久しぶり(?)にこっち書いて脳みそ動かしたからちゃんとお話になってるかご不安。
というか琴里単独デート回書いたらさらに他の子のデート回書きたい欲が出たのでデートスポットやらシチュ片っ端から送り付けてほしい。私一人で考えるの無理があるわこれ。二亜、夕弦、六喰、十香辺り書きたいけど何があるんかなぁ。
「おはよう、士道」
「あ、ああ。おはよ――――」
「もうお昼だけど」
「…………」
ソファー越しの視線が痛く突き刺さる。幸いにも琴里だけのようだが、その琴里には何をしていたのかお見通しのようだ。
当然だが、この家に特殊な防音処理など――〈ラタトスク〉が手を回していなければ――されていない。だから、風呂場での情事は危険度で言えばかなりのものだ。とはいえ、士道が狂三とナニをしていようが、琴里の対応は変わりはしないのだけれど。
「ま、元気がいいのはありがたいわ。引きこもってうじうじ悩むよりは健康的よ」
「うじうじって……」
「うじうじはうじうじでしょ。何もしないならフンコロガシの方が余程働き者よ――――士道、あなたの使命は何?」
ピッ、と琴里が咥えていたチュッパチャプスの棒先が士道に突き付けられる。琴里が何を言わんとしているのか理解ができた士道は、
「……精霊とデートして、デレさせること」
「よろしい。今日は休日で、狂三に予定がないことは確認済み。少し急だけど、私が言いたいことはわかるわね?」
「…………」
わかる、と言いたかった。狂三は精霊で、士道は彼女をデレさせる。だからデートが必要になる。封印する前、封印の後、どちらであろうとこうしたシチュエーションは珍しいものではなかった。
意図して避けていたことを突き付けられ、士道は妹――――司令官から目を逸らした。心の困窮、とでも表現すればいいのか。狂三とデート。緊張と興奮を孕んでいた響きのそれは、今は自身に対して吐き気を催すやり方になってしまっていた。
「琴里……俺は!」
「――――狂三の封印は、酷く不安定よ」
「……っ!」
言葉を遮られ、息を呑む。否、遮られたことにではなく、その内容に息を呑んだ。
厳しい司令官を演じる琴里の目には、士道に対する気遣いが見て取れる。どれだけ士道の心が追い詰められていようと、妹の感情の機微は読み取れる。琴里は何も、士道を追い詰めようというわけではない。
「正規の封印手段が発動しない以上、今は狂三の制御が頼りなの。わかるわね?」
「……ああ」
ただ事実を述べ、必要なことを教える。つまりは、不安定な状態で
「あの子は士道に心を開いているわ。けれど、あと一歩が足りないのよ。強引に繋がれた
「狂三が俺に、ね……」
なんて、醜悪。苦虫を噛み潰したよな顔で思い浮かんだ言葉は、それだ。
確かに、開いてくれていたのかもしれない。狂三が救いの手を求めたのは、他ならぬ士道――――そんな狂三を犯し、穢し、縛り付けたのもまた、五河士道。
そんな士道に、狂三が心の全てを開いてくれるとは思えない。否、士道には、その自信がないのだ。
「士道」
「え……っ!?」
身体が押し付けられて、硬直する。正面から抱きついた
まだ琴里を妹として、大切な家族として見ることができている安心感。そんな妹を僅かであっても
「琴里……」
抱き返すことができない。だが琴里は、この抱擁を止めるつもりはないと離れようとしなかった。
「大丈夫。士道が今までしてきたことが、〝なかったこと〟になったわけじゃないわ。忘れないで。あなたがみんなを、私を救ってくれたことを。あなたは、精霊を救いたいと願ったからやり遂げることができた。狂三も、同じでしょう?」
「……………………ああ」
長い沈黙を得て、嘘偽りのない言葉を吐き出す。いいや、本当でもあり、異なる事実でもあった。
狂三を救いたい。そう、士道が願っていることは本当なのだ。けれど、狂三の手で
