テイワット各国にはファデュイと呼ばれる人たちが存在する。スネージナヤにある組織で、一応、表向きには外交という形で各国を訪れているけれど、その実やってることは侵略に等しい。暗躍、かもしれないけど。
飛行中に見下ろした各地の遺跡や秘境の周辺に必ず彼らはいて、遭遇した旅人を襲ったり、あるいは追い払ったりしている。私自身は直接的な被害を被っている西風騎士団ではないとはいえ、モンドの民として、厄介、目の上のたん瘤、と言って差し支えの無い存在だ。
そんな彼らファデュイは様々武装をしていて、それぞれがそれぞれにとても強大な力を持っている。正直私みたいなペーペーの新人冒険者には手に負えない存在だし、普段無茶ばかりを言ってくるサイリュスさんでさえ見つかったら逃げろ、とまで言ってくる程の手練れ集団が彼らだ。
故に。
「こっちよ……? ふふっ、ほら、当たらな~い」
「ああ、もうっ!」
完全に目を付けられたこの状態は、もう、絶望と呼ぶ他無かった。
事の発端はそう、私が勝手に燃えていた復讐の心、雷蛍死すべしを掲げて活動している最中のこと。
普段群れで行動するはずの*1雷蛍がふよふよと漂っていたものだから、先手必勝とばかりに攻撃を仕掛けた。その一匹については何事もなく倒す事が出来た……のだけど、次の瞬間。
「あらぁ? 可愛い子が来たわねぇ」
耳元でそう囁かれた瞬間、全力で回避行動を取る事が出来たのは褒められるべきだろう。
直後、雷スライムの電撃が比ではない程の雷撃が先ほどまで私のいたところを襲った。立て続けに空気中を走る紫電。ゴロゴロと転がりながらなんとか距離を取れば、そこには。
「じゃあ、楽しませてねぇ?」
紫を基調としたローブを纏う、雷蛍を従えた女性──ファデュイの、雷蛍術師。
ランタンに仕込んだ霧虚ろの花を元に雷蛍を召喚、使役して、彼女自身も強力な雷元素を扱う。その性格はほぼ全員が嗜虐的の一言。同一人物ではないはずなのに、どの雷蛍術師をしてもサディスティックな性格を持っている。
つらつらと私の知る雷蛍術師の詳細を思い浮かべている間に、攻撃が来た。
風元素で自身を吹き飛ばして、更に距離を取る。
「つれないねぇ、ふふっ、でも逃がさない」
「づっ!?」
……距離を取った先に、彼女は出現した。
そうだ、雷蛍術師を相手にする上で忘れてはいけない事の一つがこれ。雷元素を用いた瞬間移動──。これがある限り、平面移動での逃走は不可能に近い。現にこうして回り込まれ、指先から放たれた少量の電撃が私を灼いた。
ならば、上だ。
気流を発生させて風の翼を──。
「だーめっ」
「いやぁ!?」
脳天から走る雷撃。痛みと衝撃が全身を揺らし、痺れが体を止める。
「あら、もう終わりぃ? ん~、勿体ない」
「ぐ、う……」
先日あれだけ雷元素に浸されたのに、この身体は耐性を得てくれるわけでもなく、むしろ少し感じやすい体質になってしまっている。今のも少しまずかった。全身を流れた電撃の最直下、つまり股の部分に甘い痺れが広がっている。
「そうだ、それじゃあ、もう少しだけ楽しませてね……?」
言うや否や、彼女はその手に持つ提灯を私の顔に近づける。何か、何か身体に悪いと思われる胞子がそこより飛び出し、抵抗も出来ずにソレを吸い込んでしまう。体の痺れはまだ取れない。
「今は誰も見ていないから……」
意識を、手放した。
ひんやりとした感覚に目を覚ます。暗い。どこかの洞窟、だろうか。
身体は動かない。どうやら拘束されてしまっているらしい。ここまで連れてきたのがファデュイとなれば、何をされるかわかったものじゃない。そんな込み入った情報なんて知らないとはいえ、尋問と拷問の果てに殺されてしまうかもしれないのだ。私はそう教わった。だから逃げろ、と。
「そんなことしないわよぉ」
「っ」
「これは完全な私のしゅーみ。気付いてる? 自分の恰好……」
言われ、ようやく気付く。拘束されている、だけじゃない。
