裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
「お、男の人……!?男の人がどうして!?」
そして、次の瞬間エルフ少女はあたふたと慌て始めてしまった。やっぱりそうだよね。女子寮に男の存在があれば普通はそういう反応になるよね。
しかも、学生はこの場では全裸でいなければならないというルール付きだ。ならば尚更、この場に男がいることに対して驚かないはずがないだろう。
「あっ、し、執事服……?も、もしかして使用人さん……なのですか……?」
おっと、思っていたより冷静だったようだ。僕が今身に纏っている執事服を見て、僕が使用人であるとすぐに理解したようだった。
「え、ええ、そうでございます。私、本日よりこの寮に入寮されたエルシャローゼ・ローラント様とアルフィオーネ・ローラント様の専属使用人のナギサ・モチヅキと申します。このような場所でのご挨拶、誠に申し訳ございません」
僕は一度ブラシを床に置き、今一度彼女に向き直ってそう名乗った。そんな僕の挨拶に、目の前のエルフ少女は未だに困惑の色を表情に浮かべ、僕とユーアさんに交互に視線を向けてきていた。
「そ、その、本当……なのですか?」
そして、ユーアさんに確認するようにそう問いかけていた。もちろん、ユーアさんの返事は
「はい、この方の言っていることは真実です。ナギサ・モチヅキさんは、わたしと同じ使用人でございます」
そうフォローしてくれた。良かった、この場にユーアさんがいてくれて。一人で風呂掃除を申し出なくて正解だった。
「そ、そうなのですか!?ご、ごめんなさい、疑うような真似をしてしまって」
「構いません。このような場所に男がいれば、誰だって慌ててしまうものです」
ユーアさんのフォローもあって、エルフ少女はどうやら信じてくれたみたいだった。僕の存在を疑っていたことを慌てて謝罪してくるが、あの状況で疑いの念を抱いてしまうのは仕方ないことというのは理解していたので、僕は気にしなくて良いと言うように首を振った。
「わっ、よ、よく見たらすごく素敵な……」
「ん?どうかなさいましたか?」
不意にエルフ少女が僕に謎の視線を向けてきていたので、僕は首をかしげてそう聞き返してしまう。何事か呟いていたようだったが、現在浴室の扉は全開になっており音の反響は小さく、僕にその声は聞き取れなかった。
しかし、僕の聞き返しに対し、エルフ少女は顔を真っ赤にしてぶんぶんと首を横に振った。ややオーバーリアクションだ。
「な、何でもないんですっ、すみませんっ。!て、お掃除中でしたよねっ!?ご、ごめんなさいっ!!お仕事の邪魔してしまって……」
今度は別の理由で慌て始めるエルフ少女。この人、よく慌てるなぁ。何というか、ちょっと危なっかしい。風呂場は滑りやすいから余計に。
「って、ひゃあっ!?」
と思ったら、本当に足を滑らせてしまった。僕が余計なこと考えた所為なのか!?これが世に言うフラグ回収というやつなのか!?
って、まずいな。彼女が床に頭を打ちつけたら大変だ。僕は瞬時に彼女のすぐ傍まで近づき、その場に倒れそうになる彼女の身体を何とか腕で支える。僕が足を滑らせるなんて言うヘマはしない。
「っとと、良かった。えっと、大丈夫ですか?」
「ふえ……?は、はわわわわっ、ワ、ワタシっ、今男の人に抱えられてるっ!?」
腕の中のエルフ少女に視線を向けてそう問うと、彼女はまたもあたふたし始める。って、それもそうか……。今彼女は初対面の男に抱きかかえられている状態だ。しかも、彼女は衣服を一切身に纏っていない。つまりすっぽんぽんだ。そりゃ慌てないわけないわな。
ってか、地味に初めて女の子の素肌に触れてしまった。女の子の肌ってこんなにすべすべしているのか……。しかも、すごくぷにぷにしていてとても触り心地が良い。こんなに柔らかい感触、生まれて初めて触れた。って、今僕の片手が振れているの、エルフ少女のお尻じゃないか!?うわっ、事故とはいえこんなところを触ってしまうなんて、僕はなんて罪深い人間なのだろうか……。
「え、えっと、立てますか?」
「ひゃ、ひゃい、大丈夫……でしゅ……」
彼女の返事を聞いた僕は、彼女の身体からゆっくり手を放す。本当、僕はなんてことをしてしまったのだろうか……。相手は初対面の女の子だというのに……。
「あ、ありがとう……ございます……、助けてくれて……」
「い、いえ。むしろ、突然抱きかかえるような真似してしまい、申し訳ございませんでした」
お礼を言ってきた彼女に対し、僕は誠意をもって謝罪する。今のはお礼を言われるようなことではない。
「そ、そんな、謝らないでください。そ、その……、い、嫌じゃ……なかったと言いますか……何と言いますか……」
「え?」
