裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
「さてと、後はエルシャローゼね。何時までそのままでいるつもりなのかしら?アルフィオーネはもう堂々としているわよ」
「そ、そう言われましても……、は、恥ずかしいですし……」
「フフッ、そう……」
シャルティーナ様に催促されてもなお立ち上がろうとしないエルシャローゼ様。いや、本来はエルシャローゼ様のような反応が正しいと思うけどね。
そんなエルシャローゼ様の様子を見かねたシャルティーナ様は、何か企むような意地の悪い笑みを浮かべながら、じりじりとエルシャローゼ様ににじり寄る。エルシャローゼ様は怯えたような表情で、アルフィオーネ様やユーアさん、そして僕に救いの手を求めるように視線を向けてきていた。
しかしながら、アルフィオーネ様は今し方魔力健康法に賛同され、シャルティーナ様同様維持の悪い笑みを顔に貼りつけていた。そして、ユーアさんは自身の主人であるシャルティーナ様には歯向かえない。
そして、僕は僕でルールに口出しできるような立場ではない。故に、エルシャローゼ様のすがるような目線に答えてあげられない。
僕らが動く気配を見せないことから自分は既に詰んでいると理解したらしく、エルシャローゼ様は落胆したように肩を落としてしまった。そして、再度僕に視線を向けてくる。しかし、その視線は先ほどの助けを求めるようなものとは異なり、何かを問うようなものだった。
けど、実際に何を問われているのか分からない。だから僕は首をかしげることしかできなかった。そんな僕の反応を見たエルシャローゼ様は大きく嘆息してしまう。で、でも、視線だけじゃ分からないこともあるのだ。許してほしい。
そんな間にもシャルティーナ様はエルシャローゼ様にゆっくり近づいていく。そして、エルシャローゼ様のすぐ傍まで接近したシャルティーナ様は、エルシャローゼ様と視線の高さを合わせるようにその場にしゃがんだ。
「ねぇ、このままじゃアルフィオーネに取られちゃうわよ?」
「な、何をですか?」
「フフッ、分かっているくせに……。彼のことよ。良いの?アルフィオーネに独占されちゃうわよ?」
「なっ、べ、別に私はそんなんじゃ……」
そして、先ほどアルフィオーネ様にもしていたように、エルシャローゼ様の耳元に口を近づけ何やらひそひそと呟き始めた。
すると、エルシャローゼ様の顔もアルフィオーネ様同様真っ赤に染まっていく。えっ、もしかしてまた僕のチラ見罪を暴露されてる!?あああ、これはもう契約使用人解雇待ったなしだ……。ローラント家から追放される……。
「素直じゃないわねぇ。なら、アルフィオーネと一緒に私も彼にアタックしてみようかしら。私たち二人にくぎ付けにしてしまえば、きっともう貴女には振り向いてくれないでしょうねぇ」
「うっ……、そ、それは……」
などと一人絶望している間にも、彼女たちの小声でのやり取りは続く。お願いします……、お願いします……。どうか、もう勘弁してください……。解雇だけはどうかお許しを……!!
「ま、まぁ、どうせここで生活するならこの姿にも慣れていかないといけないから仕方ないことよね。こ、これは別に、シャルティーナ様の口車に乗せられたわけじゃありませんから。あくまで淑女としての嗜みというやつです」
「フフッ、そうね。たしなみね、フフフ」
「そ、そうよ。だ、だから、ナ、ナギサのためってわけじゃないの。その辺、履き違えないで頂戴」
心の中で必死に手を合わせて契約解消回避を願っていると、不意にエルシャローゼ様のそんな言葉が飛んできた。も、もしや、今回は見逃された……ということか!?よ、良かったぁ……。
彼女の言動から察するに、僕をローラント家で働かせる彼女たちなりの目的があるのだろう。僕のためではない何か別の意味が。だから僕は、決して見逃されたわけではない。それは履き違えないようにしよう。
「分かっております。そのような愚かな勘違いなどいたしません」
僕はそう言って頭を下げた。というか、いつの間にかエルシャローゼ様も身体を隠すのを止めて立ち上がっていた。白く肌理細やかな若い素肌が惜し気もなくさらされてしまっていたが、僕はほとんど見ていない。
それにしても、シャルティーナ様のあの意地の悪い微笑みは何だったのだろう?もしかして、気づかぬうちに説得していたのかな?
