※この作品はR-18です。

R-18の彼方を越えて    作:シャルとグナ

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 そろそろR-18テイストが出てきます。


< 洞持つ君に(ほこらもつきみに) (3)>

 「ね、どうしたの?」風に逆巻いていた彼女の髪に見とれていた俺は、はっとして我に返った。

「いやね、風に乗ってうねる君の髪を見ていたら我を忘れてしまって…御免!」と俺は頭を下げた。

彼女も自分の髪が大きな魅力を持っている事を知っていた。

「そんなに良かったのなら代金貰おうかっな・・・。」彼女は悪戯っぽく笑った。

「代金?・・・って」今度は俺が難しい顔になった。

「これから先、一緒に居る時の飲食代全てあなたが払って!」彼女の要求は予想外・・・では無かった。

今は「奢る、奢られる」という関係は不必要な人間関係を増やすトラブルの種として嫌われているが当時は「特定の女に奢る権利」を得るには大変な努力が必要で場合によっては経済的負担も半端じゃないものがあったのだ。

しかるに俺はたった一回、レストランでの食事を奢っただけ・・・これはかなり脈有りだぞと俺は心の内でほくそ笑んだ。

武州長瀬は畑が多い、駅前の商店街から彼女の下宿まで直線距離で言えば200mも無い、しかし途中にある畑を迂回しなければならないので500m以上は歩く必要があった。

しかし、俺は今日の彼女の俺に対する態勢から思い切って試してみたい事があった。

畑を回り切り後は彼女の下宿まで一本坂を登れば良い坂の一番下がった所で俺は立ち止まると彼女の両肩を掴みいきなり彼女の唇を奪った。

あまり急激にやったので二人の歯が激突して「ガキッ」という無粋な音を立てた。

彼女は腰が抜けて脇の畑に生えていた朽木に背中から突っ込み彼女の背中は枯木屑にまみれた。

俺は彼女を助け起こすと、入念に枯木屑を落としてやり今度はゆっくりと自分の顔を近づけた。

驚いた事に彼女は逃げもせず俺の前に立ち顔を少し俯けて目を瞑った。

俺は今度はゆっくりと彼女の唇に自分の唇を近づけると彼女は黙って」俺の唇を受けてくれた。

どれ位の時間、くちづけを交わしたろう、やがてどちらかとも無く離れたが彼女ははにかみながら俺の胸板を両の拳で軽く叩き続けた。

「どうしたの?ファースト・キッスだった?」俺は聞くまでも無い事を業と聞いた。

俺の前に少なくとも二人の「彼」がいた事を知っていたがその事には触れず、話をロマンッチクな方に振った。

彼女は俺の言葉には答えず軽くイヤイヤをする様に頭を振った。

空は冬、満天の星空だったが俺は何をとち狂ったか、「ああ、綺麗な月だなぁ」と自分の内側の混乱を曝け出してしまった。

やがて二人は元通り手を組んで彼女の下宿を目指して歩き始めた。

二人とも無言のまま彼女の下宿の門の脇まで来た、と彼女が歩みを止めた、門の内側から大家に二人でいる所を見られたくないのだと俺は感じた。

門の直ぐ脇には電柱が立っており、電柱には裸電球の街灯が灯っていた。

その光を背負った彼女の顔は真っ黒に塗り潰され表情を窺う事は出来ず、俺を許すのか、許さないのか、彼女の心を知る事は出来なかった。

「今日は楽しかったわ、色々な意味で。ウフッ。」それは彼女の”許し”だった。

「じゃぁ、俺はこれで。」余計な事は言わないこれも”青春のバイブル”で学んだ事だ、俺は彼女から俺の姿が見えなくなるまで業とゆっくり歩んだ。

彼女の姿が完全に見えなくなるとおれは駅に猛ダッシュした、危うく列車に遅れる所だったが列車に乗り込んで誰も居ない車内で俺はガッツポーズをしていた。

何故なら”青春のバイブル”には『女性と付き合って口付けを交わす事が出来たならその女性と”肉体関係”を結ぶのは造作もない。』と書かれてあったからだ。

一人だけでのぼせ上がった俺を乗せた列車は坂戸駅に向かって闇を切り裂いて行った。

 