「今すぐ立ち直れなんて言わない。だけど、狂三だけじゃなく精霊はまだ現れるかもしれないの。少しでも〝リハビリ〟は必要よ。そのために、
望むままに。今の士道ができる範囲で。余計な声というのは、今の士道の精神状態を考慮してのことなのだろう。少しでも、士道の主体性を取り戻させようということだ――――これじゃあ、俺のリハビリじゃないか、と士道が苦笑をしていると。
「あら、あら。お熱い兄妹愛ですわ」
「っ……く、狂三か」
「ええ、ええ。わたくしのことは気にしないでくださいまし。士道さんと琴里さんの兄妹愛、どうぞ続けてくださいませ?」
士道が振り返ったリビングの入口に、冗談めかした笑いで立っている黒髪の少女。外行き用で見慣れた結い上げがなされた髪と
その、以前の狂三にはなかった少し幼めな印象を抱かせる可愛い系を混ぜた私服姿に
「…………」
「……えっと」
ニコリと笑っているが、『早くデートに誘えこのノロマ』という圧が琴里の表情から伝わってくるようだった。……打って変わって優しくない妹に戦々恐々しながらも、士道は勇気を振り絞って狂三に声をかけた。
「く、狂三」
「はい、士道さん」
「……ぐぉ」
眩しい。笑顔が眩しすぎる。たとえ狂三の社交辞令だとわかっていても、時崎狂三という見た目麗しい、魔性の魅力すら纏う少女の笑顔が今の士道には眩しすぎた。
しかし、目を逸らせば琴里からの厳しい視線が飛び込んでくる。望むままにとは言うものの、デートの誘いは絶対であるらしい。
何とか顔を向け直して、ぎこちない笑顔で狂三に向かって声を発する。
「あー、その、ですね。今日、お暇ですか?」
「ええ。特に予定は入れておりませんわ」
……ぎこちないことこの上ない。恐らく、見ている琴里がドキドキハラハラだろう。
今まで積み上げた経験値がリセットされ、どころかマイナスされた状態で狂三の前に立たされている気分だ。サッパリした身体から汗を流しながら、士道はたどたどしい言葉を紡いだ。
「な、ならさ。今日は俺と……で、で……でー――――出かけないか、俺と!」
――――はいダメー。と琴里の深いため息が士道の鼓膜に痛く響いた気がした。
不自然すぎる言葉に逃げの姿勢。これが何人もの美少女を、曲がりなりにもデレさせた少年の末路とは嘆かわしいことこの上ない。
「まあ、まあ。ありがとうございます、士道さん。わたくし、ちょうどお洋服が欲しいと思っていましたの。付き合っていただけまして?」
「へ……お、おう! もちろん!」
とはいえ、
リハビリは、前途多難だと士道はため息を吐き、デート用の服を見繕うため一度部屋に戻った。
「さて、さて。どういうおつもりですの、琴里さん」
組んだ手の片方を自身の手のひらに当て、狂三は微笑と共に琴里へ問いかけを向けた。
当然、その中身は先ほどの
「あら、可愛い士道が言いたいことくらい、あなたなら理解してるでしょう?」
「わたくしをデレさせるためのデート。というよりは、士道さんを立ち直らせるためのデート――――何より、士道さんの
「…………」
向き合いながらだと、琴里の感情の機微が狂三にも読み取れる。司令官として隙を見せない態度の中にある、優しすぎる琴里の本質。
毅然と、しかしどこか自分を責めるように琴里の声音は震えを帯びていた。
「……これ以上、士道の異常を見過ごすことはできない」
「〈ラタトスク〉としては、でしょう? ま、わたくしという厄介な精霊一人を縛り付けて置くことができるとなれば、ハイリスクハイリターンですものね」
「ええ。だからこそ、士道にはあなただけを見てもらう必要がある。――――そのための手段の一つが、デートよ」
時崎狂三の霊力を封印したい。それもまた〈ラタトスク〉としての本音なのだろう。
狂三の肉体的な
