裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
「あっ、そういえば……」
風呂掃除を終えて次の業務に移るべく共有スペースへと戻るその道中、僕は一つ確認しておきたかったことを思い出し、隣を歩くユーアさんにそう話を切り出した。
「ん?どうしたの?」
ユーアさんは首をかしげながら顔をこちらに向け、僕の顔を覗き込んでくる。僕はその可愛らしい垂れ目を真っすぐ見返しながら話を続ける。
「使用人の生活スペースってどうなっているのかなって思って」
御嬢様方の専属執事に任命されたのは昨日のことだったというのもあって、僕は魔法学園やその学生寮に関する情報はあまり持ち合わせていなかった。だから、使用人たちの居住スペースなどについてもよく把握できていなかったのだ。
「あっ、そっか。その説明もしておかないとだったね。使用人専用の居室も同じ建物内にあるんだ。学生の居室とは少し離れた位置にあるんだけどね。ほら、廊下のずっと奥に扉があるでしょ?あれが使用人の専用居室なんだ」
そう言いながら、彼女は左側を指差す。今僕たちはT字になった廊下の交差地点に立っており、右側を向くとこのユニットの出入り口がある。つまり、彼女が指差す扉は出入り口とは対極の位置にあるということになる。
ちなみにだが、今僕たちが歩いてきた廊下は浴室やトイレと共有スペースを繋いでいる。そのため、現在僕たちは共有スペースの扉の正面に立っているということになる。そして、この廊下を挟んだ左右に学生たちの居室がそれぞれ3部屋ずつあり、共有スペースの扉から見て左側……ユニット出入り口側手前から1~3号室、右側……使用人専用居室側手前から4~6号室という風に居室番号が割り振られている。
とまぁ、このユニットの大まかな構造はこんな感じになっているというわけだ。改めて見ると結構広いもんだな。流石は王都の魔法学園の寮……と言うべきなのだろうか。
「あー、あれがそうなんだ。そうしたらさ、一度部屋に自分の荷物置きに行きたいんだけど良いかな?」
「あー、そういうことか。それならわたしが案内するよ。って、あれ?でも、肝心の荷物は何処?」
「馬車に積んだままになってるから、ちょっと取りに行ってくるよ」
「うん、分かった。行ってらっしゃい」
というわけで僕は一度ユニットを出て外に止めたままの馬車に戻る。そして積んでいた自分の荷物を下ろし、馬車をローラント家の屋敷に戻らせる。
「すみません、お待たせしてしまって」
「いえいえ、構いません。それでは、また何かあったらお呼びください」
「ありがとうございます」
最後に御者さんに謝罪とお礼の言葉を告げ、馬車がこの場から去っていくのを見送った。馬車を見ていると、自動車がどれだけ便利な代物だったのか思い知らされる。速度も乗り心地も次元が違うのだ。
なんて余談はさておき、僕は馬車から下ろした荷物を手に持って、ユーアさんの待つユニットへと舞い戻った。
「ごめん、お待たせ。荷物持ってきたよ」
「そんなに急ぐことなかったのに」
「いや、待たせるのは悪いし」
「あはは、まぁナギサさんっぽいけどね。さてと、それじゃあお部屋まで案内するからついてきて」
そうして僕はユーアさんに先導されるまま廊下の奥へと進んでいく。彼女の後を追うようにして歩いているので、僕の視界には彼女の剥き出しの背中やお尻がバッチリ見えてしまっている。しかし、徐々にではあるが、僕はその光景を当たり前のものとして受け入れ始めていた。もちろん、まだ少しドキドキはするけどね。
それにしても、彼女の身体は傷一つなく綺麗だな。先ほど浴室で滑って転びそうになった彼女を抱き抱えた時に触れた肌はとてもすべすべで、発展途上ながらも確かな柔らかさを手に伝えてきた。って、何故僕は彼女の身体に見とれているんだ……。しかも、肌の感触まで思い出したりして……。僕はロリコンじゃないんだぞ……?
