※この作品はR-18です。

煌めく花壇に注ぐ汚穢   作:虫饅頭

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2020年4月頃作成
メタネタ
花騎士関係ヴァーチャルユーチューバーあり
機械姦
人体改造
苗床


産華

 白光に満たされた空間の中、いつの間にか少女はそこに居たことを自覚した。

 大理石のような、しかし異質な感触の壁の建築物。壁に備わる極めて大きな硝子窓の向こうには、真緑色に塗られた外壁に金属質な謎の装飾が鏤められた無機質な塔が無秩序に並ぶ。それらの塔からは透明な管が無数に生え、遥か天上に繋がっていた。

 窓から上方を見上げると、少女の居る建物からも管は大量に伸びている。繋がれた先を見定めようと目を凝らしても、雲一つ無いにも関わらず途中から輪郭が曖昧になっており、果てを確認することは出来なかった。

 

「なんなの、ここ…」

 

 何故自分がここにいるのかさえ分からず、不安気に呟く彼女は、新人花騎士のメコノプシス…俗称メコといった。

 

「えっと…私、騎士学校を卒業して、騎士団に配属されて…会議に行こうとして………?」

 

 曖昧模糊とした記憶を定かにするべく確認するが、逆に困惑が膨れ上がる事となる。

 記憶が不自然なまでに途切れているだけでなく、同僚である花騎士らや騎士団長の顔と名前が思い浮かばない。それどころか、騎士団でどのような生活をしていたかが一切思い出せない。

 頭を抱えるメコだったが、遥か天上からの急な異音により、窓の外……建築物から生えた管の先に意識を向けさせられる。

 細かく硬い物を大量に叩きつけているような音と共に、管の中を大量の粒が滑落してきていた。

 世界花の加護を得ている彼女の視力は、どうにかそれの正体を判別する。

 

「種…?」

 

 夥しい量の植物の種の波は、彼女の居る部屋の隣室へと流れ込む。

 ややあって、隣室へと通じる重厚な鋼の扉の先から、何重にも重なる甲高い音が響いてきた。

 くぐもった女性の悲鳴にも似た音に、メコの背筋は凍りつく。世界花の加護により、第六感とでもいうべきものが強められているのかもしれない。

 改めて部屋を見渡すが、今居る所から外部と連結しているのは怪しい音が漏れ出すその扉しかない。

 このままじっとしていても状況の好転は望めず、仕方無しに草色の扉へ近づく。途端、彼女の接近を感知した扉は自動的に開放された。

 

「なに、これ…?」

 

 自動扉に驚愕したのも束の間、その先で自身を出迎えた謎の光景にメコは困惑した。

 先の部屋より数十倍はありそうな遥かに広大な空間に並ぶ、途方もなく巨大な肌色の球体の群れ。そして屋外から伸びた透明な管がそこに突き刺さっている。

 恐る恐る侵入し、肌色玉に触れたメコは眉を顰める。色から想像出来た事ではあるが、実際それらは人間の皮膚と同じ触感をしていた。掌を通じて伝わる温感も人肌程度。それだけではなく、まるで心臓の鼓動のように、定期的な脈動が感じ取れた。

 もしやこれは何かの生き物なのでは。不気味過ぎる外見からそうであってほしくないと思いつつ、メコにはそれが正解のように思えた。

 あまりの気色の悪さにこの部屋を離れようと思い、自身の入ってきた扉の反対側に存在する、銅色の板の噛み合わさった扉と思しきものへ近づく。想像通り、胴の扉は先の草色の扉より重厚な音を立てて開いていく。

 そして彼女が肉玉部屋から去ろうとした瞬間、ついさっき聞いた細かいものが大量に叩きつけられるような音が頭上から響いてきた。

 反射的に音の方を見るメコ。その目の前で、種らしき大量の粒が複数の肉玉の中へ分割されて流れ込んでいき。

 直後、肉玉達から発せられた何重もの凄まじく甲高い爆音に、一瞬意識が遠のいた。

 