だが同時に、今の士道の状態は看過できない。士道の性的な好意如何で状況が一変するとなれば、その危険度はある意味で〈ナイトメア〉を超える。
危険な精霊に、異常が発生した作戦の根幹を成す人間。互いが互いを縛り付ける状況となれば、士道の現状を維持しながら、あるいは回復を促しながら狂三をデレさせる〝デート〟という方法は理にかなってはいる。が、狂三は皮肉を浮かべた笑みを携え声を発した。
「しかし、楽観的ですわね。わたくしが士道さんの精神を気にかけている前提の成り立ち。――――わたくしが士道さんの責めに根を上げて、
「しないわ。ううん、
「っ!」
皮肉が真っ直ぐに打ち返され、狂三は僅かに息を呑むという動揺を余儀なくされた。
琴里はよくわかっている、というべきか。時崎狂三という精霊の性格とプライドを。
これがもし士道以外であれば、狂三は躊躇いなく人に押し付けていた。そもそも、
それが今はどうだ。士道に犯され、契約を結んだ狂三は、士道を立ち直らせることに躍起になってしまっている。
「……そうですわ、ね。巻き込まれた、と泣き言を口にするのは簡単なこと。ですが、わたくしには
撃つのならば、自らのエゴで。撃たれるのならば、自らの罪で。
であるならば、
ああ、ああ。これだけの建前を用意してはあった――――だけど、狂三の心を支えるものは、士道に対しての恋心。友情と釣り合って
「ですから琴里さんも、自責の念に囚われるのはおやめくださいまし。先ほどの行動、少々肝が冷えましてよ」
「あら、あなたの肝を冷やせるなんて光栄だわ」
悪びれもなく肩を竦め、いつもの調子を取り繕う琴里に狂三はクスリと笑みを返す。
「まったく、可愛げないこと。――――サポートは、買って出てくれるのでしょう?」
「言い出しっぺの責任よ。
言って、ポケットから手渡されたのは小型のインカム。
しかし、この時のみは違う。士道を立ち直らせ、狂三にだけ欲を向けさせる
思い上がりはしない。狂三は狂三の目的のため、前を向く。弱った心を自覚し、らしくない行動だと笑われようと――――一時の理解者の力を借りて、狂三はなすべきことを成す。
「さあ、さあ――――――」
続ける言葉は、決まっていた。
「私たちの
非情であろうと、司令官として。心をくじかれようと、時崎狂三として――――――底なしの欲望へ立ち向かう少女たちの運命は、重なりつつあった。
というわけで、いつもの駅前へ狂三は訪れたわけなのだが。
「あのー、私たちまだこの街にきたばかりなんですよー」
「だから、もしよかったら案内してくれませんか? お礼はしますから!」
「え、えっと……俺は……」
そしたら、士道が妙齢の女性二人に絡まれていた。というより、
「ナンパ、ですわね?」
『ナンパ、でしょうね』
鼓膜に響く声と意見が一致した。そこそこのファッション。狂三や琴里視点から可もなく不可もなくな年若い少女たちが、露骨なデートコーデを着込んだ士道を適当な理由をつけて遊びに誘おうとしていた。
ナンパ。この場合は逆ナンに値するもの。狂三にも経験はある――無論歯牙にかけず、せいぜい『喰らう』程度ではあった――が、士道となると狂三には知りえないことがある。好都合と、狂三はインカムに届く程度の声音で唇を動かした。
「士道さん、いつもああですの?」
『まさか。遅刻はないし、どっちが先に待ってるかは場合によるけど、士道にナンパねぇ……私は初めて見たわ。――――今の士道は前と雰囲気が違うから、そのせいかしら』
「ああ……」
以前の士道は良くも悪くも初心な雰囲気が似合う少年だった。その実、様々な精霊とのデートを重ねた経験のある高校生なのだが、やはり良くも悪くもそれをあまり感じさせない。デートに慣れながら、女に慣れない。あとは、日常的な抱擁力と言うのが特徴だった。
しかし、今の士道はアンニュイ、神秘的、