元々着ていた衣服は剥ぎ取られ、更には煽情的な、身体にぴっちりと張り付くスーツのようなものを着せられている。胸やお尻を強調するようなデザインの、丁度、雷蛍術師のローブを剥いだらこんな感じになるんじゃないか、というような、そんな服。
「んー!?」
「ふふっ」
仰向けの状態で手足を拘束され、こんな服を着ているという状況に羞恥が昇ってくる。こんなものを着せて何をするつもりなのか。その答えは考えるまでもなく、行動で示された。
私の、上。そこへ、馬乗りになってくる雷蛍術師。
次の瞬間、私のお腹へ熱心に股をこすりつけ始めたではないか。
「ん、んー!?」
「私ねぇ、女の子が好きなの。丁度良かったぁ、こっちに来てから随分とシてなかったから、溜まってたの。服はモンドのだとちょっと……ダサかったから、スネージナヤの流行の可愛いのにさせてもらったのよ」
悍ましい話をしている彼女。轡をされているため言葉は発せないけど、拒絶の意思を込めて言葉を発そうとして、大きく咳き込んだ。
「ああ、そうそう。アナタの身体の中は今霧虚ろの草の胞子だらけだから、気を付けたほうが良いわよぉ?」
何を気を付けるというのか。けれど口に猿轡を嵌められている状況では問いかける事も出来ず、これまた先に答えが来る。
バチッ! と。
身体に電撃が走った。見れば、にっくき雷蛍が嬉しそうに私の周囲を飛んでいる。
……霧虚ろの草の胞子は雷蛍の大好物だという。そんなものを吐き出し続ける私は、さぞかし魅力的に見える事だろう。
口を閉じんとするも、猿轡がそれをさせてくれない。
「あぁ、良い……ピクピクってお肉が痙攣して、ほんのりピリピリして、気持ちいい」
「ん、んふっ、ぁ」
「そ・れ・と」
「──っ!?」
彼女が人差し指を私のお腹へ置く。トン、と。
直後、胃の中に異物が出現したのがわかった。感じたことの無い苦痛に一瞬意識が飛ぶ。しかし、その胃から放たれた電撃が私の意識を救い上げてしまった。
胃の中の異物はバタバタと動いている。バチバチ、バヂバヂと音を立てながら、羽ばたいている。
「他にはどこへ出して欲しーい?」
「んんんっ!」
「そう、ココがいいのねぇ」
次に彼女が指を置いたのは、下腹部──赤ちゃんの部屋の直上。
必死に首を振る。やめて、やめてと。
でも彼女は、いっそうに嗜虐的な笑みを浮かべ、私のお腹へと股をこすりつけ続ける。
「いいわぁ、その顔……。じゃあ、段階を踏んであげる。まずはおまんこから……」
「ン゛──ッ!」
突然、太いなんて表現じゃ足りないものがナカへ入ってきた。拡張される痛みに腰が飛び跳ねる。
「あはっ、良い、とっても良いわ……ビクビクして、痙攣して、突き上げて……もっとよもっと派手にやろぉ?」
ずり、ずりずりっ、とソレが……雷蛍がナカを突き進む。狭い狭い道を、羽をばたつかせながら、雷元素を放出しながら。腰がガクガクと震え、口から泡が出る。雷蛍術師はそれを満面の笑みで舐めとってきた。
そのまま私の胸を揉みしだき、先端のぽっちを弄る。
コツん、と。雷蛍が奥に触れた。
「今アナタの子宮口を触ったけれど、わかるかなぁ? ここよぉ? ここ……ここに、赤ちゃんを作る部屋があるのぉ」
「んぶっ、ン゛、ンン゛!」
「ほらほら、ちゃぁんと力を入れないと、蛍がナカに入っちゃうよ?」
「ンンッ!!」
ぐっと下腹に力を込める。トリックフラワーやスライムに侵入されたここだけど、虫が入るなんて、よりによってにっくき雷蛍が入るなんて嫌すぎる。身体を捻じ込ませてくる雷蛍をどうにか入れまいとさらに力を集中して──。
「ざっぁんねぇーん」
「──ァァ!!」
赤ちゃんの部屋の内部に召喚された
「ァ゛、ェアアア゛、うぅぅうう!」
「アナタが眠っている間に、子宮の中にも胞子をたんまり入れて置いたわぁ。もうアナタの身体で触れられてないトコロなんてないよぉ?」
「ふっ、う゛っ、ぐ」
「あは、すごいすご~い! とっても良い振動……ホラ、胃の中の子と、子宮の中の子と、おまんこにいる子が雷で繋がるの、わかる?」
「ひ、ぎ、げげ、ぎ」
「口の轡はもういらないかなぁ。やん、そんな舌を伸ばしちゃって……誘ってるのぉ?」