「な、んて、凄い、音…」

 

 上方から反響してくる音に合わせ、肉玉は内側から突き上げを食らっているかの如く蠢き、やがて種が入っていった穴から、何かがその身を露にする。

 それぞれの肉玉からテンポ良く吐き出され、ゆっくりと管を上がっていくものの群れを見て、メコは息を呑む。

 

「あ、れ…にん、げん…?」

 

 どう見ても人間だった。

 赤い髪に赤い露出の多い服を着て、スレッジハンマーを抱えた豊満な女性。桃色の長髪、桃色の服に弓を携えた胸の大きな女性。桃色の短いツインテールに騎士学校から支給される制服を纏い、小振りな弓を持つ少女。他にも何種類か。

 ある程度の種類はあるが、それぞれの肉玉から出た人間らしきものは同じ顔、同じ体格、同じ服装をしていた。誰もが眠ったように目を閉じたまま、整然と管の中を吸い上げられていく。

 メコは面識が無い故に気付かなかったが、産出されている女性らは、その全てが花騎士だった。俗に、草色鉢の加護と言われる、世界花の加護の中でも低位の加護を得た花騎士達。

 人間を造る工場。そんな言葉が頭に浮かび、酷く生命に対して冒涜的な響きに吐き気が込み上げる。害虫の中には、人間を攫って苗床にする種もいると言われているが、それに匹敵する程に命を踏みにじる行いだ。

 悍ましさに視線を逸らした先、奇妙なものが視界に入り、ろくでもないものに違いないと理解しつつも注視してしまう。

 緑色の髪で二本の剣を抱えた花騎士が産出されており、それらを吐き出す肉玉の上にもう一つ、他の玉同様に管が繋がった小振りな玉が連なっていた。

 その隣に全く同じ姿の大小肉玉が並べられ、そちらの大玉の中からは薄桃色の髪の少女が、魔導書を抱えて産み出されていく。

 それらは大小の玉の連なりというだけではなく、それぞれの玉に謎の貼り紙が付けられている点も他と異なっていた。

 小玉の貼り紙には『金鉢版の為注意』、『バルブは華麗石ガチャの時のみ解放して下さい』、『チケット使用時には管理者への報告を欠かさないで下さい』などと書かれ、大玉には『石ガチャの際にはバルブを閉めて下さい。草鉢混入クレームの原因となります』という意味不明な一文があった。

 直後、ピーピーという聞いた事も無い奇怪な音が響く。珍妙極まるものが多い害虫の鳴き声ともまた違う、金属的とも表現出来る音だった。

 そして小玉へ突き刺されている管の中を、大量の華霊石が流れ落ちてきた。

 緑髪の花騎士を産む大玉と繋がっている方の小玉へ石の群れが侵入すると、上方から再び甲高い音が…否、明らかに人間の声、女の嬌声が聞こえ、己の予想と現実が最悪の形で合致してしまった事に恐怖するメコの背筋を凍らせた。

 

「ほっぎょおおおおぉぉぉぉぉお! お゛う゛ぉぉぉぉぉお゛お゛おおおおお!」

 

 小玉はぼこぼこと表面を隆起させ、それが収まると密着する大玉同様の、緑髪の花騎士……ミントを吐き出していく。尤も、その武具や衣装は、小玉から出てきた個体の方が、遥かに高級さを感じさせるものではあったが。

 すなわち、大玉からは草鉢のミントが、小玉からは金鉢のミントが産み出されているのだ。恐らく隣の肉玉…薄桃色の髪の花騎士、シクラメンを産む大玉と連なる小玉からは、金鉢加護のシクラメンが産まれるのだろう。

 

「どうして酷いこんな事…止めさせないと」

 

