※この作品はR-18です。

デート・ア・ライブ 令音アビス   作:いかじゅん

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望まぬ行為の代償に、消えぬ心の傷痕を。ならば奴隷の対価は――――――少年を(生か)す契約なのでしょう。








2話

 ――――快適さと娯楽に特化し、製作者の矜恃と遊び心が感じられる。

 それが、自らの意思で軟禁(・・・・・・・・)という選択を選んだ狂三の率直な感想である。

 

『随分と余裕ですわね、『わたくし』』

「あら、あら。時崎狂三が無様に焦る様を見せるとお思いですの、『わたくし』」

『士道さんにはお見せしたではありませんの』

「…………」

『いたっ。痛いですわぁ』

 

 無言で〝影〟を蹴りつけながら、紅茶を一口。入れ方に工夫は施していないのだが、上物であるためか普段飲んでいるものより味がいい。

 ついでにいうと、狂三が座る瀟洒な椅子も隠れ蓑にしている拠点のものとは比べ物にならなかった。まあ、狂三は特別税を尽くそうと思う性格ではないので、どうでもいい話なのだが。

 〈フラクシナス〉。世界に害を成す精霊を保護するという正気の沙汰ではない理念を掲げた組織〈ラタトスク〉が保有し、実働部隊の活動拠点でもある最新鋭の空中艦。狂三が知る限り、一度改修されて名前が長くなっていたはずではあるが、面倒なため略称させてもらうことにする。

 この空中艦には様々な目的がある。主に活動拠点、戦闘行為、そして非常時において精霊を収容する可能性。今狂三が体験しているのは三番目の目的が近いだろう。

 休憩スペース、宿泊環境、レクリエーション施設。顕現装置(リアライザ)によって本体装甲の強度をさして重要視しないからこそ、そういった〝遊び〟を仕込み霊力を封印した精霊にストレスを与えない仕組みになっている、と狂三は予想していた。

 

 では、霊力が封印されていない(・・・・・・・・・・・)精霊がどうなるのかといえば――――――無論、その場合も想定され、不自由がない程度には暮らせ、娯楽まで充実していた。もっとも、狂三がそれを体感したのは目を覚ましたつい昨日のことなのだけれど。

 と、住居スペースでくつろいでいた狂三の眉がぴくりと反応を示す。開くことのなかった扉が開き、とある女性が姿を見せた。

 

「……こんにちは、狂三」

「あら、あら。村雨先生――――いえ、村雨解析官(・・・)とお呼びした方がよろしいですかしら」

「……どちらでも構わないよ」

 

 狂三の冗談にのんびりと返し、倒れるのではないかと思ってしまう動きで部屋の中へ入ってきた女性。

 村雨令音。適当に纏め上げられた髪に見たこともない深い隈を目元に蓄えた二十歳くらいの女性。一度士道の通う来禅高校で顔合わせはしており、今ここでは軍服を纏う〈ラタトスク〉の機関員というわけだ――――そして、狂三の身体を診て(・・)くれた人物でもある。

 

「……座らせてもらってもいいかな?」

「どうぞ。わたくしの許可など必要ありませんわ」

「――――では、お言葉に甘えて」

「……?」

 

 知らぬ顔で紅茶に口を付けていた狂三は、ある違和感を覚えて顔を上げた。果たして、村雨令音は声音を変える特技(・・・・・・・・)を持っていただろうか、と。

 答えは単純。もう一人増えている(・・・・・・・・・)。令音が狂三の向かいに腰を掛け、その隣にいつの間にか鎮座している少女。

 少女はぺこりと頭を下げ、声を発した。

 

「申し遅れました。私は〈フラクシナス〉のAI、コールサインは『マリア』です。同席をお許しいただき感謝します、時崎狂三」

「ああ、あなたがマリアさんですのね……何だか、懐かしいお顔ですわ」

 

 それと、便乗は許可のうちに入るのかとも思ったが、そもそもマリアが〈フラクシナス〉そのものである以上、家主にしては態度が丁寧すぎるくらいかと狂三は息を吐いた。

 

「その肉体、義体ですわね。複数の身体に一つの意志、と予測いたしますけれど」

「お察しの通り、私は複数のインターフェースボディを同時に稼働させることが可能です。狂三の分身と似ていますか?」

「さて、『わたくしたち』は一つの思考、というわけではありませんので――――そうでなくてよかったと、心から安堵していますわ」

 

 そうでなければ、狂三は本当の意味で再起不能(・・・・)となっていた。ある意味、『狂三』が個を持った自分自身だったからこそ難を逃れたといえる。

 図らずも九死に一生を越え、らしくない安堵を表にした狂三の姿に令音が眉をひそめる。

 

「……窮屈な思いをさせて、すまないね」

「いえ、いえ。むしろ、快適すぎるくらいですわ」

「おや、狂三に褒められるとは光栄ですね」

「ええ。わたくしに賛美されたことを光栄に思い、受け取ってくださいまし」

 

 冗談めかして肩を竦め、場の雰囲気をらしくなく(・・・・・)和ませる。

 ――――本当に、らしくないですわね。そんな自分の声が〝影〟から聞こえてくる気がして、狂三は密かに手を握り締めた。

 

「――――先ずは、感謝いたしますわ」

 

 狂三が、素直に感謝(・・)の意味合いを以て頭を下げる。その光景がどれほど物珍しいかは、目を丸くした二人を見れば明らかだろう。

 しかし、狂三とて借り(・・)を作れば感謝の一つはする。普段の出会いや別れの挨拶ではなく、こうした感謝の礼を尽くすことは、精霊になってからは初めてのことだったが。

 

使い物になるまで(・・・・・・・・)の処置を施していただかなければ、わたくしは今も立ち上がることさえ難しかったことでしょう」

「……当然のことをしたまでだよ。それに、出来たことは応急処置。変えられた(・・・・・)狂三の身体は……」

「存じ上げていますわ。【四の弾(ダレット)】による逆転が潰えた瞬間、わたくしの身体を治療する術は……恥ずかしながら、あなた方に頼る他ありませんでしたわ」

 

 通常、狂三という精霊はどれだけの深手を負ったとしても、霊力と時間を行使する天使の力で全力を取り戻すことができる。そうでなくとも、精霊という異形の肉体の再生能力は人間の優に数百倍。誰かに頼るまでもない。

 だが、その精霊の肉体そのもの(・・・・)変質させられた場合は、全く前提が異なるものとなる。

 物質の時間を巻き戻す事象効果【四の弾(ダレット)】。その力が意味を成さない(・・・・・・・)変化となれば、狂三のものであるはずの肉体は狂三の権限を超えている――――恐らくは、思考(・・)すらも。

 だからこそ、戻すのではなく維持としての応急処置が必要だった。それは、〈ラタトスク〉の顕現装置(リアライザ)がなければ不可能といえた。如何に狂三といえど、動けないほどの快楽に蝕まれた身体では、助けを乞うしかあるまい。

 

「いえ、本来なら狂三からではなく、私たちがあなたを優先して保護しなければならない立場でした。今回の一件は――――――」

「おやめくださいまし」

 

 凛とした狂三の声が、マリアが滑らせようとした言葉を止める。

それ(・・)を言わせてはならない。全てが惨めに、そして惨たらしくなるのなら、狂三は狂三の矜恃を以て自らの屈辱を受け入れよう。

 

アレ(・・)あなた方(・・・・)の責任ではありませんわ。精霊であるわたくしが、たかが人間に犯され、陵辱され、〈ラタトスク〉に泣きついたまでのこと――――わたくしをこれ以上、惨めにしないでいただければ、ありがたいですわね」

 

