裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
そうして無事に僕の自己紹介も終わり、賑やかな食事タイムへと移行した。種族とか身分とかそういうものは関係なく、皆分け隔てなく楽しく会話を交わしながら、テーブルの上に並べられた僕とユーアさん特製の料理たちに手をつけていく。
皆一様に満面の笑みを浮かべ、食事を口に運びながら近くの席の人たちと会話に花を咲かせている。その様子がとても暖かくて、僕の表情も自然と綻んでしまう。
「あ、あの、ナ、ナギサさん……」
すると、不意に隣からそう名前を呼ばれた。見ると、リレイナ様がじっと僕の方へ視線を向けてきていた。僕は首をかしげながら、彼女に応じる。
「はい、どうかなさいましたか?」
「そ、その、改めてお礼が言いたくて……」
「お礼……ですか?」
はて?お礼とな?僕、彼女にお礼を言われるようなことしたっけ?などと頭の中でぐるぐると思考を巡らせていると、リレイナ様が再び口を開く。
「お、お風呂でのことです……」
「お、お風呂……!?お風呂って何!?」
リレイナ様の言葉に僕が反応する前に、何故かエルシャローゼ様が過剰に反応していた。何か引っかかることでもあったのだろうか?
それはそうと、お風呂でのことって、もしかして彼女が足を滑らせてしまった時の事か?確か、もう既にお礼はいただいていたような気がするのだけど……。
「転びそうになってしまったワタシを助けていただき、ほ、本当にありがとうございました。おかげで、怪我をせずに済みました」
「あっ、いえ、お礼を言われるようなことではありませんよ。とにかく、リレイナ様が御無事で何よりです」
「は、はぅ……。そ、その……、あの時のナギサさん……、と、とても……格好良かった……です……」
顔を耳まで真っ赤にさせながら、リレイナ様がもじもじと身体をくねらせそんなことを言ってくる。ストレートに格好良いとか言われるのって、何だか非常にくすぐったい。でも、今まで可愛いと言われたことはあっても格好良いと言われたことがなかった僕にとっては、正直最高の褒め言葉でもあった。
「そ、そう言われると何だか照れてしまいますね……。ですが、咄嗟の行動だったのであまり格好の良いものではなかったかと」
でも、結局照れが勝ってしまい、僕は素直に喜びの感情を表現できなかった。自分に自信がない証拠だな。人にはもっと自信持つべきとか言っておきながら、当の本人が自信なさ気というのは何とも説得力がない。
「そ、そんなことないです……!ワ、ワタシ、思わずその……ド、ドキドキ……してしまいました……」
上目遣いでそんなことを言ってくるエルフ少女リレイナ様。なんだ、この生き物……。滅茶苦茶可愛いじゃないか……。何というかこう、ぎゅっと抱きしめたい可愛さを彼女は持っている気がする。
が、もちろんここは我慢だ。こんなところで急に抱きついたりすれば、一瞬で犯罪案件だ。異世界に転生してきて早々犯罪者に成り下がるのは御免だからね。
「えっと、この場合……、ありがとうございます……で、良いんでしょうか?」
「わ、分からないです……。あ、あの、こ、こんなこと言われて、もしかして迷惑……でしたか……?」
「あっ、いえいえ、そんなことありませんよ。あまりそういうことを言われた経験がなかったので少し驚きはしましたが、とても嬉しいお言葉でしたよ」
「あ……、よ、良かった……です……」
さっきからリレイナ様の反応が、まるで恋する乙女みたいな反応なのは気のせいだろうか?いやいや、まさか……。だって、リレイナ様とは今日初めて会ったのだ。恐らく、年上への憧れ的な何かなのだろう。
「も、もしかして……、二人は……その……い、一緒にお風呂に入ったのかしら……?い、何時の間にそんなこと……」
すると、横からエルシャローゼ様がそんな質問をしてくる。あー、なるほど。そういう勘違いをしてしまっていたわけか。ここはちゃんと訂正しておかないとな。
「いえ、そういうわけではございませんよ。えっと、先ほど私とユーアさんの二人で浴室の清掃を行っていたのですが……」
「その、お掃除中にワタシがお風呂に入ってしまったんです……。そ、それで、慌てて出ていこうとした時に足を滑らせてしまって……」
「あ、なるほど。そ、そういうことだったのね……。それでリレイナさんは転びそうになったところをナギサに助けられた、というわけね」
「は、はい、そういうことになります……」
エルシャローゼ様の言葉に、リレイナ様は恥ずかしそうにしながら頷く。すると、エルシャローゼ様は何処となく誇らし気に胸を張られていた。
「ま、まぁ、うちの執事は優秀だからね。それくらいできて当然よね」
「そ、そんなに格好良かったのですか?」
さらに、シャルティーナ様まで話に加わってくる。そ、そんな大事にするようなことでもないと思うのだけど……。は、恥ずかしいなぁ……、こういうの。
「ええ、姫様。先ほどの彼はとても素敵でした。まるでナイトのようでした」
と思ったら、ユーアさんまで便乗してきてしまった。恐らく彼女に関しては、僕が恥ずかしがっているのを知っていながら便乗してきたに違いない。どうやら彼女は僕をからかうのが好きなようだからね。
「まあ、それは確かにすてきですわね」
「流石です、ナギサさん」
シャルティーナ様とアルフィオーネ様がうっとりとした目で僕のことを見てきていた。そ、そこまで持て囃されるようなことじゃないんだってば……。そんな憧れの眼差しを向けるのは止めてくれ……!
