Appetizer (前菜)
“クイズリング”
なんて読むか分かるかしら?
〈寝返り〉と書いてそう読むのよ。
はじまりどこから話しましょうかね~
「お前の母親は俺のガキを孕ん──」
わたしは前科持ちのロリコンの喉笛を
切り裂き、鮮血が噴きだし落ちていく。
顔を赤く染める幼い少女。わたしは
微笑みながら、
「良い子ね」と顔を拭ってあげた。
『青天の霹靂』って言うのかしら。わたしが
捜して逸材……ちょうどイイ被験者が目の前に
いることを察した。 わたしはその子を気絶させて
廃墟のある場所へ隠し、親衛態〈カットスロート〉に
託したわ。
「妲己っ!!」わたしの
高貴でクールな美貌と尖らせた襟足が特徴の
短い銀髪が、夜叉みたくなってたわ。
「絶対に……かならず見つける」鼻水と涙で
ぐちゃぐちゃになった顔のまま、そう言うもん
だからオモシロイ。一応は慰めたんだけどね。
こうして米国政府全面下の協力のもとで
【プロジェクト・ユダ】はおこなわれた。
弊害として、汚染された仮想通貨や電子マネーは
取引停止。紙幣すらも裏金が浸透しちり紙同然、
まるで“経済制裁されてないのに、経済制裁されてる”
状態に世界は陥った。
米国主導で、ヨーロッパやロシアなどに持続可能の
流通と摘発をおこなう、
麻薬戦争がスタート。だけど激化していき
暴動や独立運動、人種や国を割り内戦が勃発。
人類は緩やかに滅亡へ進んでいく2034年。
わたしも新たな〈人間がどこまで強くなれるか〉
人間の潜在能力を極限まで引き出せるだけ引き出す
目的でやる実験──通称
“パンドラム”
を主任で指揮してる最中よ。ユダのほうは
〈アルファ〉ことあの子が行方不明なのと
どこから研究データが流出して米政府正式に
実験停止されちゃったから終わり。
まぁ……あの子もパンドラムに組み込む
計画は一応、練ってるんだけどね。
「はい。9mm五つ」
「あんがと」
りんご五個の一袋で.357マグナム二つ。
お釣りで9mmとは安いやん。
「おかえりー」
「ただいまじゃない?」
いつものカナコちゃんと
やり取り。エロい肌を胸と局部
以外、露出させたウェイトレス服
きてるバイトちゃんやけども
あたしにとっては生まれて
初めての
日系アメリカ人で
アイドルかモデルをやってそうな
整った顔と容姿してんねん。
「テメェ、籔さんになにしてんだぁっ!! ゴラァ!!」
「すんません。ホンマすいません」
小汚ない作業服がトレードマークの
わが店によく来る常連さま、陣矢おじさん。
またなんか……タチの悪い輩に絡まれてとる。
スキンヘッド・白ジャージに
眼鏡デブ・ジャージ、眼帯の
七三パツキン若い衆。真ん中に
目付き悪い『籔』って呼ばれとる
背広野郎か。いくら
ヤクザ滅んでなかった……みたいな
かんじやね。
「へいへい、籔さんやっけ」
「なんだテメェは」
誰に向かって口利いとんじゃ
ポークが。ヒレステーキにすんぞ。
とりあえず陣矢さんに
アイコントタクトで、出入口まえの
扉の札を【閉】に変えるよう
指示を出す。
「ほんの些細なことで~
トカレフの模造品、中国製54式
手槍を抜くんわ止めましょうや。
あと、後ろのマカロフ・コピー品
の64式手槍もっとるおにいさんも」
おおっ、分かりやすく
動揺しとる。これはごり押しで
場をおさめられそうやな。
「幕張──」
「コイツっ」
判断、誤ったな。キッチン越し
に包丁が籔の後頭部に突き刺さる。それを合図にあたしが背中から
SIG P250を抜き撃つ。まずは
四人胸部に二発ずつ叩き込む。
狙いやすいねん、胸は。
そうやって戦闘能力を
あとに脳幹へ三発や。
「カナコちゃん~モップ持ってきてよ」
「わかった」
顔を強張らせすぎやで
カナコちゃん。でも
気を利かせたおかげで
シャッター閉めとるから
鮮血と脳漿と肉片は、窓には
こびりついてへんわ。
「今日は店じまいやね
骨継ぎおじさん」
「仕込みが早く済みそうだから
問題ない」
あたしの保護者であるおきゃあさんの友人、骨継ぎチキンおじさん。
〈うぁあああああ〉って、叫んで
そうながっしりした目付きが鋭い
エプロン姿のイケおじさん。
元凄腕の
店のオーナー兼シェフ。このレストランかダイナーかよくわからん
飲食店【ペインシェント・
デザート】で、あたしは
暮らしとる。
「俺も手伝うわ」
「エエよ、エエよ別に。代金だけ
払って帰りいや」
みんな──あたしの大切な
“家族”や。絶対に護る。
それだけがあたしの生きる
目的や。