 此処が人間工場であると気付かされたメコは、先程までとは少々異なり、嫌悪感と嘔気に顔を歪めながらも、その瞳に悲哀と義憤を灯していた。

 悍ましい事実、人間が虐げられていると知らされた事が、花騎士としての矜持を刺激し、恐怖を凌駕したのかもしれない。

 しかし今彼女が出来る事は何もない。経験の少ない新人で、且つ単身で武器も無く、眼前のものの動作機構すら判然としない。

 自らの騎士団にどうにかして帰還し、顔も思い出せないがきっと正義の心を持っているであろう団長や同僚の花騎士らを連れてくる。それが彼女の実行出来る一番現実的な救助方だ。

 故に、後ろ髪を引かれる思いで肉塊達に心中で謝罪と絶対助けるという宣誓をしつつ、銅色の扉の先へ進行した。

 そして、短い通路の先で目に入ってきた光景に微かな呻きを漏らし、立ち竦んだ。

 扉の真ん前に設置された肥大化人体。先の部屋の玉より一回りほど小さいこれもまた先のミント製造機共と同様に小玉の肉塊と繋がっていて、謎の貼り紙も貼り付けられていた。

 しかしその所為でメコがたじろいだ訳ではない。

 肉塊から幾つも吐き出され、管の中を登っていくもの共が、面識は無くとも見知っている相手、ウィンターローズの女王、ノヴァーリスだったからだ。

 

「なんで…ウィンターローズの女王様が、こんなにたくさん…っ」

 

 肉玉の中から流れ出ていく大量のノヴァーリスの姿に、言い表しきれない恐怖と悍ましさが溢れ出す。

 そして世界花の加護で強化された視力は、不運にも、ノヴァーリス達を吐き出している肉玉の上端に位置するそれの存在を気付かせてしまう。

 目を疑い、自身の正気を疑い、それが現実であると理解したメコの足が震え、へたり込む。

 肉玉の上にあるのは、人間の頭だった。ノヴァーリスの頭だった。

 花騎士を吐き出す肉塊は、人知を超えた改造によって、極限以上に肥大させられた花騎士そのものだったのだ。

 

「ごぴゅぷっぎぎぇェエエぇっ!! ぼべへぇぇぇえええ!!」

 

 まともな言葉は一切聞こえない。野性動物の鳴き声の方が万倍整然としているだろう、悲惨な咆哮。

 これは本当にウィンターローズの女王様なのだろうか。女王様に見せかけた別のなにかでは。メコの脳内を当然の疑問が流れる……が、彼女はその考えを一瞬で放棄した。

 眼前の女性らが本物だと確信しているのではない。単に、この肉塊共が花騎士であるかどうかの真贋など、この地獄が現実の光景である事実の前には意味が無いからだ。

 逃げなければならない。自身が助かり、人間工場の犠牲者達を救う為に。恐怖を訴える本能と花騎士の本懐を混ぜ合わせ、メコの意識は銅の部屋の端にある銀の扉に吸い寄せられる。

 その先に本当に逃げ道があるのか、という疑問から目を逸らし、どうにか立ち上がり次なる部屋へ進行する。

 部屋へ到達すると、それまでとは違う、傾聴すればなんと叫んでいるか解りそうな悲鳴がメコの耳を襲った。

 

「も゛うじみでい゛い゛でずぅぅぅ! ごんな゛あああ゛あ! い゛や゛あ゛あ゛あああ゛! だじゅげりぇ、れい゛ん、り゛り゛ぃぃぃぃ!」

 

「ほぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! わら゛しもぉおう゛じゃらひい゛ぃ! あだま゛お゛がじぐなっれ゛、お゛う、しっがぐぅぅぅ゛うう!」

 

「あがっお゛ぐげぇぇ゛ぇぇ! い゛や゛ああ゛あ゛あ! ゆ゛るじで! ごべんだざい゛も゛う゛ゆるじでぇぇ! あだじもぅ゛だえ゛ら゛れ゛らい゛ろぉぉぉ!」

 