 責任の所在など、狂三は求めていない。同情を請い、他者の糾弾をするなど以ての外。狂三はなけなしのプライドを手放すつもりはない。

 息を詰まらせた、人間のような反応を見せたマリアが、悲しげに目を伏せて返してくる。

 

「……申し訳ありません。そして、ありがとうございます。あの人(・・・)のことを、想ってくれて」

「何のことですの? わたくしは、わたくしの心まで屈辱に塗れることを防ぎたいまでですわ」

 

 狂三が狂三以外に気を遣う理由はない。そう言い切って、居心地の悪さが残る空気を払拭するように言葉を続けた。

 

「それで、何かわかりましたの? 士道さんのこと(・・・・・・・)は」

 

 目を細め、問いを詰める。元々、狂三は身体の治療だけでなく士道に起こったあの異常を知るため、〈ラタトスク〉の懐に飛び込みわざわざ軟禁まがいの生活を選んだ。

 期待通り、さすがというべきか。狂三の治療に浪費した数日が全て無駄というわけではなく、令音はその口から引き出される答えを用意していた。

 

「……概ね、仮説交じりではあるが結論は出た。しかし……」

「はっ、わたくしは当事者ですのよ。立証(・・)をしたわたくしに、遠慮など無用ですわ」

 

 狂三とて無為に時間を過ごしたわけではない。実際に士道の身体を調べたであろう令音たちには劣るが、予想らしい予想は既に出揃っている。

 答え合わせを急かし、二つ結びの髪を手で薙ぐ。狂三に躊躇いがないことを悟った令音は、こくりと頷き言葉を続ける。

 

「……率直に、霊力の暴走だ。それも、一定の指向性を持ち合わせ、彼の思考を暴走させるほど厄介な、ね」

「なら、その指向性の大元は口にせずともわかりますわね」

 

 身をもって体感した狂三は、如何に理不尽な要素が含まれているかを理解できてしまえた。

 暴走。なるほど、納得でしかないと狂三は眉をひそめる。あの尋常ならざる意志、時に無謀としかいえない行動を人のために(・・・・・)できる少年が、抗えないほどの意識の暴龍。狂三を襲ったあの士道は、狂三のことを支配しようとしか考えていなかった――――陵辱の恐怖を思い出し、震えそうになる身体を誤魔化すように声を発する。

 

「しかし、奇妙な暴走があったものですわ。さしずめ士道さんの欲望、といったところでしょうか」

「……ん。正確には、シンが自覚できないほど一瞬の情欲だろう。その肥大化は、彼の意識を呑み込むほどだ」

「暴走というのであれば、もう少しマシな欲を膨らませていただきたかったものですわ」

 

アレ(・・)が士道の願望のみで行われたことだったのなら、夜の士道は狂三が引くほどのサディストであるため、そうでなかったことに密かに安心して――――どうして狂三が士道の夜事情に安心せねばならないのかと、勝手に考え勝手にイラッとしてしまった。

 

「暴走の効果のほどは、わたくしが存分に体験させていただきましたわ。士道さんのみならず、精霊であるわたくしの細胞まで犯すとは……この力、見境はありませんの?」

 

 無差別に人を襲うというのなら、狂三はこれからの方針を今すぐに固める必要がある。が、今度はマリアが首を横に振って言葉を否定した。

 

「いいえ。対象は士道が軽いものではない重度の性欲……失礼、好意を抱く相手でなければ、暴走が誘発されることはありません。肥大化ということは、大元の好意がなければ理屈としては成立しませんから」

「はぁ。士道さんは対象に困らない、ということはわかりましたわ」

 

 少なくとも、選び放題ヤリ放題この上ないことだろう。狂三の脳裏には、士道の欲望の対象となる少女たちが十人は浮かび上がる。精霊たちをデレさせ、封印してきたことが完全に仇となっていた。

 しかし、と狂三は唇に指を当てる。士道が好意、つまりは雄として番の雌という目で見ていなければ暴走はしない。女として、士道が欲を抱き認識しなければならない。ということは、あれほど激しく襲われ永遠と犯され続けた狂三は――――――

 

「……狂三? 顔が赤いですが、体調が優れないのであれば……」

「ああ、いえ。なんでもありませんわ。……ふぅん。士道さんが、わたくしを」

 

 零れた小声は、どこか上機嫌なものであった、気がした。

 いよいよ、狂三は己の思考に自信を持てなくなってきていた。その不安定さを見せぬよう、そして一番肝心なことを二人から聞き出すため言葉を紡いだ。

 

「さて、そんな欲を暴走させてしまった士道さん――――御二方に伺いますわ。士道さんが正気に戻った(・・・・・・)と仮定し、暴走時の記憶はどうなりまして?」

「っ……それは……」

 

 AIのマリアが口を噤み、言葉に詰まる。数秒の沈黙は、何よりの答えだと狂三は目を細めた。

 

「あの欲が無制限に続くとは考えたくありませんので、一定の処理を施し欲が吐き出され、また膨れ上がるサイクルがある前提で進めさせていただきますわよ?」

「……ああ。君の言う通りだ」

「では――――士道さんが引きこもって(・・・・・・)、今は何日目でして?」

 

 今度は、確信を以ての問いを投げかける。

 狂三が犯され、床に伏せていたのが分身体の情報では四日。その間に、欲望が解消され狂三を陵辱した記憶(・・)が残った士道は、何をしていたのか。

 不本意ながらあの少年の優しさを知る狂三には、手に取るようにわかる。そして、悲痛な顔で震えた声音を聞かせたマリアの気持ちも。

 

「…………三日(・・)になります。それも、飲まず食わずで」

 

 ――――得るべき情報は得た。立ち上がった狂三は、迷わず隔離区間の出口へ向かう。

 

「お世話になりました、自主退院させていただきますわ。ああ、許可を得るつもりはありませんので悪しからず」

「狂三、待ってください。あなたの身体は――――」

「存じ上げている、と言いましたわ。……まったく、責任感が強いお方はこれだから面倒ですわ」

 

 暴走のせいにしてしまう性格ではないと思ってはいたが、本当に引きこもるほど追い込まれて(・・・・・・)いたことに、狂三は心底面倒なため息を吐く――――それを看過できない狂三自身を含めて。

 

「……待ちたまえ、狂三」

「何ですの。わたくしが急ぎのことはお分かりでしょう」

「――――どうして、シンのためにそこまでしてくれるんだい?」

 

 ピタリと、足が止まった。思考に時間を要すると考えていた狂三だったが、自身の口は思いの外スラスラと言葉を並べ立て始める。

 

「わたくしの思考がどこまで変えられた(・・・・・)ものなのか……もはや、わたくしにもわかりかねるものですわ。けれど、わたくしには一つだけ変わらないものがありますの」

 

 ――――本当に、理由は一つだけ?

