裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
「んん……、んんぅ……。こ、ここは……ベッド……?」
目を覚ますと、そこはベッドの上だった。どうやら僕は、ボールにぶつかって気を失った後、誰かによってベッドまで運ばれたようだ。
というか、誰が運んでくれたのだろう?ここにいるのは皆10歳ちょっとの少女ばかりである。そして僕は、男としては小柄とは言え、このユニット内では一番大きいし重いと思う。
果たして、このユニット内に僕を運ぶことのできる方がいるのだろうか?そんなことを考えながら、僕はベッドから身を起こす。
「ナ、ナギサさんっ、よ、ようやく目を覚まされたのですね」
「よ、良かった……」
すると、ベッドサイドから二人の少女の声が聞こえた。アルフィ様とユーアさんの声だ。そういえば、この世界で初めて目を覚ました時も、似たような状況だったっけ。あの時はアルフィ様とエルシャローゼ様だったな。
などと、異世界生活初日のことを思い出しつつ、僕はベッドサイドで心配そうに僕を見つめるアルフィ様とユーアさんに視線を向ける。
「ご心配をおかけしてしまい申し訳ございません」
「そ、そんな、ナギサさんが謝ることなんて何もないです」
「そ、そうです。わたしの不注意でこんなことに……、すみませんでした……」
「私も、もっと正確にコントロールできていれば、ナギサさんに痛い思いをさせずに済んだのに……。ご迷惑をおかけしてしまいすみません、ナギサさん……」
そう言いながらアルフィ様とユーアさんの二人は何度も僕にぺこぺこと頭を下げてくる。うーん、どうしたものかなぁ……。あれは偶然が重なった事故だしなぁ……。決して誰も悪くない。だから、二人が謝る必要なんてないと思うんだよね、僕としては。
「い、いえいえ、お二人は悪くありません。といいますか、誰も悪くありませんよ。偶然起きてしまった事故ですから、仕方のないことですよ」
「ナギサさん……」
「だから、そんなに気を落とさないでください」
そう言って僕は、右手でアルフィ様の頭を、左手でユーアさんの頭をそれぞれ優しく撫でる。しょぼんとしてしまっているお二人をどうにかして元気づけたかった。もっとも、頭を撫でることが効果的かどうかは分からないけど。
「……ありがとうございます、気を遣ってくれて」
「ナギサさん、相変わらず優しいです、えへへ……♡」
だが、どうやらお二人には効果があったらしい。先ほどまで暗かった表情が見る見るうちに明るくなっていく。ちゃんと慰めになったようで、僕は少し安心する。やっぱり笑顔が一番だからね、人間は。彼女たちの落ち込んだ表情は見たくない。
「それにしても、皆さん本当にすごかったです。私、思わず見とれてしまいました」
「そ、そうですか?ほ、褒めてもらえるなんて嬉しいです、んへへ♡」
「わたしの魔法は御嬢様方に比べると少し見劣りしてしまうと思います。わたし、魔法の才はありませんから」
僕の言葉にアルフィ様は嬉しそうに顔を綻ばせていたが、反対にユーアさんは少し自嘲気味にそう言葉を返してきた。僕としてはそんなことないように思ったんだけどなぁ。ユーアさんも充分すごかったと思う。
「そんなことありませんよ。少なくとも、僕はユーアさんの魔法もすごいと思いましたから。ここにいる方は皆とても優秀な方ばかりで、そんな優秀な方々のもとで働けることを改めて嬉しく思いました」
「ナギサさん……、そ、そんなに褒められると……照れてしまいます……。か、顔が熱い……。あ、あまり見ないでください……」
僕がフォローのために発したその言葉にユーアさんは照れてしまい、真っ赤になった顔を隠すように下を向いてしまった。ちょっと気合入れて褒めすぎたかな?でも、ユーアさんの魔法をすごいと思ったことも、ここで働けることが僕にとって幸せであることも事実に変わりない。
というか、あれだな。照れているユーアさん、すごく可愛い。もっと照れさせたい、喜ばせたい……。そんな欲が顔を覗かせる。
