水晶を五つ取ってきてほしい、なんて、とても簡単な依頼を受けて飛び立った数時間前。上空から見れば水晶の輝きに気付くことなんて容易で、私は何の気なしに、そこへと降り立った。
油断していたのだろう。風唸りの丘は見晴らしも良く、風の翼で飛ぶには持って来いの場所だから、自分の庭だ、なんて……油断しきっていたのだろう。
水晶を取り終わり、気流を発生させて飛び上がろうとした、その時の事だ。
何故か上手く、飛び上がれない。どころかまともに移動する事さえ出来はしなかった。
風だ。私の「神の目」によるものではない。
私を中心に、私へ向かって風が吹いている。円形に、まるで、獲物を逃がさない、とでもいうかのように。
そんな私へ向かって一本の矢が飛んできた。火のついた矢。咄嗟に風で防御を図るけれど、またも私のものではない風に妨害され、雲散してしまう。となれば当然、火の矢は私へ直撃する。
した。
チリチリと火傷に痛む腕と、炎元素が付着したことによって全身にも痛みが生じている。風は未だ止むことは無く、さらに一矢、もう一矢と火矢が飛んでくるのだから、たまったものではない。
今度は風を使わず、自力で脱出を試みる。すると、僅かずつではあるが前進する事に成功した。
そこでまた、油断した。
飛来する矢。また火矢だろうと、その程度のダメージは無視して、今は脱出を、なんて考えて──。
想像以上の爆発が全身を殴りつけた。
そう、過負荷反応だ。炎元素と雷元素による過負荷反応が身体で起こったことにより、大きく吹き飛ばされた私は地面に強く叩き付けられる。
でも、今回はなんとか意識を保つことに成功した。
……成功したことが、幸いだったかどうかはわからないけれど。
脳を強く揺すられて動けないでいる私の身体を掴む腕。一本や二本じゃない。複数の腕が、私の身体を掴み、持ち上げた。臭いがキツい。耳元で騒ぐは、ガシャガシャ、グシャグシャとした異言語。
ヒルチャールだ。
彼らは私を担ぎ上げ、どこかへ持っていく。
私はまだ、動けなかった。
「Mi muhe ye, Mi muhe ye, Unu,Unu Yaya ika kundala! Mita dada-a-gusha, Mita muhe-a-gusha!」
耳障りな音は"そこ"へ近づくに連れて大きくなってきた。音、というか、歌だろうか。
理解の出来ぬ言葉の羅列。意味があるのかないのか、それに至るまでの知識を持ち合わせていないから、何もわからない。
私の身体は運ばれている間に拘束され、口にはいっぱいの夕暮れの実を詰められてしまっている。喋る事も、上手く呼吸をする事も出来ない状態だ。
ヒルチャール達は数匹がかりで私を担ぎ、この場所までやってきた。ダダウパの谷のどこぞかだろう、いくつもの粗末な建物が建っていて、そこかしこにヒルチャールがいるのが見える。通常のヒルチャールだけでなく、私では対処しきれぬ大型までもが。
時刻は既に19時を過ぎて、月の青白い光が地に落ちるのみ。各所に設置された篝火が明るさこそ保ってくれているけれど、それが逆におどろおどろしさを演出して、恐ろしい気持ちでいっぱいだった。
「Yaya kundala, Nini gusha ika!」
ドサッと降ろされる。背後に熱。炎元素がある、だけではない。
それは、大鍋だった。何をされるのかを想像し、ぞっとする。
私が恐怖に怯えている中で、ヒルチャールの一匹が私に近寄ってきた。どうにかして拘束を解くことが出来ないかとジタバタするも、強く強く、強固に結ばれていて叶いそうにない。ヒルチャールの癖に、拘束の仕方を心得ているとはどういうことだ。
その一匹は私の身体に触れる。酷い臭いの手が私の身体を撫でていく。非常に気持ちが悪い。胸やお尻、お腹、足。それに顔も、余すところなく撫でられた。何をするつもりなのか。