 

「わたくしの〝悲願〟のため――――あの方に死なれることだけは、絶対にあってはなりませんわ」

 

 ――――そんなこと、狂三にだってわかるものか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――〈鏖殺公(サンダルフォン)〉!!」

「っ!」

 

 ――――衝撃。

 物理的な衝撃波が、転送装置の出口に姿を見せた狂三の身体を叩く。霊力の波動。天使の顕現。どちらも、〈フラクシナス〉の艦内で発せられることは異常事態といえるだろう。

 

「く……シドー! 出てくるのだシドー!!」

 

 宵闇色の髪を揺らし、片手に両刃の大剣を手にした少女、夜刀神十香が切り付けたばかりの(・・・・・・・・・)扉を必死に叩く光景。

 限定的ながら霊装と天使を展開した精霊の一撃を受け、しかし破壊どころか傷一つ付いていない扉に狂三は眉根を下げる。

 扉の前には十香だけでなく、士道に心を開き霊力を封印した精霊たちの姿も見える。一部には、十香と同じように限定霊装を纏った者も。

 どうやら、事態は想像以上に深刻なようだ。今度は士道の妹である琴里が扉を殴り付ける勢いで叩く光景を目にし、狂三は足早に現場へと近寄る。

 

「士道、出てきなさい! みんなが心配してるわ! お願い、出てきて……おにーちゃん!!」

「あら、あら。皆様お揃いで、壮観なものですこと」

「っ……狂三!?」

『!!』

 

 よほど士道に意識を向けていたのだろう。狂三が手を伸ばせば触れられる距離まで近づき、声をかけてようやく精霊たちが存在に勘づいた。

 各々、狂三を見て様々な感情を抱いている。本来あるべき警戒と――――それ以外(・・・・)が見え隠れしていた。

 それが何なのか、敢えて問うことはせず狂三はたっぷりと歪めた微笑を携え言葉を交わす。

 

「ええ、ええ。久しい方、お顔を合わせることが初めての方……どちらにせよこの時崎狂三、皆様にご挨拶させていただきますわ」

 

 スカートを摘み、足を引いて礼を取る。その慣れた仕草にさえ僅かな違和感を感じる。それでも、狂三は狂三であると見せつけた。

 それが虚勢であることを、何人の精霊が見抜くことができたか。恐らくは、一番事情を知り心を痛めているであろう琴里が、渋面を作り声を発した。

 

「狂三、あなた……」

「さて、さて。事態は想像以上に深刻なようですわね」

 

 強引に切り口を作り、狂三は出来うる限りの神経を集中し士道が立てこもる扉を見やる。

 いつものように【一〇の弾(ユッド)】で情報収集が行えれば一瞬なのだが、いつになく慎重に狂三はあごに手を当て吐息を零していく。

 

「ここは普通の部屋のようですけれど、士道さんは医療室にいたのではなくて?」

「それが……だーりんが一人になりたいって言ったみたいなんですぅ……」

「もちろん、監視は付けさせていたわ。だけど士道が……」

「……なるほど。〈破軍歌姫(ガブリエル)〉か〈贋造魔女(ハニエル)〉ならば容易いことでしょう」

 

 〝声〟の天使〈破軍歌姫(ガブリエル)〉。千変万化、変幻自在の天使〈贋造魔女(ハニエル)〉。立てこもられてしまった今となってはどちらでも、または両方だろうと構わないことだが、迂闊に一人にするような浅慮はなかったことに短く息を吐く。

 しかし、配慮があったからといって事態が好転したわけではない。狂三が扉へ手を触れない程度に近づけ、その強固な霊波に顔をしかめた。

 

「士道さんも面倒なことをしてくれますわね。いくつかの天使の重ねがけ……根本は『閉じる』力。これは確かあなたの天使ですわね、星宮六喰さん」

「う、うむ……」

 

 小柄な体躯とは裏腹な肢体に、それなりに長い狂三の髪すら相手にならない金髪。狂三の情報が確かならば、彼女は精霊の中では新参の少女、星宮六喰。

 年に似合わぬ堂に入った態度の少女だと聞いていたが、今は士道の危機に顔色を悪くし初対面の狂三を気にする余裕すらない見られない。それをケアできる精霊たちが周りにいる状況でそうなっているということは、ほぼ全員が精神的に同じ状態。

 予断は許さない。狂三は言葉を重ねがける。

 

「あなたの側から解錠は……その様子、聞くまでもありませんでしたわね」

「むん……同じ〈封解主(ミカエル)〉でも、今のむくの霊力では『開く』ことができないようなのじゃ……」

「士道さんは、あくまで精霊の霊力を奪うのではなく封印しているだけですわ。本来の所有者に力を戻すことはそう難しくないはずですが……どうやら、士道さんの中の感情がその行為を難しくしているようですわね」

「……つまり、どういうこと?」

「解釈。夕弦たちの感情に比べ、士道が抱える感情が強すぎるということでしょうか?」

「概ねその解釈で正しいはずですわ。あなた方の強いストレスにより、封印が揺らぎ霊力は逆流する。此度は、その逆ということになりますわね」

 

 ――――それ以上に、暴走による要因が大きいのでしょうけれど。

 必要のない詮索は伏せ、狂三は自らの言葉を継いだ

 

「とにかく、皆様が無理やりこじ開けることは不可能と見ていいでしょう。霊力を打ち砕くには霊力。しかし、その絶対値が引き出せない以上、結果は見えて……いえ、既に試しましたのでしょう?」

 

 狂三が見渡すように視線を向ければ、図星だと苦渋の表情を皆が浮かべる。

 

「み、皆さんで力を合わせれば……!」

「皆様が合わせた力が、士道さんの行使する力ですのよ。一部分を見繕ったところで、焼け石に水ですわ」

「じゃ、じゃあ士道が出てくるまで黙って見てろっていうの……!?」

 

 七罪の、否、七罪だけではなく全員がその答えに納得していない。眠っていた狂三に実感はないが、数日間は不安を隠し切れず士道を案じていた彼女たちのことだ。狂三がどう言葉を尽くそうが、力尽きるまで抗い続ける――――狂三と同じ結論に至っているはずの琴里や折紙が止めないということは、そういうことだ。

 故に、精霊たちを探せる行動は一つしかなく、この場でそれを行える者は狂三だけだった(・・・・・・・)

 

「――――わたくしが参りますわ」

「へ?」

 

 素っ頓狂な声は誰のものだろうか。それを知覚する余裕は狂三にもない。

 服に手をかけ、勢いよく脱ぎ捨てる。

 

「なぁ!?」

「きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 驚愕は琴里。黄色い悲鳴は美九だろう。存外、余裕がまだあることに微笑みながら、狂三は数秒で一糸纏わぬ艶姿を艦内で披露した。

 狂三には自負がある。美しい裸身であると、それだけの努力を重ねていると――――たとえ、微風に触れた瞬間に快感が巡る(・・・・・)身体になっていたとしても、狂三の身体は狂三のものだ。

 

神威霊装・三番(エロヒム)――――――っっ♡♡」

 

 主の声に応え、艶やかな裸身を光が包み込む。だが、同時に狂三の全身に過敏すぎる感覚が付き纏う。

 それこそ、あのまま服を纏っていたならば、霊装を纏う一瞬の間に絶頂してしまいかねない(・・・・・・・・・・・)。今でさえ、冗談ではなく裸身を折り曲げ快楽に溺れぬよう耐えているのだ。

 

「あ、あぁ……っ♡く、あぁぁぁぁぁっ!♡♡」

 

 嬌声を上げ、紅と黒のドレスを纏う。優美な霊装に似合わない己の唾液を手で拭い去り、狂三はようやくスタートラインに降り立った。

 

「はっ、はっ……まっ、たく……霊装一つで、このザマとは……不便な身体ですこと」

「狂三、あなたやっぱりまだ……!」

「公衆の面前でわたくしを辱めるのはやめてくださいまし、琴里さん。――――さて皆様、さっさとここから立ち去ってくださりませんこと?」

 

 微笑み、睨め付ける。その貌は、少女たちにどう見えたか――――恐らく、淑女とは程遠いものだと自嘲する。

 

「き、ひひひひひっ! まあ、わたくしの恥辱をどうしても目にしたいというのであれば、留まることを止めはしませんけれど」

「……みんな、行くわよ」

「で、でも士道が……」

「いいから! ここは、狂三に預けましょう」

 

 真剣な、だが狂三に任せるという不安と、腹を括った覚悟を決めた琴里の表情を目にし、精霊たちが息を呑む。

 その中で――――――

 

「時崎狂三」

 

 鳶一折紙。異常なまでに士道への愛を見せる少女が、狂三へ声をかけた。

 

「……何ですの、折紙さん。わたくしの身を案じているのなら、言葉は短くしてくださいまし」

 

