裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
アルフィ様、エネルギー補給中……
アルフィ様が一度僕の部屋から去った後、僕は寝間着から執事服に着替え自身の身支度を速やかに整えた。
それから僕は共有リビングまで出向き、そそくさとキッチンに入って御嬢様方の朝食の用意を始める。前と同じく、既に昨日のうちにできる限りの仕込みは終わらせていたので、あとは仕上げの作業を行うだけである。
こうして、どうすれば仕事をより効率的に進められるかを自分自身で考え、それを実行するのはとても楽しい。元々家事全般に自信があって、尚且つ好きだからこそそう考えられるのかもしれないけど、正直今の自分のこの状況……執事として御嬢様方に仕えるということに、すごくに生きがいを感じていた。
周りも良い人達ばかりだし、好きなことを仕事としてできるし、本当に異世界に転生出来て良かった。家族には申し訳ない気持ちもあるけど、やはり自分の生きやすい環境には執着してしまうものだろう。
「これだけ好条件な環境なのに、僕はどうして積極的になれてなかったんだろうなぁ……。何も怖がることなんてないってのは分かってるつもりなのに……」
ふと、昨晩アルフィ様から言われたことを思い出してしまう。今の環境に、僕は何の不満も持っていないし、それどころか自分自身の感覚的には結構楽しんでいるつもりですらいた。
だが、客観的に見ると僕の態度は何処か腰が引けているように見えてしまっていたらしい。あのトラウマの所為で、人間関係に対してかなり臆病になってしまっていたのは自覚しているが、まさか無意識的に態度に出てしまうほど酷いものだったとは流石に思っていなかった……。
「ちゃんと改善しないとなぁ……」
そうしないと、またアルフィ様に怒られてしまう。それに、僕だってもっと皆さんと仲良くなりたい。せっかく同じユニットのメンバーになれたのだから。もっとも、僕は学園生ではないので、正確にはユニットメンバーには数えられないのかもしれないけど。まぁ、そんな細かいことは今は気にする必要もない。
とにかく、今後は意識的に皆さんと積極的に関わっていきたい。……アルフィ様には嫌われたくないしね。
「ナギサさぁん♪やっぱりここにいましたね♪」
などと、改めてユニットの皆さんとの関わり方についての決意表明をしていると、キッチンの入り口からアルフィ様がひょっこりと顔を覗かせていた。耳を澄ましてみるが、リビングの方から他の方の声は聞こえてこない。要するに、現在この空間にいるのは僕とアルフィ様の二人だけということだ。だからアルフィ様は、僕に対して砕けた態度で接してきたのか。
そう一人で納得しつつ、僕は作業の手を止めることなく顔だけアルフィ様に向けて返事をする。
「はい。今、皆様の朝食を用意しているところですよ。完成までもう少々お待ちくださいね」
「はぁい♪」
そんな気の抜けた返事をしながら、アルフィ様はとてとてとこちらに歩み寄ってくる。てっきり僕の様子を覗きにきただけかと思っていたが、他に何か用があるのだろうか?そう思い、僕は首をかしげる。
「あの、僕に何か?」
「ふふっ♪まぁ、ちょっとした用事ですよ♪」
やけに楽しそうな声色で、アルフィ様はそう言った。けど、その用事について詳細なことを話すつもりはないらしく、それ以上は特に言葉を発することなく鼻歌を歌いながら僕のすぐ傍までやってきた。
「えいっ♪」
そして次の瞬間、そんな可愛らしい掛け声とともにアルフィ様が背中から僕にぎゅっと抱きついてきた。僕が作業中であることを考慮してか勢いは抑えめだったが、それでも少しだけ僕の集中力がそがれてしまう。主に、僕の心臓の鼓動がうるさい所為で。
だ、だって仕方がないだろう?昨日初めて恋心を抱いた相手に、こんな可愛らしい態度で抱きつかれたら、そりゃ嫌でもドキドキするよ……。
それに、こんな密着状態では、彼女の身体の柔らかさをもろに感じてしまう……。なんせ、アルフィ様は裸だし……。それに、僕はどうやらロリコンらしいから……、思わず身体の一部が反応しかける。いや、ちょっと手遅れかもしれない……。ま、まぁ、位置関係的にアルフィ様には気づかれないだろうけど。
