※この作品はR-18です。

FGO 第四特異点 仙界魔霧都市ロンドン   作:吉貝 雷

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第十二節 崑崙宮殿3/3

「柊、四四八さん......」

私は今度こそ都合の良い妄想などではない本当の英雄を前にしていた。

彼から聞きたいこと語りたいことは山ほどある。

私の夢(妄想)と共にいたときに心行くまで語り合ったはずだが、自然と言葉が溢れそうになる。

 

「全く。石神静乃が必要でもなきゃ使う気にならないわね

柊四四八、状況は理解できているでしょう。さっさと、そこのマスターと黄錦龍(ファンジンロン)を倒して来なさいよ」

「サーヴァントであることと俺の経歴が影響しているんだろうが、二つの歴史を生きた記憶があるというのは混乱しそうだ。

しかし、盧生は全員、どちらの時代でも変わらないな。冬木の聖杯戦争のおかげと言って良いのか分からないが、こちらでは朔の日は起きなかったんだな」

「そんなの私が一瞬の健康(ファンジンロン)より一生の健康(聖杯)を求めたからに決まっているじゃない」

 

会話に混ざりたかったが片方の歴史しか知らない私には、ただ聞いていることしかできなかった。

「あの、緋衣南天さんと柊四四八さん。柊四四八さんがいれば、倒せるんですよね。黄錦龍(ファンジンロン)が消えて、空に城が出現したんですが」

「戦陣館(こっち)の方が人口は多かったんだから、出来て当然でしょう?石神静乃が嵌まってなければ私もそいつも必要なかったわね。

私から戦陣館(こっち)を知られたのが原因だけど、言っておくけど、別に裏切りとかではなく、縁の問題だから」

 

「ほら、黄錦龍(ファンジンロン)の子孫、石神静乃。

あいつを現実に引き上げられるのはあんただけよ、さっさと一刺しいれてらっしゃい。

後方支援(まじゅつし)に毒されているから、燻る羽目になってるのよ。

その腰の釵(さい)はただの魔術触媒じゃないでしょう?」

 

むこうの歴史を知る二人に背中を押され、私は空を駆けて、城を目指す。

 

辿り着いた城の中では相変わらず微睡んでいる黄錦龍(ファンジンロン)が居た。

全く身構える様子のない相手に私は釵(さい)を突き刺した。

 

黄錦龍(ファンジンロン)は、子供のように首を傾げて釵(さい)を見下ろして、自身に何が起こったのか理解できずにいる。

 

「......なんだ、これは?」

 

常時酩酊、ひたすら不明。生来の中毒者である黄錦龍は、言うまでもなくまともな感覚を持っていない。触覚はほとんど機能しておらず、中でも痛覚に至っては完全な無だ。

 

何をされても痛くない。その意味さえ正確に理解していないのだから、悪意や敵意もやはりまともに取り合わない。

 

愛い、愛い、実に微笑ましいと、勝手な解釈のもと自己完結していたのは、無論のこと幼年期からの習性である。

 

常人から見れば不死身の化け物であったろうし、だからこそ彼は伝説のギャングスターと呼ばれるまでの者になった。

 

「これが、痛み......?」

 

盲目の仙境の唯一の亀裂。

異なる歴史に刻まれた英霊としての弱点。

黄が決して目を逸らせない家族による一刺しは黄錦龍(ファンジンロン)を夢から引き摺りだした。

 

「......馬鹿な」

 

ただただ、釵(さい)を見下ろしていた彼は、やがて片手で顔を覆うと天を仰ぎ失笑した。

 

「ふはっーーーー」

 

そして、彼の目は初めて真に柊四四八を見る。

蒙昧(もうまい)な閉じた理想を掲げたまま。

 

「そうか、そうだよな、もう逃げる訳にはいかんよな。俺はおまえを、まだ救ってなどいないのだから。

幸せになりたいのだな柊四四八。それで俺を探していたというわけだな。まったくいつもいつも、いつもおまえは怒っているのだものなあ......、可哀想に。

うふふははははははははははははっーーーー!」

 

私たちは今度こそ倒すために構える。

 

「来るわよ、盧生お得意の善意の押し売りが」

既に決着がついたかのように落ち着き払った彼女がそう言ったのとほぼ同時に、黄錦龍(ファンジンロン)が動き出す。

 

『そんなこと言ってないで手伝ってくれないかな!?』

「はあ?私とあいつはお互い宝具の相性が悪いし、もう総力で当たる必要自体ないわよ。なんなら柊四四八だけで充分なんじゃない」

 