眼球がひっくり返って何も見えなくなっている。口はひらっきぱなしで舌は突き出され、拘束されている部分もそうでない部分もまとめて強い痙攣に襲われていた。内部から感電し伝播する痺れはしっかりと調整されているらしく、肉を灼かない程度に、しかし痛みはちゃんとあって、耐えようがない。
口元へ湿り気。
突き出した舌が絡めとられるのを感じた。あぁ、キスを、されている。それだけが辛うじてわかる。
お腹へ擦り付けられる行為の速度が増して、彼女もヒートアップしているのだろうことも理解できた。けれど、私から何かをする、という事は出来ない。そんな余裕はない。
「んちゅ、ぇう……んふふ、可愛い」
胸を揉まれる。然して大きいとは言えない私の胸が、くねくね、くにくにと弄られていく。かと思えば唐突にギュッと先端を抓まれ、更にはそこへ電撃を流され、苦悶と快感の声が上がる。まるで他人事のように……そういう仕組みの装置を見ているかのように、私の身体が弄られていく。
また体内からの電撃。彼女の舌先から放出された雷撃と繋がり合い、形容しがたい不快感が広がっていく。
「あはぁ、いいわぁ……いい……本当に、楽しませてくれたわぁ!」
パチ、パチと。ようやく戻った視界の中で、彼女の身体から紫電が漏れ始めているように見えた。ボルテージが最大まで昇ったのだと悟る。力の入らない身体は下腹部がぼっこりと膨らみ、中の蛍の羽ばたきで変形をし続ける。
その突起へ雷蛍術師が股を擦り付けるものだから、圧迫された雷蛍がその刺激に電撃を放出し、更なる苦痛を産む。
「や、め、べっ」
「ここからじゃなぁい」
次に彼女が手を掛けた場所。
そこは、首だった。
「い、いや、ぃや!」
「察しが良いわねぇ。でも、やめてあげない」
彼女の人差し指がトン、と喉に置かれる。
瞬間、強烈な吐き気と閉塞感が喉に出現した──喉に、雷蛍が召喚されたのだ。
息が吸えなくなる事態に脳が混乱し、なんとか異物を吐き出さんと喉が動き続ける。けれどそこへ留まると明確な意思をもっている蛍に嚥下反応如きが適うはずもなく、摂取出来ない酸素に段々と意識が遠のいていくのが分かった。
「はい、ここまで」
「──っふ、ぁ、げぇぇっ!」
意識の飛びかけた直前に喉の異物が口から飛び出した。久しぶりの空気を吸いたいのに、先ほどまであった吐き気がそれを許してくれず、肺の中の僅かばかりの酸素を吐き出してしまう。それが終わってようやく、新しい酸素にありつけた。
彼女の手はまだ私の首にある。
それがどういうことなのか、わからない私じゃない。
「おねが、い、じ、ま」
「だーめっ」
「んぶぇぁっ、ガ──」
また、喉。
行き届かぬ酸素に全身の痙攣は激しくなり、酸素を寄越せと叫びたてる。もう、無理、だ。
「あらら? 思ったよりずっと弱いのねぇ、アナタ。うーん、死んじゃったら勿体ないから……違うトコにしてあげるわぁ」
「ハ──ぁっ」
喉にいた蛍が抜ける。首から手も離されて、ほとんど飛びかけていた意識がギリギリで繋ぎ止められた。そのまま雷蛍術師は喉から興味を失くした様子で背面を向く。馬乗りのまま私に背を向け──私のお豆さんに、手を掛けた。
「ゃあっ、ひ……」
「さっきも思ったけれど、思ったよりすんなり入ったし、思ったより敏感ねぇ。遊んでるのかしらぁ? それとも自分で、か……」
「ち、ちがっ」
「やん、びくびくって大きくなったわ。図星かなぁ」
「そんな──ァア゛!?」
油断していた。突然お豆さんに流された電気に、大きく、大きく腰が跳ねる。さらには。
「あら」
「いやっ……」
「お漏らし……じゃなくて、潮噴きねぇ。ふふっ、そんなに気持ちよかった……?」
ぶしゃ、と出てしまったおしっこのような、そうでないような水に、羞恥が激しくなる。今まで散々をされていても、お漏らしというのは別格の羞恥があると思う。
そんな私の股へ、雷蛍術師は指を入れてきた。トリックフラワーやスライム、そして雷蛍ですっかり拡がった私の股は彼女の指をすんなり受け入れ、あろうことか快感まで覚えてしまう。表情に出さないように必死に我慢するけれど、身体がビクビクと痙攣してしまうのは止められない。
