ところで皆さん――――――士織ちゃんのことは、好きかな?
それは本当に、何の脈絡もなく、士道がただ思いついたことだった。
「――――令音さんが琴里と同じくらいの頃って、どんな感じだったんですか?」
「……ふむ」
裸体にシーツを掛け、ベッドの上で横になって士道の問いかけを聞いた令音は、さして困った様子もなく言葉を返してくる。
「……質問と呼ぶにしては、随分と漠然としたものだね」
「あ、すいません。琴里に聞いても『令音は昔から大して変わってないわよ』って言われたから、少し気になっちゃって……」
又聞きになるが、令音が〈ラタトスク〉引いては琴里が見出された時期と同じ頃に組織にスカウトを受けたことは士道も知るところだった。そして、それ以前は学生として生活をしていたことも。
が、またそれ以前、たとえば琴里たちのような中学生の令音というのは……五、六年前から大して変わっていないという琴里の発言から、あまり想像できないというのが実情だ。
「……謝るほどじゃあないさ。隠すほどのことはない」
「え、じゃあ中学時代の写真とかを……」
「……あいにく、写真は苦手でね」
「えー……」
物凄く取って付けたような設定が現れて、士道は半目を作って目を逸らす令音を見た。その顔、士道にしかわからない程度ではあるが、好んで教えたくはないという意図が感じられた。隠すほどのことはない、と言ったにも関わらずである。
うーむ、とベッドの上に起き上がって腕を組み考えてみる。以前の関係……上書きされ続けた結果、印象の薄れた関係ではあるが、良くも悪くも一定の距離があった令音であれば、士道は口惜しさを感じることなく引き下がったであろう。
しかし、今の地位、関係性を手に入れた士道は違った。写真がないのなら――――実物を見てしまえばいい。そんな考えの下、
「それじゃあ、実物なら問題ないですよね?」
「………………そういうことに、なってしまうね」
令音といえど長すぎる沈黙には、少なくない言葉選びへの誤ちが込められたものだった。それでも察しのいい令音は、士道と同じように起き上がり、自身の髪を耳にかけるように掬いながら、短い吐息を零した。
「……君の好きにしたまえ。端的に言えば、抵抗は諦めた」
「なんでいつもより言葉にしてるんですか……」
どちらかといえば、こういう目に見えた意思表示は普段の無茶振りにこそ使うべきだと思うのだけれど。
まあ、否定的ながらやっていいと言われたのなら、そこに遠慮の感情は
手のひらに意識を軽く集中し、意識と形は乖離することなく、さらに時間のズレすらなくなった天使の召喚を行う。
「〈
長柄の棒、箒の形状を思わせる魔女の天使を握り、手馴れた様でくるりと回す。
千変万化の天使〈
「それじゃ、いきますよ」
「……ああ」
了承を得て、〈
強い光が段々と収まっていき、そこには士道の想定した幼い令音の容姿が――――――
「――――――え」
令音が物になったとか動物になったとか、そういうことではない。だとすれば、〈
すなわち、想定された骨子以外の容姿はありえない。そのありえない結果が、士道の目の前にあった。
「
呆然とした士道の様子から尋常ならざる状況を悟ったのか、令音が幼くなった自身の手を見て、姿見鏡を正しい使い方で扱う。
「……………………ぁ」
果たしてその声は
令音は、美しい。それこそ、
美しい。褒め称える言葉が刈り取られ、それしか言葉にならない。それ以上に、心臓が引き絞られたように苦しくなった。
それは可憐な少女。物憂げな双眸の下にあったはずの深い隈は消え去り、長い髪を下ろし、体躯は収縮してちょうど士道と変わらない年代を思わせるものに。
ゆっくりと、少女が士道と向き合う。一糸纏わぬ姿は、この世のものとは思えない神々しささえ感じられた。
「『私』の容姿……
「……え、あ……ええ、と……」
その『士道』は、たまに令音が呼んでくれるものというよりは、分別の意味を込めて
「お、おかしなこと聞くんですけど……令音さん、ですよね?」
