※この作品はR-18です。

裸ノ乙女達 ~魔力健康法実践の為にすっぽんぽん生活を強いられる御嬢様(ロリ)に執事として仕えることになりました~   作:室谷 竜司

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異世界伝説

「し、死んだ……!?そ、そうだったのですか……!?ジドウシャ……というのは存じ上げませんが、よっぽど痛くて辛かったのでしょう……?」

 

「うーん、痛みとかはあまり覚えていないですね……。けど、両親に別れを告げられなかったのは少し悔やまれます」

 

 心配そうに僕の右手を優しく包むように両掌で握ってくれる妹方に対し、僕はなるべく笑顔を心掛けて話し返す。

 

 そう、両親に別れの言葉を言えなかったのは少しだけ寂しい。二人だけは、いつも僕の味方でいてくれたから、せめてお礼くらいは言いたかった。後悔があるとすればそれくらいだ。

 

 それ以外は正直何の未練もない。むしろ今は、こちらの世界に来れたことを喜んですらいる。やっぱり人間は、虐められるより優しくされた方がずっと幸せに感じられるものだ。妹方の掌の温もりが僕の手を伝い、そして全身に広がっていく。それがとても心地良かった。

 

「そう……ですよね……」

 

「私だって、突然家族に会えなくなるのは悲しいわ……」

 

 妹方とは反対側から、姉方も寂し気な表情を浮かべて僕の顔を見上げてくる。彼女の手は僕の空いた左手に延びては引っ込みを繰り返している。恐らく、妹のようにしたいという気持ちと、異性の肌に触れることへの抵抗感とが胸中に同居しているのだろう。御嬢様だもんね、そういう教育を受けているのかもしれない。むしろ、妹方が躊躇わずに僕の手を握ったことに驚いてしまう。

 

 だが、たとえ手を握られずとも、彼女たちの優しい気持ちは充分に伝わってきていた。だから僕は精いっぱいの笑顔を浮かべて、彼女たちに言葉をかける。

 

「そんな悲しい顔しないでください。僕はこの世界に来られて良かったとも思っているんです」

 

「そ、そうなのですか?」

 

「ええ、そうです。お二人みたいなとても心優しい方に出会えて嬉しいと思っています。ですから、ほとんど未練はないんです」

 

「私……たちに……!?」

 

「う、嬉しい……って……」

 

 僕の言葉に、僕の両サイドにいた二人の少女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。僕、何かおかしなことでも言ってしまったのだろうか?いや、ただ照れているだけなのかな?まぁ、怒っているわけじゃなさそうだし良いか。

 

「おやおや……」

 

「娘たちももうそんな年頃か……」

 

 家主様とイストさんがそんなことを呟いていたが、僕にはその意味を理解することができなかった。

 

「あ、会えて嬉しいだなんて……そんな……、え、えへへへへ……」

 

「こ、これって……やっぱり運命……なのかしら……?ふ、ふふふ……。って、私は何を考えているのよ……」

 

 御嬢様方も何やら自分たちの世界にトリップしてしまった。これ、そのまま放置してて大丈夫かな?ひとまず本題に戻りたいのだけど……。

 

「え、えっと、話戻しますね。それで……、僕がこの世界に来るまでの経緯が何か関係あるのですか?

 

 もういいやと思い、話を先に進めることにした。

 

「おっと、そうだったね。うん、この文献によると、世界移動には二つのパターンがあるみたいなんだ。一つは召喚、もう一つは転生……。つまり、君は後者の転生によってこの世界に来た、ということになるのかな」

 

「そうなるんですかね」

 

 僕は曖昧な返事しかできなかった。一応、向こうの世界で一度死んだわけだし、転生と言って良いのだとは思うが、現実感がないのではっきりと断言はできない。

 

「それでだな、転生の場合、目覚める前に誰かの声が聞こえるらしいんだけど……、何か分かることはあるかい?」

 

「誰かの声……ですか?」

 

 そういえば、意識が浮上する前に何か変な声を聞いたような気がしなくもない。もしかして、誰かの声というのはそれのことなのか?

 

「た、確かに聞いたかもしれません。あまりよく覚えていないのですが」

 

「おお、そうか。内容までは……覚えていなさそうだね」

 

「すみません……」

 

「いや、仕方ないさ。肝心なのはちゃんと声を聞いた記憶があるかどうかってことだからね。その声を聞いた者は、転生先の世界で生きていくにあたって不自由のないように常識を一部書き換えられるらしいんだ」

 

「ということはつまり、僕は常識を書き換えられたから、この世界の言葉で喋ることができているのですね」

 

「うむ、そういうことになる。まぁ、この文献によると、ではあるけどね。試しに、この文を読んでみてくれないかな?」

 

「あ、はい、分かりました」

 

 そう言って手渡された本のタイトルの文章を読み上げる。僕の目には日本語にしか映っていなかったけど、恐らくこれも常識改変によるものなのだろう。

 

「ちゃんと読めるみたいだね。なるほど、君は本当に異世界からの訪問者のようだ。いやぁ、信じていただけに、こうして本物の異世界人を目にできるなんて嬉しい限りだよ」

 

