裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
あまりの衝撃的な光景に僕は思わず硬直してしまっていたが、何とか思考停止状態に陥っていた頭を回転させ、目の前に広がる状況について考える。ついでに裸体の少女たちから視線を外すように顔を下に向けた。幼いとは言え、相手は女の子だ。裸をジロジロ見られるのは良い気持ちはしないだろう。
それでも少しの間だけ凝視してしまっていたのは、行ってしまえば不可抗力だ。それについてはどうか許してほしい。だ、大丈夫、僕は危ない人じゃない。視線の先にある僕の股間も盛り上がっていないから。
だが、何故彼女たちはこんなところで衣服を全て脱いでいるのだろう。ここが浴室ならまだしも、そういうわけではなくここはリビングだ。そんなところで服を脱ぐ理由が分からない。
などと一人で首をかしげぐるぐると思考を巡らせていると、今さっき声を上げた眼前の少女がまだ少しだけ狼狽した様子で僕に恐る恐る声をかけてきた。
「あ、あの、その恰好……、使用人ということで間違いはないのですわよね……?」
と、僕に確認してくる。恐らく、僕が安全な人間なのか、それとも否か、それが知りたいのだろう。まぁ、たとえ不審者が現れたとしても、僕は危険ですだなんて答えるはずがないだろうが。
でも、僕は正真正銘白だ。この場にはエルシャローゼ様とアルフィオーネ様という二人の証人もいるから疑いようがない。
だから僕は俯かせていた顔を上げ、少女の碧い瞳を見据えながら嘘偽りのない真実だけを伝えた。もちろん、彼女の裸体を視界に収めないように気をつけながらではあるが。
「はい、そうでございます。私はエルシャローゼ・ローラント様とアルフィオーネ・ローラント様の専属執事をさせていただいております、ナギサ・モチヅキと申します」
「お二人とも、これは間違いではないのよね?」
僕の言葉を聞いた少女は、チラリと横に視線を流してエルシャローゼ様とアルフィオーネ様にそれが真実であることを確認する。
「え、ええ、間違いないです……。その方は私たちの専属執事です……」
「が、害がないことは保証いたします」
お二人は僕の言葉を肯定するように強く頷いた。未だにしゃがんだままで恥ずかしそうに顔を紅色に染めてはいたが。
「そうなのね。ならば信じますわ。ごめんなさい、疑うような真似をしてしまって」
御嬢様の言葉を聞いて僕の言葉が真実であると理解してくれたらしく、目の前の少女は僕に頭を下げながら謝罪の言葉を述べてきた。少しウェーブのかかった長い金髪が彼女の動きに合わせて肩口より前側に流れる。その所作一つ一つがとても丁寧で綺麗だった。この少女も恐らく貴族の子なのだろう。
「い、いえ、頭をお上げください。疑ってしまうのも無理ないでしょう」
「お気遣い、ありがとうございます」
僕の言葉を聞いて、少女はようやく下げていた頭を上げてくれた。実際、彼女らの肌を見てしまったのだし、僕が謝られるのは何か違うような気がした。
「それで……、私からもお聞きしたいことがあるのですが……」
「ええ、分かりますわ。何故リビングでこのような恰好をしているか、ということですわよね?」
「は、はい……。も、もしかして、執事とは言えども、異性はリビングには立ち入り禁止……というルールがあったり……」
「しませんわ。使用人であれば何の問題もありませんわ」
「そ、そうなのですね、良かったです……」
ひとまず、ルールを破ってしまったとかそういうわけじゃなかったようなので安心した。いやまぁ、たとえリビングが男子禁制だったとしても、ここで全裸になる理由はよく分からないのだが……。
「それでは何故、そのような……」
「実は、私たちの通う魔法学園では昨年より新たに、魔力を取り入れた健康法が導入されたのですわ」
「魔力を取り入れた健康法……ですか?」
この世界に魔法が存在しているということは、昨日学園に関する説明を聞いた時についでに教えてもらったのである程度把握しているつもりだが、魔力を用いた健康法が存在しているという話までは利いていなかったので僕は思わず聞き返してしまう。
