裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
「昨年、入学早々このようなルールが取り付けられたので、当時は私も戸惑ったものですわ」
当時のことを思い出すように、全裸の金髪少女は苦笑を浮かべながらそうポツリと呟いた。
当然戸惑うだろう。いきなり"日常生活では服を脱ぐこと"などと言われてしまっては、たとえ幼くとも、そしてたとえ周りが同性ばかりだったとしてもいろいろ困惑してしまうはずだ。
というか、彼女たちだって本当は嫌だろう……。だって、大人の研究のために裸にさせられているということだろう。そんなの堪ったものじゃない。大人の都合とは言えども、乙女に肌をさらすことを強要し恥ずかしい思いをさせるのはどうかと思う。僕ならすぐに声を挙げると思う。
こんな状況でも文句の一つも上げない彼女たちは、きっと僕なんかよりずっと大人なのかもしれない。僕はそんな彼女たちに対して、感心と尊敬の念を抱いていた。
そんなことを考えている間にも話は進む。
「な、なるほど……、だから私たち新入生にも事前連絡がなかったのですか……」
「そうなるわね。しかし……、昨年はこの寮には使用人含め女性しかいなかったので気にしていなかったのですが、そういえばこの寮、使用人なら女性だろうと男性だろうと入室可能なのですよね……。すっかり忘れてしまっていましたわ……」
そう言いながら僕をチラチラと見つめてくる目の前のすっぽんぽん金髪少女。その顔はほんのり赤みがかっている。いや、うん。そりゃそうだよね。恥ずかしいに決まってるよね。未成熟とはいえ、普段は不用意に他人に見せたりしない胸のぽちりや股間の割れ目を僕に見せてしまっているのだから。
というかさ、こういうルールができたのなら、使用人も同性に限定した方が良いんじゃないの?もしものことがあったらどうするのだろう?い、いやまぁ、僕はそんなことしないからね?本当だからね?ロリペドではないからね!?
「あ、あの、今からでも同性の使用人に変更いたしましょうか……?その方が皆様としてもまだ気が楽ですよね?」
流石に彼女たちが可哀そうに思えてきてしまい、気づけば僕はそんな提案を持ち掛けていた。こういう事情があると分かれば、きっとルクス様もエルシャローゼ様とアルフィオーネ様の専属使用人の変更も許してくれるはずだ。
「「そ、それはダメっ!!」」
しかし、そんな僕の提案に異議を唱えたのは、他でもない御嬢様方だった。未だにしゃがんだまま恥ずかしそうにプルプル震えてはいるが、それでも強い意志の篭った視線で真っ直ぐ僕を見据えてきていた。
僕はその視線に少し気圧されてしまう。どうして彼女たちは僕に拘ろうとするのだろうか?年が近いというのはそんなに重要なことなのだろうか?二人からの視線を受けながら、僕はそんなことを考えていた。
「い、今から変更するのは手間じゃないかしら。貴方をすぐに屋敷に戻らせるのは流石に申し訳ないわよ」
「そ、そうですっ、エルシャお姉様の言う通りですっ!そ、それに、年の近い使用人は皆、男性ばかりなのです。ですから、変更する意味はあまりないように私は思うのですっ!」
「で、ですが……、御嬢様方が良くても他の方が……」
「いいえ、私は別に構いませんわ。こちらに来て早々帰らせるのは不憫でなりませんわ。ここからローラント家はそれなりに距離もありますし」
金髪少女は僕の言葉に首を横に振ってそう答えた。えっ、ゆ、許されちゃうの?気遣ってくれるのはとてもありがたいことなんだけど……。本当に良いのかなぁ、これ。だって、これから毎日のように僕が彼女たちの裸を見ることになるってことでしょ?まぁ、ジロジロ見なければ問題ないのかな。
それと、今考えることとしては少し違うかもしれないが、彼女はローラント家の屋敷の場所を知っているようだ。まぁ、ローラント家はこの世界ではかなり有名な貴族らしいので、知られていて当然なのかもしれないけど。
「そ、それに……、貴方なら……嫌ではないですわ。も、もちろん、恥ずかしいという気持ちは多少ありますけど、貴方がこの場にいることを嫌だとは全然思えませんの」
そう言って頬を赤らめながらも微笑を浮かべる目の前の金髪少女。まだ幼い少女のはずなのに、その姿はとても美しく見えた。彼女が全裸であることも忘れ見とれてしまいそうになる。まぁ、寸前で踏みとどまったけど。
ってか、ちょっと待って?僕に見られて嫌じゃないっていうのは、つまり僕の容姿が男っぽくないから、というわけじゃなかろうな?うっ……、心に刺さる……。い、いや、被害妄想だよな、これは流石に。余計なことは考えないようにしよう。これ以上自分の心を傷つけないためにも。
「……本当に、私がこの場にいてよろしいのですか?」
「ええ、問題ありません。ユーア、貴女も異論はないわよね?」
すると彼女は首だけ回してもう一人の少女に確認の視線を送る。先ほどから一切言葉を発していなかった黒髪の少女は、金髪少女の言葉にこくりと一つ頷いた。あっ、今更気づいたけど、黒髪の子の頭に猫耳がついてる……。それに、細長い尻尾も見えた。これが噂に聞く亜人族……というやつなのだろうか。
というか、黒髪の少女は他3人とは異なり、自身が裸であることを一切恥ずかしがっていない。身体を隠そうともしなければ、頬を紅潮させてもいない。い、いや、だからといって彼女の裸身をジロジロ見て言い口実にはならないので、僕は彼女の剥き出しの素肌にはなるべく視線を向けないよう心掛ける。
僕が内心でそう硬く決心しているのを他所に、すっぽんぽん金髪少女はすっぽんぽん黒髪猫耳少女の反応を見て満足気に頬を綻ばせていた。
「満場一致ね。というわけで、これからよろしくお願いいたしますね。えっと……、ナギサさん……で良かったかしらね?」
「はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします、えっと……」
「あっ、自己紹介がまだでしたわね。私の名前は、シャルティーナ・アルテロアと申します。以後、お見知りおきを」
そう言ってぺこりと綺麗な所作で頭を下げる金髪少女、シャルティーナ様。……あれ?アルテロア……?何処かで聞いたような……?
「ほら、貴女も自己紹介なさい」
僕が頭を悩ませている間に話は進んでしまっていた。
「はい、姫様。初めまして、わたしの名前はユーア。シャルティーナ様に仕えるメイドです。どうぞよろしくお願いします」
黒髪猫耳少女は自己紹介のためにようやく口を開いた。初めて聞くその声は、見た目通りとても可愛らしかった。鈴を転がしたような声とはこういう声を差すのかもしれない。いや、それよりも……
「……って、姫様?」
猫耳メイドさんが発した"姫様"という単語に、僕は少し引っ掛かりを覚えていたのだった。