どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた 作:布施鉱平
「…………」
「…………」
ルナは少年と二人きりでベッドの前に立っていた。
互いに無言である。
つい十分ほど前、ミゼルによって引き止められたルナは、彼女のあまりにも真剣な説得に押し切られ、気付けば少年と共に寝室に閉じ込められていた。
「…………」
ルナは恐る恐る、その銀色の瞳を少年に向けた。
少年がどんな目で自分を見ているか、恐ろしかったのだ。
人間に換算すると十代前半にしかならないルナは、種族的な特徴からも背が小さく体が細い。
胸、腹、尻が同程度に太っていることこそ美しいとされる世界で、その白く肉付きのない体は死体のように忌避されていた。
『
だが────
「…………っ!?」
少年は、キラキラとした瞳でルナのことを見つめていた。
その夜を閉じ込めたかのような黒く美しい瞳に、軽蔑や恐れは見られない。
「%◇#?」
少年が何かを尋ねてきた。
内容は分からないが、首を
ルナは纏っていた深草色のローブをギュッと掴むと、迷った末にそろそろと脱いでいった。
中に着ているのは、綿で出来た薄い半袖のチュニックだけだ。
隠すべき死人のような腕も、脚も、ほとんど見えてしまっている。
なのに、少年の表情は変わらなかった。
いや、むしろ頬が紅潮し、興奮しているようにすら見える。
「……怖くないの?」
震える声を抑え、ルナは尋ねた。
言葉の通じない少年に話しかけても、それが独り言のようなものだとは分かっている。
それでも、尋ねずにはいられなかった。
「&○△、#%◇×」
聞かれた意味など分からないだろうに、少年は笑顔で答えてくれた。
どくん、とルナの心臓が跳ねた。
少年が「すごく綺麗だよ」と言ってくれたような気がしたのだ。
「…………」
今度は迷いなく、ルナはチュニックを脱ぎ去った。
中には何も着ていない。
薄い胸、薄い尻、少しアバラの浮いた体。
それを全て、少年の前に晒す。
そして、少年が反応を見せる前にルナはベッドに腰掛けると、細い脚を大きく開いてぐいと股間を突き出した。
「……本当にそう思ってくれてるなら……舐めて」
祈るように呟き、ルナは静かに目をとじた。
自分でもバカなことをしていると思う。
どこの世界に、エルフの股間を舐めるような男がいるだろうか。
期待なんかしない。
ルナの髪の毛がおぞましい銀色であるように、申し訳程度に薄く生えている陰毛も、また銀色だ。
老いて死に近づいた老人のような色なのである。
ルナは意識して、自らの鋭敏な聴覚も封印した。
例え目を閉じていても、優れた狩人であるルナは、ほんの少し少年が音を出すだけでその動きを察知してしまう。
去っていく少年の足音など、聞きたくなかった。
「……こんなことしたって、結局無駄。……エルフに触れられる男なん……ひゃいっ!?」
自らが作り出した無音の暗闇をごまかすように呟いている途中で、ルナの体に衝撃が走った。
何が起きたのか、全くわからなかった。
股の間に生暖かい空気を感じた、次の瞬間。
腰が跳ねていた。
ヌルリ、と熱くて柔らかいものが触れた。
分かったのはそれだけ。
それだけで、頭のてっぺんから脚の先まで、まるで雷にでも打たれたかのような痺れが走り、ルナは硬直したのだ。
太ももと腰だけが、別の生き物のようにガクガクと震えている。
ルナは混乱して、目を開いた。
そして、思考が停止する。
少年の顔が、ルナの脚の間にあったからだ。
まるで現実味がなかった。
あまりの衝撃に、心と体が分離してしまったかのようだ。
少年の顔は、ルナの股間で未だに蠢いている。
ということは、さっきの熱いヌメりは舌なのだろう。
少年の舌が、ルナの股間を舐めたのだ。
たった一度。
それだけでルナの腰が跳ね、意識が飛ぶほどの快楽が襲いかかったのだ。