「ふふっ、すごい人気ね」
御嬢様方の賑やかな声の中で、ラトナータ様のそんな呟きが微かにではあるが聞こえてきた。こ、これを果たして人気といえるのかは分からないけど、まぁ少なくとも嫌われているというわけじゃなさそうだしまぁ良いか。
「はむっ、もぐっ、んんっ!どれもすごく美味しい♪」
ただその中で、フィノレア様だけはひたすら我が道を進んでいたのだった。
*
そうして無事?に歓迎会も終わり、御嬢様方は揃って入浴に向かわれた。その間に僕は食事の後片付けを行う。
ちなみに、ユーアさんには御嬢様方と一緒に入浴に行ってもらった。彼女もきっと同年代の女の子ともっとお話がしたいだろうと考えたためである。これくらいの洗い物なら一人でも苦じゃないしね。
そして僕は食器の後片付けを速やかに終わらせ、それから明日の朝食の仕込みも行う。大人数の食事を用意する経験はあまりなかったので使用人として御嬢様方の食事を用意するまでは分からなかったのだが、正直かなり時間がかかる。
夕食の準備ならそれなりに余裕をもって行うこともできるだろうが、朝食となるとそう言うわけにもいかないだろう。特に学園がある日なんかは、ユーアさんも自分の準備に少し時間がかかってしまうだろうし。それならば、前日の内に仕込みだけでも済ませておくべきだろうと考えたのだ。
「うん、こんなものかな……」
「お風呂、いただきました」
「ふぅ、気持ち良かったぁ」
「ナギサさん、次どうぞ」
そして、僕が明日の朝食の仕込みが終えた頃、御嬢様方が入浴を終えて共有スペースに戻ってきた。
「あ、はい。分かりました」
僕はキッチンから顔を覗かせつつ、彼女たちにそう返事をする。すると当然、彼女たちの姿が視界に飛び込んでくるわけで……
彼女たちは先ほどと変わらず全裸だった。まぁ、そうだよね。知ってた。
風呂上りということもあり、彼女たちの肌はほんのり桃色に染まっていた。髪の毛はほとんど乾かされているが、毛先の方がまだ少しだけ濡れている方もいるようで、その火照った顔や身体に貼りついてしまっている。少し色っぽい。子供だけど。
けど、それ以上に気になることが有る。
「あの、寝る時も恰好はそのまま……なのでしょうか?」
僕は思わずそう質問してしまう。寝る時まで全裸のままでは、もしかしたら身体が冷えてしまうのではないかという心配が僕の中にあったのだ。
「あっ、そういえばそうよね。あんまり気にしてなかったけど、その辺りどうなの?シャルティーナ姉様」
僕の質問を聞いて"確かに"と頷いたラトナータ様が、僕に追随するようにシャルティーナ様にそう問いかける。
「ええ、そうね。寝る時もこのままですわ。少なくとも、私たちはこれまでそうしてきました。そうよね?ユーア」
「はい、姫様」
「その場合、身体は冷えたりしないのでしょうか?」
僕は続けて質問する。
「それに関しては問題ありませんわ。王都の建築物は全て、室内温度を一定に保たせるよう魔法が施されておりますの」
「そうなのですね。安心しました。皆様がお風邪をひいてしまわれるのではと少し心配しておりまして……」
「まあ、心配してくださっていたのですね。嬉しいですわ」
「そ、そうね。悪い気はしないわね。ふふっ」
シャルティーナ様とラトナータ様がそれぞれそんなことを言ってくる。彼女たちの気持ちは分かるな。やっぱり人間は、誰かに心配されると嬉しくなる生き物だからね。それだけ相手に大事に思われているってことだし。
「はあ、ナギサさん……、やっぱり優しいですぅ……、えへへ」
「ワ、ワタシも……、う、嬉しい……です……。ど、どうしよう……、頬が勝手に……緩んじゃう……」
他の方々もそれぞれ嬉しそうに顔を綻ばせている。そんな彼女たちの様子を見ていると、自然と僕まで嬉しくなってしまう。こうして彼女たちが僕の心配を嬉しく思ってくれているということはつまり、僕は彼女たちに認めてもらえているということだろうからな。そんなの、嬉しいに決まっている。
けど、ちょっと反応が過剰なのではないかとも思ってしまう。たかが心配一つでそんなに喜ばれるのか?その反応はまるで、恋人に大切にされて喜ぶ乙女の反応のようにも思える。彼女たちの心はよく分からない。いや、人の心を完全に理解するなんてことできっこないんだけど。
「ま、まぁ、そういうわけなのでご心配なく。それでは、明日は学校なので、私はこれで失礼させていただきますわ。皆さん、おやすみなさい」
「おやすみなさい、シャルティーナ姉様」