 翌日、研究室に行くとまだ朝も早く普段なら誰も来ていない時間だったが、もう既に彼女は出室し、白衣を羽織って実験を始めていた。

「おはよう。」俺が声を掛けると彼女は試験管を持ったままおれに近づき言った。 「判っていると思うけど昨夜の続きは今晩ね。 (それまでは他人の振りよ。)」と・・・。

<ははぁ、関係は続けるけれどそれは秘密って事か…。>ま、今の俺に嫌も応も無い、どこまで行けるか突っ走ってみるだけだ。

 その日一日研究室でのルーティン・ワークをこなし、二人は時間をずらして退室した。

川角の駅に着くと彼女は既に来ていたが、川角ではまだ人の目が多い、二人は越生方面に向かう列車が来ると別々の車両に乗り込み隣の武州長瀬駅で降りた。

人の波が改札口を通って街に消えて行く、その最後の一人が改札を抜けると彼女は待ってましたとばかりに俺の左腕に留まった。

俺は改札を抜けてからでないと都合が悪いと考えたが彼女は俺の腕を取ったまま器用に俺の後ろに回り駅員に定期を見せて改札を通過した。

<・・・慣れてるってか?>彼女の直ぐ前の彼氏も武州長瀬に住んでいたが、彼はもっぱら車専用の男だったので彼氏との付き合いで身に付けたスキルでは無いと俺は判断した。

駅から完全に出ると彼女は言った。「昨日の約束覚えているわよね。 今夜は何を食べさせてくれるの?」

「昨日が洋食だったから今日は和食かな。」俺は彼女が「何が食べたい?」と聞かれるのを待っているのを感じた。

しかし”青春のバイブル”はこうした状況になった時、決して女性の希望を聞いてはならない、と教えていた。

女性は思いがけないハプニングを期待しているのである。 選択を振られると自分の希望が叶うのは嬉しいがドキドキ感が無くなるのは嫌なのだ。

「和食って お寿司…?」彼女が上目使いに俺の顔を見た。

「そんなに俺が裕福に見えるかい? まぁ黙って付いてきなよ。」

俺が一軒の店の前に立ち止まり、暖簾を持ち上げて内に入ろうとすると彼女が俺の腕を引っ張って止めた。

「ここ、うなぎ屋じゃない! 寿司とあまり変わらないわよ、ここでも奢られたら私どうしていいか…。」彼女は完全に戸惑っていた。

<寿司だろうがうなぎだろうが身体で払って貰うから関係ないさ。>心の中でそんな悪魔的な事を呟きながら俺はショー・ケースの中の食品サンプルの一つを指差した。

「何これ?」その食品サンプルは「うな玉丼」だったが埃にまみれそれが何か判別する事さえ困難だった。

「まぁいいから、黙って入る。」おれは彼女の背を軽く押して店内に入った。 そこは如何にもと言った感じの場末の店だった。

やがて店員が注文を取りに来たので俺は「うな玉丼」を頼もうとしたが思いついた事があったのでまず彼女に「トロロ汁」を食べれるかを聞いた。

食べれるとの返事に俺は「うなトロ丼」が作れるか、店員に聞いた。

店員は一度厨房に引っ込み出来るかどうかを聞いてくれ、「出来る」との事だったので「うなトロ丼」を二つ注文した。

「なあに?うなぎとトロロ汁の組合せ?美味しそう、面白い!」彼女は二日に渡って未知の味を知る事になる歓びにルンルンしていた。

 やがて料理が運ばれて来た、それを見た彼女は眼を輝かせて言った。

「綺麗! 雪が積もったみたい!」

俺は本当に彼女が満足してくれるのか、その本心を確かめるため「頂きます。」と手を合わせながら言って箸を取った。

彼女も俺に合わせ箸を取ると丼を持ち上げうなぎと米をトロロ汁で絡める様に啜った。

「おいし~っ、これ本当に高くないの?」彼女は味と値段の釣り合いに拘った。

「さて、時間があまりない、早めに食べちゃって!」と俺が言うと彼女はクスッと笑うと丼の残りをかっ込んだ。

支払いを済ませ、俺と彼女は通りに出た。

寒風吹きすさぶ通りを歩き彼女の下宿の前に出た。 「ねぇ、コーヒー飲んでかない。」彼女の方から誘いがあった。

「いいのかい?」俺は玄関口でこちらを窺っている大家さんの方に目をやった。

「大丈夫、まだ時間も早いし、コーヒー・タイム位問題無いわ」彼女は待ち構える大家の前まで俺の手を引き大家に紹介すると許可を貰って自分の部屋に俺を連れ込んだ。

これでは立場が逆である、”青春のバイブル”にも女が積極的な場面の事はあまり書かれて居なかった。

そこで俺は彼女のリードにとりあえず従ってみる事にした。

 彼女の部屋に入ると彼女は俺のコートを脱がし 衣文(えもん)かけに掛けて壁の桟に引っ掛けた。

そして自分のコートも脱いで 衣文(えもん)えもんかけに吊るし俺のコートの左隣の桟に並べて掛けた。

「外に居る時、こんな風に私達見えているのね。」それは俺には理解出来ない感性だったが彼女が次に起こした行動はあまりにも大胆で俺の肝も消えかかった。

立ち尽くす俺の首に両手を掛け俯いて目を瞑り口を突き出したのだ。

これはどう見ても接吻の催促である、<コーヒーはどうした!>と突っ込みたくなったが折角彼女がより優れた持て成しを用意してくれたのだ、これに応えねば男がすたると思い彼女の唇に俺は自分の唇を合わせた。

 やがて二人は並んで炬燵に入ったが彼女は炬燵に入ると直ぐ自分の髪を掻き揚げて畳の上に広げた。

彼女の髪は長い、そのまま横になると自分の髪を背中で引っ張ることになる、だから…と言うにはあまりにも官能的な光景だった。

横になった彼女の頭を中心に長い髪があたり一面に広がっている、この官能的な光景を見た俺はいままでの遠慮がちなキスではなく彼女を味わい尽くすディープ・キスに切り替えた。

彼女も唇を半開きにして俺の舌を向かい入れた、そして彼女の歯茎を上下とも丹念に辿り、やがて二人はお互いの舌を絡み合わせ深い交わりの時を持った。

彼女の元を辞すると俺は武州長瀬の駅に急いだが、あまりにも"青春のバイブル"の記述どおりに事態が進んでゆくので俺はどんどん調子に乗っていった。

 

 




さっさとしろ? 慌てない慌てない、徐々に濃厚になります。

衣文(えもん)かけ→ハンガーの事です。
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