寄生
悪堕ち
人体改造
スカトロ
苗床
ロータスレイクの騎士学校、医務室内。
ベッドの上で、入学したばかりのウサギゴケが、悶え苦しんでいた。
まるで妊娠でもしているかのように、大きく膨れ上がった腹を抱えて。
「はっ、はっ、うぐぅ、うぅん…っ」
飲んだ薬は効果が見られず、腸蠕動音を腹腔内から猛烈に響かせ、身をくねらせるウサギゴケ。
顔は血の気が引いて土気色、全身から吹き出た脂汗で服はぐしょ濡れ。
自身も医師になったばかりの保険医も困惑頻りの様子で、せめてウサギゴケの痛みを和らげられないかと、膨れゆく腹を撫でていた。
「どうしてこんな…」
半ば恐れ戦きながら治療する新人女医の前、新入生の腹はゆっくりと、しかし確実な速度をもって膨れ上がってきていた。
最初の内、症状を聞いた保険医は、生活環境の急激な変化によって消化器官に負担がかかっているだけだと思っていた。なにしろ、彼女はスラムという不衛生かつ日々の食事にも困る者だらけの環境にいたのだから。
だが、整腸剤を飲ませた翌日、ウサギゴケは病状が悪化して医務室に担ぎ込まれてきた。
授業中に激しい腹痛に襲われ、突然倒れてしまったという。
「くるしい、の…はぁ、はぁ…おなか、痛い…」
苦患を訴えるウサギゴケ。更に大きく張っていく腹部。酷い膨張によって妊娠線まで発生しており、本当に子を孕んでいると言われても誰も疑問に思わない見た目になってしまっている。
最初に医務室に訪れた時点で対応出来ていたなら、手の打ちようはあった。だが、本当に就任したばかりの、経験の足りない彼女にそれを求めるのは酷に過ぎた。
本来、ここに彼女と共にいる筈の先任保険医が、害虫に襲撃された騎士学校近くの村の救護を終えて帰ってくるまで後数時間ほど。
既に手遅れと知らないまま、新人医師は自らの力と知恵の不足を嘆きつつ、手の内にあるもので患者を救えないか悪戦苦闘する。
「ウサギゴケさん、気を確かに! もうすぐ先生が戻って来てくれますからね!」
鎮痛剤を飲ませ、小さな手を握って悲痛に顔を歪める女医に、ウサギゴケは力無く首を横に振った。
「も、う、駄目なの…ウーちゃん…死んじゃうの」
「そ、そんな事はありません! きっと助かりますから、諦めないで!」
「ウーちゃんの、いた所、いっぱい人が死んでたの…はぁ、はぁ…こんなふうになって、死んだ人…う、ぐぅぅぅっ…いっぱい、いたから、ウーちゃんも、そうなるの…」
ウサギゴケの声には絶望と諦念が満ちていた。現実で自分の掴める幸せは存在しない。そう確信しきっていた。
スラムで助けてくれた花騎士の言っていた現の幸せを、決定的な所で信じられていなかったのだ。
呼び掛けを無視し、そのまま目を閉じ、命の全てを放棄しようとするウサギゴケ。
その瞼の裏に、病や栄養失調でスラムの人々が死んでいく姿、そして嘘の救援要請を信じて凶悪害虫の巣の中で惨殺された恩人の花騎士の幻影が浮かぶ。彼ら彼女らと共に、苦しみの無い永遠の夢の世界に逝くのだと。
だが。
「ひっ…ぎいいいいぃ!?」
突如、矮躯の奥から、ぼごぼごと汚濁で詰まった下水管が開通するような音がしたと思うが早いか、ウサギゴケは痛苦に喚きながら身を仰け反らせる。
いや、原因は痛みばかりではなかった。
「お゛お゛お゛お゛お゛!? なんれ゛ェ!? あ゛ぢゅい゛! ウーちゃんのおな、がぁっ、あづいぃぃぃっ!? おなかぜんぶとけちゃうのぉぉぉぉぉっ!?」
両目を見開いて絶叫するウサギゴケ。激痛ばかりに満たされていた腹の中が突如として変化し、いっそ快楽と称するのが相応しい感覚が広がっていく。
苦痛と火照りで滅茶苦茶になっていく膓に翻弄され、怯える少女の肉体が瘧に罹ったように酷く痙攣し始める。
「ウサギゴケさん!? しっかりしてウサギゴケさんっ!」
「ぐぎゅッ、ぐにゅってぇ、おなかのなかぐにゅぐにゅでぽがぽがしでるぅぅっ! ウーぢゃ、ごわいっ! だぢゅげで! やだ、あああぁぁ!」
ウサギゴケの腹には更なる外見的な変化が襲い掛かっていた。内側で何かが暴れているかの如く、臨月腹全体がぼこぼこと異常な隆起と陥没を繰り返していた。苦痛から快楽への変換と急激な肉体の異常に、精神が恐慌を起こす。巣食った絶望と諦念が完全に吹き飛んでしまうほど、苛烈な変化だった。