「あっ、ところで、何方が私をここまで運んでくださったのですか?」
そういえば肝心なことを聞き忘れてしまっていた。そう思い、僕は気持ちを切り替えてお二人に尋ねてみることにした。
「あっ、そ、それはわたしが」
「ユーアさんお一人ですか?私、重くありませんでしたか?」
まさかユーアさんが一人で僕をここまで運んだのかと、僕は思わず驚いてしまった。僕とユーアさんだと、それなりに体格差もある。それに、練習場は地下にあるため、僕をここまで運ぶとなると、必然的に階段を上ることになる。
どうやらユーアさんにはかなりの重労働を強いてしまったようだ。申し訳ないことをしたなぁ。せめて僕が気さえ失っていなければ……。身体が強くなったと言っても、僕はまだまだへっぽこなのか……。
「え、えっと、わたし、身体強化の魔法を使えるので、ある程度の力仕事ならこなせるんです」
「あっ、そうだったんですね。すみません、ご面倒をおかけしてしまい……」
「い、いえ、気にしないでください」
なるほど、身体強化系の魔法が使えたのか、ユーアさん。確かにそれなら、僕くらいの体格の人なら普通に運べるのかもな。まぁそれでも、僕を運ぶのに態々魔法を使わせてしまったことには申し訳なさを覚えるのだが。
って、待てよ……?ある程度の力仕事はできる……ということはつまり、僕のアイデンティティ失われてない……?あれ、もしかして僕、お払い箱?……になるわけないか。変なことを考えるのは止めよう。
もし、こんなことを考えていたことがアルフィ様に気づかれてしまったら、きっとこっ酷く叱られてしまうことだろう。6歳も年下の少女に叱られるのって、結構精神的にくるものなんだよ……。
「ユーアさん、ここまで運んでいただきありがとうございました」
「は、はい……。ど、どういたしまして……」
またも恥ずかしそうに顔を伏せてしまうユーアさん。お礼の言葉だけでも照れてしまうのか。ユーアさんは結構照れ屋なんだな。
などと考えていると、ユーアさんが俯きながらも時折チラチラとこちらに視線を向けてきていることに気づく。それは僕だけでなく、アルフィ様にも視線を送っているようだった。
「……?あっ、ふふっ……♪」
僕が何事かと首をかしげながらユーアさんのことを見ていると、不意にアルフィ様から含み笑いが漏れた。見ると、アルフィ様は悪戯っ娘モードになっており、満面の笑みを浮かべて僕とユーアさんを交互に見ていた。
「ふふっ、私、ちょっと外に出てきますね♪それではお二人とも、ごゆっくり♪」
そう言うと、アルフィ様はそそくさと部屋から退出してしまった。これってつまり……、そういうこと……なんだよな?まったく、気遣いの出来る御嬢様だ。というか、お節介?まぁ何でも良いや。
ひとまず、今は目の前のことに集中することにしよう。アルフィ様には後でちゃんとお礼をしないとな。
「ねぇ、ユーアさん」
「う、うん……」
アルフィ様が退出されたことで僕たちは二人きりとなり、先ほどまで使っていた敬語を取り払う。やはり、ユーアさんとだとこっちの方がしっくりくるな。
僕の言葉に反応したユーアさんは、恐る恐るといったように顔を上げ、そして僕の顔を覗き込んでくる。その瞳には、期待と不安が入り混じっていた。
「朝の話の続き……なんだけどさ」
「う、うん……」
僕は一つ深呼吸し、それから再度口を開きついにその言葉を口にした。その頃には、僕の中の迷いは既に消え去っていた。
「ユーアさん、僕のこと……好き?」
「……やっと、気づいてくれたんだね、ナギサさん。うん、好き……大好き……♡アルフィオーネ様にだって負けないくらい、ナギサさんのことが大好きなんだよ、わたし♡」
ユーアさんは僕の問いかけに対し力強く頷いてそう言った。そして、僕のことを強い意志の籠った瞳でじっと見つめてくる。彼女の思いの大きさがはっきりと伝わってきていた。
なんでもっと早くに気づいてあげられなかったのだろう。僕の心の中にそんな後悔の念が渦巻いていた。
「そっか、ありがとう、ユーアさん。それと、気づくのが遅くなってごめん」
