プロローグ
■ プロローグ
夏目和人、15歳、身長172cm、いわゆるイケメンだが優しくてどこか気弱なイメージを纏う普通の男子だ。この春、地元の桐沢市立第2中学校を卒業して労働男子として研修後、職場に配属されて3カ月の事だった。
和人が働くレアメタル鉱山は表向きの宣伝とは別に実際の実情は酷く安全とは程遠い過酷な環境で働かされているのが実情なのだ、なぜなら肉体労働者の人口は余っているから...
そんな状況なので事故は起こるべくして起きたと言える、実際、死亡事故の無い年の方が珍しいのだ。
「あぁ...なんてこった...」
坑道内で起こった崩落事故に巻き込まれてどうやら岩の下敷きになったみたいだ...
幸いというか体はしびれた様な感覚というかまるで他人の物の様な気がして痛みは今の所はない、口の中で鉄の味がしているのが不快だ...どうやら脊髄などの重要な部分をやられたみたいだ...
「...もう、労働男子としては終わりだな...
働き始めてまだ、3カ月、母さんにはまだ何の恩返しも出来なかったなぁ...」
中学を卒業して適正検査を受け、適性に応じた労働研修を受けた後、レアメタル鉱山に配属されてイットリウムの採掘に従事させられて3カ月...ようやく仕事に慣れて来たかな?って思えた矢先の事故だった。
「どうやらこれまでみたいだ...ま、男性労働管理局の彼奴等は処分する手間が省けて助かったと喜ぶだろうな...
母さん...親孝行できずにごめんよ...」
薄れゆく意識の中で
労働研修所へ出発する日の朝、母さんは涙を流しながら体に気を付けるのよ!と気遣ってくれる母さんの顔がフラッシュバックしてきた。
和人は薄れゆく意識の中で最後に会った母親の顔を思いながら意識を手放した。
それから数時間後、和人は救出されたが彼の手首に巻かれたトリアージタグは優先順位最低の”黒”のラベルだった。
この事故で掘進に当たっていた作業員5名が死亡、重傷者1名という惨事になった。
事故の原因は採掘を急ぐあまりに安全管理がおざなりというよりはほぼ無視されている状況下での事故で事故は起こるべくして起きたのだった、これに対して鉱山側は掘進の作業員が安全措置を取らずに作業を行ったために起きた事故で責任は鉱山側にはなく作業員の安全管理を怠った重大な過失による事故として処理された。
■歪な世界
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この世界は地球とよく似た文化を持つ、いわば地球のパラレルワールドと言っても差し支えのないような歴史をたどっている世界だった、その名を大日本神国という。
この世界の男女比はほぼ同一の5:5と適正な男女構成比になっているが事情により人口減少の一途をたどっており無論政府は人口を増やすために色んな政策を行っているがその成果は今の所現れておらず、毎年人口は減少の一路をたどっている。
人口が増えない最大の原因は95%近くの男性に繁殖能力がないのが原因だった。
何でこんなことになったかと言うと、第2次大戦前までは大した問題もない状態だった。
地球と同様にルビーハーバーへの奇襲攻撃が行われたのは同じだが、こちらの世界ではより大規模で行われ空母の位置も把握しており空母、護衛空母合わせて8隻の空母を撃破及び撃沈させることが出来たのとハウイを占領する事が出来た事により、大日本神国の最高指揮官でもある神皇は現時点では圧勝したもののいずれ資源大国には負けると考え現時点を講和を望み実現させた。
無論、軍部の強い反対もあったのだが、この世界では神皇にご注進は出来ても神皇に反対する事は出来ないほど絶対的な権力を神皇は持っている。
ある意味では現人神そのものと言えた。神皇の言葉は現在でも絶対なのだ...