「Yika!」
「Unu, unu」
「Zido mita!」
「Unu, unu!」
突然ソイツが叫んだかと思うと、周囲のヒルチャールが同調するように叫ぶ。
そして、なんと。
「ンーッ!?」
ヒルチャールは私の服に手を掛け、ビリビリと破き始めたではないか。
冒険者になるのなら、と両親が用意してくれた服が、紙でも破るかのようにバラバラにされていく。拘束の下にあろうと関係ない。上も下も、下着も、全部全部破かれ、脱がされていく。その際、「神の目」も外されてしまった。もう、手立てがない。
そうして、たくさんのヒルチャールの前で全裸に剥かれた私。
私の服を破いたヒルチャールが満足したように頷いて下がると、その背後から、今度は背が低く杖を持ったヒルチャール……ヒルチャール・シャーマンが顔を出してきた。これまた強い異臭を放つシャーマンは、何やら筆を持っている。
シャーマンはその筆を、私のお腹へベタッ、とつけた。
「ンぅ、んぐっ、ふぶぁっ!?」
そのままツツーっと筆を滑らせ始める。整えられていないのだろう、先端はごわごわの筆。けれど筆は筆だ。私のお腹に赤い線が引かれて行き、何やら文様が刻まれていく。
けど、私はそれどころじゃない。
「んぃ、へ、ぃっ! ぶふっ、えばははっ!!」
口に詰まっている夕暮れの実のせいで上手く発音できていないけど──あぁ、くすぐったい。
素肌に筆を走らせる、なんて。くすぐったくてたまらない。多少のゴワゴワは気になるけれど、それを抜きにしてもくすぐったい。
筆はお腹を様々な文様と共に走り抜け、その筆のまま腰を周り、背中へ行って、また戻ってきて。どんな塗料を使っているのか、ぐるぐると回されても塗料が地面に着くことは無く、私の身体に強く染みついているように感じられた。
そして筆は、当然そこにも届く。
「びゃ、んっ」
胸。円を描くようにして蜷局を巻きながら登ってくる筆は、くすぐったいと共にどこか気持ちよく、けれど歯痒い。下乳は描きづらいのか、時折むにゅっと胸を抓まれることがあるけれど、いつかのファデュイのような快楽を与えるための責めではないためか、物足りなさが募る。
筆は段々と登って行き、くすぐったさのピーク……つまり先端のぽっちへ辿り着くけれど、最後にちょん、と触れられただけで弄ってはくれなかった。
そのままもう片方の胸へ行く筆。
「ん……」
少し、嫌悪感を覚えた。
今私……命の危機なはずなのに。何度も何度も死に瀕したから慣れてしまったのだろうか。こんな状況で、もっと気持ちよくなりたい、なんて。そんなえっちな子だったかな、私。
「──ぁひゅ!」
考え事をしていたら、筆がお股の所へ来ていた。
なんの断りも無く穴へと侵入する筆に、くすぐったさ以外の……快楽が下半身を襲う。雷スライムに浸されたあの日と、雷蛍術師にめちゃくちゃにされたあの日。その辺りを境に、私のお股はとても感じやすくなってしまっていて、非常に困っているのだ。
さらには、快感を得ると──ぶるり、と身体が震える。
「dada!」
一仕事を終えた、という風に筆を離そうとするシャーマン。もう私の身体に、筆の通っていない場所は無い。
ああ、そんな彼に、私は。
「んんんっ!」
ぷしゃぁ、と。おしっこを、かけてしまった。
バーバラちゃんにおしっこをかけてしまったあの日からその兆候はあったけれど、雷蛍術師にお豆さんを弄られながら蛍をうんちしてしまった時以降、これが頻発するのだ。つまり、快感を得ると……漏らしてしまう、なんていう事が。
ヒルチャール・シャーマンは少しの間唖然とした風に止まっていた。
「Yika ye!」
止まっていたけれど、突然大声を上げ、かと思えばその筆を、勢いよく挿した。