「ホントだよ、まったく……。わたし、何度もアピールしてたのに、ナギサさんは全然分かってくれなくて……」
僕がユーアさんに謝罪の言葉を述べると、ユーアさんは僕を視線で責めてきた。頬も膨らませており、ユーアさんは相当ご立腹のようだった。まぁでも、それくらい僕は彼女の気持ちを蔑ろにしてしまっていたのだ。責められて当然だよね。
と、その時、ユーアさんの瞳からほろりと一粒の涙がこぼれるのが見えた。ユーアさんもそれに気づき自身の手で涙を拭おうとするが、涙は次々と彼女の瞳からこぼれ落ちてきてしまい、ユーアさんの意思では止められなかった。
「うぅ……うぅぅ……、ぐすっ……」
ユーアさんはこんなにも思いつめてしまっていたのか……。それを考えた瞬間、僕の腕は咄嗟にユーアさんへと伸びていた。
「ユーアさん……、本当にごめん……」
そして、僕はそっと彼女の身体を抱き寄せた。もう決して目を逸らしたりしない……。そんな誓いを込めて、彼女の震える身体を胸で受け止める。
それから、何度も何度も、彼女の耳元で謝罪の言葉を呟く。どれだけ謝っても、決して僕の中の罪悪感は消えないだろう。けど、それでも口にしてしまう。それがせめてもの誠意だと僕は思うから。
「ナギサさんのバカぁ……。もっと早く振り向いてほしかったよぉ……。わたし……、すごく寂しかったんだから……」
「ごめん……、本当にごめん……」
「許してあげないもん……。わたしのこと……ちゃんと幸せにしてくれないと許さないんだからね……」
「うん、約束する。ちゃんと幸せにするから」
「じゃあ……、証明して……。その言葉が嘘じゃないこと……、わたしに証明してみせてよ……」
証明……か。何をすればいいのか……なんて迷いはない。今僕がすべきことは決まっている。
「分かった。それじゃあ、顔上げて、ユーアさん」
「……うん」
僕はユーアさんの頭をそっと一撫でし、耳元でそう囁きかける。すると、ユーアさんは素直に頷き、僕の要望に応じてくれた。
僕を見上げる彼女の瞳と、彼女を見下ろす僕の瞳が交差する。ユーアさんのその瞳の奥には、もう既に不安の影はなくなっており、期待に満ち溢れていた。頬も上気し、これから行われるであろう行為を心待ちにしているようだった。
アルフィ様もユーアさんも、とても良い人たちだ。そんな良い人たちにここまで愛されているなんて、やっぱり僕は幸せ者だな。
「ユーアさん……」
「ナギサ……さん……、んっ……♡」
僕たちの口唇の距離が少しずつ縮まり、そして僕たちはそっと口唇を重ねあった。ユーアさんとの初めてのキスだ。
柔らかな彼女の唇が僕を求めるように何度も何度も僕の唇に押し当てられる。その度に、僕の心にじんわりと温かい何かが広がっていく感覚を覚える。そして、ユーアさんに対する愛おしいという気持ちが溢れ出してきた。
「んんっ……♡んちゅっ……♡好き……♡ナギサさん……大好き……♡ちゅっ……♡ちゅぱっ……♡んんぅっ……♡」
しばらくの間、僕たちはお互いの唇を重ね続けていた。彼女が暮れる僕への愛情がとても心地良かった。だから僕も、思わず彼女とのキスに没頭してしまっていた。
「んんんっ……♡んはぁ……♡キス……しちゃったね……♡」
「そうだね……、はぁ……はぁ……。ど、どうかな、これで証明になったかな?」
「うん、ありがとう、証明してくれて。わたし、ナギサさんのこと信じてるから。絶対、幸せにしてよね♡」
「ははっ、任せておいて……っていうのは僕のキャラじゃないかな」
ユーアさんのこと、一生大切にしよう。もちろん、アルフィ様もだ。僕のことを好きだと言ってくれる子たちへの、僕なりの精いっぱいの恩返しだ。……っていうのは、流石におこがましい話かもしれないな。
でも、彼女たちを一生大切にし幸せにするという決意に狂いはない。僕はこの誓いを絶対に果たす。
「へへっ、これからよろしくね、ナギサさん♡」
「うん、よろしく、ユーアさん」
満面の笑みを浮かべて僕の身体に抱きついてくるユーアさんの小さな身体を、僕も優しく抱き返した。