講和により戦争はより有利な形が終結した為に経済は右肩上がりで復興し人口も増加をたどっていたが、光と影があるように好景気の波に乗れなかったものも少なからず貧富の格差が広がっていったのだ。
この世界ではかろうじて貴族制度が残ってはいたが近代に於いては陛下と宮内庁の思惑と後に述べる理由によりわずか数家が残っているに過ぎない。
富裕層、一般層(ここが一番多い)、貧困層でピラミッドではなくダイヤ型の社会構成となっていった。
身分に関しては貴族と平民間では身分の差別が存在したが近代では貴族がごく少数になったせいで身分の差別はないと言っていいが、一部の勘違いした富裕層や元貴族が平民が平民をバカにするというような事が起こっている。
ちなみに貴族でないものが市民を平民呼ばわりしてバカにするのは立派な犯罪になる。
この頃から貧困層による強盗や婦女暴行、誘拐、監禁事件が多発するようになる、警察も予防に対応するが、警察は基本取り締まりであり予防は苦手とする面もあってどうしても後手に回ってしまい民衆の批判は限界に近づいていた。
社会が性犯罪で混乱している中ある製薬企業が画期的な薬を開発した。
犯罪を抑制する目的で開発され暴力行為を抑制するほかに副作用として男性の生殖機能を阻害する薬が開発されたのだ。
この薬を服用すると情動緊張や興奮を抑制する為、暴力行為を行わなくなり、さらに副作用として生殖機能を阻害するために勃起はおろか精巣は精子の作れなくなってしまうというある意味とても恐ろしい薬だったがこの時点ではこの薬が招く恐ろしさに誰も気づいてはいなかった。
国はこの抑制剤を即刻、性犯罪者及び殺人、強盗犯などの凶悪犯に対して使う事を法律で定めた。
これにより暴行事件や婦女暴行の再犯は完全に防げるようになったのである、勃たない作られないだけでなく、その気分にさえならないのだ、つまり性欲が無くなる。
これで社会は上手く行くかに思われたがそう簡単には行かなかった。
開発の中心メンバーだった長谷川女史が振られた腹いせに自分の恋人に対して薬を使用、これが発覚して会社側は警察に告発することなく握りつぶして女史を懲戒免職として幕引きとした。
長谷川女史は金銭面で困窮している所をテロ組織にそそのかされて会社からコピーしていた研究資料をテロ組織に売り渡し、自身もテロ組織に加入し感染性の高いより高性能の薬を開発しテロ組織はこれを世界規模で散布、拡散させる。
思わぬ方向へと変貌を遂げる
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拡散された生殖機能阻害薬は90%以上の男性の生殖機能を阻害させただけでなく感染から生まれてくる子供の男児の90%は生殖機能はもちえなかった。
つまり生まれてくる男性は殆んど生殖行為が出来ず、抑制剤を直接投与された者ほどではないが情動緊張や興奮をある程度抑制されている為、向上心もなくほんのわずかに生まれてくる生殖行為が可能な者にしても女性に対しての性欲をほとんど持たず、むしろ嫌悪感を持つ者が大半を占めた。
精神の抑制については殆んど影響を受けていない者から抑制剤を投与された者に近い抑制をうけているものまだ様々だが、大多数は軽い抑制で済んでいたのできちんと自己の感情を持つことが出来ている。
生まれて来た子供の男性器の大きさは太さ長さともに半分以下にまで減少してしまった。
反対に女性の場合は過去の男性以上に性欲が強い傾向があり、これにより世界の社会構成は変貌を遂げて行った。
刑法から婦女暴行が無くなり男子暴行が加えられるまで20年も必要としなかった。
何とか治療方法を探そうと原因の追究と治療方法の研究がおこなわれ現在に至るが明確な原因と治療方法は見つかっていない。
分かっているのは被ばく以前のDNAと被ばく以降に生まれてきた子供の遺伝子を比べると一部が大きく変わっているのが分かった、この部分が原因ではないかと考えられているが、その部分を遺伝子を組み替えても生まれてくる子供は書き換え前の状態に戻っている為、現時点では解決方法が見つかっていない。
そういった事情により社会の形態が変わって行かざるをえなかった。
大日本神国に於いてはテロ事件よりおよそ100年後の2050年代においては完全なる女性上位の管理社会へと変貌を遂げていた。
結婚の形態は一夫一婦制から一夫多妻へと憲法を改正され一夫多妻が義務となった。
貴族に於いては正妻の自然妊娠により出産された直系男子のみの爵位相続が認められ養子等による相続は廃止去れたため貴族は滅亡していった。
生殖能力のある男性の未婚は認められない。