どこへ、って。
私の、おしっこの出る穴へ。
「イッ、ああああがぁぁああっ!?」
あまりの痛みに絶叫する。バタバタとのたうち回らんとするけれど、即座に抑えつけられる。ヒルチャール。大型のヒルチャール、一体に。
痛みに震え、おしっこの穴に筆が刺さったまま持ち上げられる私。頭の上に上げた状態で縛られた手と、同じく縛られた足を両手でつかまれ、掲げられる。
そして今まで背後にあったもの──グツグツと熱湯の煮え滾る鍋の上へ、持って来られた。
おしっこの穴の痛みは勿論だけど、一瞬で引き戻された死の恐怖に、今度は別の意味で震えた。
そのままココへ落とされるのか。
もうどうしようもないのか。
そう身構えたけれど、どうやら"まだ"らしい。
大きな肉を焼く時に使うような支えの棒が両脇に二柱。そこへ、腕と足を括りつけられる。
熱湯から出でる熱気が肌を灼く。"まだ"とはいえ、すぐそこだと突きつけられる。全身からダラダラと汗が出始めるけれど、塗料が落ちることは無い。
そしてその状態のまま──ヒルチャールの宴が始まった。
暑い。熱い。
いったいどれだけの時間、この状態だっただろうか。
もう汗は出切ってしまったように思う。私から落ちる汗が大鍋に入り、あるいは縁にあたって蒸発したり。ヒルチャール達は時折私の表裏を変え、まるで全面を炙るようにしながら宴を楽しんでいる。
食べる、つもりなのかな。
そうじゃなきゃ、こんな面倒なことはしないか。下拵え、かな。
熱い。熱い。
火の勢いが弱まることは無い。火加減調節専用の役割をするヒルチャールがいるのか、常に鍋は高温を保っている。しかし鍋に何か他の具材が入れられる、ということはなく、ただただ熱気を出すための装置として用いられていた。今のところは。
「Eleke mimi-a-gusha」
「Mita kundala-a-dada」
「Unu, dada」
「Unu, dada!」
意味の分からない彼らの言葉は、水分を失った私の耳に酷く酷く反響し、どんどん自分が曖昧になっていく。水が欲しい。熱い。おしっこの穴が痛い。苦しいのは嫌。気持ちいいのが良い。誰か、誰か。
朦朧としていく意識の中で、苦しいのが嫌だ、という思いが、気持ちいい事がしたい、にすり替わっていく。すり替わっていくのは自覚しているのに、止められない。生物は死の際に発情する、なんて話をどこぞの学者サマが言っていたような気がするけど、こういうことなのかもしれないと自嘲気味に笑う。
今、すごく、えっちな気分だった。
入り口付近だけしか触られていないお股のナカ。蛍術師のせいで気持ちいいと感じるようになってしまった赤ちゃんの部屋。そして、おしっこだけでなく、もう片方の……快楽を覚えるようになった、排泄の穴。
それらがヒクヒク、ヒクヒクと、何かを求めるように動いているのがわかる。
えっちがしたい。えっちなことがしたい。えっちなことを、されたい。
……私はこんな子じゃなかったはずなのに。
ううん、もしかしたら、知らなかっただけで適正はあったのかもしれないけれど。
あるいは、今、死に掛けているからかな。
わからないけど。
「んっ……」
縛られているのは両手足だけ。つまり他は自由に動かせる。
初めにしたのは、腿と腿を擦り合わせる事。すりすりして、ずりずりして、どうにか快感を得ることが出来ないか模索する。汗のかいていない場所は無いから、どこもかしこもベタベタしていてザラザラしていて、それが心地いい。
えっちになったことで屹立したお豆さんを、どうにかこうにか、挟んで、潰して、気持ちよく、気持ちよく──。
「Yaya ika kundala!」
「Yaya mimi yoyo!」
「Unu dada」
