロインだ。
アーティファクト開発の方面に非常に希有な才能を示したことから技術開発局で所属するも、一週間前に自分の研究室が爆発する事故を起こしたばかりだ。
資料によると、この事故での人的被害はなかったものの研究室は大破しており、ヒロイン生協が貸し出していた高価な機材も失われた。
損失額は単純計算でアニスフィアの給料五年分に相当し、それをカリムが肩代わりしている。
研究室がなくなった上にカリムに頭が上がらない状態ということで、こちらも手が空いているヒロインだ。
「このお二人がわたしの部下になるということですか?」
「そうなります。二人とも戦闘力はかなりのものですから、護衛には十分でしょう」
「そこは心配していませんが……」
ティアナが心配しているのは、戦闘力ではない。ステラに至ってはティアナ以上に最前線で戦ってきた経歴の持ち主でもある。
問題は彼女たちの経歴だ。
書面の上でしかないが、かなり濃いメンツだ。この二人の上司として、重要な任務を遂行しなければならないというのが不安なのだ。
統制が取れるのだろうか。
今のところ、問題児を押しつけられているような気がしてならない。
ノワールへの支援は重要な任務だったのではないのか。
「まあまあ、心配になるのは分かりますが、あまり難しく考えなくても大丈夫ですよ。二人ともいい人ですから」
カリムがそう言うのなら、文句はない。
使節団として行くのだからヒロイン生協の威信を賭けたものになるわけで、第一次使節団の汚名を返上しなければならないのだから、どうしようもない人選はしないはずだ。
難しく考えるなと言われるが、使節団の人選が終わり船の準備もあらかた完了したことで、後は出航するだけとなった今、緊張するのは仕方がない。
ティアナにはまだ外交交渉を担った経験が無いのだ。
失敗すればノワールとヒロイン生協どちらにも迷惑が掛かる重責に、胃が痛くなりそうだった。
♪
その夜、カリム・グラシアの姿は背の高い本棚の間にあった。
ここはヒロイン生協総本山たるユニオニアの地下に広がる大図書館。千年以上の長きにわたって延々と積み上げられた知識の集積場であり、地下七階にまで達する広大な地下迷宮だ。
カリムが訪れたのはそんな大図書館の最下層。存在そのものが秘匿された地下八階の禁書庫である。
ヒロイン生協の総長のみが入ることを許される禁足地は、かび臭い古書が詰め込まれた本棚が押し込まれた一部屋だ。
部屋の広さはカリムの執務室よりも狭い。恐らく、大の大人が三人もいれば満室になる程度だ。壁際に一人分のテーブルと椅子があり、他のスペースはすべて本棚が占領している。
まさに、総長一人のための部屋だ。
結界で隠された階段を下りた先にあるこの部屋の存在を知るものは、ごく僅かであり、総長以外の者はそこにどのような資料が眠っているのかすら把握していない。
いや、歴代総長の中でも、この禁書庫の資料のすべてを真に理解できた者はごく少数であろう。
カリムは、禁書庫の真の理解者の一人だ。
薄暗い禁書庫の本棚からカリムは黒い石版を取り出す。
古い資料は千年以上の年月を数える。保存状態がいいのは、劣化防止の魔法で管理されているからだ。それでも千年という月日は、資料を損傷させるには十分で、最初期に収蔵された本の中には痛みが目立つ物も少なくない。
カリムの手にある石版は違う。
まったく月日を感じさせない磨き抜かれた石版は、カリムの顔を鏡のように反射するほど綺麗だ。黒曜石の鏡を思わせる表面には傷一つなく――――それどころか文字も絵も一切なにも刻まれていない。
こうした石版は、この部屋に十五枚存在している。
歴代総長の間で継承されてきたアーティファクトであり、禁書庫の蔵書の中で最も重要なものと位置づけられてきたものである。
カリムがこの世界に召喚されてから、今に至るまでの短期間に総長という地位にまで登り詰めたのも、この石版に選ばれたからに他ならない。
「これを継承するためだけに、この部屋は作られたわけですが……」
カリムは石版をテーブルに置いて、本棚を見上げる。
