裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
「な、なんでみんな裸なの!?」
赤毛の少女は少し引き気味にそう言った。うん、それは多分平常な反応だと思う。普通、部屋にいる人たちがみんな全裸だったらおかしいと思うはずだ。いやまぁ、僕は服を着たままなのだけど。
驚きの表情を浮かべ入り口で佇む赤毛の少女の姿を、室内の4人の裸少女たちはじっと見つめる。そのうちの一人、アルテロア国の王女シャルティーナ様が最初に口を開いた。
「あら、もしかして貴女、ラトナータ?」
「え、ええ、そう……だけど……。って、もしかしてシャルティーナ姉様!?」
「フフッ、やっぱり貴女だったのね。お久しぶりね」
「お、お久しぶり……」
そう言って挨拶を交わす赤毛の少女とシャルティーナ様。この二人はどうやら知り合いのようだ。まぁ、シャルティーナ様は王女様なのだし、顔が広いのも当然と言えるかもしれないけどね。
「えっ、あ、貴女がラトナータ様なのですか!?」
「お、お初にお目にかかりますっ!わ、私、アルテロア王国第Ⅰ貴族、ローラント家の長女、エルシャローゼ・ローラントと申します」
「同じく次女のアルフィオーネ・ローラントです」
"ラトナータ"という名前に反応した御嬢様二人が慌てて居住まいを正し、それぞれ自己紹介を済ませる。御嬢様方の反応的に、この赤毛の少女もシャルティーナ様同様かなり地位の高い方なのだろうか?
とにかく、御嬢様二人に倣って僕も挨拶をしておかないとな。
「私、ローラント家に仕える契約使用人のナギサ・モチヅキと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」
「貴方は服着てるのね……。え、ええ、よろしく。まぁ、皆さん知っているようだけど、改めて自己紹介させてもらうわ。アタシの名前は、ラトナータ・フォルレット。魔族の国フォルレットの第4王女よ」
ふむ、なるほど。この方も王族だったのか。魔族の国があるという話は聞いていたが、フォルレットという国名だったとは知らなかった。
にしても、この寮に位の高い方々集まりすぎじゃない?人間族の国の王女様に魔族の国の王女様……。さらには、人間族最上位貴族ローラント家の御嬢様……。僕、こんなところにいて良いのかな?何という場違い感……。
ちなみに、この世界の貴族はⅠ~Ⅹの10階級に分けられているらしい。これは万国共通であり、数字が小さくなるにつれて階級が上がっていくようだ。ローラント家は第Ⅰ貴族なので、この国の最上位の貴族ということになるわけだ。
「そ、それで、皆さんは何故何も着ていないのかしら……?そういうルールでもあったりするの?……いや、まさかね……」
「ルール……と言えるかは分からないけど、一応あるわ。別に私たちが裸族とかそういうわけじゃないから勘違いは止めて頂戴ね」
「ええっ、ホントにあるの!?い、一体どんなルールなの!?」
まさか本当に裸にならなければならない理由があるとは思っていなかったのか、シャルティーナ様の言葉に目を丸くして驚愕の声を上げるラトナータ様。そんなラトナータ様を他所に、シャルティーナ様は決まりごとの説明に移る。
「これは魔力健康法の実践なの」
「魔力……健康法……?」
それからシャルティーナ様は、先ほど僕らにもしてくれた魔力健康法の説明をラトナータ様にも繰り返し行った。
ラトナータ様はシャルティーナ様の説明を終始真剣な面持ちで聞いていた。時々、納得するように頷いてもいた。
「というわけなの。だから、私たちもこうして寮の中では衣服を身につけず過ごしているのよ」
「なるほど……。確かに、そういう説があっても何らおかしいことはないかもしれないわね……。アタシたちの髪の毛がこうして綺麗に保たれているのも、魔力あってこそっていう考え方もできるわけだし」
「フフッ、流石は魔族国の王女ね」
「まぁね」
シャルティーナ様に褒められて誇らし気に胸を張るラトナータ様。こういう反応は実に子供っぽくて和む。
「というわけだから、この寮にいる間はなるべく衣服は身につけないようにして頂戴。最初は恥ずかしいかもしれないけど……」
「ええ、分かったわ。んしょっと……」
シャルティーナ様が言葉を続けるよりも早く、ラトナータ様は着ていた服に手をかけ、ひょいひょいと勢いよく脱ぎ捨てていく。よっ、良い脱ぎっぷり!なんて口に出したりはしない。
そうして、全ての衣服を脱ぎ終えたラトナータ様は何の躊躇いもなく大きく伸びをしてみせた。
「んんっ、はぁ。この解放感、なんか良いかも」
「な、何の躊躇もなかったわね……」
「まぁ、決まり事だしね。ところで、貴方は脱がなくて良いの?」
ラトナータ様は僕に対してそう問いかけてくる。だから僕は首を横に振って彼女の問いかけに答えた。