「や゛べでぐらじゃあ゛あ゛あ゛! ごわ゛れ゛る゛! ぼぐごわ゛れ゛ぢゃう゛でずうう゛う! ぐあ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」

 

 怖気立つ内容に耳を塞ぎ、下を向いたまま銀の扉の部屋を駆け抜け、次なる金の扉をくぐり抜け。一変した室内に存在していた透明な壁……分厚いアクリル板に気付かず衝突し、メコは転がった。

 

「痛ったぁ…透明な、壁? 硝子とは、違……う……」

 

 先のような無惨な肉玉は室内に無かった。代わりに、無数の女性……金鉢の加護を得た花騎士達が『ガチャ金』と大きく印字されたアクリルの壁の向こう側で吊るされ、臨月の妊婦を四、五回り大きくした程度に膨れ上がった腹を震わせ、正気を失ったように虚ろに笑いながら悶えていた。

 そして彼女らの手足は根元から失われていた。切除されたであろう箇所には、まるで最初から存在していなかったかの如く、傷痕一つ無い滑かな肌があるばかりだ。

 まるでメコが室内に踏みいるのを見計らったかのようなタイミングで華霊石が滑り降りて来て、幾つかの花騎士の腹の中に注がれる。

 これまでの部屋のような殺される獣の断末魔じみた叫びは無く、届くのは恍惚とした狂気の喘ぎばかり。

 

「おへええええっ♡ 私っ、皆の役に立ってりゅうぅ♡ 私の取り柄っ♡ 力だけじゃなくてっ、私を産めるのも取り柄なんてっ♡ しあわしぇぇ♡」

 

「あは、きゃはぁんっ♡ しゅごいひぃっ♡ 私がっ♡ 私が出てくるっ♡ 気持ちいひにょぉぉ♡ これじゃ、隠居したくなくなっちゃうぅ♡」

 

「子宮が燃えてるっすぅぅぅっ♡ パンパンに膨らんでっ…ひいいいっ♡ お腹の奥からドバドバ私が産まれてくるっすっ♡ おうおおおおおおっ♡」

 

 淫気の吹き溜まりとなっている壁の向こうはまるで別の世界のようだ。数人の花騎士が白目を剥いて自身と同じ格好をしたものを出産し、周囲の花騎士達が明らかに正気ではない目つきでそれを羨ましげに眺める。

 以前の部屋とはまた違う方向に壊れた花騎士らから逃げるメコだが、アクリル壁による区分はどんな基準があるのか、『イベント用』『生放送配布用』『交換所用』『コラボ用』などの意味不明な文言が刻まれた均等でない面積の区域が存在し、度々メコの気を引こうと視界に入ってくる。

 努めて気を逸らし、先を目指すメコだったが、丁度真横から聞こえてきた聞き覚えのある声に、不意にそちらを向いてしまう。

 

「………ギアさん?」

 

 乳白色の髪に薄い桃色の花飾り。最初に友誼を結んだ花騎士であり、メコの目指す目的からすれば同士ともいえる相手、フィソステギアがそこにいた。

 膨れた腹の中に石を投入されて複製された自分自身を産出するフィソステギアは、他の苗床花騎士同様に、正気や知性の欠片も感じられない。ひたすら自分を産み、異常な悦楽に溺れるだけの雌肉へと堕ちていた。

 

「ギアさん! なんで貴女まで…っ、正気に戻って! ギアさんっ!」

 

「赤ちゃんがっ♪ ボクが赤ちゃんになってまたボクから産まれてるっ♪ 気持ち良すぎて頭おかしくなるぅっ♪ ひいいいいぃっ♪」

 

 花言葉である『希望の実現』とは程遠い、淫蕩で惨めな姿。屋敷から踏み出す第一歩を支えてくれた恩人であり、大切な友でもある彼女を狂気から連れ戻そうとするメコの瞳から涙が溢れだす。

 ここに囚われているフィソステギア達の所属していた団は、メコが元々追い掛けていた団長の騎士団であり、これまでナイドホグルやミズウォルムを打倒してきた手練れの騎士団だ。