蔵書の大半は今となっては貴重な歴史書や植物や魔物の図鑑、ヒロイン生協の総長だから知ることのできる歴史的事件の裏側を記した日記帳などだ。
そうした蔵書は、他に類を見ない貴重書であり、ヒロイン生協の大図書館に収蔵するに相応しい歴史的文書の数々だが、禁書とするほどの価値はない。
カリムが独りごちたように、この部屋は石版を守り、次世代に繋ぐためにある。蔵書も石版から目を逸らさせるためのカモフラージュなのだが、それはそれとして総長のみが出入りできる禁書庫ということで、少しずつその時代の総長の趣味嗜好で資料が追加されていた。
特に石版の意味を理解できない総長の時代は、個人の私室として使われることもあったようで、とんでもないことだとカリムは憤る。
石版に封印された情報を読み解くことのできる者のみが、真にヒロイン生協の総長と呼ばれる資格を持つ。
石版に選ばれなかった総長は、あくまでもお飾りの総長だ。表向きは総長であっても、ヒロイン生協の真の目的を理解するには及ばず、そういう者が石版の価値を損壊するようなことをしてはならないのである。
カリムは石版を表面をそっと撫でる。
慈しむような指の動き。
魔力が揺らめき、石版の表面がぼうっと光る。
一瞬の後、漆黒の鏡面に戻る。
「それにしてもノワールとは……今回はずいぶんと遠くに行かれたものですね」
少し寂しげにカリムは呟いて、ため息をつく。
美しい彼女の愁いを帯びた表情は、どこか扇情的ですらあった。
石版から伝わる熱い想いがカリムの心と身体を滾らせるのだ。
石版に内包された圧倒的な情報量。規格外の情念は、カリムの人生観を押し流して上書きするのに十分過ぎる熱量だった。
今、カリムの中には圧倒的な喜びがある。
今年になってようやく現れた予言を塗りつぶす「黒い未来」。
ティアナには嘘を言って誤魔化しているが、この正体をカリムはよく知っている。
それこそ、石版が何から何まですべて教えてくれた。
この石版の正体。
それは
この世界は同一のヒロインが複数同時に、あるいは世代を跨いで召還される。
カリム・グラシアというヒロインもまた唯一無二の存在ではない。
古くは二千年前。
パンゲア帝国を築いた初代皇帝の傍らにもカリムはいた。
彼女は自身の想いを永久のものとするために石版に刻みつけ、後世に遺した。
カリムが石版を継承できたのも当たり前のことだ。
石版は、カリムが未来のいつかに召還される自分自分に向けて遺したメッセージボードだ。封印を解くためのパスワードもカリム本人なら知っていて当然である。
つまりは、ヒロイン生協の総長とは【カリム・グラシア】というヒロイン以外に存在しないのである。
「ん……ふう……」
カリムの口から切ない吐息が漏れ出る。
椅子の上で自らの乳首と秘所に触れる。
石版に触れた時から、彼女の肉体はすっかり熟れた雌に変わってしまった。
この世界にやって来た時は価値観からしてまるで別人に成り果てた。
石版に封印された歴代カリムの悲喜交々の集積が、今のカリムだ。召還された時の瑞々しく青臭い生娘の如きカリムはもういない。
くちゅくちゅと秘所が湿り気を含んだ音を立てる。
指で触れる前から発情した媚肉は卑猥な汁を滲ませていた。
このような身体になったのも、すべては石版から流れ込んできた歴代カリムの想いの所為だ。
かつて、パンゲア帝国を建国した建国の父を想い、慕った当時のカリムは、建国の父と肉体関係を持っていたのだ。
いや、それはカリムだけではない。二千年前の混沌とした時代を制した初代皇帝は、無秩序だったヒロイン達を纏め上げるだけでなく、心身共に支配する特殊な能力の持ち主だったという。
初代カリムもまた、その力に支配された女の一人だ。
彼女はその時の快楽を忘れることなく、未来の自分に引き継ぐために石版を残した。
未来を予言する力を持つカリムは、いずれ自分の愛した男と同じ力を持つ者が誕生することを知っていたからだ。
彼女は、その誰かを初代皇帝の生まれ変わりだと信じたのかもしれない。