けれど彼はそれを実行しない。琴里の言葉を借りるなら、
「……とにかく、わたくしで対処してよろしいですわね?」
思考が逸れた。今は士道とのデートが最優先。そのために、狂三は
返答は、以外にも早く返ってきた。
『いいわ。機関員を差し向けるより、あなたが行った方が相手も現実を知れるでしょう。その貌の良さ、存分に活かしてちょうだい』
「褒められた気がいたしませんわ。……というか琴里さん、さり気なく辛辣ではありませんこと?」
『事実じゃない。じゃああなたは、あの子たちの方が自分より可愛いって思うの?』
「お言葉をお返しいたしますが、琴里さんはご自身の容姿に自信は?」
『さあ? だけど、あんな骨の馬に誑かされるほどうちの士道は安くないわ』
「それは、同感ですわね」
言及は避けたものの、互いの認識は共通していた。容姿で勝ち負けが決まるわけではないが――――あんな軟派な女共に、士道を誑かされるのは我慢ならない。
『遠慮なしに見せつけちゃいなさい』
「了解ですわ、司令官様」
精霊には寛容だというのに、目的外となれば途端に独占欲を働かせるのは琴里らしいと言えばらしい。
肩を竦めながら苦笑して、狂三はトン、トンっと軽いステップを踏み――――少女たちが伸ばしかけた手を遮るように士道と腕を組んだ。
「お待たせいたしましたわ、士道さん」
「おぉ……っと。あ、ああ、狂三か」
「ええ、ええ。
さり気のない視線の牽制で、少女たちを追い払う。言葉は多くないが、あとは雰囲気が導いてくれる。ここより先はデートの時間。こんな些事で雰囲気を悪くしたくはない。
「あ、ちょっと……っ!」
「さあ、さあ。参りましょう」
「おう。……それじゃあ、俺はこれで」
何とも律儀なことに、一方的に声をかけてきた相手に会釈をしてから狂三に手を引かれる士道。相手が追いかけてこないのを確認したところで、狂三は露骨ではない程度に士道と手を組んだ体勢で言葉を紡いだ。
「あら、あら。モテ期ですわね、士道さん」
「からかうなって。本当に道を聞かれただけかもしれないだろ?」
「士道さんがその程度のことを見極められない節穴とは思えませんけれど、わたくしの買いかぶりですかしら」
「はぁ……悪かった。初めてだったんだ、こういうの。すぐに断れなくてごめん」
頬をかきながら、嘘のない困り顔で返してくる士道に、狂三も合わせてクスッと物腰を柔らかくする微笑みを返す。
「うふふ。わたくしは気にしていませんわ。――――そうして言い訳をなさらないところが、士道さんの素敵な部分の一つですわ」
「……そもそも、狂三みたいな美人が待ってるってわかってたら、誰に誘われたって断るだろ」
「……! まあ、まあ。士道さんはわたくしを〝美人〟と思ってくださっていますのね?」
「いつも自信たっぷりなのは狂三だろ? 俺は思ったことを言っただけだ……ああほら、行くぞ」
慣れないことを言った、と顔を赤くして恥ずかしげに狂三の手を引く士道。
確かに、インカムなしの選択としては珍しい口説き方だ。思わず、狂三が目を丸くしてしまいほどには。
『ふぅん。やるじゃない、士道』
司令官からもお褒めの言葉が届いている。どうやら、士道は士道なりに狂三をデレさせる努力をするつもりのようだ――――今朝の喝と距離感が、それなりに功を奏しているということだろう。
「その調子ですわ。皆様と同じように、わたくしをエスコートしてくださいましね?」
「ああ――――俺なりに、やってみる」
苦しげに、それでも前を向いて――――――士道のそういうところが、狂三は堪らなく愛おしいと思う。
「士道さん、いかがでしょう?」
「ん、似合うと思う。……狂三らしくて、素敵だ」
「……コホン。では、こちらは? 可愛らしさが抜け過ぎて、わたくしには少々合わないと思うのですが……」