「いいえ、これはあくまで学生のルールでございます。ですので、私には適応されないかと」
「あら、そうなの。そういえばさっき、契約使用人って言ってたもんね。パッと見分からなかったけど、契約使用人ということはつまり成人しているってことだもんね。人は見かけによらないってよく言ったものよね」
「ぐふっ……」
彼女のストレートな物言いに、僕は思わずその場に崩れ落ちてしまう。そ、そうですよね……、パッと見じゃ僕が成人しているだなんて思えないよね……。うん、分かってる……、分かってるさ……。
「あっ、ご、ごめんなさい、つい本音が……」
「か、構いません……。じ、事実ですから……」
「ナギサ、自分の容姿気にしてたのね……」
「私は素敵だと思うのですけど……。って、私ってば、またこんなことを……。は、恥ずかしいですぅ……」
「アルフィ、貴女ねぇ……」
思った以上にダメージが大きく、今は彼女たちの話声も頭に入ってこなかった。歯に衣着せぬ言葉はやはりグサグサと心に突き刺さるな……。でもまぁ、子供ってだいたいそういうものだし、咎めるつもりもない。
「ア、アタシの所為で……。ど、どうすれば……。って、ん……?」
僕の様子を見てあたふたしていたラトナータ様だったが、不意に落ち着きを取り戻したようにじっと僕を見つめながら首を傾けて何事かを考え始めてしまった。
「えっと、どうかなさいましたか?何か私の身体に変なところがありましたか?」
僕は急に様子を変えたラトナータ様を不思議に思い、うじうじするのを止めてそう問いかけた。もしかしたら、魔族にはこの世界の人間と異世界人との見分けがついたりするのだろうか?
だが、しばらくの沈黙ののち、ラトナータ様は何でもないと言うように首を横に振って僕の言葉に答えた。
「いえ、気のせいね。それより、先ほどは余計なことを言ってしまって申し訳ございませんでした。王女としてあるまじき失態ね」
「あっ、いえいえ、お気になさらないでください。私なら平気ですので」
「貴方は優しいのね。気に入ったわ」
「えっと、あ、ありがとうございます」
面と向かって優しいと言われ、僕は照れくさい気持ちになってしまう。その照れくささを隠すように頭を下げた。
そんな僕の横で、アルフィオーネ様が誇らし気に声を上げた。
「ナギサさんは私たちの自慢の執事なのです」
「仕事もできるし気遣いもできるモノね。だから、もっと誇って良いと思うわよ、ナギサ。……まぁ、鈍いところがたまに残念だけど……」
「そ、その、お褒めいただけるのは大変光栄なのですが、あまり期待値を上げられると……プレッシャーが……」
またも浴びせられる絶賛の声に、僕は喜びと恥ずかしさと異様なまでの重圧感を感じてしまう。これじゃ、下手な失敗はできなさそうだ。もっとも、御嬢様方に快適な生活を提供しなければならないのだから、端から失敗などするつもりはないのだが。
「別にプレッシャーなんて感じる必要ないわ。失敗したって誰も咎めやしないもの。完璧なんて求めてないわよ。まぁ、責任感の強い貴方にはこんなこと言っても無駄化もしれないけどね」
嘆息混じりにエルシャローゼ様がそう言った。だが、エルシャローゼ様のその言葉は、僕の心の重圧を軽減するには充分だった。僕なんかより彼女たちの方がずっと優しくて素敵だと思う。まぁ、重圧を与えてきたのも彼女たちなのだけど……、彼女たちはそれを意図していたわけでもないだろうし気にしたら負けだ。
「いえ、お気遣いありがとうございます。おかげで気持ちが軽くなりました」
「そう、それなら良かったわ。ところで、ラトナータ様は使用人は連れておられないのですね」
僕の言葉を聞いてにこりと微笑むと、エルシャローゼ様はラトナータ様に向き直り話を変えた。確かに、言われてみれば彼女は一人だ。使用人も護衛も連れていない。王女なのに一人って、安全面的に大丈夫なのかな?
「自分の身は自分で護る。誰かに護られるなんて、吸血鬼としてのプライドが許さないわ。だから、フォルレットは使用人も護衛も雇っていないの」
まだ未成熟の薄い胸を目いっぱい張りながら、赤毛の魔族姫様はそう言ってみせた。というか、今更だけどラトナータ様って吸血鬼だったのか……。でも、そういえばラトナータ様って魔族っぽい特徴がないような……?
特徴部位って普段は隠すことができたりするのだろうか?と思ったら、今チラリと彼女の背中に小さな羽が見えた。なんだ、普通にあったじゃん。見逃していただけだったようだ。
「なるほど、そういうものなのですね。変なことを聞いてしまい申し訳ございませんでした、ラトナータ様」
「良いわ、気にしなくて。それと、もう一つ確認しておきたいことがあるのだけど……」
ぺこりと頭を下げるエルシャローゼ様に対して笑顔で首を振ったラトナータ様は、また別に気になることが有ると言って話題を切り替えた。