「本当におかしなことを聞くんだね。うん、〝私〟だよ…………?」
そこで少女、令音も己の言動がズレていることに気がついたのか、可愛らしく小首を傾げた。
やはり気のせいではなく、令音は無意識に口調が変化している。まるで、士道との情事の最中に見え隠れする理性の砕けた状態のようだった。
「……ごめん。この姿でいる限り、いつもの口調に戻せないかもしれない」
「あ、いや! 俺のせいですよね! すぐに戻しますから……!」
気落ちしたように目を伏せた令音に、罪悪感が増し増しになった士道はすぐに〈
「――――戻せない」
「え?」
「……令音さんに、〈
天使が士道の声に答えてくれないなど、今までになかった。それも、一度変化させた物質を元に戻せないなど。
どうする、どうすればいい。無理やり力を込めて、〈
「落ち着いて士道。私は大丈夫だから」
「っ……本当ですか?」
「本当だよ。〝私〟は消えたりしてないし、士道のこともわかってるから。まずは原因を探ろう」
口調こそ違えど落ち着いた、いつもの理知的な令音。その姿に不思議と荒んだ気が安らいだ士道は、浮いた腰をベッドにつけて息を吐いた。
「すいません。なんか、今の令音さんを見てると冷静じゃいられなくて……あ、いつもとは違う意味ですけど」
「うん、わかってる。その様子だと、やっぱり士道が考えていた姿と『私』の姿は違うんだよね?」
「は、はい。言い方は悪いですけど……その……もうちょっと、露骨に幼い感じで」
「……
「もうちょい抑え目な表現してくれません!? あと、そういう目で見るのは令音さんだけですから!!」
「ふふっ、ごめんね士道。うん、君のそういう目が私だけで嬉しいよ」
それはそれでどうかと思う士道の言い訳に、令音はクスクスと可笑しそうに笑う。
今のからかい方といい、その
「けど、〈
「ん……案外、
「へ?」
「ううん、なんでもないよ」
後半は声が小さすぎて聞き取ることができず、聞き返すも令音は仄かに笑うだけで士道は誤魔化されてしまった。
なんと言えばいいのだろうか。士道は不思議な感覚に眉をひそめながら、大人の色香を漂わせる美しい美女から、幼さを残す可憐な少女に転身した令音に違和感を拭い去ることができそうにないと思ってしまう。
おかしな言い方だが、
「けど、そうなってくると思いつく理由は多くない。天使は使用者の望みを叶える奇跡だからね。その上で私の姿を元に戻せないというなら、君は今心から戻すことを望まない、ということになるかな」
「それって……」
「それだけ『私』の容姿を気に入って、欲望を満たしたいと考えている。つまり、『私』の容姿は君の好みという可能性が…………………………ある、んだね」
「……令音さん?」
何だか、一気に雲行きが怪しくなった気がした。指を立てた令音が硬直し、悠然と開かれていた瞳がスっと細くなっていく。
「れ、令音さーん?」
「うん? 私は何も言ってないよ、士道」
「言ってくれないから怖いこともあるんですよ……」
令音とは思えない威圧的なオーラが滲み、ベッドの上で士道は縮こまりそうになった。可能性を追求してくれていたと思えば、急に不機嫌な様子を見せる令音に士道も困惑する他ない。
ただ、そこは令音というべきか。深く息を吐いて、コホンと咳払いをしてから話を本筋に戻してくれた。
「簡単な推測になるけど……今の君は『私』の容姿で欲望を満たしたい。だから、〈
「逆に言えば、欲望を満たすことができたら、いつもの令音さんに戻せるようになる……と?」
「そういうことになるね。もっとも、それがどんな欲望かは私には予測できないかな。私をドロドロに穢して、雌奴隷として扱いたいのか……どう?」
「ま、また答えにくいことを……」
扱われる本人が言うことじゃない。今日はもう熱い蜜事を終えて、
答えあぐねて頭を抱えた士道に、令音は冷静に言葉を重ねた。
「じゃあ、私とデートしよっか」
「は?」
デート。デート……デート?