 冗談交じりに肩を竦め、促す。折紙は狂三の挑発に乗ることなく、それでいて有言実行の端的な問いかけを繰り出した。

 

「あなたは士道の霊力が目的のはず。どうして、士道のためにここまでしてくれるの?」

「はっ……わたくしが、今から士道さんを『喰らう』ために方便で騙っているとは考えませんの?」

「…………」

 

 折紙のことだ。既に、事の顛末は知っているのだろう。狂三の真なる答えを望み、じっと見据えてくる――――見たことがある。彼女が精霊になったあの日、時を渡るための協力を取り付けようと、単身無謀にも狂三の元へやってきた時と変わらない瞳。

 いや、士道に救われた彼女の瞳は、あの日より鋭く強い。その問いかけは――――しかし、令音に継ぎ二回目ということ。何より、口を滑らせそう(・・・・・・・)で自分が堪らなく恐ろしい狂三は、

 

 

「士道さんを皆様の前にお連れしたその時、わたくしがわたくしのままでいられたのなら――――答えて差し上げても、よろしくてよ」

 

 

 精一杯の夢魔の微笑みを浮かべ、そう答えた。

 

 ――――ようやく、人気が消える。

 

「さあ、さあ。おいでなさい。あなたの出番ですわ――――〈刻々帝(ザフキエエエエエエエル)〉ッ!!」

 

 未だ、その声に応えるは時の針。狂三の心を映し出す天使の輝き。

 

「汚名返上の時間ですわ――――【四の弾(ダレット)】」

 

 揺らぐことのない小さな城へ向けて、この世の理を揺るがす弾の引き金を――――引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 こんなにも死んでしまいたいと思うことは、なかった。

 

「うぇ……、っ、ぅ……」

 

 もはや吐き出すものなど胃の中にないというのに、吐き気が止まらない。震えが止まらない。

 自分の肌に爪を立てて、焔が走る。焔に焼かれる痛みと重なり、また引き裂く。痛みの繰り返しが、何の意味もなさない。

 当然だろう。本当に苦しいのは、士道ではないのだから。

 

「ぁ……うああああああああっ!」

 

 記憶が過ぎる。士道ではない士道の記録が。

 犯した。彼女を、狂三を穢した。取り返しのつかない陵辱の限りを尽くし、士道は笑った(・・・・・・)

 

「お、おれは……俺は……っ!」

 

 笑っていた。おまえは、笑っていただろう。

 救うと誓った者を欲望の限りを尽くして犯し、泣き叫ぶまで心を砕き――――もう、誰にも会いたくない。

 会えるわけがない。どんな顔をして会えばいい。彼女たちを思えばこそ、彼女たちに触れられない。

 孤独でいい。あれほど、幼き日に恐れた絶望感を、士道は自ら肯定してしまう。

 頭を抱えて、身体を丸め込んで、枯れ果てた涙を流す。謝りたい。謝って済むことではない。だけど、ああ、ならどうしたらいい。

怖い(・・)。狂三を見た瞬間、またあの時の自分が現れるのではないのかと。超常的な力を振るい、欲望のままに狂三を壊してしまうのではないかと。

 士道は今、自分がこの世で一番信じられなかった――――――衝撃波。

 

「!?」

 

 どれだけの時が過ぎたかはわからない。しかし、衝動のままに作り上げた天使の城壁が破られた感覚。破られた――――元に戻った(・・・・・)

 そう、まるで、時が巻き戻ったかのように――――!

 

「……ちっ。結局は電子ロックがかけられているではありませんの。――――『わたくしたち』」

「あ……」

 

 声が、扉の先からする。自らが生み出した悪夢に苛まれ、ろくに眠れず霞んだ目が扉の隙間からこじ開ける白い指(・・・)を見つける。それは数秒待たずしてスライド式の扉を無理やり引き、彼女(・・)は足を踏み入れた。

 

「はぁ。力の質が以前の二倍以上に膨れ上がったかと思えば、次の瞬間には消失寸前まで沈む。もはや封印でもなんでもありませんわね、これは。一発撃ち込むだけで一苦労ですわ。――――あら、ごきげんよう士道さん。お邪魔いたしますわ」

 

 侵入は事後報告で、さも当然の権利だと言わんばかりに笑みを浮かべ歩み寄る。

 薄暗い部屋で淡い光が輝いている。彼女が纏う霊装の光だ。

 双眸が士道を見下ろしている。紅と、針が時間を指し示す黄金の瞳。

 精霊の名は、時崎狂三。士道が犯し、壊してしまったはずの最悪の名を冠する精霊。

 

「きひひひっ! なんて姿をしていますの。こういう役目は、わたくしではなくあなたの仕事でしょうに。いつもとは逆ですわね、士道(ヒーロー)さん?」

 

 舞い降りる彼女を、人は悪夢と、死神と呼ぶけれど――――――士道には、自身に裁きを下すために降り立った美しい天使に見えた。

 

「どう、し……ぅ、げほっ、ごほっ……!」

 

 数日ぶりに言語を作ろうとした喉が痛み、咳き込む。

数日(・・)。まだ体内時間が生きていたのか、狂三を見たことでそういう感覚が蘇ったのかは定かではないが、士道はどちらにしろ時間の分別ができたことに驚いた。

 嘔吐く士道を見て、狂三が呆れたように何かを手に持ちながら(・・・・・・・・・・)声を発した。

 

「人間が飲まず食わずで精神を追い込めば、そうもなりましょう。もっとも、変質した霊力は精霊とそう変わらない機能を宿しているはずですけれど……まさか、それを捩じ伏せていますの?」

「っ……」

「……驚きましたわ、呆れ果てるという意味で。意志が強靭なのは結構ですが、自傷行為に使われては浮かばれませんわね」

 

 言いながら、顔を上げた士道が見たのは手に持った何かを口元に煽る狂三の姿。

 

「……?」

 

 何をしているのだろうか――――それが何なのか知ったのは、身体を屈ませて士道の眼前に狂三の美しい貌が迫った後のことだった。

 

「――――!?」

 

 唇が塞がれて、液体が士道の口内に注ぎ込まれる。

()。人が生きるために摂取する最大にして単純な飲料。それが無理やりキス(・・)によって士道の中に注ぎ込まれていた。

 

「ん……、んんーっ!」

「…………」

 

 半ば反射で狂三を押し返そうと彼女の肩を叩き、押す。しかし、数日栄養を取っていない士道と精霊である狂三では相手になるはずもない。

 あっという間に手を取られ、抑え込まれる。抵抗した士道に失礼な、と言わんばかりに眉根を不機嫌に歪めた狂三がとても印象に残った。

 

「ん……ぐ……」

 

 吐き出そうにも、吐き出し口が狂三の唇で塞がれている。しかも、狂三とのキスの快楽は頭を蕩けさせるほど心地がよく、回らない士道の脳を蹂躙して思考停止寸前に追い込むのは容易いことだった。

 気持ちいい。脳が焼ける。今まで全く手が届かなかった狂三とのキスが、こんなシチュエーションで行われる驚き。それさえ脳細胞を蹂躙され消えていく。

 二度、三度をそんなことを繰り返されれば、抑えられるまでもなく抵抗は死に至り……やがて、士道に与え尽くしたことで空っぽになったペットボトルを投げ捨て、狂三が大きく唇を離した。

 

「ぷはっ」

「っ……けほっ、けほっ……」

「……二度目のキス(・・・・・・)にしては雰囲気がありませんけれど、まあ奪われていなかっただけ良しということにいたしますわ」

 

 ペロッと唇を舐め、さらに指で唾液を拭き取った狂三は、存外にも乙女な感想を伝えてきた。

 

「狂、三……なんで……なんで――――っ!」

 

