それはセシリアの花を摘みに星拾いの崖へ赴いた帰りのこと。
誰かが何かと戦っている音がしたから、そちら……「お前じゃ絶対に勝てないやつがいるから絶対に近付くな。絶対にだ」と言われている場所、千風の遺跡へ立ち寄った。
そーっと遺跡の縁から中を見ると、何やら巨大な……石の塊? みたいなものと戦う赤と白のお姉さんが。
一度だけ見たことがある。けどそれは、真夜中の西風教会の屋根の上というおかしな場所で、しかも月明かりに照らされて青白く彼女が浮かび上がっていたところ。当時の私は冒険者ではなかったから、それはもうお化けかと思って一目散に逃げだし……後日、シスターの一人であるということを聞かされた。
ロサリアさん。失礼ながら冷たい印象を受けてしまう、モンドには珍しい気風の人。
彼女は何故ここにいて、そしてなぜあの石の塊と戦っているのだろう。
……いや、そんなことはどうでもいいか。
私だってモンドのいち冒険者。たとえそれが依頼でなくとも、困っている人を見たら捨て置けない!
「ロサリアさん! 助太刀します!!」
「あら……さっきから覗きをしていたのは君だったのね。それじゃ、お任せするわ」
「え」
そう言って槍をしまい、帰っていってしまうロサリアさん。
あ、あれ。
えと。……もしかして私一人でこの怪物を倒せると思われて……る?
石の塊。その頭みたいな場所にある球体がピコンと光った。
あ、これ……思い出した。栄誉騎士……っていうかその隣に浮いているパイモンちゃんが作ってくれた、「レデスパルじゃ絶対に敵わないから戦っちゃいけない魔物リスト」に乗っていた魔物だ。
名前は……遺跡守衛。
──大きな手。石みたいなのに大きく伸び縮みするらしいその手が、私を掴む。
まずい。これ、抜け出せな──。
「2.3.-3.3.3.-3.3.3.-.2-3.3.-232-3.3.-3.2.3.-232-3.3-3.-2-.-33-2.3-22-3.3.-2.-232」
「え、な、なに──きゃあ!?」
持ち上げられる。そして、壊れ物でも扱うかのように私を抱き、そのまま歩き始めた。
「ど、どこいくの!?」
「2.3.-3.3.3.-3.3.3.-.2-3.3.-232-3.3.-3.2.3.-232-3.3-3.-2-.-33-2.3-22-3.3.-2.-232」
「何言ってるかわかんないよ……」
千風の遺跡。その奥。
格子の下がっているその場所へ遺跡守衛が近付くと、カラカラッと音を立てて鋼鉄の格子が上がる。
この遺跡……生きてるの? こんなに荒れ果ててるのに。
ズシンズシンと身体を揺らしながら遺跡の奥へ奥へと潜っていく遺跡守衛。背後ではまたカラカラと格子の下がる音が聞こえた。
まず……くない? これ、私、出られる?
ただ身動きすることもできず、連れられるままに待つこと数分。
湿った空気の場所……長いこと空気に晒されていなかったんじゃないかって思うような一室に、丁重な感じで座らされる。
……えと。
もしかして私、昔々のお姫様か何かだと勘違いされてる、とか?
「2.3.-3.3.3.-3.3.3.-.2-3.3.-232-3.3.-3.2.3.-232-3.3-3.-2-.-33-2.3-22-3.3.-2.-232」
相変わらず何を言っているのかはわからないけど、これ以上何かをしてくる気配もない。
遺跡守衛は私の目の前で鎮座し、じーっとこちらを見つめてくるばかり。
……なにか言わないといけなかったりする?
「えと、ここから出してください」
「……」
「命令できる……とかじゃないんだ。……じゃあ、私は帰るから……遺跡の機構をあけてくれたりしない?」
「2.3.-3.3.3.-3.3.3.-.2-3.3.-232-3.3.-3.2.3.-232-3.3-3.-2-.-33-2.3-22-3.3.-2.-232」
返事、かな? 返事だと思いたい。
じゃあ、どうして連れてこられたかはわからないけれど、脱出しよう!
──そう立ち上がって一歩を踏み出そうとした、その瞬間。
「ガッ……?」
鈍い鈍い衝撃。背中側からのソレは……遺跡守衛による拳。
「な……なん、で」
「2.3.-.-3..-23.-33-23.-.2-3.3-2.3-2.-2.3-2.3.-222-3-2.3-2-3..-2.-222-3.3-3-33.-2.3」
「きゃ、やめてっ!」
あまりの衝撃に動けないでいた私の足。それが掴まれる。左右の足はそれぞれ別の腕に掴まれて……そのまま、ぐ、と開かれた。
い、痛い。股関節、外れる……!