これ以上なく唐突に、聞き慣れた誘いを一糸纏わぬ少女の令音から聞いたものだから、また思考が一度停止状態になる。
「……え、いや……なんで、そういう答えになるんですか?」
「不思議なことじゃないよ。だって、君が『私』の容姿……わざわざ君に近い年代の姿に変えたっていうことは、士道の欲望がいつものようなもの
「同い年くらいの令音さんと、俺がデートしたいって欲望……? そりゃ、思うかもしれませんけど、それって霊力暴走の欲に結びつかない気が……」
「なるんじゃない? 言ってしまえば、私と交尾がしたいと思っているということになるからね」
「デートはかなり前の段階ですけどね!? なんかいつもより理論が飛躍してませんか!?」
たまに直球な表現を使うところは令音らしいが、令音以上に理論を飛躍させている気がして、士道は目を丸くして叫びを上げた。
対する令音は、そんな士道のことをいつも以上にスルー気味に自身の結論を導き出していた。
「それに、明日は休みだからいいけど、休みが終わったらこのままじゃ問題があるでしょ? 都合よく試せる可能性は、試しておかないとね」
「それは……まあ、確かに」
明日の令音は完全に非番の日であり、デートという仮説を試すにはうってつけ。というより、明日試さなければ仕事上詰みの状況ができあがる。デートのかなり後段階が
「わかってくれたみたいだね。じゃあ――――――あっ」
「はい?」
今度はなんだ、と士道が眉をひそめる間に、令音がじっくりと士道の容姿を観察する。一糸纏わぬ姿は士道も同じなので、正直そう見られると恥ずかしく、顔を赤くしながら目を逸らした。
「あ、あの、令音さん……?」
「ん。〝私〟の容姿ならともかく、『私』の容姿だと申し訳ないかな。…………あ、そうだ」
妙案を思いついた、と笑顔で手を叩いた令音に、士道は真逆の表情で何か嫌なものが全身を襲う。
言葉にするのなら、それは
「ねぇ、士道――――私を変えた責任、ちゃんと取ってくれるよね?」
「………………………………はい」
なぜ、だろうか。以前には心臓が良い意味で高鳴り、令音に対して得も言えぬ情を抱いたものと似たものであるはずなのに――――――今受け取った意味合いは、士道に滝汗を流させるものだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「よく考えたら、すぐに試してもよかっただろ!!」
デート決行の朝。鏡の前で士道は今さらながらに叫んだ。今さらすぎて、おまえは考える頭がないのかと鏡の自分を問い詰めたくなった。
というのも、一度寝て起きて冷静に考えると、士道の回復能力と今までの令音を計算に入れれば、あのあと欲の方向を
「くそ、どうもあの令音さんはやりづらいぞ……ああいや、元から俺じゃ勝てないのか……」
上手くペースに乗せられて頭を抱えたが、思い返して首を振る。結局のところ、士道が令音に勝るのは甘く激しい本能のぶつかり合いのみ。それ以外の士道は、令音を相手に常に上を行かれてしまっていた。
それを考えれば、あの令音が手強いのではなく、
あえなく敗北し、この世の終わりのような顔をした自身の顔を士道は見遣る。
「…………はぁぁぁぁぁぁ」
実に非情、そして非常に失礼なため息だが、士道は何も令音とのデートに対してため息を吐いているのではない。デートをするための
令音が姿を変えられたというのに、困るのは士道だと、ついでに変えた責任も取ってほしいと言われれば、士道に反論などできるはずがないではないか。
せめてもの最後の抵抗だ、ギリギリまでは
「おはよう、士道」
その前に、令音がいた。微笑を浮かべ、もうハートマークでも語尾に装着しているのではないかと思えるほど上機嫌に。
制服が、恐ろしいまでに似合っている。制服自体は士道が〈
黒のブレザーと赤いリボン。深い青のスカートがゆらりと揺れて眩しい。足を守るものは黒いニーソックスと、いつもとは様相を呈しているためにスカートの裾から覗く太ももがその凄まじい肉感を……これ以上は、本当に変態っぽいから止めようと咳払いをして、士道は挨拶を返す。
「おはようございます、令音さん。は……早い、ですね?」
「うん。楽しみだったから。……士道は、まだ
「うぐっ」
切り込まれ、返す言葉がない。実のところ、士道の準備など一瞬で終わることだ。それこそ、士道の意志一つで。それをしないのは、士道の尊厳が最後に抗いを見せているに過ぎない。
「ほ、本当に、やらないと駄目ですか……?」
「ん、士道がどうしてもっていうなら……」
「止めていいんですか!?」
「ううん。私が今すぐ裸になって土下座して、雌奴隷として士道に頼もうかな」
「言動と強気があっていない!? ちょ、待って! 本当に脱ごうとしないでぇぇぇぇぇぇぇ!!」
――――これが
「はぁ、はぁ……わ、わかりました! わかりましたから! やればいいんでしょう!?」
拒否すれば、今すぐ全裸土下座しかねない令音を食い止めながら、やけっぱちになって叫びあげる。
「――――〈