 だが、それを気に留める余裕など士道にはなかった。叫びを上げ、目の前にある美しい貌に向けて悲痛な声を届ける。

 

「なんで、とは異なことを仰いますわ。今、わたくしがあなたの前にいる。それが全ての答えですわ」

「俺を……殺しに来たのか?」

「…………どうしてそうなりますの」

 

 その貌は、先ほどの声音以上に心底呆れ返る、という意味が感じられた。

 

「士道さんを連れ出しに来たに決まっていましてよ。大体、こんな不安定な霊力であなたを殺してしまえば、わたくしは反転した精霊の皆様に袋叩き。結末は、良くて全員仲良く高度一万五千メートルから道具もなしにスカイダイビング。死に方を選べるとは思っていないわたくしでも、笑いある死に方は御免蒙るというものですわ」

「お、まえ……」

「はい?」

 

 ――――なんで、そんな平気そうな貌を見せられるんだ。

 平気な貌して、平気な声で冗談を言っている。自らを犯した男の前で(・・・・・・・・・・)

 

「なに、しにきた……っ!」

「同じことを言わせないでくださいまし。さっさと外へ行きますわよ。皆様、心配していらっしゃいますわ。このままでは、わたくしの不始末として責め立てられてしまいますこと。それでも構わないと仰いまして?」

「んなわけねぇだろ! 俺がおまえを――――――」

 

 穢した。

 

「ぁ……」

 

 今、狂三の身体に触れた腕で、狂三を掴み上げて、犯した。

 

「あ、ぁ、ぁ、ぁ……!」

「士道さん……?」

 

 士道が、士道がやった。泣き叫ぶ狂三を、白濁に沈めた。視点が定まらない――――もう、何もわからない。

 

「ごめ……っ、ごめんなさい……っ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……っ!!」

「……士道さん。落ち着いて。ゆっくり呼吸をして、吐き出して」

「俺が、俺がやったんだ! 俺が全部悪いんだ! 殺してくれ!! 俺をころして……っ!」

「いつもの威勢はどうしましたの? 甘い考えを口にして、反吐が出るような夢物語を語り――――けれどそれを現実にしてきたのは、士道さんではありませんの」

「無理だ、無理なんだ……っ! もう、死にたい……っ! ごめん、ごめんなさい……っ! あ、ぁぁぁぁぁぁ――――ッ!!」

 

 自分自身を裏切った士道に、もう思考の余地はない。

 今までの全てを一瞬で無に帰し、精霊を穢した士道が、生きている価値などない。

 だから、だから、だからだからだからだから――――――せめて、殺してほしい。

 

「いい加減に、してくださいましッ!!」

 

 身体が、浮き上がった。

 

「が……っ」

「さっきから聞いていれば、士道さんが言わないようなことばかり……っ! ええ、ええ。謝罪だけなら受け入れて差し上げますわ! それで士道さんの気が済むのなら、何百、何千と!!」

 

 荒れ果てたベッドに叩きつけられ、狂三が馬乗りになって服を掴み上げ、士道の喉元に銃を突き付ける。

 そして、力の限り言葉を吐き出し続けた。

 

「たかが小娘一人を犯した程度で、(ふね)の中で丸くなって何をぴーぴー喚いていますの!? あなたには救った方がいるはずですわ! あなたの両の指では数え足りないほどに、誰かを救ってきたのでしょう!?」

「っ、あ……」

「なら、あなたがするべきことはなんですの!? あなたが救い、あなたを頼りとし、あなたを案じ涙する者たちへ笑顔を向けることですわ! それがエゴで他者を救った者の責務でしょう!! それを捨てた士道さんなど――――わたくしが殺す価値もありませんわ!!」

 

 銃を突きつけられ、己の責務を問いただされ――――士道はようやく、喉に力が戻った気がした。

 

「……できるわけ、ないだろ」

「今のあなたに、弱音など必要ありませんわ」

「っ、出来るわけないだろうが!!」

 

 痛い。久方ぶりに叫びを上げた喉が痛い。心が痛い。狂三に言わせたくないことを言わせてしまったことが、痛い。

 

「何を、ふざけたことを……っ」

「だって狂三は――――――助けてほしいって、言ってたじゃないか」

「――――――――――――」

 

 狂三の両眼が見開かれ、言葉の槍が止まった。

 

「俺の名前を呼んで、俺に助けてほしいって……言って、くれてたのに……っ!」

 

 よりにもよって士道が、それを踏み躙った。いつか必ず、狂三を救ってみせると。相対したあの日に。七夕の日に消えてしまったあの子に誓いを立てて。

 そんな士道が、狂三を絶望の底に落としてしまった。自分が救ってきた者たちの想いまで裏切り、約束を裏切った。心が折れた士道が、今精霊たちと再会してしまえば、きっと(・・・)

 枯れ果てたはずの涙が、狂三が見下ろす前で落ちていく。

 

「……あなたという人は、本当に…………どこまで……」

 

 服を掴み上げた手と銃を下ろし、くしゃりと歪んだ貌で狂三が士道を見ていた。

 嬉しさと、悲しさとを綯い交ぜにして、落ちる前に拭い去られてしまったそれは、狂三が士道に見せた初めての――――――

 

「……ふんっ。そのような余計なことまで覚えているだなんて、士道さんらしいですわ。あのような戯言、今すぐお忘れくださいまし」

「忘れられる、もんかよ……」

 

 助けを求めた精霊は、あの瞬間間違いなく少女だった。最悪の精霊ではなく、世界を蝕む災厄でもなく、士道という少年に助けてほしいと初めて手を伸ばした時崎狂三だったのだ。

 その想いを踏み躙り、穢らしい欲望に負けた士道に未来はない。二度と、少女の手を掴むことは、できない。

 

「――――そんなに死にたいのなら、殺してあげますわよ」

「え……」

 

 士道の声は、歓喜であったのか。それとも、残す者に顔向けできない絶望の声だったのだろうか。

 どちらにしろ、士道の上に乗り、その華奢両手で士道の首に触れ、士道の眼前に貌を近づけた狂三は、士道を殺してなどくれなかった(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「ただし、それは士道さんが真に己を回帰させたその時に、ですわ」

「俺が……?」

「ええ、ええ。あなたは今、ケモノを飼っていますわ。意志の光など届かない、育て上げられた一匹のケモノ。わたくしを犯し、破壊し、支配する力を持ったケモノを」

「だったら!」

 

 そんなものごと、殺してくれればいい。少女を(ころ)すケモノごと、精霊を汚す存在になった士道を消し去って欲しかった。

 それを、そんな無責任を、時崎狂三は許しはしない。

 

「構いませんわ。欲望のまま、存分にわたくしを犯すがいいですわ。それがあなたを生かす(・・・)というのなら、わたくしはその運命を受け入れてみせましょう」

「なに、を……言って……?」

「ですが、恥辱の海に沈もうと、屈辱と陵辱の限りを尽くされようと、恐怖で心が砕かれようと、快楽で脳を溶かし尽くされようとも――――――この時崎狂三、必ず『わたくし』として舞い戻りましょう」

 

 ――――美しかった。

 

 少女の外見だけの話ではない。その鮮烈な生き様が。士道では比較にならないその鋼鉄の決意が。その信念のために全てを捧げた彼女の意志そのものが。

 あまりに美しくて、あまりに綺麗だった。

 

 

「あなたがあなたを取り戻すまで。あなたを絶望させるものを消し去るまで、わたくしが寄り添い、献身し、奴隷として扱われてみせましょう。あなたに快楽をもたらし、あなたのつまらない後悔をわたくしを選んだ幸福に変えてみせましょう。そして、あなたがあなたとして再び立つその日に――――――わたくしが、士道さんを殺して差し上げますわ」