「2.-3.3-3.2-23-2.3-3.3-2.-3.3.3.3-3-3.3-2.2-2.-32-2.3-2.2-3.3.-2.-3.-2.-2.2-3.-3.3-3.2-2.-3.3-2.3-23-32-2.-32-3.2-3.-2-2.-3.3-2.3-2.2-3-3.3」
「やめで、ぇ……吊るさないで……」
「2.-3.3-3.2-23-2.3-3.3-2.-3.3.3.3-3-3.3-2.2-2.-32-2.3-2.2-3.3.-2.-3.-2.-2.2-3.-3.3-3.2-2.-3.3-2.3-23-32-2.-32-3.2-3.-2-2.-3.3-2.3-2.2-3-3.3」
「うぶっ!?」
両足を開いたまま、私を逆さづりにしてくる遺跡守衛。追撃とばかりに足だけを持って身体をシェイクしてくる。冒険の帰りだからお腹の中には何も入っていないけど、それでも気持ち悪い。
遺跡守衛はしばらく私の身体を振ったあと、すん、と停止した。
……うそ、動力切れ、とかじゃないよね。頭に血がのぼる……私、このままなんてことないよ、ね?
けれど、どれほど懇願の目を向けようと、遺跡守衛は動かない。
そろそろ限界が近い。……仕方ない。怪我覚悟で……アレを使おう。
神の目に意識を集中させる。
いつも使っている飛行時のアシスト風──元素スキルではなく、頑張って頑張って編み出した、まだ開発中の攻撃。
元素爆発──!!
「33-2-232-2.-3..-223-3.-3..-2.3-2.-322-3.-33.──!!」
「え」
どす、と……身体が地面に叩きつけられる。
あまりにも強い痛みに、何が起きているかの判断ができなくなる。
……けれど、痛みはそれだけにとどまらなかった。
胴体が万力みたいな力で掴まれて、開きっぱなしになったお股に……決して弱くない打撃が行われる。
「あ、がっ……」
「2.-2.3.3-3.3.3-3.2.3.-2.-2.-3.-3.3.3.-2.3.-3.3.3.3.3.3.-2.3.-2.3.2-2.3.-.2.2-2.-3.3.-2.-32.-3.3.-.3.3-2.-2.2-3.-2.-3.3.3」
「っ、え──」
ぞぶ、と。
私の……お股の穴に、冷たい冷たい管のようなものが突き刺さった。
「い……痛い、痛い! 裂けちゃうよ!」
一切濡れていないソコ。けれど、そんなことは知らないとばかりに侵入してくる管。
スクロースさんによってあの塗料の影響は完全に抜かれているから、窮地でえっちな気分になる、なんてこともない。ただ痛くて痛くて、尚も突き進んでくる管が恐ろしくて。
「2.3.2.3.-2.3.-3.2.3.3.-3.2.-3.3.3.2」
「あ……ぇ、れれ、れ、れ?」
赤ちゃんの部屋付近で何かぬるぬるしたものが噴射されるのがわかった。それが注がれると同時、痛みがすぅっと引いていく。さらに呂律が回らなくなる。
とぷとぷと注がれていくそれ。匂いは……ググプラムと多分スライムの分泌液かな? ……スライムの分泌液?
「あぶ、あ、ばば、ぶ」
四肢の力が失われる。スライムの分泌液は皮膚に触れたら激しい炎症を起こす危ないものだ。それは以前の雷スライムで嫌というほど学んだ。そんなものが赤ちゃんの部屋手前に注がれているとか、あっちゃならない。
けど、身体がいうことを訊いてくれない。
加えて。
「か……」
か。
か……。
か、ゆ、い。
かゆい。かゆい。痒い。
あ、穴の中。かゆい。痒い!!
