メタネタ
NTR
蟲姦
こちら側限定
執務室を出ると、そこは地獄だった。
白昼堂々、執務室前の廊下で、団長補佐と大型害虫が絡み合っていたのだ。
数日前にワルナスビや他の花騎士達から各々の宝物を盗み、かの名探偵ストレプトカーパスらによって討伐された筈の大型蜂害虫だ。
「おひっ♡ お゛、ん゛おおおおっ♡」
黒い蜂型害虫にのしかかられたナズナが、涙と涎と鼻水で彩った表情を無様に崩し、みっともない吠え声を上げている。
一瞬幻覚かと思ったが、頬を抓ったりしても消える事は無い。
なんだこれは。何故害虫が。いや、そんな事を考えている場合か、ナズナを助けねば。
だが困惑しながらも剣を抜いた自分の存在に気付いたナズナは、緩んだ口元のまま此方に説明してきた。
「だん、ちょぉ、おほぉっ♡ さまぁっ♡ お、お気になさらずぅっ♡ これ、これはぁっ♡ え、いぷりる、ふーりゅのっ♡ えいぷりりゅふーるっ、きかくですぅぅ♡」
エイプリルフール。異世界から流れ着いた情報媒体から春庭に広まった文化であり、詳しくは知らないのだが、その期間中であれば公の場での頓狂な演劇や荒唐無稽な流言飛語の流布も許されるという。未だに不可思議に思えてならない、我々の世界と異世界の常識の差をまざまざと思い知らされる文化だ。
蜂型害虫もまた、エイプリルフールイベントであると肯定するかのように、此方を見ながらナズナの言葉に何度も頷いてみせた。腰の動きは止まっていない。それどころか、つい数十秒まで単調な前後の動きをしていただけだったものが、生殖器でナズナの奥を抉るように動いたり、乳首や他の所を愛撫したりと害虫の交尾らしさを感じない動きをするようになっていた。
しかし、なんだ。ただのエイプリルフールか。まだイベントをしていたなんて、驚いて損をした。この大型害虫も、実はあれに似せた着ぐるみが何かで、中に人が入っているのだろう。なんとも紛らわしい。本物の害虫だと思ってしまったじゃないか。
そう文句を言うと、蜂害虫に見えるものは済まなそうに頭を下げ、謝罪するかのような鳴き声を放った。やはり人が入っているんだな。ナズナを犯す腰の動きは止まっていないので本当に反省しているのかは疑わしいが。
「ひいいっ♡ あひいっ♡ すきですっ、だいすきですっ、旦那さまぁっ♡ 愛してますぅっ♡ 出してっ♡ このままっ、団長さまの目の前でっ、団長さまに、みられながらぁっ♡ ナズナが、あなたのものになった証拠、くださ、あ、ああああああっ♡」
ナズナの嬌声に合わせ、蜂害虫が生殖器を彼女の深奥に深々と打ち込み、身を震わせる。
喘ぎ悶えるナズナが白目を剥き、白磁のようなその腹が段々と膨らんでいく。射精を受けたのだろうが、着ぐるみの中の人が出したにしては随分な射精量だ。
「ああ、孕む、孕みますぅ……♡ 絶対、害虫の赤ちゃん、妊娠しちゃうぅ……♡」
陶然とした表情をしながらもぐったりしたナズナから生殖器が抜かれると、ぼたぼたと滝のように精液が溢れる。人間が出せる量とも思えないが、しかしこの蜂害虫が作り物である以上生殖器も作り物なのだから、精液を貯めておく器なども内側に備わっているのだろう。あるいは、この精液に見えるものも作り物なのかもな。
相当気合を入れて作ったのだろう、害虫の着ぐるみはナズナを肢でしっかと捕らえると、何らかのからくりで動いていると思しき羽を稼働させ、感心する自分を置き去りにして飛んでいった。
「お別れです、団長さま……♡ さようなら……♡」
仕事もあるので、出来れば明日までに帰ってきてくれ。
飛び去る蜂にそう叫ぶと、頷いているのだろう、首を上下に動かしながら飛翔していった。
蜂着ぐるみとナズナが飛び去って行った後、それを見かけたらしいワルナスビが息せき切って駆けてきたので、それを説明した。見かけた時に一緒にいたラークスパーとキツネノボタンは先に追いかけているらしいが、エイプリルフールのネタなので追いかけなくても大丈夫だとも言った。
だが、自分の説明を聞いていたワルナスビは、唖然とした様子で訳の分からない事を喚きだす。
「何言ってるの!? 攫われた人間が返されるなんてありえないよ!? そもそもエイプリルフールなんてとっくに終わってるんだけど!? 期間はあの一日だけだし、それにしたって限度があるに決まってるじゃない!? 第一、そんな着ぐるみなんか作ってまで、人間と害虫のそんな行為の再現なんて、狂った事をする訳が……っ!!」
だが、駐屯地全体に響きそうな声で叫んでいたワルナスビは途中で言葉を途切れさせると、哀れむような目を一瞬だけ向けた後、踵を返して他の花騎士達を呼び集めながら蜂とナズナを追いかけていった。
エイプリルフールが嘘? ナズナは本当に害虫に寝取られてしまった?
違う、そんな筈が無い。俺が気付かない内に、ナズナはあの害虫に寝取られていたなんて、そんなのが現実である訳が無い。
あんな親密そうに絡み合っていた様子からして、かなり前からナズナとあの害虫の関係は続いていなければおかしいんだ。
いつも一緒にいる大事なナズナが、いつのまにか害虫なんかに心奪われていたのに、俺はそんな大き過ぎる変化にすら気付けなかった程の間抜けだったという事になる。
そもそもあれが害虫の着ぐるみで中に人が入っているのだとしても、それはつまり騎士団長就任からずっと一緒にいた俺以外にナズナと男女の関係になるくらい親密な相手がいて、俺はそれにも気付いていなかったという事になって。
そんなのは嘘だ、ワルナスビが嘘を吐いているんだ、そうだ、きっとそうだ……。
視界が揺らぎ、音が消え、意識が暗黒に閉ざされていく。
目を覚ましたら、大切で愛しいあの娘が害虫に盗まれた現実が、嘘になっていてくれると期待して、意識を手放した。