※この作品はR-18です。

裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~   作:室谷 竜司

4 / 58
不幸な僕……

 そして時は流れ、僕は中学を卒業し高校に入学した。

 

 この年になると、同学年の女子ですら僕の身長を余裕で超えてくる。正直、僕にとって女子のいる環境全てが地獄に見えてしまっていた。だから、できることなら男子校に通いたかったのだけど、僕の家から行ける範囲内に男子校がなかったので、あまり学生数の多くなさそうな近所の高校を受験した。

 

 高校に入学してからも、当然のように僕は周囲から奇異の視線を向けられた。男子にしてはあまりに華奢すぎる、女子の中に交じっても目立つほど小柄な僕に興味を持たない学生はいなかった。

 

 それでも、入学当初は特に何事もなく良好な人間関係を築けていた。まぁ、基本的に男子だけだったのだけど。女子にはやはり近づけなかった。回りを見ればみんな僕より背が高かったから。

 

 時折クラスの女子たちからは、街中で大人の女性たちから向けられるものと同じ、まるで獲物を狙う獣のようなギラギラとした視線を感じていた。その度にぞわぞわとした感覚と吐き気を覚えていた。僕のような外見の男を好む人種がいることはこれまでの経験から痛いほど理解していたが、学校の中でまでこんな視線を向けられないといけないのは本当に辛かった。

 

 もし、あの時の書店の店員さんのように僕に迫ってきたら……、僕はどうなってしまうのだろう……。想像するだけで怖かった。

 

 そんな僕の想像が現実になるのは思ったより早かった。ある時、クラスの中でも特に身長が高くてスタイルの良い女子たち数人が、瞳をギラつかせながら僕を取り囲むように迫ってきた。しかも、よりによって教室内でだ。

 

「あー、もう無理っ!我慢できない」

 

「可愛すぎるんだもんねぇ♪」

 

「お持ち帰りしたくなっちゃう♪」

 

 女子たちは口々にそう言いながら、徐々に僕との距離を詰めてきていた。僕の心臓は破裂せんばかりの勢いでドクドクと激しく拍動し、呼吸は浅く速くなっていた。全身の立毛筋が収縮し、それから眩暈までも起こってしまっていた。

 

 そして、彼女たちが僕のすぐ傍までやってきた瞬間、僕は我慢できずにその場で嘔吐してしまった。僕自身、まさか嘔吐までしてしまうとは思っていなかった。苦手とは言っても、触れられたら嫌悪感を覚える程度だろうと思っていたのだ。

 

 しかし、現実は違った。突然吐しゃ物をぶちまけた僕の様子に、クラス中が騒然となった。驚愕の表情を浮かべる者、嫌悪の視線を向けてくる者など反応は様々だったが、そのどれもが負の感情だったことは言うまでもない。

 

 自分が成した目の前の惨状を呆然と見つめながら、僕は気が遠くなる感覚を覚えていた。こんなことを仕出かしてしまったのだから、きっともうこの学校に僕の居場所などなくなってしまうのだろう……。そんな考えが僕の脳内を支配していた。

 

 僕の予想通り、その日を境に僕の築いた人間関係はあっさりと崩れ去った。もっとも、入学してからそこまで時間も経っていなかったので、人間関係と言っても大したものじゃなかったのだけど。それでも、あるとないとでは全然違うものだ。

 

 女子たちの大半はふざけ半分で僕のトラウマを刺激するような行為を次々と仕掛けてきた。数人で僕を取り囲んではまるで誘惑でもするかのように僕に対して過剰なスキンシップを図ってきたり、酷い時は女子トイレや女子更衣室に連れ込まれそうになることもあった。

 

 健全な男子であれば、きっと夢にまで見るシチュエーションだろう。女子にもみくちゃにされる僕の様子に、男子たちは嫉妬の視線を向けてきた。そして、それはやがて僕への虐めに発展することとなる。

 

「そんななよなよしてるから女子にナメられるんだよ」

 

「俺たちが鍛えてやるよ」

 

 などと言いながら、彼らは僕を扱き使い、時には暴行を加えてきた。単なる鬱憤晴らしであることは充分に理解していたけど、僕は何も言い返すことができなかった。

 

 また、それだけでなく……

 

「おい、お前ちょっと女子更衣室に突入して来いよ。んで、コイツで写真の一枚でも撮ってこい」

 

「お前ならできるだろ?なあ?」

 

 などという無茶ぶりまで要求されたこともあった。これがバレれば僕だけじゃなくて彼らも大変な目に合うのだと説得しようとしたけど、それは無駄な努力に終わった。彼らに逆らうことはできなかった。

 

 とは言っても、僕は一定以上女子に近づくことができないので、結局その命令を遂行することはできなかったのだけど……。あの時はいつも以上にボコボコにされたものだ。両親への誤魔化しが大変だった。でも、両親に心配をかけることはしたくなかったので、何とか誤魔化しきった。

 

 それ以降、彼らから女子たちの写真を要求されることはなくなったが、僕に対する仕打ちは相変わらず続いた。来る日も来る日も身体のあちこちに傷をつけられ、僕は心身ともに疲弊していった。日を重ねるごとに自分の身体が丈夫になっていくのはもはや皮肉としかおもえなかった。

 

 そうして辛く苦しい高校生活も半年と少しほど過ぎ、季節は冬に移り変わる。そんなある日のことだった。

 

 その日は最低気温が0℃を下回るほどの真冬日で、地面にはところどころ凍結した箇所が見受けられた。

 

 僕はなるべく滑らないよう細心の注意を払いながら、自宅の近所にある高校を目指してとぼとぼと歩いていた。

 

「……赤だ」

 

 僕は通学路の途中にある横断歩道で運悪く赤信号に引っかかってしまい、寒さで身を縮こまらせながら信号が青に変わるのをじっと待っていた。あまりの寒さに、僕は目の前の信号と僕自身にしか意識を向けられていなかった。

 

 だから、後ろから迫る存在に気づけなかった……。

 

「おっはよう、望月ちゃん♪」

 

 そう言いながら、クラスメイトのとある女子が背中から僕にそう元気よく声をかけてきた。そして、いつものおふざけの要領で僕の背中に触れてきたのだ。

 

 僕は突然現れた女子に過剰に反応してしまい、身体を飛び跳ねさせてしまった。それくらいならいつものことなのだが、今日はそういうわけにもいかなかった。

 

 僕はその勢いのまま凍結した地面で足を滑らせてしまった。そして、そのまま身体が車道に投げ出されてしまう。

 

 信号はまだ赤のまま。つまり、車道には多くの車が行きかっている。そんなところに飛び込めばどうなるか?

 

 そう、僕は丁度通りかかった一台の車に撥ねられた。そして、呆気なく命を落としてしまったのだ。

 

 最後にチラリと見えたクラスメイトの女子の顔は、何が起こったのか分からないというようにぽかんとしていた。その後は分からない。なんせ、そこで僕の意識はブラックアウトしたのだから。

 

「ーー貴方の人生はあまりに不幸すぎました。よって、貴方には第2の人生を与えます。…………を…………し、…………を…………いたします。それでは、幸せな人生を送れることを願っております」

 

 ふらふらと暗闇の中を漂う感覚の中で、僕はそんな声を聞いたような気がした。意識が朦朧とした状態では、その言葉の意味などほとんど掴めなかったのだけど……。

 

 それから僕は、ゆっくりと浮上するような感覚に苛まれ、そうして目を覚ましたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。