 そこに所属していたフィソステギア達がこんな有様になっているという事は、この非人道施設の運営者は極めて強い力……武力や権力などを持っているのだろう。花騎士を大勢攫い、このような悲惨な姿にしても潰されないだけの力を。

 何度叫んでも、目が合っても一切自身を認識してくれない。そんなフィソステギアの壊れた姿を、出産が終わってもなお暫く眺めていたメコだったが、やがて無力感に打ちのめされたように頭を垂れ、広大な金鉢の部屋の奥にある虹色の扉へと歩を進めていった。

 それまでと異なり何層にも重なっていた虹扉の向こう。まず目に飛び込んだのは、まるで最初の苗床部屋にいたような、悲惨なまでの肥大化を施された犠牲者の姿だった。

 虹鉢の部屋の中央に聳え立つ柱に、何故か取り除かれていない手足を埋め込まれて固定された紫の髪の花騎士。その様はまるで晒し者のようで、腹と両乳を銀鉢の部屋の苗床達と同程度まで肥大化させられ、臍、両乳首、肛門、尿道の五ヶ所を管で貫かれ、煌びやかな衣装と槍を携えた自分自身達を放り出していく。

 まるでどこかの国の姫のような豪奢なものや、神職と呼ばれる職業の人々が纏う装束のようなもの、そういった高級そうな衣装に包まれた複製体達の優美な姿とは裏腹に、それを産んでいる本体自身の状況は無残の一言に尽きる。

 他の花騎士達が一人一人壁に埋め込まれた別々のアクリル槽に閉じ込められている点もまた、相対的に紫髪の花騎士を見世物のような扱いに思わせた。

 

「ほひょおぉぉおおぉっ♪ いっぱいうまれっ、えへぇぇぇぇっ♪ あは、きゃはああああっ♪ わらひぎゃっ、まひゃうみゃれへっ、ひいいいいっ♪」

 

 涙や涎、鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら淫猥に啼く紫髪の花騎士を言葉も無く眺めていたメコの耳に、信じがたい声が届く。

 

「メコ殿」

 

 自分の名前。これまでの部屋にいた女性達の姿から考えれば、幻聴としか思えない。だが、壁を透過させたようにくぐもっているもののしっかりとした自我を感じさせるその声は確かに耳朶を打ち、諦念に沈みかけていたメコの意識を引き上げた。

 振り返るメコ。そして槽の向こう側にいた見覚えのある相手を見て、瞳に戻りかけていた気炎を消沈させていった。

 そこにいたのは、ロータスレイクで出会い、コダイバナ復興という目標について抱えていた不安を払拭してくれた花騎士、ネムノキだった。苗床らしく手足を失い、管が繋がった腹を大きく膨らませていた。

 

「来てしまったのですね、この世界に」

 

「ネムさん…」

 

 この地獄で薄く微笑みすら浮かべているネムノキからはこの状況に抗おうといった意思は一切伺えない。甘んじて受け入れるという様子でもなく、むしろ、この命への冒涜行為を待ち望んでいそうですらあった。

 強大な実力を持つネムノキですらこの様なのだ。もはやメコには抗おうという気力すら残っていなかった。

 

「ここは、FLOWER KNIGHT GIRLの世界に送る花騎士を量産する為の場所なんです」

 

「……はい?」

 

 ネムノキの訳の分からない言葉に困惑するメコ。当然である。花騎士という言葉に馴染みはあれど、『Girl』などと余計な単語を付け足して呼ばれる事など一切無いし、その『FLOWER KNIGHT GIRLの世界』などと言われても。

 

「私達は、異世界であるスプリングガーデンに送り込む為の花騎士を作る為の苗床…メコ殿、貴女もこの世界に来た以上、その運命には絶対逆らえません。花騎士を産み続ける為だけの命なのです」

 