魔力とは、人間の体内を流れるエネルギーのようなもので、この世界の人間は種族関係なく誰でも持っているものらしい。その量は人それぞれであり、その魔力の種類……属性?というのもまた人それぞれとのことだった。魔法とは、この体内を流れる魔力を体外へと放出することで発動できるものらしい。どのような現象を発生させられるかはこの属性?とやらに起因するみたいだ。
ファンタジー系の小説を読んでいる人ならすぐに呑み込めるような話かもしれないが、残念ながら僕には馴染みがなかったので、憶えるのが少し大変だった。属性なんて既に忘れかけてるし……。
ちなみに、この世界の住人ならば誰でも使える魔法だけど、僕の体内には魔力の流れは一切感じられないようだった。もしかしたら魔法が使えるかも?という僕の期待はあっさりと打ち砕かれてしまった。
余談だが、僕が元いた世界で電気やガスによって動いていたものは、この世界では全て魔力で動くという仕組みになっているようで、それらの魔力で動く道具を総称して魔道具と言うらしい。うん、そのままだね。
昨日、料理する際に魔力コンロを初めて使ったのだが、使用感としては元の世界のガスコンロと何ら変わりなく普通に使いやすかった。というか、魔力を持たない僕でも仕えるんだなぁと少し感動した。
また、水道やトイレ、お風呂のシャワーなんかも全て魔力によって機能しているらしい。抱いた感想としては、何でもありなのか……という感じだ。いやまぁ、ものすごく便利だとは思うよ。元の世界に帰ることが可能だったら、是非とも持ち込みたいと思える。帰れないのだけど……。
っとと、かなり話が脱線してしまった。今はひとまず魔力を用いた健康法について聞かねば。寮で裸になる理由は単純に気になるし。
「ええ。体内に魔力が流れているということは常識的な知識ですわよね」
「そ、そうですね」
僕がこの世界の常識に疎い異世界人であることはあまり大っぴらにしない方が良いだろう。ルクス様曰く、異世界伝説については賛否両論分かれるみたいだし。
「それだけでなく、魔力は空気中にも存在しています。ごく微量ではありますけどね。それはずっと昔に証明されています」
へえ、そうなのか。そこまでは教わっていなかった。となると、空気中元素の量割合もまた少し変わってくるのかな?確か元の世界の常識だと、窒素が一番多くて、次に酸素、二酸化炭素とかアルゴンとか……とかそんな感じじゃなかっただろうか。いや、詳しく勉強していたわけじゃないから不確実なのだけど。
「また、体内の魔力が身体の調子を整える働きを持っているということも知られています。魔力を放出しすぎると体調を崩すことからもそれはよく分かることだと思いますわ。また、息を吸うことで枯渇した魔力をほんの微量ではありますが回復することも可能です」
魔力を持たないから僕には一生分からない感覚だろうなぁ、などと考えながら、彼女の話に静かに耳を傾ける。
「そこでとある研究者は考えたようなのです。人間が常時息を吸うように、常に外気に肌を露出させれば、体内だけでなく身体の外部も綺麗にできるのではないかと。そして、試しに一月ほど家の中で全裸で過ごしてみたようなのです」
うわぁ、研究者の発想ってすごいなぁ。普通なら大分頭おかしいこと言っているんだもんねぇ。そもそも、体内と大概で魔力の作用の仕方が同じかどうかも分からないのだし。まぁ、だからこそ思いついたことを試してみたのだろうけど。きっと研究なんてそんなものなのかもしれない。
「その結果、本当に肌が綺麗になり、血の巡りも少し良くなったようなのです。残念ながら、この現象についてはまだ証明されていないので公には周知されていないのですが、この魔法学園では先んじてこの健康法を実践しようということになり……」
「学生は寮内で全裸で過ごすことになった、ということですか」
「ええ、そうなりますわね」
僕の言葉に、金髪少女はこくりと頷いてみせた。