エルフのお婿さん ~※実際は子作り用の家畜です~ 作:布施鉱平
「……………………ぶはぁっ! はぁっ、はぁっ、はぁっ…………あれ、ここどこ?」
某企業に勤める中間管理職、佐藤良夫(41)が息苦しさに目を覚ますと、そこはあたり一面真っ白な得体の知れない空間だった。
「えっ、えっ、いやほんとにどこ? ここ」
『落ち着きなさい、良夫。ここは生と死の狭間。人の魂が転生に備えて訪れる【
混乱する良夫の頭に、女性の声が響く。
「うわぁっ、び、びっくりしたぁ…………え、生と死の狭間?
『そうです、良夫。あなたは死に、魂だけの存在となってこの場所に訪れたのです』
「魂だけの存在……」
良夫は自分の体を見下ろした。
…………魂だけの存在という割には、いつもどおりのメタボっ腹が目に映る。
『その体はあなたの生きた証。例え死んで魂だけの存在になったとしても、魂の形は生前の肉体に依存するものなのですよ』
「あ、そうなんですか……」
死んでも醜い体のままとかがっかりだなぁと、良夫は斜めの方向に落胆する。
『自分がなぜ死んだのかは気にならないのですか? 良夫』
「あ、それは気になります。えーと…………神様?」
『そうですね。あなたたちの言う神が、私に最も近い存在だと思います』
「はぁ、なるほど。それで、神様。私はなんで死んだんでしょうか?」
『自らの不摂生が原因です。食べ過ぎ、飲みすぎ、糖分の取りすぎ、運動不足、寝不足、ストレスなどなど…………それらが複合的にあなたの体に負担を与えたうえ、とどめに激しく床オナをしたせいで心臓が止まったのです』
「……………………」
それはつまり、良夫の死体は布団にチンコを擦りつけている状態で発見されるという通告に等しかった。
『知っていますか? 良夫』
動揺する良夫に、神様が声をかける。
「…………えっ、あ、なんでしょう」
『床オナをしすぎると、女性の性器ではイケなくなってしまう可能性があるから危険なのですよ?』
だが、その内容は心底どうでもいいものだった。
今? それ今言う必要ある? と良夫は思ったが、神様の言うことなので突っ込まないでおくことにする。
良夫は長いものには巻かれる主義なのだ。
「……あのー、それで、私はこれからどうなるんでしょう」
『もっともな質問ですね。そのことであなたに質問があるのですが、いいですか?』
「あ、はい。どうぞ」
『生まれ変わるなら、ウミウシとスカシカシパンのどちらがいいですか?』
「……………………」
その二択を出されて、「こっちがいい!」と即決できるような人などいるのだろうか。
良夫にはできなかった。
「あのー、そのどちらかしか選ぶことはできないのでしょうか?」
『いえ、他にもありますよ?』
じゃあなぜその選択肢を出した!?
と、声には出さないが良夫は強く思った。
『地球に生まれ変わるのでしたら、あとはザリガニ、カブトガニ、スベスベマンジュウガニ、日本住血吸虫のどれかを選ぶことができます』
どれも大差なかった。
いや、日本住血吸虫だけはゴメンだが…………
とそこまで考えて、良夫は神様の言葉に引っかかる部分があることに気づいた。
「地球に生まれ変わるんだったら……? それってもしかして、地球以外に生まれ変わることもできるということですか?」
『お勧めはしませんが、できますよ? お勧めはしませんが』
二度言われた。
なんか大切なことなのか、二度言われた。
でも、地球に生まれ変わってもザリガニやウミウシにしかなれないなら、いっそロマンを求めてみようと良夫は思った。
「地球以外でお願いします!」
『いいのですか? 地球以外というか、別の管理者が管轄する別の次元に放り込むだけなので、後のことはどうなるか私にも分からないのですが』
「いいです! お願いします!」
別の次元…………それはつまり、異世界ということだ。
むしろ興奮してきて、良夫は鼻息も荒く神様にお願いした。
『分かりました。では、あなたの魂を別の輪廻の輪に加えましょう』
その言葉とともに、良夫の魂は光に包まれた。
そして意識が遠ざかっていき────────
どさぁっ!!
「いたぁあああああっ!?」
良夫の体は、勢いよく地面に放り出されたのだった。