突然、宴に終止符が打たれた。ヒルチャールのシャーマンが高らかに謳い上げた何かしらの言葉に全ヒルチャールが同調し、一斉にこちらを向いたのだ。
今まさに自分だけで気持ちよくなろうとしていた私は羞恥に染まってしまうけれど、多分それどころじゃあない。
鍋の前に、先ほどの大型ヒルチャールが現れる。
大型ヒルチャールは支えの棒から私を外し、まるで神様に捧げものをするかのように私を両掌に乗せて、跪いた。
「Mita dada-a-mimi!」
浮遊感。
落とされたのだと悟る。気持ちよくなる、前に。
あぁ、死ぬんだ、って。
思った。
風が吹いた。
落とされたままの恰好で、つまり縛られ、裸で、汗でベタベタの姿で、私は空を飛んでいる。
夢、だろうか。私の「神の目」は奪われてしまったから、私が飛べるはずがない。何より今は風の翼をつけていないし、縛られている。じゃあやっぱり夢か。
けれど中々意識が終わらない。夢が覚めない。それともアレかな、グツグツの鍋に落とされて、現実の私は火傷でのたうち回って、すぐに死んじゃって……私は今、幽霊になっているのかも。だから空を飛んでいるのかも。
ふわふわとした感覚。肌を撫でる風。
飛んでいるというより、浮いている。幽霊って、こんな感覚なんだ。
「もう、大丈夫だ」
その力強い声は。
心からこちらを安心させてくれる──モンドに住む者なら、誰もが知る声。
私の憧れの人、栄誉騎士でも、そこまでの知名度は無いだろう。特徴は知っていても姿や声は知らない。そんな人ばかりだろう。
モンドのアイドル、バーバラちゃんでも、ここまでの力強さはないだろう。彼女の声は人を癒すけれど、勇気づける声ではない。
だから、これは。
私がもし、死んでいないのなら。
「遅れてしまって、すまなかった」
蒲公英騎士・ジン──。モンド西風騎士団の、代理団長その人だ。
焚火に当たる。
パチパチと燃える火はあの絶望の象徴とは違い、酷く暖かいものだった。
可能な限り集めてくれた服の断片を布へ包み、体には毛布がかけられている。汲んできてもらった水をゆっくりゆっくり、けれど絶えず飲んでいくけれど、渇きはまだまだ収まらない。
ここはまだ、ダダウパの谷。けれどヒルチャールの姿は一つも見当たらない。
当然だ。
モンドが誇る西風騎士団が代理団長が、一匹残らず片付けてしまったのだから。
「今、団員が服を取りに行ってくれている。その間、これを着ると良い」
何か連絡をしたのだろう、足早に戻ってきたジンさんが、唐突にそんなことを言った。
そんなことを言って、なんと──自分の服を脱ぎ始めた。
「げほっ、ぇほっ!?」
「大丈夫か? 水はゆっくり飲むと良い。君の身体は今水分を欲しているのだろうが、人間の構造としてそう一気に水分を摂取できるものではない。慌てなくていい」
「い、いや違って、あぁ脱がないで、やめてください!」
「あ……私の着たものは嫌か?」
「そんなことは! ない、ですけど! 脱がないでください、毛布でいいですから……」
「だが……」
「いいですから」
身を粉にする、とはこの人を指す言葉だと思っている。多分、モンドの民は皆思っているだろう。自身を省みない。献身の塊。彼女は強いから、あるいは西風騎士団を任されたから、その責務を重く重く受け止めてしまっている。
ジンさんと会話するのはこれが初めてだけど、多分、誰でもわかる事だ。
「……」
「……」
毛布一枚。その下は裸。
隣には、モンドに住む者で、特に小さい女の子なら一度は憧れるジンさんが手持ち無沙汰な様子で立っている。栄誉騎士も勿論憧れの人だけど、ジンさんは幼少の頃よりカッコイイと思っていた人だから……その。恥ずかしい、のほかに。
美しい、みたいな……ううん。