 意味不明で受け入れがたい宣告。まともな精神をしているならば、怒りを覚えるであろう一方的過ぎる告知。

 だがメコが怒りを再燃させるより先に、まるでネムノキを黙らせようとするかの如く、大量の華霊石がネムノキに繋がる管を流れ落ちてきた。

 それに気付いたネムノキの意識はメコから華霊石に向き、発情しきった雌奴隷の顔で腹腔内への石侵入を受け入れる。

 

「ああっ♡ そんな♡ 一度にこんなにいっぱいなんて♡ 私、壊れてしまいますっ♡」

 

 呆然とするメコへ送られる、喘ぎ混じりの言葉。

 じゃぶじゃぶという喧しい石の流入音の中でもはっきりと聞き取れたその声は、死刑宣告のように感じ取れた。

 

「無理なんですっ♡ この世界から出ていけるのは、私達が産んだ模造品だけっ♡ 私達は、此処で命尽きるまで、ひいいいいいっ♡」

 

 ゴポリと気持ちの悪い音がして、一人、また一人とネムノキの腹腔内から彼女自身が産まれていく。

 

「メコ殿っ♡ メコ殿もっ、諦めて、一緒に、産む道具に…んおおおおおおっ♡」

 

 膨らんだ腹に臍をぶち抜いて繋がっている管の中を、ネムノキが産まれ堕ちていく。そして供給された石の分を全て産み終えたネムノキは、一度に大量に出産した反動か、恍惚の笑みを浮かべて失神した。

 天上へと送られていくネムノキの複製達を見上げていたメコがふと気付くと、もう十分だろう諦めろ、と言わんばかりに金属質な触手群が部屋の四方八方から生え、メコを取り囲むように展開していた。

 メコの絶望の溜息と触手が襲い掛かるのは全く同時で、何本かの触手の先端から展開された針が彼女の腹に突き刺さり、得体の知れない溶液を注入していく。

 変化は劇的だった。

 

「ぎっ……ひいいいいいいいいいっ!? おひ、おおおおおお!?」

 

 メコの腹が瞬く間にボコボコと隆起しながら膨れ上がり、そのパンパンになった腹の臍の部分を他と異なる半透明な触手が貫く。

 『サンプル採取』という文字が書かれた半透明触手はそのまま蠢動し、盛大な音を立てて毒々しい色合いの溶液を注ぎ込んでいく。

 

「なん、これ、しゅごっ、しゅごいっ!? おなかっ、おなが、あづ、あづいいいいいい!?」

 

 内側から溶かされていくような感覚に悶え狂うメコ。涎を吐き散らし、目を白黒させる様は今にも死んでしまいそうに思える程凄惨だ。

 やがて極限突破した膨れ腹の奥から地鳴りのような奇音が響き、メコがぶるりと大きく震え。

 臍であったはずの場所が大きく広がり穴と化し、半透明触手が穴に合わせて拡張され。

 そして、メコと全く同じ姿、同じ服装の少女が、眠ったように目を閉じたまま、天上ではなく壁へと通じる管の中へと吐き出されていった。

 

「はっぎゃああああああああああああ!? うああああああああああああああああ!?」

 

 絶叫しながら激しく痙攣するメコ。酷い震えは暫く続き、やがて口から泡が噴き出し、びくりと一度大きく跳ねると共に静かになった。

 ぐったりとしたメコは金属触手によって丁重に運ばれ、彼女が産んだ自らの分身が入っていった壁の真横に開口した穴から明かり一つ無い空間へと運び込まれていく。

 真っ暗闇に包まれたその空間は、この世界に堕ちてきたメコの、そしてこの先この世界で苗床となるであろう全ての花騎士達の希望の無い未来を暗示しているかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メコノプシスが新たなる花騎士生産機材へと変えられている頃、花騎士生産プラントの地下では、更に凄惨な光景が繰り広げられていた。

 

「だんちょ、さま…」

 

「たすけて…なづきママ…はのちゃん…」

 

