■ 姫川修三2
───────────────────────────────
「私は彼の特専のままでいたい、いえ、特専のままでいます。」
「えーーーっ、」
梨沙の答えを聞いて皆が驚く...
「梨沙や、しょうもない意地を張ってどうする?ここはプライドを捨てて一言いえば済む事じゃ。彼も土下座しろとは要求しとらん。儂とて本人の意思でというのは同意できる条件だと思う。もう、立派な大人だから...別に新聞に載せる訳でもないしの、ここだけの話だ。」
「お爺様、違うの、プライドなんかじゃないの。私はこれまで自分は強いと自惚れていた。でも彼にとっては赤子も同然、彼は私を一歩も動かずに降したの...
私は彼の強さが知りたい。ううん、単に力だけじゃない、本気のお爺様を前にして一歩も引かない心の強さを知りたいの。だから特専のままでいたい。
こればっかりはお爺様の頼みでも引けません。」
「ふぅ、やれやれ、そういう訳じゃったか.....」
呆れた顔して俺の顔を見ている。
「お主、どうしてそんなに強い?儂はこれまでさっきのような場面では押し負けた事がなかったが、お主には押し負けてしまった。どうしてその若さでそこまで強いんじゃ...」
「ま、確かに俺はちょっと前まではひ弱だったよ。母親の後ろに隠れる様な子供だったしね。
それが鉱山という過酷な場所で生き残る為に強くなる方法を得た、と言えば分かってもらえるかな...強くなければ生き残れなかったという方が正しい。」
「俺は彼女が特専になれば今の強さを生かして、もっと強くしようと考えてたけど、それは止めた。」
「どうして?」
「爺様に恨まれてまで特専にする意味はない。さっきも言ったように犯罪者じゃないしね。それに一番の理由は飛行機に乗れなくなる。」
「はぁ?」
「ねぇ、夏目君、それってもしかして車の中で話したあれが関係してるの?」
「オフコース!!むしろ爺さんに睨まれる事よりそっちが悲しい」
「はぁ、君ねぇ...少し違うんじゃない...」
「違わない...」
「友里さん儂には話が見えんのじゃが...」
「あっ、それはお連れする時に私が軽飛行機を持ってる話をして、気に入られた様子でしたので今度乗せてあげるという話をしましたので、その事かと」
「じゃ、なにか?梨沙を特専にする事より飛行機に乗せてもらう方がお主にとっては大事なのか?」
「あぁ、大事だな...元々彼女を特専にっていうのは流れでそうなっただけだし、そもそも彼女に思い入れがある訳でもないし怨みもない。だから開放はするけど、俺の流儀として本人の口から聞きたかっただけだよ。」
「儂、疲れた...」
「もう、面倒だから本人承諾なしでも良いよ。でも、解除には本人が行く必要があるし、そこで本人が拒否したら出来ないよ」
「梨沙、君は十分に強い。例えば一般の女性の強さを3ぐらいとして、ちょっと鍛えた人が5ぐらい。護衛課にいた人が10~15ってとこかな?そこで君は38ってとこだ。十分強いじゃない。それで満足できないの?」
「それでも私は強くなりたい。体も精神も、もっともっと強くなりたい。」
「姫川家として特専は出せない...家名に関わるしの...これでも代々続いて来た家だから儂は目の黒いうちは守っていかなきゃならないのだ。分かってもらえるか?」
「うん、だから、もう、条件は無しでいいよ。あっ、飛行機は有りね。」
「梨沙、同意してくれるか?」
「お爺様、ごめんなさい、嫌です。」
「のう、特専にせずに何とかならんのか?」
「無理ですね。一応、秘儀なので精神的な束縛を行いますから...」
「それじゃ、只の専属従者でもだめなのか?」
「あっ、可能ですよ。法的なもの以外は一緒ですから...考えてみればもう一つありますよ。」
「なんじゃ?」
「俺の特定交際者として登録してうちに来ていただく...これでもOKですね。強くしてあげられますけど...まあ、あまり対応に変わりはないんで、変わらないと言えば変わりませんね。」
「特専と特定交際者では月とすっぽんぐらい違うわ...」
メイドがひそひそと爺さんに話している。
