どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた 作:布施鉱平
かつて、アレックスは自分が無敵だと思っていた。
自分に弱点などないと、誰にも負けることなどないと、本気でそう思っていた。
「ぐっ……! うぅぅぅぅっ!」
しかし今、彼女は身を持って、それが
「あっ、ぐっ!」
アレックスは苦悶に顔を歪め、抵抗すらできない一方的な
弱点は、あったのだ。
彼女自身も気づかないような場所に、確かに存在していたのだ。
そこを責められた瞬間、アレックスは抵抗する力も、気力も全て奪われ、まるでずぶ濡れの子猫のように無力な存在となってしまっていた。
「ひっ、ひぅっ…………かはっ!」
息が詰まり、視界は涙で
今のアレックスに出来るのは、ただ耐えることだけだ。
だが、それにも限界はある。
どれだけ強靭な肉体を持っていようと、どれだけ戦士として優秀であろうと、アレックスもまた『人』でしかないのだから。
「う…………うぅぅっ…………」
呻きとも
心は、既に折れていた。
いや、
なぜなら────
「う…………うにゃぁぁああああああああああっ!!♡♡」
彼女の肉体を完膚なきまでに(性的に)蹂躙しているのは、他ならぬ最愛の少年なのだから。
一体、なぜこのようなことになったのか。
◇
その日は、マリアベルが少年の世話係だった。
二人は風呂にも入り終わり、既に部屋に
今頃はベッドの上で情熱的に
仲間が全員揃った後の話し合いで、『もう勝手に互いの情事は覗かない』という約束事が決まっていたので、残りのメンバーは自然とリビングに集まることが多くなっていた。
リディアは自分でつまみを作って軽く酒を飲み、ミゼルは片手に本を持ちながらそれに付き合い、思い思いの時間を過ごしている。
そんな中────
「────は、はぁっ!? なに言ってんだチビエルフ! うそつくんじゃねぇよ!」
リビングに、アレックスの怒声が響いた。
それ自体はさして珍しいことではない。
ルナがアレックスをからかい、アレックスがルナを追い掛け回す。
それは
しかし今回、アレックスが上げた声の中には、単純に
「……バカ虎は、お子ちゃまだから、知らないだけ。……大人の女なら、みんな知ってる」
ルナの言葉にも、いつものようなただの
「ぜ、絶対うそだ! おれは騙されないぞ! なあリディア、こいつが言ってるのはうそだよな!?」
ルナの言葉に動揺しつつも、アレックスは助けを求めるように、リディアに声をかけた。
しかし、
「────いや、アレックス。ルナの言っていることは、本当だ」
ウイスキーの注がれたロックグラスを軽く回し、カランと音を鳴らしながらリディアが放った言葉は、さらにアレックスを愕然とさせるものだった。
「そ、そんな…………うそだろ…………?」
すぐには認められず、アレックスは頭を振って後ずさった。
そして、リビングにいたもうひとりの人物、ミゼルに救いを求めるような視線を向ける。
「アレックス…………ルナとリディアが言っていることは本当よ。
だが、博識なミゼルからもまた、ルナの言葉を
膝から力が抜け、アレックスは床に両手をつき、うなだれる。
「そんな……それじゃあ、ほんとだっていうのか?」
そして、誰に聞くでもなく、震える声でそう
「ああ、本当だ」
「……わたしは、うそつかない」
「信じられないかもしれないけど、それが現実よ。アレックス」
それはつまり────
「じゃあ…………じゃあ、ほんとに…………し…………し…………
…………尻の穴でも、セックスって、するのか?」
────そういうことだった。
「だからそう言っているだろう、アレックス」
「で、でも、尻の穴だぞ!? そんなところに
アレックスの言っていることは、正論だろう。
後ろの穴でセックスをするなど、生物としての仕組みを無視した行為でしかない。
だが、
「アレックス…………それでもあえて
ミゼルが、なにか達観したような表情で、そう告げた。
言っていることはある意味下ネタなのだが、そういう表情で言われると、なんだかひどく
そして、その言葉を真剣に受け取ってしまったアレックスは、「あれ、ほんとうにおれがおかしいのか?」と、さらに追い詰められた心理状態になってしまう。
「……バカ虎には、まだ早い。 ……もうちょっと大人になったら、ね」
そこへ追い打ちの、ルナからの上から目線発言である。
「う、うぅぅ…………」
自分の常識を
大人ぶったルナに、上から目線で子供扱いされ。
限界まで追い詰められたアレックスは、ついに────キレた。
「…………うがぁぁぁぁぁっ! ……いいぜ、やってやる、やってやるよ! おれだって、それくらいできるってことを見せてやるよ!」
「……見てていいの?」
「そういう意味じゃねえっ! …………くそっ、おぼえてろチビエルフっ!」
「…………いいんだろうか、あのまま放っておいて」
その背を見送ったリディアが、少し心配そうに
「大丈夫よ。
「……これも、人生経験」
だが、ミゼルとルナは、あっけらかんとそう返してきた。
「まあ……それも、そうだな」
確かに、少年に任せておけば悪い結果にはならないだろう。
最終的にはリディアもそう判断し、これ以上この件について考えるのは、やめることにしたのだった。