 騎士団長補佐役の一人であるナズナと、彼女の血縁を思わせる幼い容貌の少女、金髪猫耳の育ちの良さそうな少女、桃色の髪をツーサイドアップにした宇宙少女、犬耳を生やした少女。

 ナズナ、おさナズ、華香院つばき、姫熊りぼん、くるみ。生産プラントの花騎士とは逆に、元の世界から複製され、改造を施された被害者達。

 等しく虚ろな目をしたその五名が、プラント内の花騎士達のように腹と乳房を膨らませ、透明なカプセル状の檻に鎖で吊り下げられる形で囚われていた。

 カプセル上部には金属プレートが打ち付けられ、イベント害虫試作品、という文字が印刷されている。

 彼女らの腹にいるのは害虫だ。それも、『FLOWER KNIGHT GIRLの世界』でのイベントに使うための害虫達。

 別の世界にいる彼女らが花騎士達を引き連れて蹴散らす為の命を、この世界の彼女達が出産するのだ。

 無駄だと理解しながらも騎士団長や母に助けを求めていたナズナ達だが、その声はやがて苦悶に満ちた呻きに変わる。

 

「出、る、出ちゃ…ああ、嫌ぁ…♪」

 

「お母様、お姉様、ごめんなさい、わたくしは、つばきは、また……♡」

 

 嘆きには時が経つに連れて甘い矯声が混ざり、内側にいる害虫達が身じろぎする度に少女達は出産の時を待ち望む雌と母の入り交じった表情になっていく。脳やAIに施された改造の効果だ。

 そして出産の時が訪れる。

 膣孔が、肛門が、乳首穴が一斉に開放され、汚ならしい水音と共に大量の害虫が産まれ堕ちていく。

 

「お゛う゛お゛お゛お゛お゛お゛っ! だんぢょぉしゃま゛っ! い゛やっ! いやあ゛あああ゛あっ!」

 

「ほひいいいっ♪ 害虫ぎぼぢいいっ♪ 増設人工子宮からっ、害虫じゃぶじゃぶ産むの大好きぃいぃっ♪」

 

「産む゛っ♡ うばれ゛でる゛っ♡ おねーざま゛だぢにごろざれる゛だめ゛にうま゛れるっ、わだぐじのあがぢゃんだぢいっ♡」

 

「壊れるっ♥ はっぴーな気持ちおかしくなるっ♥ 害虫の赤ちゃん産むのが幸せになっちゃうぅっ♥」

 

「全部でりゅっ❤️ じぇんぶぜんびゅぅぅぅっ❤️ またママになってっ❤️ イギまぐりゅぅっ❤️」

 

 大小様々な害虫が吐き出され、少女らの身体は瞬く間にへこんでいく。

 十数分程の盛大な出産劇が終わると、カプセル外壁が上昇し、壁から現れた触腕が生産サンプルである害虫達を掴み、母親達の下から攫っていった。

 虫の子供達がいなくなり、誰もが項垂れたまま動かなくなっていたが、暫くの後に天井からベルのけたたましい音が鳴り響き、カプセルが再び解放されると誰からともなく淫靡な嗤いが漏れる。

 害虫達を回収したものとは別の金属触手が現れると、少女達は触手に身を任せ、導く先にある害虫生産場へ誘われていく。彼女らが産んだサンプルの品質でイベント用として充分だと判断され、本生産が始まるのだ。

 其処では彼女らは先程の数百、数千、数万倍の量の害虫の仔を孕み、改造された子宮や乳腺、腸管を比べ物にならない程に拡張され、莫大な快楽の中で苗床生命を送る。

 イベントが終わればそのイベントの為に産まれた害虫達は全頭処分され、また新たなイベントの害虫のサンプルをナズナ達が産み、本生産が始まり…そのサイクルは、いつまでも途切れる事は無い。

 『FLOWER KNIGHT GIRLの世界』が存続する限り、永久に。

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