「そんなことないさ。可愛い子が可愛い服着て、おかしくなるわけないだろ?」
「ふふ、士道さんはお上手ですわ」
右手にはいつも好む落ち着きと華がある衣服を。左手には狂三が好まない、たとえば十香のような明るく快活な子が着るような衣服を。
結果として、どちらも似合うと難なく伝えられた狂三は、白熱灯が照らす広い店内を再び物色しながら、気付かれないように唇を動かした。
「士道さんの数値は?」
『悪くないわ。心拍数、好感度共に上昇中。ついでに、あなたのものも教えてあげても構わないけれど』
「謹んで辞退させていただきますわ。……己の感情は、己で理解していますもの」
それでコントロールが叶わないからこそ、狂三は恋煩いというものを厄介に思うと
特別、今が上手くやれないわけではない。士道の前で感情を抑え、上手を取る。これは狂三の得意分野だ。以前までの士道であれば、五分以上に立ち回れる自信がある。
だが、今の士道を上手く
つまり、全てをさらけ出す。
「悪くはない、となれば……もう一段、階段を上がらせてしまいたいものですけれど」
ブティックを選んだ理由は、狂三を飽きさせないこと、率直に〝衣服〟の力を借りるのが手っ取り早いという判断だ。
先に提示した数回の反応から、士道に狂三への罪悪感は多くあれど、好意的な感情も少なからず存在しているのは確認できる。……まあ、あれだけのことをして、させておいて狂三のことを好意的に想っていなかった日には、狂三のプライドが死に至るなんてものではないのだけれど。
「琴里さん。このお店は完全に〈ラタトスク〉の管理下にあると判断してよろしいですわね?」
『ええ。衣服は全てあなた専用のものを用意しなきゃいけないから。客や店員も、全部こっちの指示で動かせる機関員よ』
「お金持ちですわねぇ」
『……あなたからそんな子供っぽい表現を聞かされるとはね』
何とも言えない、複雑そうな声音の琴里に微かな笑い声を返す。デートのために店一つを買収するような組織を表現するなら、必然的に俗っぽいものになるのは致し方ないことだろう。
しかし、暗に遠慮は必要ないという琴里の言葉に、口に軽く手を当てて服を入念に選ぶ素振りを醸し出しながら、狂三はあるものを匂わせた。
「では――――ここを
『っ――――言ったでしょ。
一瞬、息を呑むような雰囲気が伝わりながらも、琴里は毅然とした声音で狂三の意図を読み取り、そう返してきた。
この場を、
『でも、今日は朝から……』
「ええ、ええ。しっかりと吐き出させたつもりですわ。……最後は、少ししくじってしましたけれど」
『?』
思い出して、狂三は頬に熱が灯る自覚を持った。
狂三としたことが先入観に囚われ、
これでも自信はあるつもりなのだが、と首を傾げた雰囲気が伝わってくるようなインカムに改めて声を通す。
「ですが、あともう一押し。今の士道さんが欲求を躊躇わずに済むもの、それが欲しいとわたくしは考えていますわ。あの方、我慢にかけては想像以上に頑固者でしてよ」
『士道の意志の強さが悪い方に働いてる、か。……ほんと、
最後の呟きは、敢えて聞こえていないふりをした。
身持ちの固い、意志の強い。女性を大切に扱う優しい少年の士道に、狂三を
聡明で慎重、人の上に立つに相応しい威厳――――それに比べて、五河琴里という少女は
「そういうことですわ。士道さんがわたくしに即座に手を出したくなるほどのコーデ――――この際、下着だろうと構いませんわ。そちらの解析を頼りにさせていただきますわ」
『……わかった。こっちもちょうど選択肢が出たわ。――――総員、選択!』
狂三から誘って、士道の牙城を崩せる衣装。今の士道は、過激なものであればいいと言うわけではない。煽り過ぎれば、逆に態度を頑なにして欲望を締め付け、結果的に穏やかでない行為が待つ可能性が大きい。