 

 

 時を奏でる少女の瞳が、見惚れた少年の貌を映し出していた。

 誰よりも気高いその生き様を――――――五河士道だけが、知っているのだと思いたかった。

 

「……殺して、くれないんだな」

「殺しますわ。士道さんが本当に士道さんを取り戻したのなら、ですれけど」

「なんだよ、それ」

「いけませんの? 絶望して死ぬなど、つまらないことですわ。ならばせめて、わたくしという美しい女を味わい尽くし、極上の快楽を感じ、わたくしに心から心酔し感涙に咽び泣き、わたくしの手にかかって死んでくださいまし」

「…………言ってること、めちゃくちゃだ」

 

 士道を生かすためにその身を差し出し、その果てに殺す。意味がわからない。

 だが、士道の零した言葉に狂三はニィっと目を笑みの形に変え、告げた。

 

「では、その証をお見せいたしますわ」

 

 瞬間、光が狂三の霊装を包み込み、士道は目を見開く。

 

「証明して差し上げましょう――――わたくしが、味わい尽くすに足る極上の女だということを」

 

 霊装が形を変え、その光景に士道はあらゆる言葉を失った。

 肌を大きく露出し、極限まで薄くした霊装。ランジェリー、という肌着が一番近しいであろうか。黒と紅に狂三の白磁の肌が加われば、美しさと淫猥が矛盾して士道の目を焼き尽くす。

 大きく開かれた腹部には無駄な肉がなく、滑らかに士道の目を奪う。一枚の薄布は、もはや着ている方が情欲を誘うほど。しかも、この世ならざる奇跡で編み込まれたランジェリーは、どれほど税を尽くそうと何物も及ばない、狂三だけが纏うことを許された艶美なる装いだった。

 少女とは思えぬ豊満な胸が零れ落ちそうだ。ガーターベルトで支えられたタイツに無駄のない肉が食い込み、ショーツに包まれた秘部が士道の身体に触れ、僅かであろうとその感触を伝えてくる。視覚と触覚、さらには嗅覚までもが狂三という至極の女体を持つ少女の魅力を士道の脳に叩きつけてきた。

 

「あ……、ぁ……」

「理解できまして? 士道さん――――あらあら、もう一人の士道さんは、素直でいい子ですわね」

 

 それは何も、士道の意識に向けたものではなかった。狂三が視線を向けたのは、まさに彼女が跨る士道の身体。

 ズボンを今にも突き破りそうなほど勃ち上がる、士道の一部だった。

 

「い、っ……」

「うふふ、苦しそうですわね。わたくしが……解放して差し上げますわ」

 

 狂三が両手を使い、グッとズボンを下着ごと下ろし――――た瞬間、勢いよく反り返った肉の棒が士道の上半身と狂三の間に聳え立った。

 

「まあ……♡」

 

 それを見てうっとりと、愛おしげに吐息を零した狂三の瞳は、半ば正気の色を失っている。

 だが、それは士道も同じだ。それも誰かもわからない自分ではなく、士道の意志で狂三に欲を抱いている。

 狂三の腹に肉棒を擦り付ければ、柔肌が刺激になって先走る液が亀頭から溢れ、狂三の滑らかな腹を淫靡な汁が汚していく。

 

「あぁ……っ!」

「きひっ♡士道さんったら、いけませんわ……♡」

 

 だが、狂三はそれを避けるどころか積極的に押し付け、士道に快感を与え続ける。ぶよぶよとした亀頭に柔肌が擦り付けられ、エラの張ったカリ首がグッと押し上げられ、下げられる。

 

「あぁん♡士道さんのおちんちん……これだけで、イッてしまいそうですわ」

「や、めろ……やめるんだ……!」

「あら、あら。まだそのようなことを。疾く諦めて、快楽に溺れてしまいなさいな――――理性も本能も、わたくしの虜にして差し上げますわ」

 

 今一度、狂三が狙いを定めて腹部に肉棒の先を押し付ける。そこは、ヘソの真下に位置する――――子宮。

 士道の種を植え付け、狂三を孕ませる器官。今の自分たちには、至極の悦楽をもたらす雌の機能。

 

「さあ……お待ちかね、ですわ♡」

 

 腰を上げた狂三は、黒のショーツをズラし隠されたものを指で広げて見せびらかす。

 くぱぁ、と開かれた狂三の秘部。陰裂を掻き分けられ、脈動する膣。愛液を湯水の如く垂れ流し、肉棒に雌の汁を絡ませる狂三の蜜壷。

 見てはいけないはずなのに、血走った目が、イキり勃つ肉棒が待ちわびていた。士道(理性)が何よりも、狂三という女を貫きたいと最低な想いを抱いていた。

 欲望に屈しようとする士道に狂三は微笑んだ。眼を輝かせ、潤ませて、甘美で淫靡な夢魔が笑う。

 

「うふふ、素敵ですわ士道さん。素晴らしいですわ士道さん。その目を忘れず、己の欲望を肯定なさい。わたくしを抱けることを悦び、受け入れてしまいましょう――――わたくしと、一つになりましょう?」

「……狂三」

 

 極限まで溶かされた思考は、ただ少女の名を呼ぶことしかできなかった。

 確かなのは、夢魔の誘惑は無意識のうちに士道の首を縦に振らせていたこと――――狂三の膣が、士道の肉棒を喰らい尽くしたことだけだった。

 

「あ――――っ!」

「あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡」

 

 喉を引き絞る声と、甲高い嬌声。蠱惑の色が官能的な声音に変わり、士道の聴覚を快楽器官に変質させる。

 

「っ……あぁ!」

「いっ♡いひっ♡♡士道さんのおちんちん♡素晴らしいですわ♡素晴らしいですわ♡♡わたくしの中を穿ち、占有する逞しいおちんぽ様……♡♡」

 

 気持ちいい。その感情以外が消えていく。罪悪感も嫌悪感も、背徳的な快楽に溺れて消えていく。

 感じていたストレスを絞め殺すが如く、狂三の膣は肉棒を締め付け続けた。女を壊してしまう巨根も、今の狂三の肉体なら受け止められる。子宮でさえ本来の用途から姿を変え、内部まで肉棒を受け入れて際限なく士道の一部と一体化している。

 

「あぁっ♡ああぁ゛♡♡……いひぃぃぃぃぃっ♡♡」

 

 やがて饒舌だった狂三の舌さえ回らなくなり、涎を散らして快楽を貪る一匹の雌に変わった。

 腰を振りよがり、貌をだらしなく歪めて快感に屈する。

 あの気品に溢れ、淑女の嗜みを語り、誰より美しかった少女が雌に堕ちる。その光景が――――あまりに、心地よかった。

 

「くる、み……! 狂三、狂三、狂三、狂三――――ッ!!」

 

 彼女という女をモノにできるのなら、己の命の権利を全て彼女に捧げても構わない。そんな想いさえ脳裏を掠め、士道は枷が外れる音を己の中から聞いた気がした。

 

射精()すぞ! おまえの中に俺のモノを!! 受け止めろ、狂三……っ!」

「あっ♡あぁっ♡♡はい♡♡士道さんのおちんぽザーメンをわたくしに♡士道さんの奴隷にくださいまし♡♡あなたに変えられた子宮を満たして、わたくしをあなたの雌に変えてくださいませぇ♡♡」

「う、ぐ――――あぁぁぁぁッ!!」

 

 雄叫びを上げて、狂三の中を打ち上げる。どちゅ、と子宮内を肉棒が占領し、その先端から濃厚な精液が吐き出された。

 

「あ――――――あぁぁぁああぁあぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁっ!♡♡♡♡」

 

