裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
「ところでさ、ユーアさん。どうして僕のことを?」
お互いに気持ちが落ち着いたところで、僕は彼女にそう尋ねてみることにした。アルフィ様はきっかけが曖昧だったけど、ユーアさんには僕のことを好きになる明確なきっかけというものがあったのか、どうしても気になってしまった。あまり聞くべきことではないのかもしれないけどね。
「そういうこと、あんまり聞くものじゃないよ?ナギサさん」
「あっ、やっぱりそうだよね。ごめん、デリカシーがなくて」
「良いよ。ふふっ、女の子との接し方、まだ不慣れなんだね。ちょっと可愛い」
ユーアさんは僕の腕の中でくすくすと笑っている。確かに僕は女の子との関わり方なんて全然分からない。元の世界では、ずっと逃げ回っていたようなものだったし。僕は自身の情けなさから苦笑いしてしまう。
「わたしね、ナギサさんの優しいところが大好きなの。何をするにも、ちゃんとわたしたちのことを考えて行動しようとしてくれるナギサさんが」
「僕、そんなに優しい男かな……?あんまり自覚ないんだけど」
「だと思った。どうせ無自覚なんだろうなぁとは分かってたよ。まぁ、そういうところもナギサさんらしいけど、ふふっ♪」
ユーアさんは未だに可笑しそうに肩を揺らして笑っている。ユーアさん、さっきからよく笑うなぁ。ユーアさんの笑い声を聞いていると、何だか和む。
「でもわたしね、実は初めてナギサさんと会った時から引かれてたんだよ。なんでかはよく分からないんだけど、一目見た時からなんか良いなって思ったの。一目惚れってやつなのかな?」
なんて考えていると、不意にユーアさんは囁くようにしてそんなことを言った。てっきり最初は何とも思われていなかったと考えていただけに、そんなユーアさんの言葉に僕は少しだけ驚いてしまった。
「そうなの?」
「うん、そうなんだよ。それから、ナギサさんに優しくされて、完全に惚れこんじゃった感じ。結局、出会ったその日にはメロメロにされちゃってたんだよね、わたし」
「な、なるほど……、そうなんだ」
僕に優しくされたのが決め手になったが、ユーアさんもアルフィ様同様出会った時から僕に引かれていたのか……。二人とも共通して僕に一目ぼれした、ということになるのかな。うーん、不思議だな……。どうして二人して同じような理由で僕のことを好きになったんだろう……?偶然……で片付けるにはあまりに不可解だよなぁ……。
もしかして、転生したことで僕の身体に何か変な影響が出ていたりするのかな?……っていうのは考えすぎか。このことについては、あんまり深く考えない方が良いのかもしれない。若干謎は残るけど偶然ということにしておこう。
「……まぁ、心当たりがないことはないんだけどね……。ナギサさんに引かれた理由」
「え?それってどういうこと?さっきはよく分からないって言ってたけど……」
「混乱させちゃったよね、ごめんね。さっきまでは話すかどうか少し迷ってたから誤魔化しちゃったけど、やっぱり隠したままにするのは嫌だから話すね。まぁ、薄々気づかれてはいるかもしれないけど……」
そう言ってユーアさんは決意の籠った瞳で真っ直ぐ僕の顔を見据えてくる。……一体、どんな話だろう?というか、薄々気づかれているかもしれない……とはどういうことだろうか?僕にはさっぱり分からないのだが……。
「言いづらいことなら無理しなくて良いんだよ?」
「ううん、大丈夫。確かにちょっと言いづらいし、信じてもらえないかもしれないけど、それでも好きな人に隠し事はしたくないから」
正直、僕としてはユーアさんにあまり無理はしてほしくない。けど、彼女の強い意志を見てしまうと、もう止める気にはならなかった。それに、好きな人に隠し事はしたくない、なんて言われたら、何も言えないじゃないか。
僕は無言でユーアさんに話の続きを促す。すると、ユーアさんはゆっくりと口を開き、彼女自身の秘密について話しだした。
「わたし、実は異世界人の血を受け継いでるんだ」
「……え?」
異世界人の血を受け継いでいる……?ユーアさんが?まさかの真実に、僕は短い驚きの声しか出なかった。
「ほら、わたしの髪の毛って、この世界では珍しい黒色でしょ?これは、異世界人の血が混じってるからなの。ナギサさんも、こんな話何処かで聞いたことあるでしょ?信じる・信じないは別にして」
僕が固まっている間にも、ユーアさんは話を続ける。黒い髪が異世界人の血を引いている証拠……?そうだったのか……。