狂三も覚悟はしている。これまであらゆる支配を受け、正気を失い、淫乱な様を士道に見せてしまっているのだから。それらのことを理性的な士道の欲望を解消することで、ある程度緩和できるのであれば――――
そのための〈ラタトスク〉。例の選択肢が精霊の各種データを元に生成されるのであれば、これまでの観測から士道にもそれは当てはまる。だからこそ、狂三はそれに期待したのであるが――――――
『出たわ――――③の……『ネコミミ首輪の黒猫風味でご主人様を誘惑』………………ごめん』
「…………………………マリアさん」
『これは過去のデータから自動生成されるものであり、私は無実です。遺憾です。意義を申し立てます』
一気に絶望的な気分にさせられた。期待していた分、それはもう狂三にとって最大最強の羞恥兵器を持ち出されたようなものだ。
ネコミミ首輪。つまり、猫のコスプレをしろと。なぜそうなるのか、狂三は思わず天を仰いだ。
「他の選択肢は?」
『①が扇情的な下着。②が清楚な勝負下着。直球だけど、
『加えて、この選択肢が出たということは、士道に少なくない狂三への猫意欲があるということが推察できます』
「なんですの、猫意欲とは」
『さあ。狂三には覚えがありませんか?』
「そんなのあるわけが――――――」
言いかけて、忘れたい恥辱の記憶に埋もれていたある一言が思い浮かんだ。思考能力が皆無であり、情欲に呑み込まれた瞬間ではあったが――――確かに、
「……ありましたわ」
『あるの!?』
あるから困っている。これを外せば赤っ恥では済まされない。明日一日は寝込む上、今日のデートも台無しになる。
それでも、
「信じますわよ、琴里さん」
『こんな嫌な信頼のされ方ないわよ!? 司令官だって、責任を取れる時と取れない時があるんだからね! ちょ、聞いてるの狂三!?』
狂三は
「……もうちょい気の利いたこと、言いたいんだけどな」
試着室に入った狂三を待ちながら、士道はボーッと自身の態度への反省会をしていた。
素っ気なくはなかっただろうか。士道の気持ちを伝えられているだろうか――――おまえにそんな資格はないと、頭の中で煩わしく叫びが響く。
「…………」
整えた髪をガリッと掻き、どうにもならない憤りを落ち着かせる。あれだけ狂三に気を遣わせておいて、未だ士道の中には激しい嫌悪が渦巻いていた。
わかっている。今の士道ではどうしようもないことくらいは。狂三の霊力を封印することが、大切なことだということも。
けれどこんな関係を利用して、これ以上狂三を縛り付けるなんて、あんまりだろう。契約だということは理解している。士道は支配者で狂三は隷属者。それも狂三は推奨している――――認めたくなかろうが、それが二人の関係だと。
「やっぱり……俺には……」
泣き言が、日に日に増えていく。士道にできることは何もない。ただ情欲のまま狂三を抱いて、彼女を籠絡すればいい。そう言われているようで、心が溶けていくようで――――――
『し、士道さん。お待たせいたしましたわ』
「っ! あ、ああ。全然待ってない――――――」
カーテンが開いた瞬間、そんな士道なりに深い考えは、全て纏めて消し飛ばされた。
「――――――狂三?」
狂三、だろう。狂三のはずだ。その白磁の肌を高揚させ、顔色が真っ赤に染っていても、美しさに変わりはない。
強いて言うなら、〝猫〟がいた。黒猫がいた。霊装時の髪型に括り、その霊装に似せた紅いヘッドドレスには鈴がリボンと共に設えられ、ネコミミがしっかりと装着されている。
首には小さいながら確かな首輪。服は黒のキャミに背に大きなリボンを備えた紅いスカート。上は下着を着用しておらず、肩紐をズラせば容易に果実が転び出る。スカートもガーターベルトがハッキリ見えるほど短く、しまいには長い