 瞬間、狂三がイッた。貫かれた衝撃、満たしていく精液の感覚に女体を反って絶頂する。

 痙攣する肉の裡に士道のモノを注ぎ続ける。この女は奴隷だ。この雌は俺のモノだと。

 ――――光が収束する。霊力によって構成された物体が、士道と狂三の願いを叶えるために。

 狂三の下腹部、ヘソの下。ちょうど子宮がある肉肌に光が刻まれていく。それは子宮の位置を中心とし、鋭さと柔らかさどちらも思わせる線を引き、ヘソの下腹全体を占領するほどの大きさを刻み切る。

 彼女のウェストが細いばかりに、線の先が脇腹まで及びかねない体表に描かれた巨大な紋様。桃源の色を霊装のように淡く灯し、タトゥーを思わせる彩りを狂三の下腹部に加えた。

 

「それ、は……」

 

淫紋(・・)。現実感のない淫らな呼び名が脳裏を掠める。

 すると、淡く輝くその淫紋にか細い指を這わせた狂三が、汗と液に塗れた貌を不敵に、そして淫靡に歪ませた。

 

「これは、契約(・・)の証ですわ」

「契、約……?」

「ええ、ええ。この証が消えたそのとき、わたくしはあなたの命をいただきましょう。しかし、この証ある限り、わたくしの全てはあなたのモノですわ」

 

 ――――妖しいほどに美しい貌が迫る。

 

「わたくしがどれほど抗おうが、抵抗しようが、泣き叫ぼうが、あなたのモノである以上……あなたは、わたくしを犯すのでしょう」

 

 艶めかしく映る薄紅の唇が、迫る。

 

「構いませんわ。ええ、構いませんわ。わたくしを存分に陵辱し、罪悪感などなくしてしまえばいいのですわ。そして立ち上がって、前を向いて、やがてあなたの中からケモノが消えたそのときこそ、わたくしが士道さんを――――――殺して(救って)みせますわ」

 

 重ねられた唇は――――世界で一番、優しい味がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「シドー!」

「あ……」

 

 いの一番、精霊たちの中で彼の名を呼んだのは、やはりというべきか彼女。彼に初めて救われた精霊が、不安げな表情で彼を待っていた。

 対して、最低限は身だしなみを――わざわざ狂三が――整えさせたというのに、士道はその声に顔を俯かせたまま一歩足を引いてしまった。

 

「……面倒くさい方ですわ」

 

 生憎と、狂三は士道の奴隷ではあれど介護志望というわけではない。息を吐き、腕を組んだまま右足を振り上げて士道を後ろから蹴り倒した。

 

「わっ!?」

「っ……シドー!」

 

 それでどうなるかなど【五の弾(ヘー)】を使うまでもない。飛び出した十香が士道を支え、触れ合う。

 その温もり、肢体の柔らかさ――――苦しげに息を呑む雰囲気が狂三には手に取るようにわかった。

 だが、

 

「……心配かけて、ごめん。とりあえずはもう、大丈夫だ……十香」

 

 ぎこちなく十香の頭を撫でた士道に、涙を浮かべた彼女が歓喜の声を上げて抱きついた。

 それを合図として、精霊たちが彼へ向かって飛びかかる。

 

「シドー、シドォォォォォッ!!」

「もぉぉぉぉっ! 二亜ちゃんに心配かけるなんて少年の癖に生意気だぞー!!」

「よ、よくぞ舞い戻った我が従僕! 褒めて遣わす……!」

「感、謝。本当に……よく、夕弦たちの前に帰ってきてくれました……っ」

「主様――――ッ!」

「士道、さん……っ!」

「し、しどぉ……」

 

 一部は涙声で、幼い子たちに至っては号泣の大騒ぎ。

 

「まったく……人間一人に精霊総出でこの騒ぎとは、霊力封印の利便性も考えものですわね」

 

 独り言ち、目を伏せて大きく息を吐く。優雅さとはかけ離れているが、どの道この状況で狂三に目を向けるものなどいないのだから構うまい。

 士道が霊力を溜め込んでおける特殊な体質を知った瞬間は歓喜したものだが、ここまで面倒になるとあの喜びは撤回するべきかと考えて――――こうなることも、運命だったのだろうと受け入れる。

 あとは、彼女たちの時間だ。振り返って、立ち去る。

 

「――――っ」

 

 しかし、ほとほとタイミングが悪かった。また身体が疼いて、生成し直した霊装を纏っていられない。霊力の塊をその身に纏うことは、今の狂三にとって物理的な鎧にはなれど内側からの鎧にはなり得ない。

 ――――率直に、肉体の変質を自ら推奨しているようなものだ。

 それでも、狂三に選択肢などなかった。部屋へ突入し、士道をその気にさせるには霊力行使が不可欠であったのだから。まあ、それで狂三以外に欲情するようであれば骨折り損だったのだけれど――――そんな思考も長くは続かず、霊装は光へと還り、身体は斜めに倒れ、

 

「――――お疲れ様。それと、ありがとう」

 

 自身より幼い司令官に支えられ、彼女がいつも羽織っていた赤いジャケットで裸体が隠される。

 

「……過去に殺されかかった相手に支えられるとは、屈辱ですわ」

「あなたの屈辱ポイント、よくわからないわね……」

 

 単純に、狂三のプライドの問題だ。わざわざ説明してやる義理はなく、狂三は目を逸らして疲れ果てた吐息を零す。

 ジャケットを手に取り、琴里の手を離れて壁際に座り込む。というより、そうしないと小さなジャケットでは裸体を隠せない。見られて減るものではないと思っていたが、下腹部に刻まれた卑猥な紋様を見られるのであれば話は異なる。これは、狂三の品性が疑われかねない。

 

「もう少し気の効いた衣服が欲しかったですわね」

「ごめんなさいね。今用意させてるから……気の効いた(・・・・・)服だと、下手なものは用意できないでしょ?」

「……ま、司令官様直々の物で妥協して差し上げますわ」

 

 苦笑気味に言葉を濁した琴里へ、あくまでもいつもの皮肉な狂三で対応してみせる。

 変わらないからこそ、琴里は苦しげに唇を結ぶ。士道の妹(・・・・)が何を思い、どのような後悔をしているのか。きっと、ありもしない〝もしも〟を悔いている。狂三はそう思った。

 その〝もしも〟を思い、変えようという〝悲願〟を掲げる狂三だからこそ理解できる。

 

「狂三――――――」

「謝罪であれば、士道さんから嫌になるほどいただきましたわ。……お気になさるのであれば、士道さんの精神に気を回してくださいまし。わたくしはあくまで、支えを一つ作り出しただけですわ」

 

 あとは狂三と、日常を支える精霊たち次第だ。

 出来うる限り奮起を促した。罪悪感を消した。それでも士道は、あの心優しい少年は決して自分自身を許さない。

 世界の敵である狂三を救いたいと宣った、それを本気だと示した少年だからこそ――――狂三はこれから、欲望の底へ共に堕ちていかねばならない。

 

「そう。……ええ、わかってるわ。本当にありがとう、狂三」

「ふふふ……調子が狂ってしまいますわ」

 

 本当に、調子を狂わされる。どこまでが自分で、どこまでが自分ではないのか。混ざりあって、わからない。

 膝を抱え、ジャケットに隠れながら、疲労の痕は隠せない吐息が再び零れ落ちた。

 

「――――時崎狂三」

 

 そこへ、次なる来客。そろそろ休ませてほしいという弱音を伏せ、狂三は顔を上げて彼女と相対した。

 

「あら、あら。折紙さんではありませんの。士道さんはよろしいので? ……ああ、このような見窄らしい格好で申し訳ありませんわ。お気に入りの洋服は脱ぎ捨てておりましたもので」

「私のジャケットが見窄らしくて悪かったわね」

 