「おぶ!?」
ずしんとまた衝撃。しかも今度は一回じゃない……ずしんずしんと、何度も何度も。
何度も何度も、私のお股に、遺跡守衛の管が出入りする。
「2-2.3.3.3.2.3-3.2.3.3.-3.3-2.3.3.2.-2.3.3.2.3.2-2.3.3.3.3.2……」
「あっ、あっ、ぶ、げ、ぁ、ん……んっ、んぅ! んぁんっ!」
赤ちゃんの部屋と胃を突かれて、苦しいだけのはずなのに。
さっき注入された混合液のせいか……快感を覚え始めている私がいる。
痒みを取ってくれているのもその一因。
だらんと垂れ下がる四肢。そうなるとまるで、遺跡守衛が自身の管に私という筒を刺して、左腕で掴んで……扱いている、みたいな絵面になる。
もの扱いをされているような感覚。ああ、私って、遺跡守衛の管を磨くためだけの道具なんだな、って。そんなことを考える。
神の目。……ううん、もうそんな気力起きない。
激しいピストンと真っ白になっていく頭の中。吹き荒れる快楽の暴風に耳を傾ければ、私の意識なんてあっという間に──。
香ばしい匂いに目を覚ます。
う……お股が痛い。痛いし……なんかぬるぬるする。
「ようやくお目覚め?」
「……え、あ。……ロサリアさん?」
「おいらたちもいるぞ!」
「あ、え、あ」
パチパチと音を立てる焚火。眠っていた私を囲う三人。
咄嗟に居住まいを正そうとして……全身を襲う倦怠感と激痛に顔を顰める。
「あ、まだ動いちゃダメだぞ! 酷い傷だったんだから……」
「ごめんなさい。このコとよく行動を共にしていると聞いて、君の実力を勘違いしていたの。今回の件の全責任は私にあるわ……」
「ぅ……い、いえ……私が出しゃばらなければ、そもそも……」
「ロサリアを助けようとしたんでしょ?」
「……はい」
「じゃあ、良いことをしたんだよ。それは誇っていい」
優しい。私の憧れの人は、いつもいつも優しい。
こんなに優しくて、可愛らしくて……それでいて栄誉騎士なんてすごい肩書きで……。
……比べて私は。
「にしても、おいらが上げたおまえが戦っちゃいけない魔物リスト、どっかやっちゃったのか?」
「対峙してからそうだって気付いて……。ごめんなさい、パイモンちゃん。せっかくくれたのに」
「う……そっか、おいらの絵じゃ伝わりきらないか。誰かもっと絵のうまいやつ……アルベドとかに頼んだ方がいいかな」
「ううん、そもそも私が強くなればいい話だから……んっ」
なんとか身を起こして座位に移行する……と。
一瞬快楽が襲ってきて、ヘンな声を出しかけてしまった。
今のは。
「無理しないでいいのよ。君の体内にあった原始的な弛緩剤……ググプラムの鎮痛効果をスライムの分泌液で過剰反応させる混合液は取り除いたけど、効果の全てが除去できたわけじゃないから」
「でも珍しいよね。遺跡守衛は一定箇所を守って、近付く者は全員殲滅がセオリーなのに……」
「ええ、この子については無力化に留めていたし、私達が辿り着いた時、遺跡守衛はこの子を守ろうとした。……何か秘密があるのかしら」
「心当たり、ある?」
「無いです……私は一般モンド城民なので……」
やっぱり、最初の方丁重に扱われたのは勘違いじゃなかったらしい。
豹変した理由は……私が逃げようとしたから、なのかな。
「遺跡守衛に守られるなんてすごいことだぜ! レデスパルの唯一の才能かもしれないな!」
「パイモン」
「え? ……あ! ち、ちがうぞ! それ以外才能がないとか言ってるんじゃなくて……」
「迷惑をかけた私が言うのもなんだけど、冒険者、そして戦闘者としての才能は無いに等しいんじゃない? 少なくとも窮地に陥って、最後まで抵抗するのではなく諦めることを選ぶようなコには……」
う。
……冷たい、突き放したような言い回し、だけど。
その通りだ。その通りだし、多分ロサリアさんは……そんなんじゃ危ないから冒険者なんてやめちゃいなさい、と言いたいのだろう。
「だったら……そうだ、ロサリアが稽古をつけてあげればいいんじゃないか?」
パイモンちゃんの言葉に、露骨に嫌そうな顔をするロサリアさん。
「無理言っちゃダメだよパイモンちゃん。西風教会のシスターさんはみんな忙しいんだから……」
「それなら大丈夫だ! ロサリアは確かにちょっと忙しいけど、基本サボり魔だからな!」
「ねぇ、蛍。その白フライム討伐してもいい?」
「いいよ」
「良くないだろ!?」
そもそもの話をするなら、栄誉騎士は片手剣、ロサリアさんは長柄武器。それに対して私は法器。戦い方なんて教われるものじゃない。
「……バーバラとは、知り合い?」