どうにかしなければ。だが何をどうすれば。保険医が逡巡した、次の瞬間。
ぐぎゅるるるる、ぎゅぎゅぎゅぎゅ、ぶぎゅるるるるぅ。害虫の咆哮そのものの、一際不気味な音が少女の内から発せられ。
「でるぅっ!? でちゃうっ、ウーちゃんのなかみ、ぜんぶでちゃうのぉぉ!? はぎゃやぁぁぁぁっ!?」
絶望の叫びに合わせ、ウサギゴケの肛門を無理矢理割り開き、下着を引き裂いて、化け物が姿を現した。
先端に口だけを備えた、うねうねと蠢く肌色の蠕虫。あまりの異様に絶句する保険医を他所に、宿主の尻穴を嬲りつつ悠々と外界に産まれ落ちていく。
寄生型の害虫だった。ただし、既存の寄生害虫達とは違う形態をしていた。
元となった種は、スラムなどの不衛生極まりない場所に住む、抵抗力の弱まった人体でなければ寄生できない感染力の弱い害虫である。虫下しの類にも滅法弱い。元々ウサギゴケに寄生していた個体が、世界花の加護の力を吸って変異体となったのだ。
変異体となった事で会得した催淫体液が腸内に放出されていた所為で、ウサギゴケは自分の中から害虫が現れる恐怖と驚愕に顔を彩りつつも、頬を朱に染め、声に甘い色を混ぜてしまう。
淫毒汚染が脳にまで到達したのか、瞳は次第に焦点が合わなくなり、うっとりと蕩けていく。
「ほごえ゛ええ゛ぇっ! きっ、きもちいいのぉぉほぉっ! おっ、おしりぃぃっ! おしりすごいきゅんきゅんしてるのぉっ!」
享楽に喘ぎつつ、まるで自分まで蠕虫になったようにのたうつウサギゴケの尻穴から、止め処無く生まれ落ちる虫体。
世界花の加護の力を吸って変異したせいだろうか。とてつもない長さだった。どうやって小柄な少女の腸内に収まっていたのか、肛門から露になった全長は十メートルを遥かに上回っていた。
腸内から毒素を吸収させられ、過敏になった粘膜で快感を貪る童女。娼婦顔負けの淫欲に陶酔した笑みを浮かべた姿は、花騎士を志していたと信じられないものだった。
だが、これで終わりではない。ウサギゴケの腹は、先程よりマシとはいえ、まだ妊婦と表現して異論が出ないほどにパンパンなのだから。
「あは、っ…はうううう…♡ 出てくるの…♡ お腹の奥で、いっぱい、ぎゅるぎゅるってしてるの♡ これ…えへへぇ…♡ あなたの、兄弟なの……♡」
狂悦に侵され虚ろに濁った視界の中、自身を害虫苗床に貶めた相手が視線を……眼があるかどうかはともかく……向けてきているのを確認して、ウサギゴケは、尻から力を抜いた。
まるで濁流のようだった。破裂音と粘着音が混ざり、不浄そのものの音となる。腸液や溶けた汚物の滝を流れ落ちる小さな長虫共。
喉を震わせて子を産む悦びを謳うウサギゴケに、寄生害虫は満足げに蠢き、新人保険医は汚物や害虫の悪臭に耐えきれず嘔吐した。
「は、れ……? その、こたち、ウーちゃんと、おなじなの……?」
ふと、母になった少女が子供達を見ると 、どれもこれも母親を真似たように白く、ポンチョに似た被膜に覆われ、兎の耳を生やしていた。
そして、最初にウサギゴケから産まれた寄生害虫にも良く似た形状をしていた。
更に身の毛もよだつほど気持ちの悪いことに、ウサギゴケの肛門から吐き出された子害虫共は奇怪な肌色の肉の紐を生やしていて、その紐は全てウサギゴケの腸内へと繋がっていた。まるで、臍の緒のように。
「もしかして…あなた、兄弟じゃなくて、お父さんなの?」
本能的にそうと察し、聞く耳があるかどうかすら分からない寄生害虫に、ウサギゴケが訊く。
おぞましい事に、それこそが真実だった。臍の緒でウサギゴケと繋がっている連中は全て、ウサギゴケの子供であると同時に孫であった。
そしてそれを言外に証明するように、寄生害虫が臍の緒を噛み千切り、童女の肛門に頭を突き入れ腸内に残る臍帯を引き抜いていく。
後産に当たるであろうその行為も、敏感になった腸に極めて強く刺激するらしく、官能に塗れた嬌声を上げて身悶えする。
花騎士でない新人女医はただそれを怯えて見ている事しか出来ない。