「ど、どうでしょう……か、にゃん♡」
「――――――――――」
手を丸めて、猫の手を作り可愛らしい貌の横につけた姿。恥ずかしさを前面にしながら、必死に笑みを作るその健気な姿。黒猫の姿。
多分、理性が理性らしくいられたのは、そこまでだった。
「っ!」
「あっ♡ し、士道さ――――んんっ!?♡♡」
試着室に乗り込んで、その薄紅を強引に奪う。奪うも何も、狂三の全ては士道のモノなのだから問題あるまいと理性に有るまじき思考の下、士道は彼女の口内に舌を突き入れた。
「は、んっ♡ ちゅ……んあ♡ しど、う、さ……♡」
二人で入るには狭苦しい試着室に、狂三の華奢な身体を押し込みながら密着する。ギリギリの判断でカーテンを締め切り、狂三の唇を荒々しく貪る。
両の手首を握り、顔の動きだけで狂三とキスを続ける。横壁に追い込んで狂三の足を士道の足で割り、その股座に押し付けて刺激してやれば、下着からあっという間に粘性の水音が狭い個室に広がる。
「あ♡ 士道さんの足が、わたくしの……♡」
「ああ、もう濡れてるな。嬉しいよ。
「っ……あ、んっ♡♡」
煽る物言いに表情を強ばらせた狂三から、再び唇を奪う。否、塞ぐ。
どちらも、狂三の身体が色艶を纏い、士道を受け入れる準備を整えた証だ。狂三が狂三である証。士道との契約の証。
ああ、ああ、なんて、綺麗な子――――綺麗な黒猫なのだろう。今すぐに閉じ込めて、自分だけが愛でられる雌猫にしてしまいたい。
「く……狂三、おまえなぁ……っ!!」
紛うことなき
もっとも、狂三の蕩けた表情からわかるように、その行為は無意味なことこの上ないのだけれど。
「ふ、ふふっ♡ そんなに、わたくしのこの姿が好ましいんですのねぇ――――あなたになら、飼われることも吝かではないですわ♡♡」
「っ――――!!」
わかっている。士道の欲を発散するためだと。理解している。
わかるのに、わかるのに、わかるのに――――流されてはいけないのに、
「あぁっ♡♡ ふ、ぁぁ♡♡ ん、んんっ♡♡」
対面から突き上げる。下着を横にズラし、欲望を固めた士道の逸物で狂三を膣内から鋭く突き上げていく。
キャミの上から乳房を揉んでやれば、薄布というスパイスがより黒猫の毛並みを引き出している。惜しむべきは、目を伏せた狂三が両手でその艶声を塞いでいることだが――――ふと思い立ち、士道は狂三の喉元を撫でた。
「ひゃぁ♡♡ ふぁぁぁぁぁぁ……っ♡♡」
すると、飼い主に喉を撫でられた猫が、その艶声を全力で解き放った。すぐ目を見開いて口を強く塞ぐ黒猫だが、士道はニヤリと笑みを浮かべて子宮を突き上げながら喉を徹底的に撫で回した。
「んっ!♡ ん……あぁっ♡♡ や、やめっ♡ こんな場所で、はずか、しい……っ♡♡」
「はっ、こんな場所で、そんな格好したのは狂三じゃないか――――もっと、はしたない声を聴かせてくれ。可愛い声で、鳴いてくれよ?」
「やぁ……♡ あっ、ひぁぁぁぁぁぁっ!♡♡」
個室どころか、店内全てに響くような嬌声。気品に溢れた黒猫の、士道だけが鳴らすことができる嬌声。
これで我慢など、できるものか。これで勃たない男など男ではない。狂三という絶対の美に、美しい黒猫が重なり合えば、命を対価に抱くだけの価値がある雌猫に違いないだろう。
「狂三、可愛いよ。狂三……猫が好きすぎて、猫になるなんてホント可愛い」
「ひぁっ♡ そ、そういうわけでは……っ♡♡ あ♡ あぁ♡ あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!♡♡」
遠吠えのような嬌声が鳴る。突き上げていた子宮が入口を開け、膣壁が肉棒を逃がすまいと締め付けをさらに強める。
寂しがり屋の黒猫のように、士道のモノを求めている。望み通り、士道も腰突きを激しくし、キャミに包まれた乳房が大きく揺れる様を楽しみながら、最後に狂三へ要求を投げかけた。