 そう言うと家主様は相貌を崩して嬉しそうに笑う。そんな彼の言葉に、イストさんも、そしていつの間にか我に返っていた御嬢様方も同意というように頷いていた。僕は、彼らに受け入れてもらえたのだと思い、言いようのない嬉しさを心の内に覚えていた。

 

「おっと、そういえば自己紹介がまだだったね。うっかりしていたよ」

 

 苦笑交じりにそう言うと、家主様は改めて居住まいを正して僕に向き直る。そういえば、僕も家主様にはまだ名乗っていなかった……。

 

「私の名は、ルクストール・ローラント、ローラント家の現当主だ。私のことは気軽にルクスと呼んでくれ」

 

「わ、分かりました。えっと、僕は望月渚沙と言います。……この場合は、ナギサ・モチヅキと名乗った方が良いかもしれませんね」

 

 僕は家主様改めルクスさんにぺこりと頭を下げる。

 

「あら、ナギサが名前だったのですね」

 

「貴方の世界では随分と変わった名乗り方をするのね。まぁ良いわ。そういえば私たちもまだ名乗っていなかったから、ついでに……。私はローラント家長女、エルシャローゼ・ローラントよ。そして、こっちが双子の妹の……」

 

「アルフィオーネ・ローラントと申します。以後、よろしくお願いいたしますね、ナギサさん」

 

「はい、よろしくお願いします、皆さん」

 

 僕は彼女たちにもペコリと一礼する。やはりというべきか、この二人は双子だったようだ。これだけ容姿が瓜二つなのだから、当然と言えば当然なのだろう。

 

「ところで、ナギサ君。君の歳はいくつなんだい?」

 

 唐突に、ルクスさんからそんな質問が投げかけられる。

 

「見た感じ、今君が着ているのは学園の制服……だよね?」

 

「えっ、これが制服って分かるんですか……?」

 

 僕は驚きの声を上げてしまう。けど、言われてみれば、ルクスさんやエルシャローゼさん、アルフィオーネさんが着ている服は、何処となく元の世界の文化を彷彿とさせた。それに、先ほどから服に関する疑問は投げられなかった。彼らにとってこの服は大して違和感ではなかったのだろう。

 

「やはり制服で合っていたんだね。この世界の制服のデザインとよく似ていたから、何となく分かったんだ」

 

「そうだったんですね。はい、僕は学生です。年は16歳です」

 

「16歳で学生……?うーむ、ここは少し常識にずれがあるみたいだね。この世界では、15歳を迎えると成人したことになるんだよ。だから、学園も15歳で卒業なんだ」

 

「あっ、そうなんですか!?ってことは、この世界では僕はもう成人……ということなんですね」

 

 まさか、成人年齢が異なるとは……。いや、でもよく考えてみれば元の世界でも国ごとに成人年齢は違ったわけだし、特に驚くことでもなかったかもな。

 

「ちなみに……、御嬢様方はおいくつなのですか?」

 

「私たちはまだ10歳になったばかりです」

 

 10歳……か……。分かってはいたけど幼いなぁ。そんな幼い彼女らと目線の高さがそこまで変わらないのは、やはりちょっと傷つく……。

 

「成人なら、働き口に困ることもないのかな」

 

 そうぼそりと呟くルクスさん。そうか、よく考えればそうだ。これまでは親の手を借りて生活してきたけど、ここには僕を支えてくれる人はいない。だから、僕が一から働いてお金を稼がないといけないのだ。そのことを見落としていた。

 

「そうですよね。これからこの世界で生活していくには、仕事をしてお金を稼がないと。あの、何か働き先を探せる場所とかってありますか?」

 

「ああ、もちろんあるよ。そこを紹介しても良いんだけど……」

 

 そう言いながらルクスさんは僕……いや、正確には僕の横に立つ御嬢様方に視線を向けていた。

 

 つられて僕も二人に視線を向ける。すると、二人の御嬢様は僕を見つめながら、何処となく寂し気な表情を浮かべていた。その視線が僕に"もう何処かに行っちゃうの?"とか"もっと一緒にいたい"と訴えかけてきているように思えてしまった。こういうところはまだ幼い少女、ということなのだろうか。

 

 まぁ、本音を言えば僕も彼女たちと一緒にいられないのは少し寂しい。それに、少し心苦しくもあるなんせ、彼女たちは僕を拾ってくれた恩人なのだ。何か恩返しの一つや二つはしたい。けど、僕にその方法は思いつかない。

 

 お金さえあれば……とも思うが、残念ながら僕に持ち合わせはないのだ。だから、どうにかしてお金を稼ぐ必要がある。彼女たちに恩返しをするのはそれからになって……いや、一つだけ……たった一つだけ彼女たちとずっと一緒にいられる方法がある……。

 

 上手くいけばそれが恩返しにもなるかもしれない。もっとも、そうなるかどうかは分からないのだけど……。でも、ここは一つ、頼み込んでみる外ない。

 

「あ、あの、もし……もし良ければ、僕を使用人として雇ってはいただけないでしょうか?僕を助けてくださった皆さんに恩返しがしたいのです」

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