「あっ、そうそう、使用人の専用居室なんだけどね」
などと考えていると、不意にユーアさんがこちらに振り返った。僕は慌てて彼女のお尻に向けていた視線を上にあげた。だが、僕の反応は一歩遅く、僕がお尻に視線を注いでいたことが彼女に気づかれてしまった。
彼女は途端ににやりと意地の悪い笑みを浮かべて僕の瞳を覗き込んでくる。僕のような男に身体をジロジロ見られても恥ずかしがらないのはメイドとしてのスキルなのか、それともこの裸生活を既に1年ほど経験し適応してしまっているからなのか……。
と思ったが、よくよく彼女の顔を見たら、薄っすらとではあるけど頬が少し桃色に染まっていた。どうやら、彼女でも恥ずかしいと感じてはいるようだった。いや、そりゃそうだよね。
……けど、何処となく嬉しそうなのは何故だろう?
「あれれ?もしかしてナギサさん、わたしのお尻ずっと見てたの?やっぱり、ナギサさんもなんだかんだえっちじゃん」
「ご、ごめんっ、そういうつもりじゃなかったんだ」
僕は咄嗟に謝罪する。けど、それと一緒に僕の口は言い訳を始めようとしてしまっていた。謝罪が先に出ただけマシか。
「えー、じゃあどういうつもりだったのぉ?」
「そ、その……、傷とか全然なくてすごい綺麗だなって……。ご、ごめん、どんな理由でも女の子の身体ジロジロ見ちゃうのは失礼だったよね」
僕は再度謝罪の言葉を口にし、彼女に頭を下げる。たとえ性的な意味でなくとも、女の子の裸をジロジロと見てしまうのはあまりに失礼極まりない行為だった。その辺の配慮が全然なっていなかった。
「えっ、あっ、き、綺麗って……、そ、そんな……」
そうして僕が頭を挙げると、そこには顔を先ほどよりずっと赤くさせてあたふたしてしまっているユーアさんの姿があった。もしかして僕、さらにまずいことを言ってしまったのだろうか?
「ぼ、僕、また変なこと言っちゃった……かな?」
「い、いや、そういうことじゃないんだけど……。ま、まぁわたしは、別にジロジロ見られても気にしない……から……。ほ、ほら、それよりお部屋、見に行くんでしょ?」
そう言うと彼女はすたすたと廊下を先へと進んでいってしまう。見られて気にしない……というより、彼女はきっと気にしないよう我慢しているのだろう。やはり、先ほどの視線は失礼だったな。この空間にいる限り、彼女たちを見ないなんてことはできないけど、それでもジロジロ見るのはダメだよね。反省しよう。
そうして僕は先を進んでいく彼女の背中を再び追った。今度はお尻に視線を集中させないよう細心の注意を払って。
「あれ?そういえばさっき、何か言いかけてなかった?」
僕は、先ほどユーアさんが何かを言いかけていたことを思い出し、彼女の背中にそう話しかけた。すると、ユーアさんは僕に振り替えることはせず、
「あっ、そ、そうだった。え、えっと、実はね……、ここの使用人専用居室なんだけど、一人一人に与えられるってわけじゃないんだよ……」
と答えた。一人一人に与えられるというわけではない……ということは、つまり一つの居室を数人で使用するということか。まぁ、そりゃそうか。使用人一人一人にまで態々居室なんて与えていられないもんな。
恐らくだけど、使用人専用居室は男用と女用でそれぞれ分かれているのだろう。けど、現在このユニットで働いている使用人は僕とユーアさんの二人だけだ。だから、一人部屋と変わりないような気がする。
「あ、そうなんだね。でも、それがどうかしたの?」
「え、えっとね、要するにね……、わたしとナギサさんは同じお部屋に寝泊まりすることになるんだよ……」
彼女のその言葉の意味が掴めず、少しの間だけ沈黙してしまう。しかし、その言葉の意味を理解するや否や、僕は驚愕の声を上げてしまう。
「ええっ!?ぼ、僕とユーアさんが一緒の部屋!?ふ、普通そういうのって、男性は男性、女性は女性って感じに分かれるものじゃないの!?」
