※この作品はR-18です。

どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた   作:布施鉱平

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彼女たちと少年(アレックス)1

 かつて、アレックスは自分が無敵だと思っていた。

 

 自分に弱点などないと、誰にも負けることなどないと、本気でそう思っていた。

 

「ぐっ……! うぅぅぅぅっ!」

 

 しかし今、彼女は身を持って、それが幻想(・・)に過ぎなかったのだと思い知らされていた。

 

「あっ、ぐっ!」

 

 アレックスは苦悶に顔を歪め、抵抗すらできない一方的な蹂躙(じゅうりん)にその身を弄(もてあそ)ばれる。

 

 弱点は、あったのだ。

 

 彼女自身も気づかないような場所に、確かに存在していたのだ。

 

 そこを責められた瞬間、アレックスは抵抗する力も、気力も全て奪われ、まるでずぶ濡れの子猫のように無力な存在となってしまっていた。

 

「ひっ、ひぅっ…………かはっ!」

 

 息が詰まり、視界は涙で滲(にじ)み、口から漏れ出る悲鳴にも似た声を抑えることすらできない。

 

 今のアレックスに出来るのは、ただ耐えることだけだ。

 

 だが、それにも限界はある。

 

 どれだけ強靭な肉体を持っていようと、どれだけ戦士として優秀であろうと、アレックスもまた『人』でしかないのだから。

 

「う…………うぅぅっ…………」

 

 呻きとも嗚咽(おえつ)ともつかない情けない声が、アレックスの口から漏れた。

 

 心は、既に折れていた。

 

 いや、己(おのれ)が敗北するという予感は、戦う前からすでにあったのだ。

 

 なぜなら────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…………うにゃぁぁああああああああああっ!!♡♡」

 

 彼女の肉体を完膚なきまでに(性的に)蹂躙しているのは、他ならぬ最愛の少年なのだから。

 

 一体、なぜこのようなことになったのか。

 

 事(こと)の発端(ほったん)は、数日前の夜に遡(さかのぼ)る。

 

 

 

 ◇

 

 

 その日は、マリアベルが少年の世話係だった。

 

 二人は風呂にも入り終わり、既に部屋に篭(こも)っている。

 

 今頃はベッドの上で情熱的に睦(むつ)み合っていることだろう。

 

 仲間が全員揃った後の話し合いで、『もう勝手に互いの情事は覗かない』という約束事が決まっていたので、残りのメンバーは自然とリビングに集まることが多くなっていた。

 

 リディアは自分でつまみを作って軽く酒を飲み、ミゼルは片手に本を持ちながらそれに付き合い、思い思いの時間を過ごしている。

 

 そんな中────

 

「────は、はぁっ!? なに言ってんだチビエルフ! うそつくんじゃねぇよ!」

 

 リビングに、アレックスの怒声が響いた。

 

 それ自体はさして珍しいことではない。

 

 ルナがアレックスをからかい、アレックスがルナを追い掛け回す。

 それははぐれ者たち(マーヴェリックス)の面々にとっては、見慣れた光景に過ぎないからだ。

 

 しかし今回、アレックスが上げた声の中には、単純にからかわれた(・・・・・・)だけとは言えない、焦りのようなものが含まれていた。

 

「……バカ虎は、お子ちゃまだから、知らないだけ。……大人の女なら、みんな知ってる」

 

 ルナの言葉にも、いつものようなただのからかい(・・・・)ではなく、なにかを言い含めるような、諭(さと)すような…………それでいてやや上から目線のような、そんな空気が含まれている。

 

「ぜ、絶対うそだ! おれは騙されないぞ! なあリディア、こいつが言ってるのはうそだよな!?」

 

 ルナの言葉に動揺しつつも、アレックスは助けを求めるように、リディアに声をかけた。

 

 しかし、

 

「────いや、アレックス。ルナの言っていることは、本当だ」

 

 ウイスキーの注がれたロックグラスを軽く回し、カランと音を鳴らしながらリディアが放った言葉は、さらにアレックスを愕然とさせるものだった。

 

「そ、そんな…………うそだろ…………?」

 

 すぐには認められず、アレックスは頭を振って後ずさった。

 

 そして、リビングにいたもうひとりの人物、ミゼルに救いを求めるような視線を向ける。

 

「アレックス…………ルナとリディアが言っていることは本当よ。そういうこと(・・・・・・)は、一般的とは言えないけれど、確かにあるわ」

 

 だが、博識なミゼルからもまた、ルナの言葉を肯定(こうてい)するような答えが返ってきた。

 

 膝から力が抜け、アレックスは床に両手をつき、うなだれる。

 

「そんな……それじゃあ、ほんとだっていうのか?」

 

 そして、誰に聞くでもなく、震える声でそう呟(つぶや)いた。

 

「ああ、本当だ」

「……わたしは、うそつかない」

「信じられないかもしれないけど、それが現実よ。アレックス」

 

 呆然(ぼうぜん)と床を見つめるアレックスの頭上から、三人のダメ押しの言葉が覆いかぶさってくる。

 

 それはつまり────

 

「じゃあ…………じゃあ、ほんとに…………し…………し…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………尻の穴でも、セックスって、するのか?」

 

 ────そういうことだった。

 

「だからそう言っているだろう、アレックス」

「で、でも、尻の穴だぞ!? そんなところにアレ(・・)を入れるなんて、おかしいだろ! あそこは出す(・・)ところだぞ!?」

 

 アレックスの言っていることは、正論だろう。

 後ろの穴でセックスをするなど、生物としての仕組みを無視した行為でしかない。

 

 だが、

 

「アレックス…………それでもあえてヤル(・・)のが、人という生き物の性(さが)なのよ」

 

 ミゼルが、なにか達観したような表情で、そう告げた。

 

 言っていることはある意味下ネタなのだが、そういう表情で言われると、なんだかひどく含蓄(がんちく)のあることを言われているような気がするから不思議だ。

 

 そして、その言葉を真剣に受け取ってしまったアレックスは、「あれ、ほんとうにおれがおかしいのか?」と、さらに追い詰められた心理状態になってしまう。

 

「……バカ虎には、まだ早い。 ……もうちょっと大人になったら、ね」

 

 そこへ追い打ちの、ルナからの上から目線発言である。

 

「う、うぅぅ…………」

 

 

 

 自分の常識を覆(くつがえ)され。

 

 

 

 大人ぶったルナに、上から目線で子供扱いされ。

 

 

 

 限界まで追い詰められたアレックスは、ついに────キレた。

 

 

 

「…………うがぁぁぁぁぁっ! ……いいぜ、やってやる、やってやるよ! おれだって、それくらいできるってことを見せてやるよ!」

「……見てていいの?」

「そういう意味じゃねえっ! …………くそっ、おぼえてろチビエルフっ!」

 

 雌叫(めたけ)びとともに爆弾発言をしたアレックスだったが、ルナに茶化されると急に恥ずかしくなったのか、小悪党のような捨て台詞を吐くとリビングから逃げ出すように走り去っていった。

 

「…………いいんだろうか、あのまま放っておいて」

 

 その背を見送ったリディアが、少し心配そうに呟(つぶや)く。

 

「大丈夫よ。土壇場(どたんば)になってアレックスがほんとうに嫌がったら、あの子は無理にしたりしないわ」

「……これも、人生経験」

 

 だが、ミゼルとルナは、あっけらかんとそう返してきた。

 

「まあ……それも、そうだな」

 

 確かに、少年に任せておけば悪い結果にはならないだろう。

 

 最終的にはリディアもそう判断し、これ以上この件について考えるのは、やめることにしたのだった。

 

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