さっきまで。ついさっきまで、私が何をしていたのか。死の際に瀕し、私は何を考えていたのか。
えっちなことがしたい、だ。
今も裸で、毛布一枚で、隣には……綺麗なヒトがいて。
「はぁっ……はぁっ……」
「大丈夫か? やっぱり服を……」
毛布の下。コップを持った手をカモフラージュに、ジンさんから見えない所で、もう片方の手が動く。
くちゅ。ぐちゅ。
そこはもうびしょ濡れだった。これが汗なのか、そうでない液体なのか。それがわからない私じゃない。もう、今までの私じゃないのだ。
「ふぅ、う、んぅ……」
「顔が赤いぞ。寒いのか?」
「……はい。寒いので……ちょっと、肌を寄せてもいいですか?」
「ああ、構わない」
ジンさんは何も疑わず、私を抱き留めてくれた。油断しかない。隙しかない。彼女にとって私は庇護の対象であり、敵意も害意も何も無い。当たり前だけど、それを利用してしまう事に罪悪感を覚える。
彼女に抱きしめられた毛布の下。ジンさんの蒲公英の匂いを大きく吸って、本当に僅かな汗の匂いも嗅ぎ取って、私の匂いを付けてしまう事に申し訳なさを感じながら──お股を弄る。お股。ううん、アソコを。アソコの、ナカを。
「んっ、ぅ……んん」
「もしかして、どこか痛むのか?」
「いえ……いや、ん、はい……アツい、んです」
「熱い?」
「筆を、挿れられて、痛くて痛くて仕方なかったのに、広げられた、のが、少しだけ、ほんの少しだけ──気持ちよく、て」
「?」
自分が何を口走っているのかわからない。ただ、アソコを弄る指はヒートアップしていて、もう一つの穴も弄りたくなってきている。でも流石に両手を毛布に突っ込むのはバレてしまうだろう。そんな姿を見たら、ジンさんは軽蔑するかな。それとも肯定してくれるかな。どちらにしてもとても恥ずかしい。けど、けれど。
「ジンさん」
「どうした? 私に出来る事があれば、なんでも言ってほしい」
「じゃあ……キス、してください」
「ああ、いいぞ。……?」
理解の追いついていないジンさんの唇を、無理矢理奪う。しかし流石は騎士団代理団長、すぐさま私を跳ね退けようとして──止まった。
ジンさんの力で私を吹き飛ばせば、どうなるか。それがわからないこの人じゃない。何より目の前にいるのは怪我人で病人で、重症人だ。それを傷つけることは彼女の責任に反するだろう。
「ん、ちゅ……んん」
「ぅぐ、んむ」
「ふぅ、ぁあ……んぶぅ」
先程それを脱がんとしていたため、中途半端に気崩された騎士団服の上から彼女の胸を揉む。鍛えられているけれど柔らかく、適度な大きさで、何よりもいい匂いがする。それが私のアソコをさらに刺激して、ごぽりとした液体が出るのが分かった。
あの時私が雷蛍術師にされたように、自分のアソコを、そして屹立しあお豆さんをジンさんの身体に擦り付けていく。あぁ、衣擦れが気持ちいい。気持ちいい。あの、あの、あのジンさんで、私は気持ちよくなっている。
「あ、ぁふ……」
「っぷはぁ、ど、どうしたんだ」
「アツい、んです、アツいの、お股が、アソコが、アツくてアツくて……どうにかなっちゃう……!」
「これは……明らかに錯乱しているな」
「助けて、助けて助けて助けて助けてェ! もう、おかしくなっちゃいそうなの、お願い、弄って、私に早く快感を、えっちなことをして、お願いお願いお願──」
「やむを得ないか……すまない」
ごつ、と。
首の後ろ辺りに、鈍い音がぶつかった。
闇へ落ちる意識。
閉じて行く視界で、ジンさんがとても悲痛そうな顔をしていた。
「絶雲の唐辛子……ですか」
「うん。レデスパルさんの全身に塗りたくられていた塗料に含まれてたみたい。原産は璃月だけど、人間の調合したものにしては副作用が多すぎるかな。多分あっちのヒルチャールが作って、それをこっちのヒルチャールが受け継いで来たもの、とかだと思うよ。それで、この塗料の効果は大きく分けて二つ。身体をカーッと熱くさせる事と、水を欲しくさせる事。興奮剤、って言ってわかるかな。そんな感じ」
