裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~ 作:室谷 竜司
お風呂から上がり僕が脱衣所で着替えをしていると、
「おや……?」
と、身体をタオルで拭き終えたアルフィ様が小さく声を上げた。その声につられるように、自身の黒い髪に残っている水分をを丁寧に拭き取っていたユーアさんがアルフィ様の視線を追う。
「あれ、どうしてあんなところが濡れてるんでしょう……?」
そして、こくんと首をかしげて不思議そうにそんな声尾を漏らすユーアさん。よく見てみると、確かにユーアさんの言う通り脱衣所の床にところどころ水溜りができていた。
僕たちの身体から水滴が垂れてしまったのか……とも思ったが、位置的にそれは有り得なかった。なんせ、その水溜りは浴室の扉よりも脱衣所と廊下を隔てる扉寄りのところにできていたのだ。
少なくとも、お風呂から上がってすぐあんなところまで移動した覚えはない。しかし、僕らがお風呂に入る前にはあんな水溜りはなかったようにも思う。
「もしかして、私たちがお風呂に入っている間に誰かここに来たのでしょうか?その際、水を溢してしまった……とか」
「だ、誰かがここに!?」
そんなアルフィ様の推測に、ユーアさんがびくりと身体を跳ねさせそう応じる。その表情には強張りが見え、猫尻尾は縮こまるようにくるくると巻かれていた。
頬もかなり上気している。お風呂上りであることを考慮したとしても、あの赤さは尋常じゃないだろう。
恐らく、自分が先ほどまでお風呂の中でエッチなことをしていた様子を誰かに聞かれてしまっていたかもしれないことに羞恥の感情を覚えてしまっているのだろう。まぁ、その気持ちは僕もよく分かる。現に、今若干頬が熱いし。
というかむしろ、どうしてアルフィ様はそんなに平然としていられるのだろうか。その図太さが羨ましいような……そうでもないような……。
「えっと、どうしてそんなに驚くんですか?」
「だ、だって……、もしかしたらさっきの……誰かに聞かれてしまっていたかもしれないんですよ……?は、恥ずかしいじゃないですか……」
「うーん、そうですかね……?」
ユーアさんの言葉に対し、アルフィ様はきょとんとした顔でそう答える。そんなアルフィ様の反応に、ユーアさんは信じられないといった様子でぽかんと口を開いたまま固まってしまった。
「あ、あれ……?私、何か変なこと言いました……?もう既に私たちの関係は知られているわけですから恥ずかしいことなんて……ないですよね?」
アルフィ様の問いかけに、僕とユーアさんは同時に首を横に振った。やはりこの御嬢様はいろいろとずれている……。僕が異世界人だとかそういうのは関係なく、ただアルフィ様が少しずれた感性を持っているだけなのではないだろうか……。僕にはそう思えて仕方がなかった。
「そ、そんなぁ……」
僕たちの反応を見てがっくりと肩を落とすアルフィ様。申し訳ないという気持ちもあるけど、こればかりは流石に彼女の感性には同意しかねる。
「うぅ……、もしかしたら姫様に聞かれてたかも……。明日からどんな顔したら……。はじゅかしい……」
一方、ユーアさんはユーアさんで頭を抱えてその場に蹲ってしまっていた。うん、こっちに関してはよく分かる。多分、この場に一人しかいなかったら僕も同じように蹲って発狂してしまっていただろう。
特に、エルシャローゼ様に聞かれていたかもしれないと考えると……、か、考えないようにしよう……。我を失いそうで怖い。
「ま、まぁ、ともかく、どなたかが水を溢されたと考えるのが妥当でしょうね」
この話は終わりというように、僕は話題を元に戻す。
「うーん……。でも、少し違和感もあるんですよね」
すぐに立ち直り、アルフィ様も僕に次いで本題に戻る。ただ、ユーアさんは未だにプルプルと身体を震わせ、"恥ずかしい……"とうめき声を連呼しているが……。彼女のことはそっとしておくに限るな。
「違和感……ですか?」
僕はアルフィ様に聞き返す。すると、アルフィ様はこくりとと頷き、それから言葉を続けた。
「はい。水を溢すにしても、洗面台から離れすぎていませんか?」
「言われてみれば……、確かに」
