レイシフト先は1メートル見えているかどうかという濃霧の中だった。
マシュがロマニに通信を入れて状況を伝える。
「レイシフト成功しました。これは視界が阻害されるほどの状態です。霧?もしくは煙でしょうか。凄い濃度です」
「ただの霧や煙ではないようだ、魔力反応がある。これはちょっと濃すぎるんじゃないか、大気に魔力が充満、いや大気の組成そのものに魔力が結び付いていたクラスだよ!!」
ロマニはそういうが、静乃もマシュも悪影響は感じていない。
「断言しよう、この霧は生体に有害だ。通常の人間が深く吸い込めば命に関わる。魔術師や怪物、幻想種やサーヴァントであれば別だけど。マシュ、静乃ちゃん。本当に体は何ともない?」
Dr.ロマニの計測データによるとこの霧は影響が出ないのが不自然なほどらしい。
「私は問題ありません。先輩はどうですか?」
「問題ない、活動可能だ」
だが、何度聞かれても何も変化はないのだ。
「ううん、マシュと結び付いたサーヴァントの影響で毒耐性の加護が与えられているのか、霧の方に原因があるのか。お互いに相手の健康状態の確認を怠らず、慎重に行動して欲しい」
「勿論だ。一先ず、道なりに歩いて現地の人に話を訊くことを目指そう」
「こちらの観測データ上は、魔力の霧に包まれた危険な都市と化している。周辺の様子はどうだい?犠牲者は見かけられるかい?」
「いいえ、ドクター。往来はまったくの無人です。まるで廃墟のようです」
「生体反応はある。どうやら、ロンドン市民は屋内に閉じ籠っているようだね」
「一刻も早く解決するべきだ」
静けさに支配された町は不気味そのもので、ロマニの言葉に扉を叩くも反応はない。
何時間も霧の中を歩き続けていて気が滅入ってくる。
だが、私の憧れる英雄たちならば、このぐらいで諦めるわけがない。
早くターミナルを設置して、状況を打開して貰いたいが、どこかに適した場所はないだろうか。
「先輩。聖杯を入手、破壊すればこの異常なロンドンの存在そのものがが修正されますし頑張りましょう」
げんなりとする私をマシュが励ましてくれる。
「っ!?」
不意にぞわりと纏わりつくような視線を感じる。
「どうかしましたか、先輩?」
「マシュは......。今、視線を感じなかったか」
「視線、ですか?」
マシュは辺りを見渡し、不思議そうに聞き返してくる。
「いや、待った。生体反応だ」
突然、ロマニから警告が入り、身構える。
すると霧の先から、全身鎧の騎士が現れる。
顔をすっぽりと覆うフルフェイスの兜で表情は窺えない。
「なんだ、おまえら。こんなトコで平然としてるんだ。どうせまともな人間じゃないんだろ」
兜とどちらとも取れるハスキーな声で性別分からない騎士は剣を抜いて問う。
「じゃあ、どっちだ。敵か、味方か」
霧のせいで人間かどうかも識別できず、ロマニが戸惑っているうちに騎士は興味を失って離れようとする。
「待て。お前はこの都市に何が起こっているか、知ってるのか!」
先ほどの視線を送るような人物には思えなかったが、少しでも情報が欲しいので追いかける。
「待ってください、先輩っ!何か音がしますっ」
「動体反応ありだ。魔力反応は相変わらず探知不能!」
「音、接近しますっ」
音の持ち主は古風で無骨なデザインの妙な機械だった。
それは私たちに襲いかかってきた。
「下がってください、先輩っ」
「頼んだ、マシュっ。私も援護する!」
マシュと連携して、数十分かけて機械を破壊する。
「なんとか突破しましたが、先ほどの戦闘で少女を見失ってしまいました」
通信からロマニが納得したように言う。
「あんなのが霧の中にいるんじゃ、ロンドン市民が出てこない訳だ」
「奇妙な敵性生物でした、いえ、機械のように見えるので生きていないのでしょうか。ひとまず、敵性体と仮称しましょう」
「二人ともっ、動体反応が多数接近してくる!警戒を」
霧の中から現れたのは、十数体もの敵性体だった。
「そんなっ!さきほどの個体が呼んだんでしょうか」
「なんとか凌いで撤退してくれっ」
マシュが敵性体の攻撃を防いでくれているうちにロマニの報告を聞きながら囲まれないようにじりじりと下がる。
ーーこんなとき......あの人が居れば......
近くで、キンッ、とマシュの盾とは違う金属が弾かれる音がする。
「大事ないか?ここを切り抜ける、俺に着いてこい」
そういって、霧の中から現れたのは、
現れ......たのは......、どうみても私が最も尊敬する英雄、
次回、1/8 0時
早くじんたん出したい(゚∀。)y─┛~~