「狂三、イク時は鳴いてくれよ。おまえは今、俺の飼い猫なんだからさ」
「っっっ!♡♡ ひ、ぁ――――にゃあぁぁぁぁぁぁぁ♡♡♡♡」
半ばやけくそ。羞恥を後に回して振り切った声音で狂三が
「よくできました――――雌猫ちゃん!」
「にゃあ!?♡ ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡♡」
ごりゅ、と子宮をこじ開けて直に射精を見舞う。サービス精神旺盛な狂三に気を良くした逸物が、褒美とばかりに白濁液を狂三の子宮に満たしていく。
「にゃ、あ♡ にゃーお……♡♡」
「っ……」
――――甘えるように身体に撓垂れ掛かる愛おしい黒猫。
「っっ!!」
「うにゃあっ!?♡♡ ――――し、士道さんっ♡ だめ……にゃぁぁぁぁぁっ!♡♡♡♡」
止まらない。余韻など無視して、ピストンが再開して個室を激しく揺らす交尾を始める。
結合部から溢れる愛液。飛沫を上げてあちこちへ飛び散った挙句、膣内から漏れ出した白濁液でさらに性臭がこびり付く。少なくとも、この更衣室は二度とその役目を果たせないことだろう――――時折、狂三が正気に返るような声が聞こえてきた気がしたが、情欲に呑み込まれた理性にわかるはずもなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「……あの衣装、買ったのか?」
「ええ、まあ……士道さんが、気に入ったご様子でしたので」
「ぐ……おぉぉぉぉっ!」
事実なのだが。本当に遺憾ながら、事実ではあるのだが。高級そうな袋に詰められた例の衣装と、気まずそうな狂三の様子に士道は声になっている声を上げた。
「……士道さん、案外猫好きでしたのね?」
「傷をえぐるな! 俺だって初めて知ったんだよ!!」
雌猫ちゃん、雌猫ちゃんってと頭を抱えて蹲る。
まさか、
そもそも――――士道がネコミミフェチなのではなく、
あの衣装エッチだと思うんですよ(唐突)。デート回悩んでるって言ってたのはこの衣装関係で、かわい子ちゃん衣装とか狂三が普段絶対着ないような衣装かなぁとか頭悩ませてたのですが、士道くんをくるみんキャットフェチにする代償に登場させました。次回への展開から選んだ、というのが大きな理由でした。猫みんは、エッチ(至言)
くるみんが攻略側ってのはなかなかに新鮮ですね。しかしくるみんが堕ちてもゲームオーバーだけど士道くんがメンタルやられ過ぎてもゲームオーバー。その上封印しようにも士道くん自身が躊躇う。はは、無理ゲー。
これでも士道くんは前向きになって、くるみんも不本意ながら人を頼るようにはなってるんですよ。状況改善が微弱すぎるでしょ……。
いくら狂三が肯定したとしても、自分が陵辱してそれを繰り返してる相手を使わせるよう仕向けられる凄く残酷な状況が現状の士道くんです。まあ正常な精神で一番士道くんが避けることやらせるわけですからね。二人ともわかってるからしんどい。特に見ていることしかできない琴里は、ね。
そんな士道くんが儚げな魅力纏っててもおかしくないよね!なナンパ展開。あんまない気がしますね。士道くんが主人公的に踏み出せる日はいつ来るのか。虚勢を張るくるみんを救いたいと思いながら、その虚勢を張らせる理由を作ったのは……思考が堂々巡りするのも無理ないですねぇ。
感想、評価、お気に入り感謝です。いつでもお待ちしておりますー。マジで気ままに書いてますが、毎日更新であと何話続くかなぁ。飽きられないよう私なりに書いていきたいですね。
ではではまた次回〜
『狂三ブラックキャット(裏)』。本質的に、理性と本能は好意を共有してます。つまりはそういうことです。もう一つのデート回にしてリクエスト回。お楽しみに!