この脱衣所に設置されている洗面台は、どちらかというと浴室の扉側にある。だから、脱衣所の出入り口側の床にできた水溜りからは距離があるのだ。アルフィ様の言う通り、水を溢したというには少し違和感がある。
「それに、小さな水溜りがドアに向かって転々と続いているのも気になります」
「そうですね……」
アルフィ様の言う通り、一番手前側の大きな水溜りから道標が伸びるかのように転々と幾つも小さな水溜りが連なっている。
「不自然ですね……。どうしてあそこの水溜りだけあんなに大きいんでしょう。もしかして、誰かがここでお漏らしを……?」
などと一人推測を始めるアルフィ様。お漏らしって……、流石にそれはないと思うけどなぁ……。もし仮にあったとしても、そのまま放置する人はいないんじゃないかなぁ……。少なくともこのユニットには。
「いえ……、でもおしっこにしては色が薄すぎですね……。ってことは……、もしや……、ふふっ……」
アルフィ様の推測に対して心の中でいろいろと考えていると、彼女は不意に不敵な笑みを溢し始めた。そんな彼女の姿に、僕は嫌な予感を覚えずにはいられなかった。
「ちょっと確かめてみましょう」
そう言うと、アルフィ様はとてとてと大きな水溜りに近づいていく。そして、水溜りのすぐ傍にしゃがむと、人差し指でそれを一掬いする。
現在、アルフィ様は僕に背中を向けた状態でしゃがんでいる。そのため、僕の位置からだと彼女のぷりっとしたお尻が丸見えなのである。しかも、少し脚を開いてしゃがんでいる所為で裂け目の奥の領域までばっちり見えてしまっていた。
好きな人が無自覚に見せてくるその光景に呼応するように、先ほどまで萎えかけていた僕の中の熱情が再び目覚めようとしてしまっていた。
もう既に5回も射精して身体には相当量の疲労が蓄積されているはずなのに、それでもまだ心は満足できていないとでも言うのか……。僕の性欲は僕の身体を壊したいのか……?
流石にこれ以上眺めていたら抑えきれなくなりそうだったので、僕はアルフィ様の姿から目を逸らした。
「ねばねばしてますね……。ふふふ……、これは私の推測通りかもしれないですね……。しかし、一体誰のものなんでしょうねぇ……」
僕が自身の中の性欲と戦っている間にも、アルフィ様は一人でブツブツと何事かを呟きながら一人で考え込んでいた。
しかし、アルフィ様は勇気あるなぁ……。水かも分からない謎の液体に自ら触れようとするなんて……。僕、そういうの怖くて触れない。
「猫人族ならもしかしたら分かるかも……。ユーアさん、ちょっとこちらに来てもらっても良いですか?」
「えっ、あっ、は、はいっ!!」
それまでずっと縮こまっていたユーアさんだったが、アルフィ様に名前を呼ばれてようやく我に返ったのか、身体を跳ねさせて大げさにそう返事をした。
それから、言われた通りすぐにアルフィ様のもとに近づき、
「これ、誰の匂いか分かります?」
と言って差し出されたアルフィ様の人差し指を素直にすんすんと嗅ぎ始めた。その表情から察するに、今の状況については全くと言って良いほど理解できていないのだろう。
それでも素直に従ってしまうところが少し可愛く思えてしまう。けど……、少しは警戒すべきなのでは……?とも思う。
「これは……、えっと……」
「分かりましたか?」
「え、ええ、一応……。というか、この水溜りは一体……」
「それはですね……」
そう言うと、アルフィ様はユーアさんの耳元で何事かを呟いた。そんなアルフィ様のひそひそ話に耳を傾けながら、ユーアさんは何とも言えない微妙な表情を浮かべていた。
「というわけなんです。どうです?」
「え、えっと……、何というかその……楽しそうですね……、アルフィ様……」
「ええ、とても。それで、誰の匂いがしましたか?」
「今の話を聞かされた後だと言いづらいなぁ……。うーん、でももし彼女もわたしと同じだったら……、別に悪いことじゃ……ないのかな……?」
にんまりと笑みを溢すアルフィ様に問い詰められたユーアさんは、猫尻尾を左右にゆらゆらと揺らしながら逡巡を見せる。しかし、答えることに決めたらしく、チラチラと僕の様子を伺いながらアルフィ様の耳元に口を近づけ、僕には聞こえない程度の声量で何事かを囁いていた。
これ、僕がいたらまずい話なのかな……?乙女だけの秘密……的なやつ……なのだろうか?