数時間ぶりこんにちは、できれば叶えないでください天使様。無情かな、変幻自在の天使は
「ふふっ、久しぶりだね?」
「できれば、俺は二度と再会したくなかったです……」
笑顔の令音に、おそらく絶望した顔を作りながら士道は声を返す。しかし、その声は
少女の声。女の子の声。とにかく、性別が異なる声が喉仏を通じて外界へ発せられる。無論、男の士道ではあればチグハグになるのだが――――残念なことに、〈
「そう? 完璧だと思うよ――――
「完璧だから、複雑なんですよ……」
そうして士織と呼ばれた士道は、
令音をして完璧だと太鼓判を押された
身体は少女。中身は士道。その名は、
「似合ってるよ。まあ、一部の人には女装だからいい、って意見もあるのかな?」
「その意見を取り入れてもらった方がマシでしたよ……ああ、女になる経験なんてしたくなかった……」
女装も普通であれば一生経験する必要のないことであるのだが。しかも、ネタではなく完璧な擬態。女の子が大好きなとある精霊を騙し通せたクオリティ。
そう、何が問題かと言えば、〈
そんな涙を令音が指で拭って、慰めるように身体を寄せてくる。
「いいんじゃあないかな。これも経験だよ。……そもそも、君は以前にも〈
「……はぁ!? 身に覚えがないんですけど!?」
「そうだろうね。前に霊力が暴走して、士織の自制心が外れた時のことだもの」
「なにそれ、しりたくなかった」
拭われた傍から、滂沱の如く涙が流れる。人間、知らない方が幸せなこともあるということを身に染みて思い知った。できれば、自分だけは忘れていたかった。
「けど、その時に比べてさらに変身が洗練されてるみたいだね」
「それ、喜んでいいんです……?」
「いいと思うよ。何事も、経験はいいことだからね」
この経験ばかりは絶対喜んではいけないと思った。が、原因を考えると否定ばかりはできないのだ。
女性に変身するなら、詳しく女性の身体を
「はぁ……まあいいや。これでいいんですよね?」
「ん?」
「………………くぅ」
ニッコリ。普段の起伏の薄さと物憂げな瞳とは思えない笑顔に、士道は誤魔化そうとしていた抵抗をあっさりと封じられる。文字通り最後の希望は打ち砕かれた。士道にとっての、だが。
〝声〟に力を込める。
【今のおまえは――――五河士織だ】
――――瞬間、意識が移り変わる。
どう変わったのか、と問われれば
意図を読みかねて、士織は首を傾げて令音に向かって声を発した。
「これ、本当に意味が
「ふふっ。士道と違って、呼び方は変えられそうにないかな?」
「あっちだって滅多にやらないだろ……」
よほど興が乗った時くらいなもので、少なくとも士織の精神状態では、令音を呼び捨てになどできる気がしなかった。
カーディガン以外は、少女の令音と同じ来禅の制服を身に着けた士織は、これでようやくデートのスタート地点に立った。
ここまで長い抵抗と引き伸ばしをしたが、令音の願いとはつまるところ
後者はわかる。だが、前者は士織になっても意味がわからず、玄関へ向かいながら最後の問いかけを令音へ向けた。
「令音さん……結局、
「ん――――ここまですれば、たぶん『私』の妥協範囲かな、って」
「……?」
要領を得ない返答に、士織の首は疑問で捻られる。しかし、その疑問を追求するよりも先に、令音が士織の手を取った。
髪が揺れる。以前とデートとは違う形に編み込まれ、背に長く靡く銀灰の髪――――とても綺麗だと、士織は士道と同じことを思った。
「さあ――――私たちの
今日は本当の意味で、戦争になるかもしれない。そんな思いと共に、腕を引かれた士織の――――少女の姿をした令音との、たった一度だけのデートは幕を開けた。
目立つ。まず一言、それに尽きた。街を歩く中、次から次へと士織と令音に投げ込まれる視線の多さに辟易してしまいそうだった。
「あとで学校で噂になるんじゃねぇかな、これは……」
「士織の考えすぎじゃないかな」
「令音さんは自分の容姿に無頓着すぎるって」
「君に好かれる努力は、欠かしてないつもりだよ?」
「…………」
今日はやけに令音のパンチが強いのと、士織の精神はやけに打たれ弱く感じる。赤面した顔を逸らすも、腕を組んだ状態で大した効果があるとは思えなかった。
話を戻すが、以前士織として一度精霊の一人、そもそも士織になる原因となった精霊とお出かけデートを行ったのだが、その時は相手がアイドルと言うこともあり非常に目立った。だが、今回はそんな要素がないというのに目立っている。
まあ、それも当然か、と士織は盗み見た令音の顔の美しさに、感銘の息を吐く。その美しさに変わりはない。変わったことといえば、令音の特徴的な深い隈が消え、大人びた貌から幼さを残す少女の貌になっていることだけ。
だからこそ問題なのだ。令音は美しすぎる。特徴にあげられた深い隈や倒れてしまいそうな、というより実際に倒れる眠たげな双眸。それすら令音を神秘的に見せ、気品を感じさせるものだと士織は分析している。それがなくなった場合どうなるかと言えば、不思議な雰囲気を纏う神秘的な美少女となる。つまり、あまり変わらない……?