「あ、あの……、アルフィ様……?これは一体……?」
「ナギサさん成分の補充です♪学園に行ったら、しばらくナギサさんとは会えませんからね。寂しくならないように、今のうちにナギサさんの温もりとか匂い、いっぱい感じたいんです♡」
アルフィ様は僕の背中に顔を埋めながらそう言った。何ともいじらしい彼女の姿に、僕の心中に甘い感覚が広がっていく。この人は、僕のことをどれだけ悶えさせれば気が済むのだろうか……?もう、可愛すぎて今すぐ抱きしめたい……。いやまぁ、キッチンでそんなことはしないけどね。
「……アルフィ様、そんな可愛らしいお姿を見せられてしまったら、私の心がどうにかなってしまいますよ……」
「いやん♡さり気なく褒めないでくださいよぉ♡嬉しくなってしまいますからぁ、えへへ……♡」
「そういうところもすごく可愛いです。ですがアルフィ様、こんなことをしていたら、いずれ他の人に見つかってしまいますよ?」
他の人……というか、ユーアさんなんだけどね。基本的にキッチンには僕とユーアさんの使用人組しか立ち入らない。だから、ユーアさん以外の人に気づかれる可能性はいたって低いけど、ユーアさんに関しては確実にここにやってくる。
ずっとこうしてアルフィ様に抱きつかれていたいという気持ちもあるけど、そんなことをしていたらユーアさんに見つかってしまう。何となくだけど、こんなところを誰かに目撃されるのはまずいような気がする。
「それがどうしたのです?」
しかし、アルフィ様はあっけらかんとそう答えた。僕とは違い、何の危機感も抱いていなかった。まずいと思っているのは、どうやら僕だけのようだった。
「誰に見られても別に良いじゃないですか♡疚しいことなんて何もないのですから♡もしかして、ナギサさんの世界では男女の関係は隠すものだったのですか?」
「そ、そうですね。あまりオープンにする人はいなかったかと。僕自身にはそう言う経験もなかったので、実際のところはよく分からないのですが」
「なるほど。でも、こちらの世界では男女関係は基本的にオープンなので、コソコソする必要はありませんよ。堂々とイチャイチャできます♪」
「そ、そうなのですね。それなら……、まぁ……良いのかな……?」
やっぱり、こういう感性の違いにはまだ時々翻弄されてしまう。けど、郷に入れば郷に従え精神に乗っ取り、今後は僕もアルフィ様との関係はなるべくオープンにしていくことにしよう。
「えへへぇ……♡ナギサさんの匂い、好き……♡とても落ち着きますぅ♡」
「ア、アルフィ様、頬擦りされるの、ちょっとくすぐったいですよ……」
「ふふっ、ごめんなさぁい♡でも、止めてあげません♡」
「それは残念です、ふふ」
「その割には嬉しそうですよ? ナギサさぁん♪」
「嬉しくないわけがないじゃないですか。僕だって、アルフィ様のことをお慕いしているのですから」
「んもぅ……♡またそんなこと言って私を喜ばせようとしてくるんですから……♡これじゃ、何時まで経ってもナギサさんから離れられませんよぉ、えへへ……♡」
そんな感じで、しばらく僕とアルフィ様は何ともこそばゆいやり取りをしていた。その間も、当然僕は手を休ませることなく皆さんの朝食の準備に力は入れ続けていた。仕事は仕事としてちゃんとこなす。それが当たり前だ。
それから少しした頃、ふと僕はキッチンの入り口の方から何処となくジトっとした視線を感じたような気がした。
もしやと思い、僕は恐る恐るキッチン入り口の方へと視線を向けた。視線の中に明らかな負の感情が込められていたので、正直振り向くのは怖かった。けど、そうも言っていられないだろう。
「……」
するとそこには、入り口からこちらを睨む黒髪猫耳メイド、ユーアさんの姿があった。まぁ、そうだろうと思ったさ。先ほども言ったように、ここには僕とユーアさん以外の人は滅多に立ち寄らないからな。
僕はユーアさんの裸身を視界に収め、少しだけ自分の中の性欲が刺激される感覚を覚える。ロリコンを自覚した瞬間これか……。呆れてしまう……。