「……」
「だから、もし君があの時の事を覚えているのなら、罪悪感を覚える必要はないという事だ。私も気にしていないからな」
バーバラちゃんと、ジンさん。
治療はバーバラちゃんが行ってくれて、状況説明やその他諸々の立会人としてジンさんも残ってくれていた。彼女には沢山の仕事があるだろうに、放っては置けない、と。
ジンさんはこう言いたいのだろう。あの凶行は全部薬のせいだから、君の過ちではない、と。
……そう、だろうか。
確かにそれなら、鍋に掲げられていた時からえっちな気分だった事にも説明が付く。今になれば、どうしてあそこまでえっちなことがしたかったのか、されたかったのかわからない。おしっこの穴を広げられて気持ちいい、なんてのも。
ましてやジンさんの唇を奪い、その体でえっちなことをする、なんて事も。
でも、果たして本当に、そうだろうか。
それだけだろうか。
「レデスパルさんの身体に塗りこまれた塗料のほとんどは取れたけど、一部取り切れない部分もあったから、これから一週間はちゃんとお風呂に入ってね。だいじょーぶ、ずっと残るものではないからね」
「すまなかった。私がもう少し早く来ていれば、君にあんな行いをさせることも無かったのに……」
「い、いえ。ジンさんに助けられた御恩はもう一生忘れません。忘れられないと思います。バーバラちゃ……バーバラさんも、いつもありがとうございます」
「みんなを癒すのが私の役目だから! ジンも言うように、気にしなくていいからね、レデスパルさん」
「ああ……すまない、バーバラ。私はそろそろ……」
「うん、ちゃんと家まで送るよ」
それだけ、だろうか。
バーバラちゃんにおしっこをかけてしまった日。
ジンさんでえっちな気分を解消したあの夜。
そして、ファデュイの雷蛍術師にめちゃくちゃにされたあの時の事。
記憶に残る。強く。恥ずかしい思い出と共に……鮮烈に、鮮明に。
女の子と、同性と、ソウイウ事をする、ことが。
「レデスパルさん? 顔赤いけど……大丈夫? もしかして熱がぶり返しちゃったかな」
「あ、だ、大丈夫です。……ちょっと、ジンさんが……」
「ジンがどうかした? 呼び戻そうか?」
「その、かっこよくて」
「……ふふっ、そうだね、ジンはかっこいいね。私も、知ってる」
どうにか誤魔化せた。
……多分、違うんだ。確かにその絶雲の唐辛子なるものの塗料に後押しされた事は事実、なんだろうけど。
私は多分……もう、引き返せない所まで来ちゃっているんだと、思う。
ああ──シたい。
こんな感じで、何か、アブナイ気付きを得ちゃったのが四ページ目。
ヒルチャールは危険、人を食べるかも、って事も覚えた。でもあれは、本当に食べるためにやってたことなのかな……?
解読を試みたヒルチャール語一覧
※?のついている単語は憶測の成分が高いものです。
Mi 私
ye あなた
yoyo 我ら?
tomo 彼ら?
muhe 愛
dada 良い、好き
yika 悪い、嫌い
zido どこかへ行け
Nini 地獄?
nunu 寝る
biat 讃える
mosi 挨拶
Unu そうだ、肯定する?
Lawa 王
Lata 風?
La- 良い物?
Kuzi 強さ?
nye 旅?
Mqhe 争い?
mimi 愛される?
mita 前を強調?
domu 元素?
Eleka ヒルチャールor村(私達の言う人間、のようなニュアンス)
upa ずっと、繰り返す?
ika 食べる
gusha ご飯
movo 世界?
kundala 血肉、生け贄?
Yaya 神?