「おやすみなさいです!」
「おやすみなさいませ、姫様」
「おやすみなさいませ」
最後にペコリと一礼した後、シャルティーナ様は共有スペースを後にし自室へと戻っていった。時刻は21時ごろなので、就寝時間としては丁度良いだろう。というか、非常に健康的だ。
ちなみに、この世界の時間間隔は元の世界と変わらないようだ。1日24時間で、それが30日でだいたい1カ月である。そして、12ヶ月で1年となる。季節も春・夏・秋・冬という四季が存在するらしい。その辺りの常識が変わらないのはとてもありがたかった。自分自身の概日リズムが崩れる心配がないからね。
「それじゃ、アタシもそろそろ寝ようかしらね。皆さん、おやすみなさい。明日からまたよろしくね」
「はい、こちらこそよろしくお願いいたします、ラトナータ様」
「よ、よろしくお願いいたします。おやすみなさい」
「うーん、あたしもちょっと眠くなってきちゃったなぁ。それじゃあ皆さん、また明日。おやすみー」
「ええ、おやすみなさい、フィノレアさん」
そうして続々と自室に戻り始める御嬢様方。やはり、このくらいの年の子は寝るのが早いんだなぁ。僕も昔はこれくらいの時間に寝てたっけ。
「そ、それじゃあワタシももう寝ますね。み、皆さん、おやすみなさいです」
「はい、おやすみなさい、リレイナさん」
「おやすみなさいませ、リレイナ様」
そうしてリレイナ様も自室に戻られ、共有スペースにはエルシャローゼ様、アルフィオーネ様と僕ら使用人だけとなった。そこで僕は、御嬢様二人に渡しておかなければならないものがあったことを思い出した。
「御嬢様方、お渡ししておかなければならないものがありました」
「ん?何かしら?」
「えっと、これを」
僕はズボンのポケットからとあるものを取り出し、それを彼女たちに手渡した。
「あっ、これ、持ってきていたのね」
「はい。何かございましたら、これをお使いください」
僕が彼女たちに渡したものとは、ボタンのついた小さな魔道具である。これはファミレスなんかによくある呼び出しボタン的なものだ。これがあれば、彼女たちは何時でも僕を呼び出すことができるわけである。もちろん、効果範囲はあるが。でも、少なくともこのユニット内でなら何処からでも呼び出し可能だろう。
こんな魔道具があるなんて、本当に便利だ。僕もできることなら魔法を使ってみたいものだ。魔力がないのでどうにもならないけど。
ちなみに、このボタン式魔道具、エルシャローゼ様のものとアルフィオーネ様のものとでは、僕に届く音が異なる。なので、音を聞けばどちらが呼び出したのかがすぐに分かるというわけだ。
「ありがとうございます、ナギサさん」
「何か困ったことがあったら遠慮なく使わせてもらうわ」
「はい。その時は遠慮せず私をお呼びくださいませ」
「はい、そうします。えっと、それじゃあ私もそろそろ寝ますね」
「そうね。私ももう寝ようかしらね。それじゃあナギサ、ユーアさん、おやすみなさい」
そう言うとエルシャローゼ様とアルフィオーネ様も共有スペースを後にしてそれぞれあてがわれた寝室へと向かう。そんな彼女たちの背中に僕たちは……
「はい、おやすみなさいませ、御嬢様方」
「おやすみなさいませ」
そう言葉を返した。
「ふぅ、ひとまず今日の業務は終わりかな」
そして、使用人である僕とユーアさん以外いなくなったところで、僕はほっと息を漏らしそう呟いた。
「うん。お疲れ様。というか、最後の方はいろいろ任せちゃってごめんね」
ユーアさんは僕にペコリと頭を下げてくる。
「いやいや、気にしないでくれ。それより、お風呂ではゆっくりできた?」
「うん、おかげさまで。ホント、ナギサさんは優しいなぁ」
「そうかな?でもまぁ、ありがとう」
「ありがとうはこっちのセリフだってば。今日1日、ホントにありがとう。ナギサさんがここに来てくれてすごく嬉しい」
「ははっ、大げさだなぁ」
「大げさなんかじゃないよ。とにかく、これからもよろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしく。お互い頑張ろう」
「えへへ、うん」
それから僕たちは明日以降の業務の確認を簡単に済ませてから、本日の業務を終了させたのだった。
「それじゃ、おやすみ、ナギサさん」
「うん、おやすみ」
そう言葉を交わしてから、ユーアさんは自室……使用人専用居室へと戻っていった。僕は最後に一人で風呂に入り、それからユニット内の小頭を済ませ就寝したのだった。