「あれ……?」
「どうかした?」
「あ、いや……あれぇ?」
長々とした思考を纏めると、令音は結局、とても綺麗。ほら、わかりやすく区切り一つで語れてしまった。
目立つ理由を分析したのだが、最終的に高校生にしては美しすぎるから令音以上に目を引いている、のかもしれないくらいしかわからず、誰に届くわけでもない思考に羅列された惚気に士織は片手をあごに当て首を捻った。果たして、どこで思考を間違えてしまったのたろうか。
「……ふむ」
と、うんうんと頭を悩ませ始めた士織を見て、何か思いついた様子の令音――――の細手が、そっとスカートの表面を撫でた。
「ひゃいっ!?」
「あれ? 勃ってるかと思ったんだけど……違うんだね?」
「当たり前だろ!?」
女の子の声で女の子みたいな悲鳴をあげてしまう恥ずかしさ、あと令音の奇行に士織は顔を近づけて声を発した。
「な、何のつもりだよ!」
「だって、急にボーッとし始めたから、もしかして我慢できないのかなって。これだけ私と密着してるもの」
【我慢してるに決まってるだろうが……っ!!】
令音とひたすら密着した状況で、〈
もっとも、これは士織という存在に唯一矛盾した
だが、令音の手が布越しに触れただけで瓦解寸前。〝声〟で実演して見せた士織に合点がいった顔を見せ、同時に令音は少し眉根を顰めた。
「そうなんだ。けど、我慢は身体に毒だよ。君の霊力暴走は、その状態だとしても同じなんだから。変に耐えないで、私で解消した方がいいよ?」
「んなこと言ったって……す、スカートはさすがに……っ!」
「ああ」
ズボンならともかく、スカートはかなり不味い。誤魔化し切れるものが誤魔化し切れず、士織が完璧に女の子に変身しているが故に、この矛盾は致命的だった。
「それじゃあ――――あそこにしよう」
士織のSOSに気のない返事をした令音は、キョロキョロと辺りを見回して、ふと一つの大きな建物に目をつけ、士織の手を引いて
「お、おい。ゲーセンでどうしようって……」
「え? どうって、元々私が君と来たかった場所だよ」
「そ、そうなのか?」
「うん。元の私だと、あんまり選ばないかなって」
「ああ……」
ゲーセン。様々な有料の遊び道具が置かれたゲームセンターの略称だ。
確かに、と士織は令音の言葉に納得する。普段の二人であれば、まず選択肢から士道が外している。というより、選択肢に上がってこないのだ。
店内は騒がしく、令音のような大人びた女性とのデートには使おうと思わず、令音も士道に任せてくれるとはいえ、あまり人気の多い場所を好むとは思えない――――率直にいえば、士道も令音もデートの
だから、普段とは違い少女然とした、それこそ普段はわかりづらい積極性を表に出した令音だから来たかった、と言える場所だ。……しかしこうして実物を見ても、この年頃の令音がこの性格だったとは到底考えづらいのだが、士織の中で解けそうにもない謎だった。
「……や、理由はわかったけど、まさかここでやるつもりじゃないだろうな」
「ん、そうだよ? 私は士織としたいことができて、ついでに欲求も解消。いいことしかないでしょ?」
「妙案だ、みたいなドヤ顔止めてくれない!?」
……本当の本当に、令音なのだろうか?