 わざと当てつけのように琴里を見やり、頬をピクつかせた司令官様の顔で多少のため息を下げた狂三に、折紙が深々と頭を下げた。

 

「士道を助けてくれて、ありがとう。この礼は必ず尽くす」

「……本当に、調子を狂わされますわ」

 

 以前にも折紙には調子を狂わされたことがあるが、今日はそのとき以上だ。敵対する狂三に対して、こうも下手に出られると狂三の居心地が悪くなるではないか。

 そんなことを思った狂三に、長く深々と下げた頭をようやく上げた折紙が、小首を傾げて声を発した。

 

「改めて、聞かせてほしい。あなたが、どうしてここまで身を削ってくれたの」

「ああ、ああ。そういえば、妙な約束をしてしまっていましたわね」

 

 その場を凌ぐためとはいえ、余計な口を滑らせたものだと後悔が募る。

 しかし、約束は約束だ。気乗りはしないが、狂三は彼女たちだけに聞こえるように声を発した。

 

「無論、士道さんに取り入るためですわ。士道さんの霊力を得るためには、わたくしに心酔していただくことがスマートで都合が良いとは思いませんこと? それに――――――」

 

 それに。息を吸い、途切れさせたその一瞬、狂三は無意識に(・・・・)言の葉を紡いだ。

 

 

「この時崎狂三があの方を喰らう(愛する)ことは、初めに伝えていたことではありませんの」

 

 

 狂気的に、微笑む――――微笑んだはずだったのに、折紙と琴里が目を丸くして顔を見合わせたことに、狂三こそ訝しげな表情を作る。

 そして、一転して微笑ましい微笑を浮かべた二人に、その違和感は決定的なものとなった。

 

「……そう。どうやら私は、あなたを誤解していた。ここで謝罪させてほしい、狂三(・・)

「は……?」

「そうね。大人っぽいと思ってたけど、ちゃんと私たちと同じ感情で動いてたみたいね。不謹慎だけど、私じゃなくてちょっと悔しいわ」

「……!? お、お待ちになってくださいまし! わたくしは今何を言いましたの!? 普通の言葉をお伝えしましたのでしょう!?」

「そう。私たちの中では普通で、特別なこと」

「そうそう。あまり伝えないけど、伝えてあることよねぇ」

「な――――何を言いましたのわたくしぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

 知りたいような、絶対に知りたくないような。狂三の複雑な叫びが艦内に響き渡り、ほんの一時とはいえこのふざけた騒動の終わりを告げた。

 

 

 

 

 ――――膨れ上がるということは、元々から強い想いがなくてはならない。

 まあ、つまり時崎狂三は――――そういうこと(・・・・・・)だったのだろう。

 

 

 






エロくダーク、背徳で歪。少年と少女、もう一つの狂った愛物語。本作の隠れコンセプトです。


Q.君この二人で王道の恋愛書けないの?

A.書いたらそこで話終わるしこの二人が勝手にこうなるの!素直にくっついてくれないの!俺は悪くねぇ!!

感情バグは起こってるけど基準時系列がリフレイン手前なので、まあ察してあげてください。そしてオタクくんが書く殺してあげるは愛してるの意です、覚えておきましょう。またかよ。オタクくんさぁ……。

狂三は敏感体質と淫紋を手に入れた!!ランジェリー霊装はまんま狂三ランジェリーフィギュアのイメージ。淫紋は……○MDで拘束されたところに淫紋ぶち込まれて紐水着レイプ目でステージで踊ってその後犯されて最後には催眠解ける作品のやつ。あれ系の中でも人気のだから速攻見つかるはず。
淫紋のイメージ確定させるためになぜ俺のくるみん秘蔵フォルダの話を……いや本当にあのM○Dで使われてるやつがドンピシャなんです信じてください。

1話であまりにも好き勝手やった結果物語にするために2話でツケを払うの巻。まあこういうくるみんが書きたかったのは否定しない。くるみんが快楽堕ちしたままだと思うなよ!!!!(強火オタク)。だってこの子士道のために200回以上ループするメンタルの子ですし。そんな狂三でもただでは済んでいないというのは、これから沢山書いていけると思います。
士道くんはそらまあ、令音アビスは奇跡的に噛み合ってメンタルケア間に合ってただけですからね。封印されていない唯一の精霊だったというのも……もうちょいネチネチしてもよかったけどさすがにメンタル復帰できなそうだから止めました。虐めるなら平等ですよ私、はい。…………正直士道くん虐めるの、興奮した。好きなキャラ追い詰めるの好き。そこから引き上げるのもっと好き。

あと水飲ませキスは処方正しいかとか知りません。私の趣味です。飲み干したボトルを投げさせたかった。特撮好きだからものを横に投げる仕草が性癖なのかもしれない。ニッチすぎひんか?

前作が少年が少女を救う話なら、これは少女が少年を救うお話。意外と予想外かもしれませんね。結末?……いや考えてませんけど。
だって時間改編エンドやってるし……そもエロでやってどうするって話だし。でもくるみんが快楽堕ちして目的諦めるのも解釈違いだし……前作で遂に道中手を取るif書かなかったし。
全てを手放し、全ての罪を償う手段と引き換える快感を貪る。罪悪感に苛まれながら永遠に士道と共にいることを選んだ狂三。そんな気高い狂三を自らの奴隷にして、心を手にした代わりに士道自身がその罪に涙する。けれど、悦楽は止められない。エロとしてはハッピー。物語としてはバッド。こういうのしか……え、いや、暗いなこれ!?

まあエロで何するかもあんまり考えてないんですよねぇ。令音アビスとネタ被っていいならという感じ。
でも分身体に両手両足ガニ股拘束されながら乳首と恥部弄られて分身たちに笑われながら屈辱と快楽に顔を歪めるくるみんは書きたいと思っています。愛が歪んでる?いや見たいでしょ常識的に!!!!
そんなわけでリクエスト募集中です。物語の雰囲気はこの2話分を参考にしてもろて。SみんもMみんもできるぞ!士道くんの精神状態不安定だからね!最悪だね!

あと、その……夢オチなら、DEMに捕まって調教されるくるみんとか、許されませんかね?(小声)

沢山の感想、評価ありがとうございます!エッチなくるみんが見たかったら軽率に高評価していってね(はぁと)
皆さん私=狂三みたいなイメージ持ってて笑いました。まあ隠せてるとは思ってませんでしたけど。嬉しいですけどね。今後も狂三は恋愛方面では士道くんとばかり絡むと思いますが。ていうか恋愛でなら他と絡ませる気ないですが。
友情方面に関しては甘いと言われようとギスギス避けてるんですよね。や、狂三が皮肉言ってうんたらとかはいいんですが、恋愛的なギスギスは私無理、死ぬ。胃が死ぬ。仲良くしててほしい。だから恋愛方面のハーレム書かないんですよね、デアラなのに。まあデアラは特殊で上手くやってる作品というのが素敵なのです。デート・ア・ライブ、買おう!!(ダイマ)

けど今回はエロなのでハーレム書いちゃうもんね!というわけで次回は精霊in令音編!狂三と同じく章をしっかり分けて別時空でお届け。これくるみん特別扱いしてるのもろばれ……ゲフンゲフン。
ではではまた次回〜。


正直すまんとは思ってるけど、めちゃくちゃ百合百合になった。濃厚なやつ。しかも当初の予定の令音さんとじゃなく精霊同士で。これこのシリーズのコンセプト決まってしまった気がするなぁ……。暴走士道くんは精霊同士が仲良いと喜ぶだろうし、いいよね!!
まあこっちは令音や狂三と違って時系列にこだわらないのでパラレルとかもありです。詳しくはその時になったらですかねぇ。狂三出てから後書きがクソ長い!!
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