やがて後産も終えたウサギゴケが荒く息を吐いていると、子虫達が蛇体を蠢かせ、母親の胸を目掛けて登ろうとする。
どうやら母乳を求めているらしかった。
「おっぱい…ウーちゃん、大きくないから…出るのかな…?」
疑問に思いながら平坦な胸を露出させ、床に這いつくばり、子供達に乳首を差し出す。
父親のものよりも母親である人間のものに近い構造の口で、子虫はウサギゴケの乳首に纏わりつき、吸い上げる。
これも淫毒の効果なのか。どう見ても乳腺が発達しているとは思えない年齢の彼女の乳首は乳を噴き、子害虫達は母からの恵みを美味そうに啜っていく。
仲良く乳を吸う害虫の子を愛おしげに見るウサギゴケのその目は、もう完全に母親としてのものだった。
「あは……♡ みつけたの……起きてる間の、幸せ…♡」
乳を吸う子供達を抱き締めたまま、寄生害虫に寄り添う。
年に見合わぬ淫蕩な微笑みを害虫に向け、自らを贄として差し出していく。
何故この騎士学校に入ってきたのか、恩人であった花騎士が何に殺されたかなど、もはや些末な事だった。
「さっきの……すごく、気持ち良かったの♡ 赤ちゃん産むのも、気持ち良くて、幸せだって思ったの…♡ ずっと、ずっと幸せにしてほしいの♡ ウーちゃん、あなたのお嫁さんになるの♡ ウーちゃんを、あなたに、捧げるの♡」
その言葉が通じたのか、単に自らの子を産んだ苗床の所有権を主張しているだけなのか、寄生害虫はウサギゴケの全身に巻き付いていく。
ウサギゴケも拙い知識から婚姻に関してのものを思い出し、寄生害虫先端の顎部に口付けをする。
こうしてこの世に決して祝福されない夫婦が一組誕生した。
「ひいいいい…なんてことなの…」
一人放置されていた新人女医は、床を虫のように這いながら、こっそりこの場を抜け出して助けを呼ぼうとしていた。
だがその背中に圧し掛かられ、首にファンシーなハンドパペット…の耳部分に隠された刃が当てられる。
「逃げちゃ駄目なの」
「ひいいいいい! 嫌アむぐううぅぅっ!?」
絶望を叫ぶ保険医の口へと、子虫達が飛び込む。そして胃の中へ、大量の淫毒を撒き散らす。
あっという間に破裂寸前に陥る女医の腹。その中で充満する、世界花の加護を得た者すら堕落させる毒。
女医はたちどころに汚染され、白目を剥いて痙攣するだけの無抵抗の苗床候補に堕ちる。
「ォッ………♡ アッ………♡」
「えへへ、良く出来ましたなの」
パンパンに膨れたボテ腹の上から、中にいる子供達を褒めつつ撫でるウサギゴケ。母親に応えるように、ボテ腹の内で子害虫達が蠢き、女医は痙攣を一層激しくした。
女医もまた寄生害虫に巻き付かれ、そのまま汚されそうになるが、ウサギゴケに止められた。
「ここでしてると、危ないの。騎士学校の中だから、花騎士と生徒がいっぱいいるの」
すっかり害虫の一員として堕ち果てたウサギゴケの忠告を受け入れ、寄生害虫は場所を移すべく、その細い身体からは想像も出来ない力で二人を持ち上げ、連れ去っていく。
自分も連れ去られながら、ウサギゴケは非常に幸せな気分だった。
あの花騎士の言葉は嘘ではなかった。現実の世界でも、こんなに良い事がある。もしその花騎士が生きてこの場を見たら、絶望するに違いない事を考えながら。
「お胸の奥、トクントクンってしてるの…あなたにくっついてると、とっても安心して、幸せなの。ウーちゃんとあなた、ずっと一緒なの…♡」
数時間後、様子を見に来た花騎士の教師が医務室を覗き込んだ時には、既に両者と寄生害虫はいなくなっていた。
行為の後などから、害虫が密かに襲撃をしてきたと判断されて調査が行われたが、結局両者の居場所を突き止める事は出来なかった。
淫らな夢の世界に連れ去られた二人がどうなったのか、知る人間は誰も居ない。
そして今日もまた、汚穢と不浄に包まれた闇の世界で、元花騎士候補と元女医は、寄生害虫の子を産み続ける。
数年後、寄生虫による疫病がロータスレイクに蔓延し、開国しようにも他所の国から拒絶されるような事態になり、春庭の未来は暗雲に閉ざされていくが、現実を侵した永遠の淫夢に取り残された二人には、どうでもよい事だった。