どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた 作:布施鉱平
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
少年とマリアベルが愛を交わし合う部屋のすぐ外では、四人の女が窮屈そうな姿勢で中を覗き込んでいた。
もはや恒例行事となっている、『初めてセックスする仲間を優しく見守る行為|(たてまえ)』だ。
「マリア、すごいわね……あんなにいやらしく腰を動かして……」
「吹っ切れたんだろう。普段は雄々しいと感じるくらいに大人しいが、マリアだって女だからな。彼のように可愛らしい男から迫られれば、どれだけ自分に自信がなかろうと尻込みなどしていられないさ」
四つん這いの姿勢で呟くミゼルに、中腰のリディアが答える。
両手両足をついているミゼルはともかく、ほぼ空気椅子のような状態を維持し続けているリディアが膝も声も震わせていないのは、さすがA級冒険者だと言えよう。
「マリアが吹っ切れたのはいいんだけどよ……なぁルナ、なんだか首の後ろが濡れてるような気がするのはなんでだ?」
二人に覆いかぶさるようにして壁に手を付いていたアレックスが、首を回しながら尋ねた。
その視線の先にあるのは、アレックスの肩に
「……女だから」
ルナが、もぞもぞと腰を揺すりながら答えた。
「『女だから』じゃねぇっ! おまえ、人の上でなにしてやがるっ!」
「……首の後ろの骨が、ちょうどいいところに出っ張ってるのが悪い」
「……っ! 降りろ、このっ!」
怒声とともに伸ばされたアレックスの手をすっと
そして、
「……わたしはちょっと、自分の部屋にこもってくる」
そう言うと、残像を残しながら消えた。
「くそっ! あいつ、いつかぶん殴ってやる……っ!」
「やめとけ、ルナに一撃入れるのはお前でも至難の業だ。それよりアレックス、風呂に入ってきたほうがいいんじゃないか?」
「さっき入ったばかりだってのによ……うぉっ、背中の方にまで垂れてきたっ!」
「ほら、早く行ってこい」
「うぅっ、散々だぜ……」
怒りから一転して情けない顔になりながら、アレックスが風呂場へと去っていく。
残されたリディアとミゼルは苦笑しながらアレックスを見送り、また視線を部屋の中に戻した。
すると、ちょうどそのタイミングでマリアベルが控えめな嬌声を上げ、白い背中をのけぞらせているのが見えた。
尻の肉をきゅっと引き締め、少年の射精に合わせてビクビクと腰を震わせている。
「……一度も抜かないわね、マリア」
ミゼルが、ぽつりと呟いた。
確かに、マリアベルは少年が何度射精しようと決して結合を解こうとしない。
腰も上下に動かすのではなく擦りつけるようにねっとりと回し、膣内に少年のチンポを完全に収めたままでセックスをしている。
それは、リディアやミゼルの知らないセックスだった。
あれではカリで膣壁を抉られたり、子宮を強く叩かれるような激しい快楽は得られないだろう。
だが、二人は気づいた。
深く繋がったままだということは、マリアベルの子宮口と少年のチンポがずっとキスをしている状態なのだということを。
そして、少年が射精した回数に比べて二人の結合部から漏れ出る精液の量が少ないのは、そのほとんどがマリアベルの子宮に直接注ぎ込まれているからなのだということを。
((私も今度、アレをやろう……))
ゴクリと唾を飲み込んだ、リディアとミゼルの心の声が重なった。
少年の精液を子宮が重くなるほど注ぎ込まれることを想像しただけで、体の奥が熱く疼いた。
「ん、こほんっ。マリアはもう大丈夫そうだし、のぞ……見守るのはこれくらいにしておくか」
「そ、そうね。そうしましょう」
そっと扉を閉めた二人は、若干内股になりながらそれぞれの部屋に帰っていく。
そこで何をするかなど、もはや言うまでもないことだった。
◇
仲間たちに見守られながらのセックスを終えてから数時間後────
マリアベルは、隣で眠りにつく少年の柔らかな髪を撫でながら、穏やかな笑みを浮かべていた。
それは、かつて彼女の両親が互いに向け合い、マリアベルに対しても向けていたものと同じ表情。
自分自身よりも大切なものに対して向ける、慈愛の微笑みだ。
「……ふふっ」
小さな笑い声を漏らし、マリアベルはもう片方の手を自らの腹部に当てた。
今もなお熱を帯びているその部分は、少年によって注ぎ込まれた精液で溢れんばかりに満たされている。
そしてもちろん、満たされているのは子宮ばかりではない。
「私、幸せです」
ふいに口をついて出た言葉は、つい先日までの彼女からは考えられない言葉だった。
両親を失って以来、マリアベルは自分の心を罪悪感や喪失感といった暗闇で塗り固め、幸せだった過去や未来に夢見る希望をその中に押し込めて生きてきた。
自らの目を閉ざし、心を閉ざし、それ以上傷つくことがないように逃げ続けてきた。
しかし、もう逃げる必要はない。
いや、逃げるわけにはいかないのだ。
なぜならマリアベルには、守るべき存在ができたのだから。
マリアベルは少年の頭から手を離すと仰向けになり、両手を自分の顔にかざした。
「〈
力ある言葉が紡がれ、金色に輝く光が閉じられた両目に吸い込まれていく。
〈
その効果には、欠損部位の修復も含まれている。
光が収まり、マリアベルはかざしていた両手をどけると、静かに体を起こしていった。
そして、すやすやと寝息を立てる少年の上に顔を移動させる。
最初に見るものは、もう決めていた。
長年閉じられていた瞼がゆっくりと開かれていき、痛みを感じるほどの光が差し込んでくる。
完全には機能が回復していない視界にぼんやりと影が写り、少しずつ、少しずつその輪郭をはっきりとさせていく。
そして────ぱっちりと開かれた青い瞳に、最愛の人の姿が写しだされた。
癖のある黒髪、少し上を向いた小ぶりな鼻に、健康そうな丸い頬。
こんなにも可愛らしい少年が自分を愛してくれたのかと思うと、喜びで胸が張り裂けそうだった。
取り戻したばかりの視界が涙で歪み、少年の姿がまたぼやけたものになってしまう。
だが、かまわなかった。
すでに少年の姿は脳裏に焼き付けているし、彼の元を離れるつもりもない。
マリアベルは
だから────
「愛しています」
心からの想いを込めて
「貴方のことを守ります」
かつて成し得なかった事への謝罪ではなく
「私の全てを捧げます」
光を与えてくれた、かけがえのない存在に対し
「私の────天使様」
マリアベルは、誓いのキスを落とした。