「え、あ、はい。少し前に……」
「なら、今回の謝罪も兼ねて、後衛としての戦い方や立ち回りについて教えてもらえるよう頼んであげる。そして、そうなれば必ず言われるはず。一人で戦うのは無謀だ、って」
「そーだぞ! 別に冒険者をやめろって話じゃなくて、一人で突っ込んで前線を張るみたいな戦い方をやめろって話だ! そういう奴はほかにもたくさんいるしな!」
「最終的に選ぶのはレデスパルだけど、私やロサリアみたいな近接戦闘ばかりが戦いじゃないから、見聞を広める意味でも学びになると思う」
「皆さん……! ……ありがとうございます。じゃあ、ロサリアさん。お言葉に甘えさせてもらいます!」
そんな感じで。
此度の旅行記の一ページは、めでたしめでたしに──。
終わらなかった。
荒い呼吸をそのままに、夜のモンド城を走る。
何度も何度も、息が切れても関係なく。
「……なにをしているの?」
「ひゃ……あ、あ、ロサリアさん」
「こんな夜中に全力疾走をして。バーバラの指導……? いえ、あのコが走り込みなんて言うとは思えないけど」
ま……まずい。
なんて言い訳をしよう。
「バーバラちゃ……バーバラさんに何かを言われたとかじゃなくて……えとその、走りたくなっただけで」
「君、病み上がりなこと忘れてないでしょうね。そうでなくとも遺跡守衛にあそこまで痛めつけられていたんだから、今日明日くらいは休みなさい」
「……むり、です」
「一日くらい休んだって強さは変わらないし、休む時に休めるのが強い冒険者というものよ」
「無理なんです……その」
もじもじと太腿をすり合わせる。
あ、あぁ……!
「……くて」
「? 聞こえなかった。もう一回言って」
「痒くて! ……遺跡守衛に注入された液体が……ずっと残ってる、のか……お腹の中、あつくて、かゆくて……こうやって走って揺らして擦らないと、おかしくなっちゃいそうで……」
「……」
まくし立てるように言えば、ロサリアさんは停止した。
情報を理解できずに止まっている。そんな感じだ。
やがて。全てを嚥下したかのように、彼女は。
「……ごめんなさい。薬を……抜くのは、本職じゃないというか。自分に関しては可能だし、他者に毒を盛るのも得意だけど、治療は……」
「うぅ、ううっ……痒い、痒い……あ、っあ、お外なのに、うぁ……」
私に強い自制心なんてない。
痒くて痒くてたまらないと……指で掻きたくなってしまう。
でも場所が場所だから、家じゃ激しくできなくて、だから走って誤魔化していて。
「……責任は取る。こっちに来て」
教会の前で、あまりにも罰当たりな行為をしようとして……ロサリアさんに
ぐちゅぐちゅと淫猥な音が響く。静謐な教会の中。
「あっ、あっ、あっ」
「……」
氷のような無表情のロサリアさんと、彼女の手にある長い棒。
そして……その先端を自身の股座に突き入れてもらって、悦楽の表情を浮かべているのが、私。
「ぎ、ぎもぢっ……ああっ……!」
「……」
とんでもない姿を見られていることへの羞恥と痒み解消による快楽。
そして……その、本人にそのつもりはないのかもしれないけど、下劣なものを見ているみたいなロサリアさんの見下しの表情が……う、その。
「イ……っ!」
「……まさか、絶頂したの?」
「……ごめ、なさ……きもち、わるい……です、よね」
「若干引きはしているのは事実だけど。……ああ、でもそれ、効果的かもしれないわ」
「え……?」
「子宮は痒くないんでしょ? 痒いのはあくまで膣内だけ。なら、除去しきれていない弛緩剤を自分の分泌液で流し出してしまえばいい」
「それは──ひぅ!?」
どちゅん、と。
強く強く突き入れられる棒。さらには棒の温度が下がっていくのがわかった。……まさか「神の目」? こ、こんなことに使うの!?
そして、今まで無表情だったのに、どこか嗜虐的な笑みを浮かべるロサリアさん。
「ただただナカを掻いてあげるだけだと終わりが見えなかったけど、イかせまくれば早く終わるというのなら、徹底的にやってあげる」
「ぁ、ぁぁ、あっ、あっ、ああっ、あああっ!」
遺跡守衛の機械的なピストンとは違う、私の反応一つ一つをくみ取ってのピストン。
的確に気持ちのいい場所を突いてきて、けれどどれだけイってもやめはしない。
「これは医療行為だもの。好きなだけイきなさい」
「し、ひぬっ、ひんじゃぅっ!」
「大丈夫、そういうラインの見極めは得意だから。──イき過ぎて死の淵を彷徨うことになっても、必ず引き戻してあげる」
──旅行記に刻まれる一ページ。
色々省いて……その。
ロサリアさんと、色々仲良くなったことだけ、記述しておこうかな。