「ん……ん、ん゛っ!?」
「あはっ、アナタの弱点、みぃつけたっ!」
唐突に、今までの甘い、くすぐったいような快感から、脳天を突くような快楽へ切り替わるポイントがあった。そこを指で突かれる度、ぷしゃ、ぷしゃと股から水が出てしまう。おしっこじゃない。それはわかる。
また、今まで多少は大人しくなっていた雷蛍がその動きに激しさを取り戻す。中でも赤ちゃんの部屋の入り口にいた奴が引き返し始め、そこに至るまでの道をグリグリと広げ始めた。
「ふふ、頑張って全部だそうね……」
「う、ぐ……ぶ」
ソイツだけ、じゃなかったらしい。
赤ちゃんの部屋にいた三匹も、我先にと入り口へ殺到する。勿論そんなものが通るような大きさじゃないし、三匹同時なんて出られるはずもないから、苦痛が下腹へ広がっていく。
そして、もう一匹。
「今ここら辺かなぁ?」
「ん、ぐ……ぅぅぅうう、い、ぎぁ」
それは、胃にいた一匹だ。ソイツは上に上がるのではなく──下へ行った。つまり腸内へ、それなりの速度を以てお腹の中を駆け回る。当然苦しいし、お腹が痛い。お腹を下してしまった時と同じそれが、自身では我慢や制御の出来ないままにお尻へ向かっている。
「ィ、がぁっ!」
でゅり、と。赤ちゃんの部屋の中の一匹が入り口を出たのがわかった。痛みと──直後に訪れる、快感。電撃と振動を伴って私のナカを駆けるソレに、とうとう快感を覚えてしまっているのだ。雷蛍術師のお豆さんへの責めは終わっていないし、そこから放たれる電撃が雷蛍へと通じて、その現在地をありありと教えてくれる。勿論それがなくても、異常なまでの盛り上がりが下腹を移動しているから、現在地なんて簡単にわかるのだけど。
「はい、一匹~、どう? 蛍を産んだキ・モ・チ」
ようやく一匹の雷蛍が股から出てきた。何かを聞かれたけれど、もう何を答える力もない。まだ終わらないというのだから、もう喋りたくない。
二匹目が赤ちゃんの部屋から出る。その一瞬、気持ちいい、と感じてしまった自分に驚いた。先ほどまでは苦しいだけだったのに、どうしてだろう。
それだけではない。三匹目が入り口へ体当たりをして、身体を捻じ込ませようとしている……それが、とても気持ちがいい。おかしい。そんなはずはない。だって赤ちゃんの部屋は内蔵で、そんなところで感じるなんて。
「子宮で感じるのが不思議なのぉ? ふふ、じゃあ教えてあげる。アナタは子宮をコツコツされたり、子宮口を通られたりしている時にぃ、私からクリちゃんの責めを受けて、感じてたでしょ? だから脳が勘違いしちゃったのよぉ、子宮口を刺激されるのは、気持ちい事なんだ、って」
「う、んんんんっ!」
「ね?」
三匹目が、羽を震わせながら入り口を抜けていく。あぁ、余りにも、気持ちがいい。まるで胸のぽっちとか、お豆さんを触られているかのような快感が赤ちゃんの部屋全体を覆っている。
「感謝してね? 普通のヒトじゃ感じられない場所を、開発して上げたんだから……」
「は──っはぁ、っはぁ」
ようやく、赤ちゃんの部屋に入っていた三匹全部が体外へ排出された。
そして、最後。
「と、ぁっ、どいれ、いがせ、う、う」
「だーめっ。ほらぁ、そろそろ出てくるよぉ?」
「い、いゃぁ、やだぁ!」
お尻に力を込める。けれど、お豆さんを指で抓み潰され、さらには電気を流された事で、それも敢え無く弛緩してしまう。
その隙を狙って──それは出てきた。
「あぶっ、んん、んんんんんんっ!!」
「ほらほら、私もイくから、蛍をうんちしながらイっちゃえっ!」
「あああ──ッ!!」
先程、指を入れられて明らかに感じ方のおかしかったポイントへ、お豆さんを通して電撃が貫通する。それだけでとてつもなく気持ちがいいのに、私の意思に関係なくお尻から飛び出した雷蛍のその排泄感に、大きく腰が跳ねてしまう。排泄をする、という事が、こんなに気持ちいはずないのに、頭が真っ白になっていくのが分かった。