それこそ、
「ん……これがいいかな。士織、こっちこっち」
「え、おぉ!?」
士織が頭を抱えている間に、
「ぷ、プリクラ……?」
「うん。一度、やってみたかったんだ」
それはまた庶民的なことで、と呑気な感想を抱いた士織の前で令音がブレザーを脱ぎ出して――――――
「……って何してんだよ!?」
「え、だって、士織のおちんちんの処理をしないとでしょう?」
「士織のって付くのと、その顔で平然と言われると脳がバグりそうだ……っ!!」
令音でも大概なのだが、あちらは基本的に理性を飛ばした状態での発言に対して、今の令音は幼さの残る起伏の薄い顔で言うものだから、なかなか犯罪臭が物凄い。
しかし、頭を抱えた士織の苦悩を千切って捨てるかの如く令音の手は止まらず、上半身は既に白いシャツを残すのみとなった。
「大丈夫だよ。外から見えるのは足だけだから、女の子二人の状況は怪しまれない。それに、十香だって裸でプリクラを撮ったじゃない。それと変わらないんじゃないかな」
「理詰めの中に誤解で作られた結果を入れないでくれない!?」
十香が全裸でプリクラを撮った事実はあるが、元を正せば写真は裸で撮るもの、と先入観を抱かせた〈ラタトスク〉が原因だろうに。
相変わらず士織の反論は尽くスルーされ、令音の指はいよいよシャツのボタンを崩し、
「な……っ」
現れた光景に、息が詰まる。シャツの下には下着があるはずだ。いや、正確には有る。令音の豊満な胸の上に、下着は存在している。
「あ、あ……」
「どう、かな? 興奮してくれてる――――なんて、聞くまでもなさそうだね」
令音の手がスカートの
何枚も重ねた上からだというのに、令音のひんやりとした指先の温度すら感じられ、耐え難い快感が肉棒を刺激し腰砕けになりそうだった。
「っ、あ……っ!」
「ふふ、興奮してるんだ。『私』の姿で……♡」
「まっ、……て……っ!」
服の上から押され、撫でられの刺激に思わず令音の肩を掴み、内股になって震える足でどうにか耐え抜く。
いつもと違う。だが、〝士織〟ではどうにもならない。だって士織は――――そこでようやく、士織はハッと令音と目を合わせた。
「れい、ね、さん……もしかして……っ!」
「……さあ、何のこと? けど
「っ……!!」
――――してやられた。
どうして士織に拘ったのか。理由が不鮮明で怪しいとは思ったが、こういうことだとは考えもしなかった。
士織は今、〈
噛み合うはずがない。噛み合わない結果、精力に適合する士道の人格ではない士織は、根本は変わらずともこうして与えられる快感に身悶えしてしまうのだ。
「な……にがっ、いつもと変わらないだよ……っ!」
「変わらないよ? ただ、士織の脳が
「考え方は、な……っ! いつもの仕返しのつもりかよ!」
「うーん、ちょっと違うかな。〝私〟は
快感に耐え、令音との会話に夢中になっていた士織のスカートの中へ、その手の侵入をあっさりと許してしまう。しかも、最速でショートパンツと下着を膝まで下ろされてしまう。
「あ……っ!」
「あれ、下着は女の子用のじゃないんだね?」
「当たり、前……だろうが……っ」
「じゃあ、こんな苦しいかったのも当たり前だよね。ほら、いい子いい子……♡♡」
よしよし、と令音が逸物をスカートの上から撫でると、精神と布の二つ縛りに耐えていたモノが束縛から解き放たれる。スカートの前面を大きく押し上げ、少女の身体に似つかわしくない激しい雄臭を垂れ流しにする。
「わぁ……♡女の子なのにこんな立派なおちんちんがあるなんて、士織はすごいね♡♡」
「令音、さん……っ」
「大丈夫、私に任せて……ちゃんと
言って、令音が士織に背を向けてプリクラの機械を操作し始める。
画面に令音と士織が映り込んだ。涎を口の端から流す士織と、桜色の突起だけを露出させるアンバランスな胸元を映した令音。
我慢など、忘れた。士織は背後から勢いよく令音に抱きつくと、荒々しく胸を揉みしだきながらスカートに包まれた臀部に肉棒を擦り付けた。
「あっ♡♡ん……♡焦らなくても、ちゃんとしてあげるから……♡」
「ふーっ……ふーっ!」
獣が如き声で令音の首元に顔を埋め、彼女のスカートを汚すことも厭わず肉棒を激しく上下させる。