「う、うん……。で、でも……、この寮には一部屋しかなくて……、あ、あはは」
「そ、そうなんだ……。それじゃあ仕方ないのかな?」
「う、うん……。仕方ない……、そう、仕方ないんだよ……、うんうん」
何というか、ユーアさんの言葉は何処となく歯切れが悪い。それに、頑なにこちらに視線を向けようとしない。ずっと前を向いたままだった。まぁ、彼女としても男と一緒の部屋に寝泊まりなんて嫌なんだと思う。きっと、心の中でいろいろ迷いがあるからこんな曖昧な反応になってしまっているのだろう。
一部屋しかないというのは大変だなぁ。今後、同じ部屋で生活するにあたっていろいろとルールを設けた方が良いかもしれない。特に、彼女の精神衛生のために。
「は、はい、ついたよ。ここがわたしたちの居室」
そんなことを考えている間に、廊下の突き当りまで到着していた。まぁ、所詮はユニットの中なので、大した距離なんてないのだけど。
「そ、それじゃあ今開けるね」
「うん、よろしく。って、あれ?」
僕はそう頷きかけたが、途中でその動きを止めた。何故かというと、僕の視界の端にまた別の部屋の扉が見えたからである。
「あっ……」
僕が突然疑問の声を上げたのを聞いて、ユーアさんは恐る恐るといったようにゆっくりと僕の視線を辿る。そして、視線の先にあるもう一つの扉を見てそう小さく声を漏らしていた。
「ユーアさん、あの部屋は何?」
彼女の反応を見て何となく察した僕は、なるべく優しい声色でそう尋ねた。これは、十中八九彼女にからかわれていたのだろう。
「え、えっと……、その……」
「あの部屋も仕様人用の居室、だよね?」
「うぅ……、はい……、その通り……です……」
「はぁ、やっぱりね。僕は最初からユーアさんにからかわれていたわけだ」
「ご、ごめんなさい……。で、でも……、からかったつもりじゃないの……」
「それって、どういうこと?」
先ほどのがからかいじゃないのだとすると、どうして彼女は僕に嘘を吐いたのか……?その理由が僕にはいまいちよく分からなかった。
「う、うーん……、なんていえば良いのかな……」
「もしかして、あっちの部屋って訳あり?だからあえてユーアさんの部屋に入れようとしてくれてたの?」
「あっ、え、えっと、そういうわけでもないんだけど……」
うーん、何ともはっきりしないなぁ。けど、この反応的に何かしら理由はあったのだろう。それなら、僕は彼女を咎めるつもりはない。もっとも、理由がなかったとしても咎めたりはしなかっただろうけど。
「じゃあ別の理由かな。まぁ、言いづらいことなら態々言わなくて良いよ」
「ご、ごめんなさい……」
彼女は力なく謝罪の言葉を口にする。僕はそんな彼女に対して首を横に振って答えた。
「謝らなくて良いよ。さっき、僕も君に失礼な視線向けちゃってたんだし、これでお相子ね」
「あ、ありがとう……、はぁ……」
「それじゃあ、僕はあっちの部屋を使うことにするよ。荷物、置いてきちゃうね」
「あ、うん、分かった。……はぁ、またチャンスを取り逃がしちゃったなぁ……。まぁ、仕方ないか……」
僕がもう一つの使用人専用居室に入ろうとしたとき、ユーアさんの方から何やら独り言が聞こえてきた。内容までは聞き取れなかったけどね。
それから僕は、持ってきていた荷物を部屋の中に放り、すぐにユーアさんのもとに戻る。その時には、彼女は既に落ち着きを取り戻していた。
「ふぅ、案内ありがとうね、ユーアさん」
「ううん、大丈夫。むしろ、変な嘘吐いちゃってごめんね」
「ははっ、それはさっきお相子ってことになったじゃん」
「えへへ、そうだったね。さてと、それじゃあリビングに戻ろ」
「そうだね」
というわけで僕たちは来た道を戻り、そして共有スペースへと入っていく。
「あら、戻ったわね、ユーア。それと、ナギサさんも一緒だったのですね」
そうして、僕たちが共有スペースに戻ると、そこにはシャルティーナ様が待ち構えていたのだった。