「ふふふ、なるほどです。やはりあの人でしたか。一番可能性が高そうでしたからね、あの人が」
などと考えている間にも、彼女たちの話し合い……?は続いていた。まぁ、もし本当に僕に聞かれたらまずい話をしているのだとしたら、恐らく今頃ここから追い出されているだろう。何も言ってこないということは、要するに僕がここにいても問題ないということ……と考えることにしよう。
「それはつまり……」
「私たちと同じですよ、多分」
「そうなんですかね?若干腑に落ちないような……」
「いえいえ、絶対そうですよ。私たち以外の人たちはみんな寝る準備を済ませて自室に戻っていったのはユーアさんも見ましたよね?」
「は、はい、まぁ……」
何故か勢いづいているアルフィ様に押され気味になりながら返事をするユーアさん。今のアルフィ様、すごく生き生きしているな。
「じゃあ、寝る支度を済ませた人は脱衣所に来ますか?」
「……確かに、用があるとは考えづらいかも……ですね」
「つまり、そういうことなんですよ」
「う、うーん……、やっぱり何か腑に落ちない……」
「それに、この水溜りが何よりの証拠ですよ。まぁ、とにかく行ってみればすぐに分かりますよ」
そう言うと、アルフィ様は徐に立ち上がり、そして脱衣所の出入り口に向かってすたすたと歩き始めた。そんな彼女の後姿を見つめながら、
「アルフィ様って、実は思い付きで突っ走っちゃうようなタイプ……だったりするのかなぁ……。意外な一面を見た気がする……。で、でも、彼女の普段の態度的にも、案外アルフィ様の推測は間違いじゃない……のかな」
ユーアさんはそう呟いていた。そしてすぐ、アルフィ様の後を追うようにその場から立ち上がり出口に向かう。
「あっ、ナギサさんもついてきてくださいね♪」
「わ、分かりました……?」
廊下に出る寸前、アルフィ様はこちらに振り返り実に楽しそうな笑顔で僕にそう言ってきた。
何が何だか分からないが一応頷く僕。変なことじゃないと良いんだけど……、不安だなぁ……。
「そ、その、アルフィ様のためにもちょっとだけ付き合ってあげて」
「う、うん」
僕にそう言ってきたユーアさんの瞳は、自由気ままな妹を見守る姉のそれだった。ユーアさんは、見た目は小さいけどやっぱり最年長なんだなぁ……と再認識させられた瞬間だった。
「っとと、忘れないうちに……」
彼女たちについていく前に僕は一度浴室に戻り、湯船の栓を抜いた。それから浴室の電灯を落とし、脱衣所の床を軽く掃除した。
その際、謎の水溜りにうっかり触れてしまう。
「なんかぬるぬるしてる……。って、これ……まさか……!?」
そして、ここでようやく彼女たちが放していた内容をほんの少しだけ理解する僕だった。……これ、もしかしてまだ休ませてくれないやつ……?
「うぅ、疲れてるのに……」
と言いつつも、少しだけ期待してしまっていた。先ほど無理矢理抑えつけた熱情が再燃し始める感覚を覚える。
「……とりあえず二人を追いかけよう」
そう呟くと、僕も脱衣所を後にした。それから、廊下のところどころにできていた水溜りにチラチラと視線を向けながらもアルフィ様とユーアさんを追う。
「あっ、来ましたね、ナギサさん♪」
そして、角を曲がった先に二人はいた。僕の姿を捉えたアルフィ様は小声で僕に語り掛けながら、自身の唇の前に人差し指を当てて"静かに"と僕にジェスチャーを送ってきていた。
僕は一つ頷くと、黙ったまま彼女たちがじっと見つめる扉に意識を向けた。そこは2号室……、つまり、リレイナ様のお部屋だった。そして……
「んんぅ……♡はうぅ……♡あっ……♡あぅぅ……♡ナ、ナギサ……さん……♡♡んあぅ……♡はぁぁぅ……♡」
その扉の奥から、そんな可愛らしい嬌声が漏れ聞こえていた。しかも、僕の名前まで呟いている……。
「……まさか、アルフィ様の推測が当たっちゃうなんて……」
「ふふっ、夜はまだまだ長いですよ、ナギサさん♪」
「そ、そう……みたいですね……」
身体の疲労など関係ないと言うように膨張を始める自身の股間を見下ろしながら、僕は溜息混じりにアルフィ様の言葉に短くそう応じたのだった。男って、本当何なんだろうね……?