また、生殖能力のない男性との結婚は認められず、生殖能力のない男性は隔離政策を取られる事になる。
社会形態は企業の管理職は全て女性だ、管理職の男性がいないのは生殖能力と直接の関係がある訳ではないが、実際問題として生殖能力のない男性の場合は向上心が極めて少ない傾向があり指導力、統率力ともに大きく欠落しているのが理由だ。
子供が生まれると中学校までは男女別の環境で育てられる。
中学卒業前になると男女ともに生殖機能検査を受ける事が義務づけられている、一切の例外はなく検査日に休んだ場合は病院に出向く必要があり指定日までに出向かないと強制的に連行されて検査され、保護者は処罰を受ける事となる。
殆んどの男子は生殖機能がないのがあたりまえとなっている、その年の卒業生300名のうち生殖機能を持つ者が15人も出れば当たり年と言われ下手すると5人もいない場合もある。
生殖機能があると判断されるとA~Dの4ランクにランク分けされ高校への進学が認められる、基本、高校は共学で自宅に近い高校が選択されるが一定の範囲内であれば自分で選択する事も可能だ。
入試や学費は免除でランクに応じて月々20万円~60万円の補助金も支給され公共交通機関や施設も無料で利用する事が出来る。無論メリットばかりでなくデメリットというか義務も存在している。
生殖能力のある男性は16歳の誕生日を迎えるとそれ以降、毎月1回、年間12回の精液提供の義務が課せられ近くの設備のある施設にて提供しなければならない、施設は人口管理局の支部、出張所もしくは公立の病院及び保健所にて提供が可能になっている、月2回以上の提供は買取となっている。
Bランク以上の追加処置として、妊娠を希望する女性との抽選による交渉が月に1回行う事が義務づけられている。
18歳までに特定交際者を5名以上選出し20歳までに3名以上と婚約する必要があり25歳までに3名以上と結婚する義務がある。
Dランクの者は減免措置として特定交際者数、および結婚人数の減免措置がある。
生殖能力がないと判断されると丙種労働者もしくは単に丙種と呼ばれ進路は高校ではなく労働者として労働に従事する事になり性別は未男子と記載される
中学卒業後すぐに労働者研修センターへと送られ適性を判断されて適性に応じた研修を2週間ほど受けた後、現場へと送られる。
衣食住(医療も含む)は全て無料で提供され嗜好品等は労働内容に応じて支給される労働手当(2万~10万)で賄われなければならない。
労働内容は軽作業から過酷な肉体労働迄、多岐にわたるが本人の意向は殆んど通る事はない。
現場へと赴くと近くの寮で相部屋の集団生活となり、寮内以外での自由は厳しく制限される。無論、外出はたとえ休日であっても制限され、優良労働者と認められると月に1度の外出が寮周辺に限ってのみ許可がおりる。
帰省に至っては優良労働者の場合年に1度、移動日を除く2泊の外泊が認められるが、実際に帰省する者は少ない、なぜなら生殖能力がないと判った時点で親から見放される場合が多いためだ。
労働は60歳~65歳まで続き、労働内容によって決められた退職金をもらって労働免除となり、好きな場所で老後を送る事が出来るが、退職後も嘱託として残る物も少なくない、なお、退職者には最低限の恩給が生涯支払われる。
殆んどの退職労働者の場合、老後は孤独で寂しく生涯を閉じる事になる。
なお、死後、遺産は遺族への相続権は無く全て国に没収となる為、貯金する習慣はなく使いきりの生活となる。
女性の場合は生殖機能に関係なく高校へと進学する事になるが無生殖者のランクは下と見なされ、基準の成績以下であれば生殖機能ありの従者もしくは、生殖機能がある男性の従者にされる。
従者と言っても現実は奴隷に近い状態なのが現状だったりする為、殆どは女性よりも男性の従者となる場合が多い、女性の場合無生殖者と診断されても妊娠の可能性はそれなりに残っているため妊娠すれば復権となる為である。
卒業後も要職に付く事は少なく家政婦や介護の仕事に付く事が多い。唯一の例外があるとすれば軍へ入隊する事だった、軍隊では女性は生殖機能に関係なく実力主義で出世できる為、不妊女性のほとんどは軍を希望するが現実は狭き門となっている。
妊娠、出産、育児はかなり優遇されている。
出産後の職場復帰は保証されているし有生殖男児ともなれば一時金の他に所得に応じで十分な生活費が保証される。
未産婦より経産婦の方が社会的な地位は遥かに高くなる。当然、男児出産の場合が一番高いのは当然の成り行きだ。
【後書き】
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