どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた 作:布施鉱平
マリアベルは、自分のために用意された部屋でベッドに腰掛け、少年の訪れを待っていた。
その顔は風呂上りだというのに青ざめ、膝の上に置かれた両手は爪が白くなるほど固く握り締められている。
「…………」
振るえる拳をゆっくりと開き、マリアベルは巻きつけたシーツの隙間から自分の体に手を伸ばした。
張りのある肌が、指先に触れる。
そのまま柔らかな胸、肉の足りない腹、小さなおへそと、確認するように動かしていき……
下腹部へ手を伸ばそうとしたところで、マリアベルは動きを止めた。
その先にあるのは、仲間たちにすら隠し続けてきたマリアベルの
「…………っ」
唇を噛み、マリアベルは声にならない呻きを漏らした。
悲しみがこみ上げ、胸が押しつぶされそうになる。
リディアたちが幸せを得たことは、素直に嬉しいと思っている。
アレックスが妊娠したことも、いずれ他の仲間たちも同じように子供を得るだろうということも、心から祝福している。
悲しいのは、自分がその輪には加われないことだった。
もし少年が、リディアたちと同じようにマリアベルのことを受け入れてくれたとしても、最後の最後、いざことに及ぼうとする時には、必ずマリアベルの
そうなれば、どれだけ少年が優しい心の持ち主であろうと、マリアベルを抱くことはできないだろう。
優しさだけで、人を愛することはできないのだ。
────コン、コン
ノックの音に沈んでいた思考を引き上げられ、マリアベルは慌ててシーツの中から手を引き抜く。
それと同時に、
「入るぞ、マリア」
ノックの返事を待つことなく、リディアが部屋に入ってきた。
その後ろには、当然少年の姿もある。
「待たせたな。体を冷やさなかったか?」
「……いえ、大丈夫です」
「そうか。それはよかった、じゃあ私は────」
「あの!」
と、少年を置いてすぐに出ていこうとしたリディアの言葉を遮り、マリアベルが声を上げた。
「ん、どうした?」
ドアに向かおうとしていたリディアが振り返る。
「あの……やっぱり私……できません」
「…………」
「……その
マリアベルは立ち上がり、震えながらも身を包むシーツに両手をかけた。
そして、数瞬の迷いを見せたあと、顔を背けながらそれを左右に開いていく。
「マリア……おまえ……」
「◇%$#!」
リディアが思わず声を詰まらせ、少年もまた驚きの声を上げた。
シーツの下から現れた、マリアベルの裸体。
普通の人間であれば目を背けたくなるような醜い体だが、二人は目を逸らすことなく凝視する。
なぜなら…………
…………マリアベルの股間には、一本の毛も生えていなかったからだ。
◇
無毛症────
それは、豊かな陰毛が強いセックスアピールとなるこの世界において、侮蔑と嘲笑の的とされる惨めな遺伝性疾患だ。
どれだけ見目麗しい女でも、陰部に毛がないだけで男からは敬遠され、女からは見下される。
ましてや、それが外見すらも醜い女ならばなおさらだ。
『おい、見ろよ! こいつツルツルだぜ!』
『うわっ、キモッ』
『死ねよブス』
まだマリアベルが修道院に入っていた少女時代に浴びせられた、心無い
毎日のようにいじめられ、馬鹿にされ、その度にマリアベルの心は傷ついていった。
何年も、何年もかけて培われてきた、毛が生えないという
それは、もう二度と自分の体を人には見せないと誓わせるのに十分な理由となり、事実マリアベルはその誓いを守り通してきた。
「ふっ、はははっ」
突然聞こえた笑い声に、マリアベルは全身の血が冷えていくのを感じた。
それは誰あろう、リディアの笑い声。
この世で唯一信頼できる『仲間』から向けられたものだった。
世界が崩れ落ちるような絶望が、マリアベルの心を支配した。
一度見下されてしまえば、二度と対等な関係に戻ることはできない。
今この瞬間、マリアベルは彼女を支えている全てを失ったのだ。
手の力が抜け、シーツが床に落ちる。
情けなくて、悔しくて、悲しくて、溢れた涙が頬を伝っていった。
「あ~……すまん、マリア。お前のことを笑ったわけじゃないんだ」
だが、次にリディアからかけられたのは、侮蔑や嘲笑の言葉ではなかった。
「やっぱり杞憂だったと安心したら、思わず笑ってしまっただけなんだよ」
「それは……どういう……」
ふっ、とまた短い笑いを発して、リディアが少年をマリアベルの方に押し出した。
「自分で確認してみろ、マリア」
「…………」
リディアに言われるままに、マリアベルは少年に向けて魔力を放つ。
「…………えっ!?」
そして戻ってきた魔力から得た情報に、驚きの声を上げた。
「だからいっただろう? 彼を信じろと」
リディアが得意げに言うが、もはやマリアベルの耳にその声は届いていない。
次第に顔色が赤みを帯びていくマリアベルの意識は全て、少年の股間で