未来の自分に対して、「彼」を守るようにありったけの想いを石版に書き残した。
そして石版を引き継いだカリムたちは、歴史の分岐点とも言うべき時に、黒い予言とともに現れる「真の支配者」に忠誠を誓うようになっていった。
過去に片手で数える程度しか現れない主人と出会えたカリムは喜びの絶頂に至り、その想いを書き残し、出会えなかったカリムは悲痛な想いを書き残して後世に託した。
十五枚の石版はそうして生まれたカリムの想いの結晶だ。
カリムというヒロインは十代から二十代前半の若さで召喚される。
男を知らない生娘だ。
そんな少女にとって、歴代カリムの想いは重すぎる。
触れれば瞬く間にその感情に塗りつぶされることになる。
今代のカリムもそうだった。
石版から流れ込んだ感情の激流に抗うことなど不可能だった。
会ったこともない顔も知らない誰かを想いながら、処女のまま淫らに堕ちる。
「ふうー♡ ふうー♡ ん、お、う……ふう♡ ん……ん……はあ……はあ……んふぅ♡」
カリムは自らの身体を慰めながら、唇を噛み締める。
誰も近づかない禁書庫ではあるが、声を上げることへの羞恥心はある。
一人で、誰にも知られず熱い想いを吐き出す。
「ん、ぐうぅ♡ あ、う……気持ち、イイ……んふ♡ あは……う♡ あん、ん、んんん♡」
白い指先が割れ目をかき分け、膣内に入る。
自分の気持ちイイところは知り尽くしている。
意中の相手に出会えたのは歴代カリムの中でも少数だが、それでも数十年分もの肉欲に溺れた記録がある。
全身くまなく、穴という穴を調教されて、女の快楽を叩き込まれた。
その記録がカリムを処女のまま淫乱な肉体に作り替えてしまったのだ。
「ふう、ふう、んふう……あぉ、んあ……そこぉ、あ、もっと奥、奥に欲しいぃ、ん♡ ふう、あう♡」
カリカリと乳首を引っ掻きながら、マンコを指で掘り返す。
この何も産まない無為な作業に耽る時間が楽しい。快感で頭が飛んでしまう。決して他者には言えない秘密の時間だ。絶対に誰も踏み入ることのない聖域で、一人オナニーをする。この瞬間は世界のことも、これからのことも何も頭にはなくなる。
「ん、く……い、く……んお……お、Gスポットぉ♡ お、ほぉ♡ ひぃ、はへ、あ、んんん♡」
腰をひくつかせながらイク。
心臓がバクバクと音を立てている。
膣の奥が収縮して子宮が下りてくるのが分かる。
「チンポ、奥に欲しい……入れたい、また犯して欲しいです。ご主人様のチンポで生ハメ、あ、く……はあ、はあ、また新しい記録がぁ、わたしの中に……はあ、はあ、あん、そう、これもすごくよかった、あ、あ、あぁん♡」
過去の記録が今のカリムを上書きする。オナニーをする度に新しい発見がある。自分ではない自分が経験したセックスがカリムに伝わる。
Gスポットやクリトリスの弄り方は嫌と言うほど理解していた。
喉を反らして天井を仰ぎながら、指をマンコに出し入れする。
「おッ、おッ、おおおおおおおおおおおぉ♡ イグううううう♡」
椅子をガタガタと揺らしながらカリムは絶頂する。
仕事のストレスも一気に吹き飛ぶ快感で目の前がチカチカする。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、また、やってしまいました……」
情けなく絶頂した後の賢者タイム。気持ちイイことが止められない。かつての自分には戻れないところまで来てしまったと実感する瞬間でもある。
「ノワール、できることならわたしも行きたかったのですが……」
今すぐにでも飛んでいって、ノワールにいる主人に抱き締めてもらいたい。二千年前からずっと「主人」に仕え、愛してもらうために記録を引き継いできた。そのためだけに存在すると言っても過言ではない。
これだけ性欲が漲っているのに指だけでオナニーしているのも、処女を捧げるのは一人だけと決めているからだ。
早く、一秒でも早く処女を奪って欲しいと願いながらも本質的な真面目さは消え去らない。ヒロイン生協の総長として、この騒乱続く大陸の安寧のために力を注ぐのもまた二千年前に定めた彼女の生き様なのだ。