おそらく、ひと舐めされただけで絶頂してしまったのだろう。
(……待って)
ルナは先程までとは別の意味で恐怖していた。
離れていた心が、だんだん体に近づいていくのが分かるのだ。
少年は、ルナのアソコを舐め続けている。
たったひと舐めで絶頂させられたというのに、今戻ったりしたら…………
(…………あ)
(…………あぁ)
(…………あぁぁぁぁああああ)
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!!♡♡♡」
心が戻った瞬間、ルナは『死ぬ』と思った。
気持ちよすぎて死ぬと、冗談でもなんでもなく本気で思った。
舐められているのはアソコなのに、ギュッと丸めた脚の指先までが気持ちいい。
「あ゛ぁ゛っ゛!♡ ん゛ん゛っ゛!♡ ん゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!♡♡」
少年は止まらなかった。
ルナが死にかけているというのに、躊躇することすらなかった。
陰唇を、膣穴を、クリトリスを、尿道を、さらにはアナルまでもを少年の舌が這い回る。
「ん゛き゛ぃ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛っ゛!!!♡♡♡」
歯を食いしばり、髪を振り乱し、ルナは絶頂した。
絶頂し続けた。
少年の舌が二度動くたびに一回はイッた。
死ぬ前に狂うだろうと、ルナは確信した。
悲しみや怒りではなく、幸せすぎて狂うこともあるのだと、初めて知ったのだった。
◇
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
いつの間にか、ルナは処女ではなくなっていた。
卒業した瞬間のことなど、全く覚えていない。
気づけば、自分の上に少年が覆い被さっていた。
「あっ♡ いいっ♡ すごい♡ すごいの♡」
始めの頃に感じた体を突き抜けるような快楽は治まった。
だが代わりに、ルナは熱い泥の中にいるような重くてしつこい快楽の中に沈んでいた。
「ねぇっ♡ あっ♡ 好きっ♡ 好きなの♡」
自分が壊れたことを、ルナは自覚していた。
以前のルナは、なにが起ころうと自分の感情を表に出すことなどなかった。
仲間に対してすら無表情を通していた。
それはルナに感情がないからではない。
感情が動くことがあっても、それを表に出すことが恐ろしかったからだ。
エルフは人間から迫害されている。
数百年前、醜さを理由に森に追い立てられた頃からそれは始まっていた。
エルフはもともと、人間と共に街で暮らしていたのだ。
「もっとぉ♡ ねぇ♡ もっとしてぇ♡」
自ら腰を振り、薄い胸を少年に擦りつける。
これまで、誰かに何かを求めたことなどなかった。
すれば拒絶されると知っていたからだ。
泣いても、笑っても、怒っても、悲しんでも、人間はエルフに対する態度を変えなかった。
歩み寄っても距離が縮まることはないくせに、離れようとすれば倍の距離を遠ざかっていった。
人間と、エルフ。
それは交わることのない異種族だ。
冒険者として人間と行動を共にしているルナですら、それは変えようのない現実だと理解していた。
「出してっ♡ 出して出して出してっ♡ 中に出してぇっ!♡」
ルナの要望に応え、少年が腰の動きを速くする。
「んっ♡ んっ♡」
唇を突き出してキスを求めれば、唇を合わせるどころか舌まで絡めてくれる。
そして────
「□&○△#!」
「あひぃいいっ!♡」
人間とエルフの間には子供が出来るにも関わらず、中に出してくれる。
人とエルフの
ルナは絶頂の余韻で痙攣しながらも、少年のチンポの先端に子宮口を押し付けた。
子宮に直接流れ込む熱い精液を感じながら、ルナは微笑む。
全てを諦めたエルフの少女が死んだ瞬間だった。
そして同時に、人間の男との子を望む、一人のエルフの女が生まれた瞬間でもあった。