「おぬし自分の特専を特専自身の母親の看病に行かせて50万の与信迄与えておるのか?」
「ほぉ、よく調べてますねぇ、って姫川グループは金融も持ってますから、すぐに分かりますか...」
「おぬし特専とはどう考えておる?」
「うーん、専属のメイドみたいなものでしょうか?」
「世間では何をしてもいいおもちゃとしか思われておらんわ。だからうちの家から特専を出すわけにはいかんのじゃよ」
「梨沙や、特定交際者ならどうじゃ?特専と同じようになれるそうじゃ。特交なら儂も安心して許せるしのぉ」
「はい、お爺様、私は彼の元で強くなれるのなら何でもいいんです。」
「はあ、何とかまとまったのぉ...」
「飯でも用意させるか...ちょうど頃合いの時間じゃし...」
「梨沙のお母さん、例の約束はお忘れなく...」
「はい、はい、何時でも良いですよ。」
「お主って特別な染色体を持っておるそうじゃの?」
「そうらしいですね。実感はありませんが...」
「そう言えば、お主のもう一人の特交は40手前というじゃないか...女医も30過ぎというし、お主は年増が好きなのか?」
「アハハ、そこまで調べていたんですか?まあ、否定はしません。だからと言って若いのがダメって事じゃないですよ。好みがそっちってだけです。」
「なに、総理から温游会の話があっての、メインがお主と聞いて調べておったのじゃよ」
「あぁ、それですね、話は聞いてますよ。どうせ政治利用でしょう」
「やはり気づいておったか、あの総理もああ見えてなかなか腹黒じゃからな。いいように使われんようにするがいい。」
「ですね、手のひらの上で上手に踊って見せますよ。」
「ふぉふぉっ、面白い、お主は面白い男よ...気に入ったぞ!」
「爺さん、一つ秘密を教えましょう。
爺さんの左腕はほとんど動かず、指も湯飲みを掴むのも難しいでしょう?」
「ふぉ、よう見とるのぅ...」
「ちょっと拝借しますよ」
俺は爺の手首と腕を掴んでまた戻した後に手を当てた...
声には出さずにハイヒールを唱えると、爺さんの腕が淡く光る...
「うおおっ...なんじゃこりゃ...」
自身の放つ光に恐れるより不安と期待に震えた。
「俺の秘密の一つですからご内密にね。
どうです?もう動きませんか?」
「ん、おおぉつ、動く動く、指もちゃんと動く...そんな馬鹿な...」
「ど、どうして...どうして...」「ま、それも含めて秘密って事です。」
「なぜ、儂を治した...秘密を教える?」
「ふっ、爺さんなら有効に活用する方法を持ってるからですよ。
ちなみにあっちの方も復活させておきましたよ。もち、パワーアップして...」
「俺には見る力と治す力があります。だから強くする事も可能なんです。」
「あのう、今頃気づいたんですけど、梨沙を特交にするのはいいんですが、そうすると嫁にもいけず婿も取れなくなりますがどうします?」
早く気づけよって話なんだが、話が二転三転したものだから飛んでしまった。
「おぬしが婿に来てもいいが、どうせ来る気はないのじゃろ?梨沙の子を跡継ぎにすればいいだけのことじゃよ。それまでは友里に頑張ってもらわんとの。
それくらいは認めてもらわんと...孫娘を持って行くんじゃ、責任を取ってもらわんといかん。孫娘はもう24になる。あまりゆっくりも出来んぞ!わしもそう長くはない...寿命は過ぎとるしのぉ」
「分かってもらえて何よりです。婿に入る気はないです。」(目的からすると婿に入るのもありかも知れないけど、まあ、母さんを泣かせる訳にも行かないからねぇ)
「大丈夫ですよ、利用価値がある間は俺が死なせませんから...」
「此奴、言うわい...精々、利用価値があるよう頑張るかのう」
この世界の男性は射精を酷使されるせいか平均寿命は65歳程度だった。70迄生きるのはかなり長寿と言えた。反対に女性の平均寿命は83歳と男性と比べると格段に長寿だった。
最後まで読んで頂きましてありがとう御座います。
誤字、脱字等ありましたらお知らせ頂けると助かります
気持ち面白いと思われたなら下の方の評価をポチッとして頂けると泣いて喜びます。
ブックマークの方もご検討頂けると嬉しいです。