彼女はもじもじしながらか細い声でそんなことを言ってくる。嫌じゃなかった……って、まさかな……。きっと彼女なりの気遣いなのだろう。こんな小さな子に気を遣わせてしまうなんて……。うっ、余計に申し訳なくなってきた……。
「にゃ、にゃんでもにゃいでしゅっ!お、お仕事の邪魔をしてしまいしゅみましぇんでしたぁっ!!」
顔をさらに紅潮させたエルフ少女は、そんな叫び声を上げながら浴室から飛び出していってしまった。呂律も回らないくらい恥ずかしかったのだろう。僕は彼女をそれほどまでに辱めてしまった……。なんてことだ……。これから彼女とはどう接していくべきだろうか……。
僕は、エルフ少女が脱衣所から姿を消すまで彼女の小振りな丸いお尻を見つめながら、罪悪や後悔の念を膨らませていた。僕はさっき、意図的ではないにしろあのお尻に手を触れさせてしまった……。それが余計に僕の中の罪悪感を大きくさせていた。
そうして、彼女の姿が見えなくなってから、僕は浴室の入り口の扉を音を立てて閉めた。もちろん、心の中に生まれた罪悪感と後悔は消えない。
「う、羨ましい……。こうなったらわたしも……」
引き戸が閉まる音が大きくて、僕の耳にその声は届かなかった。
「あー……、どうしよう……。とんでもないことやらかしたよ……」
そして、ユーアさんと二人きりになったことで、僕はようやく嘆息した。
「さ、さっきのことは気にする必要ないと思うよ?彼女も気にしてないって行ってたし。む、むしろ、なんか……」
「でも……、かなり恥ずかしがってた……」
僕は自分への怒りをぶつけるようにブラシを思いきり床に擦り合わせる。ごしごしという摩擦音は浴室内に良く響く。
「そ、そりゃあねぇ……。……ナギサさんみたいな素敵な殿方に抱きかかえられたら、誰だってドキドキするに決まってるもんね……」
その摩擦音の所為で、ユーアさんの言葉は聞き取れなかった。
「えっ、な、何か言った?」
僕は慌てて手を止めて彼女にそう聞き返す。
「あっ、ううん、何も」
だが、さほど重要なことではなかったのか、彼女は首を振って何でもないと言った。そんなユーアさんの顔が赤く見えたのは、きっと掃除のために身体を動かしていたからだろう。
「と、とにかく、そこまで気にすることじゃないよ。彼女を怪我させずに済んだんだし、誰もナギサさんを咎めたりはしないって」
「そ、そうなのかなぁ……。でも、ユーアさんがそう言うならそうなのかも……」
ユーアさんの表情は嘘を吐いているように見えなかった。それなら、僕も彼女の言葉を信じよう。もしエルフ少女が僕に怒りの感情を覚えているなら、後でまた謝れば良い。もちろん、精いっぱいの誠意をもって。
「さ、さーてと、浴槽は粗方終わったかな」
そう言うとユーアさんはシャワーヘッド型の魔道具を一つ手に取り、浴槽についた泡をお湯で洗い流していく。ちなみに、シャワーヘッド型魔道具は、手持ち部分にはめ込まれた丸い石に触れるとお湯が出てくる仕様だ。僕の元いた世界のものとは異なり、ホースには繋がっていない。なので、何処へでも持ち運べる。かなり便利だと思う。
そうして一通り泡をお湯で洗い流したユーアさんは、一度魔道具を元の位置に戻してから再びブラシを持って洗い場に移動してくる。
「そ、それじゃあ、こっち手伝うよ」
「い、良いの?」
「も、もちろんだよ。ふ、二人でやった方が早く終わるしね」
「あ、ありがとう、ユーアさん」
「う、ううん、気にしないで」
というわけで、僕とユーアさんは分担して洗い場の掃除を進めていくことになったのだが……
「きゃっ……」
「ちょっ、危ないっ!!」
「うにゃあっ!?」
「えっ、ま、またっ!?」
といった感じに、彼女は何度も足を滑らせ転倒しかけていた。その度に僕は彼女の身体を抱きかかえ支えていたのだが、ユーアさんが尋常じゃないレベルで転びまくるので途中からはハラハラしてしまって掃除に身が入らなかった。
最初の方は彼女の肌の感触にドキドキしてしまっていたが、彼女に対する心配の方が勝り、そんなドキドキも途中からは消えてしまっていた。
「だ、大丈夫?疲れてるんじゃない?休んだ方が……」
「へ、平気平気。心配かけてごめんね。なんか、今日はいつもより滑りやすくて……、えへへ」
「そ、そうなの?それなら良いけど……。あんまり無理しちゃダメだよ?」
「うん、ありがと、ナギサさん。はぁ、優しいなぁ……」
時折うっとりとした目で僕を見つめてくるのは何だったのだろうか?
まぁ、そんなこんなで風呂掃除も無事……?に終わり、僕たちは後片付けを済ませて浴室を後にしたのだった。なんか、いろいろありすぎて疲れた……。けど、この後もまだ業務は控えているので、気を引き締めなければ。
「ふんっ♪ふふんっ♪ふふーんっ♪」
ユーアさんの機嫌がものすごく良くなっていたのが気になったけど、理由を尋ねても答えてはくれなかった。