いや、待て……。この世界に転生してきた初日、ルクス様からそんな話を聞いたような……。確か、この世界では珍しい毛髪の色を持つ人が存在していて、その人たちが異世界と何かしら関係がある……とか何とか……。
なるほど、これは黒髪のことだったんだな。ということは、歴代の異世界人たちも皆黒髪だったということになるのかな?僕も黒髪だし。
そして、そんな異世界人の血を引き継いでいるから、ユーアさんの髪の毛も黒色であるってわけなんだな。確かに、異世界伝説を信じている人なら、ユーアさんの髪質を見れば勘づくかもしれない。
けど、残念ながら僕はこの世界に疎い。信じる・信じないの前に、異世界伝説というものすら詳しく知らなかったのだ。だから、少し反応に困ってしまう。
しかし、ユーアさんが秘密を話してくれたのだ。ここは僕も包み隠さず自身の秘密について打ち明けるべきかもしれない。僕も、ユーアさんに隠し事をするのは嫌だから。
「ごめん、知らなかったよ。僕、この世界の常識に疎いんだ」
「そ、それってどういう……」
「今まで隠してたけど……実は僕、ついこの間異世界から転生してきたんだ。日本っていう国から」
「えっ……」
僕が自分の秘密について暴露すると、ユーアさんは絶句してしまった。まぁ、そりゃ驚くよね。いきなり、僕は異世界人です、なんて言われたら。でも、ユーアさんならきっと信じてくれる……。そんな気がしていた。
「……そう……だったんだ……。でも、言われてみれば確かにそんな気はするかもね。ナギサさんも黒髪だし、それに名前もちょっと珍しいし」
「うん。そういうわけだから、ユーアさんが異世界人の血を受け継いでいるってこと、僕は信じられるよ。というか、それを否定しちゃったら、僕の存在自体を半分否定しているようなものだからね」
「ナギサさん……、話してくれてありがとう。わたしね、ナギサさんが秘密を打ち明けてくれたこと、すごく嬉しかった」
「僕だけ隠し事をするのは嫌だったからね」
お互いの秘密を共有したことで、ユーアさんとの心の距離がさらにぐっと近くなったような気がする。そのことに僕は、言いようのない嬉しさを憶えていた。それはユーアさんも同じようで、僕たちはお互い顔を見合わせてにこりと微笑みあった。
「それで……、さっきの話に戻るけど、ユーアさんの髪の毛が黒ってことと僕のことを好きになることにはどんな関係が?」
「あっ、そうだったね。えっと、多分わたし、ナギサさんに親近感みたいな何かを感じてたのかなぁって思ったんだ。同じ黒髪だったから」
「あー、なるほどね」
「うん。異世界人の血を引き継いでるのはわたしだけじゃないんだって、ナギサさんを初めて見た時に思ったの。まぁ、ナギサさんは異世界人の末裔じゃなくて、本物の異世界人だったわけだけど」
なるほど、そう言う関係があったわけか。自分と同じ黒い色の毛髪を持つ僕に対して、ユーアさんは親近感を覚えていたのか。そこから恋愛感情に発展した、と。
「なんか、すごい運命を感じちゃうなぁ。まさか好きになった人が、先祖と同じ異世界人だったなんて」
「確かにそうかもね」
「これでどう?これが、わたしがナギサさんを好きになったきっかけの全部だよ。聞けて満足?」
少し意地悪そうな笑みを浮かべながら、ユーアさんが僕の瞳を下から覗き込んでくる。そんなユーアさんの問いかけに、僕は一つ大きく頷き、そして彼女の小さな頭を撫でた。異世界人の証であるその綺麗な黒髪を労わるように。
「話してくれてありがとう。聞けて良かったよ」
「いえいえ、どういたしまして♪あー、良かった。先祖が異世界人って話、あんまり信じてくれる人いないからちょっぴり不安だったんだよね。もし、ナギサさんにまで信じてもらえなかったらと思うと……、ちょっと寒気が……」
「それなのに話してくれたんだね。ユーアさんが僕を大切に思ってくれているのがよく分かって嬉しかったよ」
「わたしも、ナギサさんのお話が聞けて良かった。ちなみに、このことは他の人は知ってるの?例えば、アルフィオーネ様とか」
不意にそんなことを聞いてくるユーアさん。特に隠す必要もないので、僕はそのことについても話すことにした。
「うん、アルフィ様とエルシャローゼ様は知ってるよ。というか、僕を拾ってくれたのが御嬢様方なんだ。僕が執事になったのは、ローラント家の方々に恩返しがしたかったからなんだよ」
「そうだったんだね。お二人は信じてくれたの?ナギサさんが異世界人だってこと」
「うん。実はローラント家の当主様……ルクストール様は、異世界伝説にご興味があったらしくてね。僕のこともあっさり信じてくれたんだ」
