エルフのお婿さん ~※実際は子作り用の家畜です~ 作:布施鉱平
「────途中から参加した若木組の者も含め、全八名で
「なんだとっ!?」
「なんですってっ!?」
伝令からもたらされた、あまりにも信じがたい報告に、レムとルルは同時に驚きの声を上げた。
人間の英雄と呼ばれたジャック・ハウザーですら、若木組で一巡もマワせば息も
だというのに、オーク似の、しかもエルフの幼児以下の身体能力しか持たないような人間のオスが、若芽組と若木組の八人がかりで三巡マワしても生きているなど、ありえないとしか言いようがない。
「さらに、全員が
「ば、馬鹿な……っ」
「…………(唖然)」
その上さらに付け加えられた報告に、レムはヨロめいて机に手をつき、ルルは声すら出ない有様である。
「以上であります!」
ビシッと背筋を伸ばし、いい顔で報告を終える伝令。
コイツは事態の重大さを理解しているのだろうか、とレムは思わず伝令を怒鳴りつけそうになったが、そもそもエルフにはこういったノリで生きているような性質の者が多く、むしろ生真面目なレムやルルのほうがマイノリティ(少数派)なので、開きかけた口をなんとか閉じた。
そして、
「……今の報告、妊娠検査に関する情報が抜けていたが、まだ検査をしていないのか?」
人間牧場を使用した日の報告事項で、もっとも重要度の高い項目である『魔術による妊娠検査』報告が抜けていた事に対し、伝令を問いただした。
「あっ、忘れてました! え~……」
と、胸の谷間からメモを取り出して確認する伝令。
なぜコイツに伝令という役割を与えてしまったのか、とレムが過去に自分が行った人事に対して疑問を抱く中、妊娠検査に関する項目を発見したらしい伝令が、またビシッと背筋を伸ばして口を開く。
「報告いたしますっ! 行為中、人間のオスが射精した回数は2回!
そして、その射精を膣内に受けた若芽組と若木組それぞれ1名は────
────2人とも、そろって妊娠しているもようっ!」
「ば……かな……っ」
「きゅぅ……」
その報告に、レムは声と体を震わせ、ルルなどは驚きのあまりついに失神してしまった。
無理もないことだろう。
現在この里に存在するエルフは、歳若い者たちだと幼児2名、若芽組4名、若木組4名。
大樹組以降だと、300歳代4名、400歳代5名、500歳代5名、600歳代6名、700歳代7名、800歳代8名と、完全な少子高齢化傾向にある。
もっとも、エルフは300歳を越えた辺りから平均寿命である900歳くらいまで、肉体も精神もあまり変化しない種族なので、悲壮感のようなものはそれほどない。
だがそれでも、このまま生まれる子供達の数が減り続けていけば、いくら長命で優れた能力を持つエルフといえども滅びを迎える事になるだろう。
これは、エルフが妊娠しにくい種族だというだけでなく、彼女たちに子種を提供することができる唯一の種族である『人間』にも問題があった。
────人間が、昔に比べて弱くなってしまったのだ。
今から約600年ほど前、人間は小さな国々に分かれ、絶えることなく同族で戦争を繰り返していた。
その争いの中で多くの人間が命を落とした為に、数自体は現在の5分の1ほどしかいなかったが、その代わり個々の精強さは現在の比ではなかったという。
当時を知る、大樹組のエルフ(ノノさん、819歳)
「昔はのぅ……人間のオスも、もっとガツガツしておったんじゃ。『エルフの肉壺はこの世ならざる快楽を与えてくれる』という噂を聞いて、わざわざ森までワシらを犯しにくる者もおったくらいだからの。
結局はワシらを犯すどころか、逆に捕まって牧場送りになっておったんじゃが、それでも今の人間に比べれば肉体的にも精力的にも随分と逞しかったわい。
少なくとも、若木の小娘どもにマワされたくらいであっけなく心臓が止まってしまうような軟弱者はおらなんだ。
…………えっ、その口調はなんだって?
えへへ、なんか長老っぽいかなと思って。
いま800歳代の大樹組で
どう、渋いでしょ?
あっ、こほん…………渋いじゃろ?」
────とのことである。
人間が弱くなってしまった理由────それは、あるひとつの国が他国を次々と攻め滅ぼして併呑し、ついには戦争を終結させてしまったからだった。
互いに争うことをやめた人間は栄え、その数を5倍にまで増やしたが、その代償として個の強さを失ってしまったのである。
そして世界に存在する人間は、エルフとの激しいセックスに耐え切れず行為中に心臓が止まってしまったり、そもそもエルフを妊娠させるほどの『元気な精子』を持っていない者ばかりになってしまった…………はずだった。
伝令のもたらした報告が、その常識を覆すまでは。
「…………ふ…………ふふ…………っ」
震えるレムの口元から、抑えきれない笑みが漏れた。
伝令の報告が真実であれば────いや、いくらノリで生きているとはいえ、これほど重大な件で冗談を言うはずがないから、真実に違いない。
だとすれば、その人間のオスはエルフにとっての
これが笑わずにいられようか。
「ふふっ、ふはははははっ、は~っはっはっはっはっはっはっはっ!」
「…………? あはははははははははははっ!」
なぜか釣られて一緒に笑っている伝令をズビシッと指差し、レムが表情を引き締めた。
そして、
「そのオスを、今すぐここに……」
と言いかけ、その口を
本当は今すぐにでも、そのオスの生殖能力を確認したい。
だが、今日はすでに若芽組と若木組の相手をさせているのだ。
せっかくの逸材を、無計画に使い潰してしまうわけにはいかない。
「いや、明日だ。明日、
…………あと、ルルが起きたら今の出来事は夢ではないと伝えてやれ」
「はっ、了解でありますっ!」
逸る気持ちをなんとか理性で抑え付け、伝令に指示を出すとレムは執務室を後にした。
もはや仕事などしている場合ではない。
このムラムラとした気持ちを、一刻も早く愛用のオナロ(オナニーロッド)で解消させる必要があった。
さもなければ、レムはダメだと分かっていながらも牧場を強襲してしまうことだろう。
「…………今日は、眠れないかもな」
そう、ポツリと呟くレムの瞳には、隠しきれない情欲の炎が燃え盛っているのだった。