やがて、肉棒がさらなる快感を求めて彷徨い……令音の股座に矛先を定め、ショーツ越しに陰裂で刺激を求め腰を振るう。
「あ、あぁ……っ、ああああああ!!」
「ん♡ここで挿入はダメだけど……♡♡」
グッと令音が足を閉じて、巨根を股の間に挟み込み、圧倒的な肉感で士織の肉棒を包み込み、さらに刺激を強めた。
「イ……ッッ!!」
「イッちゃいそう? 私に股におちんちん挟まれて、イッちゃいそうなんだよね♡♡せっかくなら、二人でイク瞬間を写真に収めちゃおう♡」
令音自身も快楽に苛まれているはずだ。揉みしだかれた胸の突起は勃ち上がり、肉棒を擦り付けられた股座はショーツをぐちゃぐちゃにして肉棒を愛液で濡らし続ける。
その快感を受けながら、令音は巧みに機械を操作にプリクラを撮影手前の状態まで持ち込む。流れる電子音に似つかわしくない、少女が絡み合う肉欲の音。
「さあ、一緒にイこう士織♡♡――――三♡」
肉棒の動きが強くなる。挟み込む令音の足が、波のように動きお互いの快感を貪る。
「にぃーい♡」
息が荒い。込み上げてくる。
「いち♡」
怖い。恐ろしい。けれど――――令音となら、いい。
「ぜろ♡」
シャッター音が鳴り響くと同時、肉棒が突き上がり、倫理を冒涜した遊びの果てを二人は実感した。
「
「あぁ――――っ♡♡」
――――どぷっ。ぷしゃっ。
脈動する士織の肉棒と、絶頂で腰が砕け重みを増す令音の股座。
亀頭を押し付けられた令音のスカートが精液を受け止め、当然薄布一枚で止められるはずもない白濁が飛び散り、吹き出した潮と混ざりあって箱内を雄と雌の交わりが満たす。
「ねぇ見て、士織♡♡」
「はっ……はっ……?」
小さな部屋の惨状を気にも止めない令音がプリクラの画面を指し、思考が働かない士織はその通りに画面に見てしまう――――――ドロドロに理性を溶かし、淫猥な顔で果てた二人の
「ふふ、楽しかったね♡」
「……………………さいあくだ」
衝突する感想だったが――――元に戻ったら、間違いなく一致するようになるはずだと士織は確信しながら、令音の肩口に頭を預け絶頂の余韻に浸るのだった。
正解は『士織と『私』の姿に変身して行われる倒錯的変態プレイ』でした。誰がわかんだよこんなもん!!!!!!!!!片方でも当てれたニアピン賞の方はリクエストでも個人メッセでも欲しいシチュエーションがあったら事細かに書いておくってください。どのキャラでも受け付けましょう。誰がこんなもん当てれるよ。
……あのですね、言い訳させてもらうとですね。あの人の姿でエッチする計画したんですよ。けど、その状態で士道と呼ばせるのはNTR感ヤバすぎない?と考えました。じゃあ士道じゃなければいいじゃん!と士織と士織人格にご登場願ったわけです。これでNTR回避!!頭ラタトスクか????
ちなみにこの努力、感想でそっちはそっちでIFとして3P書けばよくね?と開き直って無駄になりました。結果悪魔合体だけが無意味に降臨。何してんの……?いや女体化って専門外なんですけど、士道も士織も好きなキャラで尚且つ割と公式で普通に完全女の子な士織出てたり一回ガチ変身したりしてたから……その、出来ちゃうんですよね、士織だけは。
士織に関してはかなりセーブしてます。いや雌堕ちガッツリはさすがにアレかなって……私は見れますけど、正直ひよった。攻守逆転は士織ちゃんの受けオーラが強すぎるのが悪い。まあこの形式しないと令音さん攻めとか一生書かなそうだしね。
もっとガチ目な士織ちゃんがみたいとかあればやってみないこともないとは考えてますけど、マジでどこまでやっていいか加減がわからん。ふたなりの方がわかりやすいまである(精霊たち込みで書いては見たいネタの一つ)
沢山の高評価ありがとうございます。メンタルがニッコリしましたがこんな回を送ってしまったものなので勝手に不安定になってます。高評価や感想があれば安定するかもしれません。何このマッチポンプ。
ではではまた次回〜
あとこれ続きます。死にたいやつだけ地獄に付き合ってもらうぞ。
あくまでIF。令音を絡ませての精霊たちとのお話は
-
読みたい
-
いらない