それか、僕の悪事を暴露することで彼女の怒りを掻き立て、恥ずかしさを忘れさせるという作戦だった、とかか?うーん、よく分からない。まぁ良いや。
「むぅぅっ、なんかその態度ムカつく……」
「ええっ!?も、申し訳ございません、御嬢様」
「もう良いわよ。何言っても無駄なのは理解してるから……。とにかくシャルティーナ様、よろしくお願いいたします」
「ええ、よろしく、エルシャローゼ。フフッ、貴女も頑張ってね」
「ち、ちがっ……、はぁ……」
僕はこの状況についていけていなかったが、ともかくエルシャローゼ様もアルフィオーネ様も無事この裸生活に前向きな姿勢を向け始めてくれたようだ。慣れるにはもう少し時間がかかるだろうが、きっと彼女たちなら大丈夫だろう。
そして、彼女たちの精神的負担を少しでも軽減するために、今僕ができることはただ一つ……
「御嬢様方、改めてご提案なのですが……」
「あっ、却下よ」
「えっ!?まだ何も言ってないのに!?」
「どうせ専属使用人の変更の申し出でしょう?ナギサの顔を見てれば分かるわよ」
僕ってそんなに分かりやすいのかな?言いたいことが顔に出てしまっているのだろうか。気をつけないとな。
「ま、まぁ、そういうわけですので、誰か別の……」
「だから却下よ。何度も言わせないで頂戴」
が、僕の提案はまたもあっさり却下されてしまった。この期に及んでまだ僕を気遣おうとしてくれているのか……。その優しさは嬉しいけど、僕のために彼女たちに我慢を強いてしまうのは本意ではない。
「お、御嬢様、私をお気遣いいただけるのは嬉しいことですが、私は貴女方の負担にはなりたくありません。やはり、同性の使用人にお任せすべきかと」
「はぁ、貴方が優しいのは分かるけど、勝手に私たちの考えを決めつけないでほしいものね。別に、貴方のことを負担だなんてこれっぽっちも思ってないわ」
「そ、そうです。それに、貴方は私たちに恩返しをしてくれるのでしょう?それなら、私たちのために精一杯働いてください」
「うっ、お、おっしゃる……通りです……」
確かに、彼女たちのためと良いように言っているが、実際やろうとしていたことは職務放棄と変わりない。それはダメだ。僕は僕を助けてくれた彼女たちに恩を返すと約束したのだ。
そして、幸いと言うべきか、彼女たちは僕を負担だとは思っていない。それならば、職務を全うすることが今の僕に課せられた使命だ。
「そういうわけだから、貴方には引き続き私たちの専属使用人として働いてもらうわ。力もあるし、料理も美味しい。こんな優れた人間、傍に置いておく外ないでしょう?」
「お、お姉様……、そういう言い方は……」
「いえ、構いません。むしろ、お褒めにあずかり光栄の極みでございます」
「ナギサさんがそれで良いのなら……」
というわけで、ひとまず僕は彼女たちの傍に置いてもらうことができた。気を引き締めなければ。職務全う、それから、彼女たちの裸体を不用意に見ない。今後の僕のスローガンだ。
「あら、お料理が上手なんですの?」
などと考えていると、不意にシャルティーナ様が僕たちにそう問いかけてくる。もしかして、料理に興味があるのかな?とは言っても、僕の料理は言うほど大したことないと思うのだけど。ローラント本家で使用人の方々からお褒めいただいたのも、きっと世辞のようなものだと思うし。
「い、いえ、私はそんな……」
「もう絶品なのです!」
「ええ。あんな美味しい料理、初めて食べました」
ちょっ、それは過大評価ではないか!?美味しいと言っていただけるのは嬉しい限りだけど、流石に褒め方が大げさすぎる。
「なんと!それは是非とも食べてみたいですわ!ユーアもそう思うわよね?」
「はい、姫様。わたしは料理はあまり得意ではないので、是非とも参考にさせていただきたいです」
「えー……、そんなに期待されても困るのですが……」
御嬢様方が過剰に褒めすぎるから、かなりハードルが上がってしまった。うわぁ、これかなりのプレッシャーなんだけど……。
「っと、申し訳ございません。でも、エルシャローゼとアルフィオーネが絶賛する料理、とても気になりますわ」
「え、えっと、私の料理で良ければ何時でもお創り致しますよ?」
「ほ、本当ですの!?嬉しいですわ!」
そういえばこの寮、キッチンとか風呂なんかは共用みたいだけど、使用人が複数いる場合は業務の分担とかするべきなんだろうか?この辺りはユーアさんに聞いてみるのが良いだろう。
「あ、あの、ユーアさん、今後の業務について教えていただきたいのですが……」
「あっ、そうですね。わたしも、何時お話しすべきか考えていたところです」
と、その時、背後の扉がガチャリと開く音が聞こえた。慌てて僕は背後の扉へと視線を向け、入室者を確認する。
ゆっくりと扉が開かれ、その奥から顔を覗かせたのは、これまた小柄な少女だった。綺麗なワインレッドの毛髪をツインテールにしたその少女は……
「うわっ、何じゃこりゃ!?」
そんな驚きの声を上げていた。