お腹へ湿り気。彼女の背中が迫ってくる。仰向けに、彼女も倒れたらしい。
私の意識の最後は彼女の後頭部。ぶふぇ、なんて音を出して、私は闇へと誘われた。
パチパチと音が鳴っている。
先程までずっと聞いていた紫電のソレでなく、焼けた木の弾ける音。
目を、開ける。
「あ、おい! 起きたみたいだぞ! お前、また会ったな。大丈夫か?」
「……」
視界いっぱいにはいる浮遊物。私の憧れの人、栄誉騎士の連れているペットだ。
じゃあ。
「まだ起き上がらない方が良いよ」
「あ……」
すぐ隣に、その人はいた。
ううん……私に、膝枕をしてくれている、少しだけ白みのかかった金髪の少女。歳は同じくらいなのに、あの風龍と対等に渡り合い、モンドへと平穏を齎した凄い人。
栄誉騎士、その人だ。
「あ、あの、あの、あのあの」
「ん? まだ雷元素が抜けきってないのか? まぁオイラ達が着いた頃、大量の雷元素と雷蛍に囲まれてたもんな!」
「どこか違和感はある?」
「だだだだだ大丈夫、です」
「全然大丈夫そうじゃないぞ!」
憧れの人だ。私が冒険者を志した切っ掛け。
……そして、トリックフラワーの時、多分物凄い恥ずかしい事を……医療行為をしてもらった相手。
「あの、えと、その」
「お前……雷蛍にやられるくらいじゃ、冒険者向いてないと思うぞ~? あんまり無理しない方が身のためだ!」
「パイモン」
「うっ……でもコイツ、前も死に掛けてたし……」
「その……雷蛍、以外には、誰もいなかった……ですか?」
「いなかったよ」
「おう! 逆にあれだけの雷蛍が群がってるのは初めて見たぞ」
ようやく頭が回ってきた。
身体を見れば、元の服装だ。あの悪趣味なぴっちり衣装じゃない。
喉の調子は、良い。ずっとあったモヤモヤ……霧虚ろの花粉だろうそれは、少なくとも肺の中には無い様子。身体にも傷はつけられていない。勿論赤ちゃんの部屋の甘い痺れだけはまだ残っているけれど、皮膚を灼かれた痕跡なんかもない。
「あの……雷蛍は、私を攻撃してましたか?」
「そういえば……してなかったような」
「する意味もないって思われたのかもな!」
雷蛍は使役されていない状態では普通に危険生物だ。よく人間を襲う。だから、生きている限りは私の事も襲っていたはず。故に私に群がっていた雷蛍というのは、使役されていたものと推測できる。
「……守ってくれた、のかな」
「雷蛍がかぁ? なんでオマエを守るんだよ!」
「仲間だと思われたのかも」
「うわっ、それオイラより酷いぞ?」
一応、こんな所に放置していたら、ヒルチャールやスライムに襲われる可能性もあったから、雷蛍で……なんて、全部推測だけど。
女の子が好き、といっていたあの雷蛍術師なら、なんて考えてしまった。今までされた散々の暴力があるにもかかわらず、そんなことを考えてしまう辺り私も相当アレだな、なんて思う。
「もう、大丈夫です」
「別に時間は気にしなくていい」
「そうだぞ! 基本オイラ達は暇だからな!」
「いえ……帰って、シャワーを浴びて、眠りたいので……」
「あー、まぁあんだけの雷蛍に群がられてたら……そ、そうだよな。オイラもぞっとするぞ」
「パイモンも仲間だと思われるかも」
「思われるワケないだろ!」
起き上がる。憧れの人の膝はもう少し……と思ったけど、私は彼女に優しくしてもらいたいわけではないので、余り弱い姿は見せられない。
はやく一端の冒険者になって……いつか、その横に、なんて。
今のままじゃあ到底無理だろうけど、そんな夢がある。
「そういえばオマエ、名前なんて言うんだ?」
「あ、えと、あの……レデスパル、です」
「レデスパル。じゃあ改めて。私は──」
これが。記念すべき三ページ目の出来事。
信用ならないファデュイに襲われた日。でも少しだけ優しさを垣間見てしまった日。
そして、憧れのあの人に自己紹介をした日で、膝枕をしてもらった日で……。
友達、って言ってもらえた日。
今回ばかりは、良い思い出として旅行記に刻ませてもらおう。
あと、もう一つ、この日から排泄が……。