「だったら、こっちで魔霧を散らすの手伝ってくれませんかねぇ!これ絶対皆様に影響出ますって」

「放っておけば?便利よねぇ、人理修復で全て元通りなんて。こっちじゃもうひと悶着起きたってのに」

「そうやって調子に乗ると痛い目みるんですよ!一緒に呼ばれた仲じゃないですかっ、ご主人様が薬漬けなんて嫌でしょう」

「私のマスター、あっちのヤク中なんだけど」

 

私の背中を押してくれた彼女は既にこの戦いへの関心を失っているようだが、まだ戦いは終わっていない。

 

「行くぞ、マスター。あの馬鹿を止めよう」

「ああ」

私は柊四四八さんの隣に立った。

マシュは困ったような顔をしながらも私の横についてくれている。

 

「救ってやろう、おまえたちすべて。

ああ俺は、皆が幸せになればいいと願っている。

 

人皆七竅有りて、以って視聴食息す。此れ独り有ること無し。

 

太極より両儀に別れ、四象に広がれ万仙の陣。

 

宝具(終段(ついだん))四凶渾沌(しきょうこんとん)鴻・鈞・道・人ィィン(こう・きん・どう・じん)!」

 

Battle▶▶▷

黄錦龍(ファンジンロン)(ルーラー) LV1

スキル[酩酔体質EX][盧生(仙)EX][協力強制(夢)A]

宝具『四凶渾沌(しきょうこんとん)鴻鈞道人(こうきんどうじん)』

 

鴻鈞道人(こうきんどうじん)LV70

スキル[協力強制(夢)EX][仙王EX][異界の神EX]

宝具『退廃の桃源郷(マアナ・ユウド・スウシャイ)』

 

開始時「四凶渾沌(しきょうこんとん)鴻鈞道人(こうきんどうじん)」黄錦龍(ファンジンロン)チャージ最大

3ターン目以降「仙境の窓」無敵不可 対象:黄錦龍

 

Finish▶▶▶

 

「すべては幻、夢から夢へ。

あれは"無い"ものだ。まともに見るな、気が狂うぞ」

 

「ああ、そして彼らは救われた。いいぞ、いいぞ、輝ける未来よ、降り注ぐ夢が見たい。痴れた音色を聴かせてくれ」

 

勝手なことを言い、げらげらと痴れた笑いを放ちながら、黄錦龍は喝采していた。彼の背後で蠢くモノもまた然り。

絶望的に、致命的なほど、彼我の世界は交わらない。

 

「どうした、来いよ。おまえはいつもいつも怒っているのが哀れでならん。何をそんなに穏やかならぬ心で苦しみながら生きているのだ。

要するに、こうなのだろう?おまえは人間が嫌いなのじゃあないだろうか。

 

おまえが思うおまえにとっての世界では、おまえ以外の人間は度し難い愚か者で溢れており、それが腹立たしくて堪らんのだと、ああ、実になんと救われぬ劫の持ち主であることよ。

 

俺もおまえたちが哀れで哀れで堪らない 似た者同士か?なるほどなあ、これが正義の味方というものか。

おまえたちは俺に逢いたくて、逢いたくて逢いたくて救われたくて、ゆえにここまで来たのだな。まったく、なんと愛い奴ーー抱きしめてやろう。

 

気楽に吸えよ、おまえのためなら幾らでも用立ててやる。崑崙より羽化登仙に至れば、殺戒を犯して悩むこともない。

天数などものの数ではないのだから、仙丹で道《タオ》を極めればーー」

 

私たちの攻撃を防ぎつつ白痴の王は破顔した。

 

「世界は薔薇色に輝いて見えるぞ」

 

僅かな邪気も驕慢も、嘲りも何もない心からの善意、それがゆえにどうしようもなくおぞましい。

妄想に生まれ妄想に生き、そして他者を妄想の中へと引きずり落とす。

太極図瞑想など生まれたときからやっている狂人で、かつ聖人だからこそ黄錦龍は普遍の盧生なのだろう。

 

「まったく、よく喋る根性なしだ」

 

いかに非暴力、武威の面で最弱の盧生らしいが、やはり盧生は盧生である。

容易く崩せるような甘い循法の持ち主ではない。

 

だが、既に無敵のタネは割れ、痛みに対する拒否感が黄錦龍(ファンジンロン)の不死性を削いでいく。

 

そして、宝具でも何でもない柊四四八の拳が黄錦龍(ファンジンロン)の霊基を崩した。

 

倫敦から魔霧が消えていく。

黄錦龍(ファンジンロン)によって曖昧になっていた位置関係は正され、空中の城に居た私たちは地上に立っていた。

 

後は消滅を待つだけの身である黄錦龍(ファンジンロン)もまた霊基を崩しながら、地面に寝そべっている。






次回、また一回休みして、5/23 0:00の投稿です

残すは後二節、至らぬところの多い拙作ですが、宜しければ最後までお付き合いください
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