だが、すぐに彼女の冷ややかな視線で僕の思考は冷静な状態に引き戻された。よ、喜んで良いのか悪いのか、全然分からない……。とにかく、ユーアさんの視線が怖かった……。
「え、えっと、おはよう……ございます……、ユーアさん……」
「あら、おはようございます、ユーアさん。いらっしゃったのですね。気づくのが遅くなり申し訳ございません」
一応朝の挨拶は大切だろうということで、僕は少し言葉に詰まりながらではあるがユーアさんに朝の挨拶をする。すると、アルフィ様もようやくユーアさんの存在に気づいたようで、一度僕の背中から離れてユーアさんに挨拶の言葉をかけていた。
「はい、おはようございます、お二人とも」
ユーアさんはというと、アルフィ様が振り向いた瞬間に先ほどまでの負のオーラをしまい込み、いたって平常心を装い僕たちにそう挨拶を返してくれた。流石の切り替えの早さに、僕は感心してしまう。
などと考えていると、一度離れたはずのアルフィ様が再び僕の背中にべったりとくっついてきた。あれで終わりではなかったようだ。
「あ、あの、アルフィオーネ様、こんな時間にどうかなさったのですか……?」
「今、ナギサさんから元気をいただいているんですぅ……♡でないと、学園に行った時、寂しい思いをしてしまいますからぁ……」
「さ、寂しい思い……って、まさか……」
「そのまさかですよぉ……♡昨晩、ようやく……♡♡」
「えっ、う、嘘……。そんなことって……」
やけに声が蕩けているアルフィ様と、そんな彼女とは対照的に少し声のトーンが低めなユーアさんがそんな会話をしている。ちょっと居心地が悪い。
「も、もしかして昨晩聞こえてきた変な声って……」
「き、聞こえてしまっていたのですか……? ちょっと恥ずかしいですね……♡で、でもまぁ、そういうことです……、えへへ♡」
「えっ、ええっ!?」
「……っと、これで補給完了です♪ナギサさん、ありがとうございました♡」
「あ、い、いえ……」
そう言うとアルフィ様は次こそ僕の身体から離れ、そして未だに呆然と立ち尽くしているユーアさんのもとへと歩いていく。いや、ユーアさんに近づくというより、出入り口に向かっていると言った方が正しいのかな。
「ユーアさんも、きっと大丈夫ですよ。私が保証します♪」
そうして最後に、ユーアさんの耳元でそう囁いたアルフィ様は、そのままキッチンから出て行ってしまった。うーん、今この状況で僕とユーアさんを二人きりにされるのはちょっと怖いなぁ……。
それと最後の言葉……、あれは一体どういう意味なのだろうか……?
まさか、昨晩アルフィ様が言っていた、アルフィ様以外に僕を慕ってくれている人、というのはユーアさんのこと……だったりするのか?い、いやいや、そんなまさか……。で、でも、絶対に違うと断言もできない……よね……。
「……ナギサさん、アルフィオーネ様とその……そう言う関係になったんだ……?」
「え、えっと……、まぁ……うん……、そうかな……」
「ふーん……」
ユーアさんが再びジトっとした視線をこちらに向けてくる。うっ、ものすごい負のオーラだ……。でももし、この視線が嫉妬によるものだったら……?あー、くそっ、ユーアさんの考えていることが分からない……。
「ひ、ひとまず、朝食の用意……済ませよう……?」
「分かってる」
そう言ってユーアさんはお馴染みのフリルエプロンを身につけ、それから僕の隣に立ち朝食の準備に取り掛かり始めた。
「……」
何処となく、包丁の扱い方がいつもより荒々しく見えたのは、きっと僕の気のせいなんかじゃないはずだ……。怖い……。
それと、時折こちらにチラチラと視線を投げかけてくる。本当に気になる……。気になりすぎてヤバいよ……。
でもなぁ、直接訪ねるなんてこと、僕にはできないし……。だって、自意識過剰とか思われそうじゃん。くっ、どうすれば……。
そんな悶々とした気持ちを抱えながら、僕はユーアさんの様子を伺いつつ皆さんの朝食の準備を黙々と進めるのだった。言わずもがな、キッチン内には非常に気まずい雰囲気が漂っていたよ……、はぁ……。