「へぇ、そうなんだぁ。あれだね、運が良かったね、ナギサさん。異世界伝説って、ほとんどの人は信じてくれないから」
少し寂しそうな表情を浮かべながらユーアさんがそうポツリと呟く。何か過去に辛い経験をしたのかな?それでも僕には包み隠さず話してくれた。そう考えると、ますます嬉しくなってくる。
「仕方ないよ、荒唐無稽な話なのは事実だしね。けど、大丈夫。僕はユーアさんの味方だから」
「……ナギサさん、そういうところだよ、ホント……。もぅ……、もっと好きになっちゃうじゃん……、へへっ……♡」
「あれ……?また何か変なこと言った?」
「変なことじゃないけど、また無自覚にわたしを喜ばせるようなことは言ってたかな♡この無自覚女誑しめ♡えいっ♪えいっ♪えへへ♡」
僕の頬を指でツンツンと突っつきながら、ユーアさんは楽しそうに微笑む。どうやら僕はまた可笑しなことを言ってしまっていたようだ。けどまぁ、ユーアさんが元気を取り戻してくれたようだから良かったかな。
「お話、終わりましたか?」
と、その時静かに扉が開き、その奥からアルフィ様が顔を覗かせた。そして、少しニヤニヤした表情のまま僕たちにそう声をかけてきた。これ、絶対外で僕たちの話聞いてたな……?悪い御嬢様だ。
「ア、アルフィオーネ様っ!?ど、どうしよう……、こんな姿見られちゃって……恥ずかしい……」
僕の膝の上であたふたし出すユーアさん。そんなユーアさんの様子を、アルフィ様は実に楽しそうな表情で眺めている。
「恥ずかしいことなんてありませんよ、ユーアさん。ふふっ、良かったじゃないですか、思いが通じて。これで私たち、一緒ですね♪」
「ア、アルフィオーネ様……、ありがとう……ございます……」
「私は何もしていませんよ♪」
最初は恥ずかしそうだったユーアさんだったけど、アルフィ様のフォローもあり、すぐに元の笑顔に戻ってくれた。うん、やっぱり二人とも笑顔が似合う。
「ところでアルフィ様、僕たちの話聞いてましたよね?」
それはそうと、盗み聞きされていたことについては一応問いただしておくべきだろう。そう思い、僕はなるべく優しい笑顔を心掛けてアルフィ様にそう尋ねた。
「あっ……、えっと……その……、ごめんなさい……。お二人のお話が気になってしまいつい……」
「はぁ……、貴女って人は……。ということは、ユーアさんの秘密についても聞かれていた……ということですよね?」
「……はい。で、ですが、私は異世界伝説は信じていますから、安心してください、ユーアさん」
「……そういう問題ではないのですが……、まぁ良いです。でも、今後はこういう悪戯はしないように」
「は、はい……、気をつけます……」
とまぁ、簡単に説教だけはしておく。主人が道を踏み外しそうになっていたら正しい路に戻してあげる。これも従者としての役割だ。
「アルフィオーネ様、信じてくださってありがとうございます」
と思ったら、ユーアさんはアルフィ様を咎めるでもなく、そんな感謝の言葉を述べた。まぁでも彼女からしたら、話を盗み聞きされていたことよりも、自身が異世界人の末裔であることを信じてもらえたという事の方が重大なことなのかもしれないな。
「あっ、いえ、その……むしろ盗み聞きしてしまいすみませんでした」
「そんな、謝らないでください。アルフィオーネ様にはいずれお話しするつもりでしたから」
「そうだったのですね。ですが、失礼なことをしてしまったのは事実ですから、どうか謝罪は受け取ってください」
「そ、そういうことなら、はい。えっと、ちゃんとナギサさんの言うことは聞きましょうね、アルフィオーネ様」
そう言われ素直にアルフィ様の謝罪を受け取ったユーアさんは、柔らかく優しい口調でアルフィ様を注意した。そんな彼女の注意を受けたアルフィ様は、何処となく嬉しそうな表情を浮かべていた。
「はい。あっ、それと、ユーアさんも是非私のことはアルフィとお呼びください。私たち、ナギサさんの未来の妻なのですから、ユーアさんとはもっと仲良くなりたいんです♪」
「つ、妻……、そ、そういうことに……なるんだ……♡えっと、わたしももっとアルフィオーネ様……いえ、アルフィ様と仲良くなりたいです」
「ふふっ、それなら良かったです♪それでは、これからよろしくお願いしますね、ユーアさん♪」
「は、はい、よろしくお願いいたします、アルフィ様」
そうして彼女たちはお互いの手を握り合った。僕の未来の妻という言葉に、僕は少しだけ気恥ずかしさを覚えてしまっていたのだった。
「でも、羨ましいです、ナギサさんと敬語無しでお話しできるなんて」
「ふふっ、使用人の特権です♪」
でも、この二人となら一生楽しく過ごせそうだな。