「あの二人の雰囲気?」
「はい。何となく、ですけど……」
とある休日。ああ、笑顔の四糸乃も天使だなぁと尊い気持ちを覚えながら、七罪は表面上は変わらず不機嫌そうとよく言われる自覚のある表情で思案し、声を返した。
「ん……私から見ても、変わってると思う」
「良くなっているという意味で、じゃな」
七罪の足りない言葉を補足したのは、同じく五河家のリビングで寛いでいる六喰だ。相変わらず顔が良く胸部ユニットか凄まじい。七罪の言葉足らずを自然に支えてもらったことだけで、恐れ多く平服してしまいそうだ。もちろん、内心だけに留めておいた。
すると、七罪と六喰から同意を得ることが出来た四糸乃がパァっとその表情を明るいものに変えた。元から明るいし、天使なのだが。
「よかった……」
『やー、一時はどうなることかと思ったよねー。表向きはよくても、そういう雰囲気って伝わっちゃうもんだしさー』
安堵した四糸乃に、その左手に装着されたウサギのパペット『よしのん』が手(?)を広げながらどことなく安心したような雰囲気で言う。どことなくとは思うが、七罪もそれは同じ気持ちで内心では同意している。
人の雰囲気というのは良くも悪くも感染しやすい。七罪はそれをよく知っている
「むん。狂三は以前に感じた遠慮のようなものがなくなってきた。そのように感じるのじゃ」
「……遠慮っていうか、罪悪感?」
「かもしれんのぅ」
あの時崎狂三が、と思うなかれ。精霊たちの中では、始まりの一件以来彼女に悪印象を抱くものは皆無――――理由がなかったのだ。
〈ナイトメア〉。一言では語り尽くせぬ存在。七罪などでは及びもつかない最悪と呼ばれし精霊。そんな彼女が霊力を集めていることは、もはや誰もが知っている事実。それだけなら警戒に値するのだが、狂三は目的、或いは手段を果たそうとしなかった。
「ああいうの、人がいい……ってだけじゃ、できないわよね」
「む……」
人がいい。それだけで身を捧げられる者など、それは本物の狂人だ。七罪は何となくそれを察し、六喰は複雑ながら何かに納得をして吐息を零す。
出来たはずだ。狂三は、己の願いを貫き通すことが出来たはずなのだ。狂三は被害者で、士道は加害者。たとえ望まない形であろうと、その図式は重くのしかかっていた。
だから、あのお人好しの士道のことだ。どのような選択をするのか目に見えていた。
自分の価値をどれだけ理解していようと、己の中に怪物を飼っているとわかれば彼はその行動を取る。なぜなら、次に毒牙にかける相手は狂三だけではないかもしれないからだ。
それはここにいる四糸乃だったかもしれない、六喰だったかもしれない。何かの間違い、気の迷い、百歩譲ってそれっぽい情を抱いていれば、この見窄らしい身体に反応するというのなら、七罪だって可能性がある。
けれど、士道はそれをしなかった。できなかった。狂三が
「じゃが、狂三の負担が大きかったことは事実。四糸乃、折紙の功績じゃの」
「わ、私は何もしてません。士道さんが、頑張ったから……」
「その腑抜けた士道にやる気出させたのは四糸乃たちだし、うん、凄い」
安直かつこじんまりとした表現をしてしまい、内心思わず『もっと気の利いたこと言いなさいよ!!』と内なる七罪が叫びをあげるが、一度出てしまった言葉は引っ込ませたりなどできない。
それに、七罪からすれば雑な褒め方でも、四糸乃は僅かに頬を緩めてソファーに座った状態で恥ずかしげに足を揺らしていた。天使か。
――――ここでようやく、議題は初めの問いかけに戻ることになる。
要するに、七罪は特に何もしていない〝あの日〟を境に、士道と狂三の雰囲気が変わった。それも良い方向に、である。
それは七罪の視点からでも明らかな変化だった。狂三は極端に言葉を選び、士道は極端な萎縮をしていた。それが以前までの二人だ。表面上は平然としていようと、日に日に顔色が悪化していたのは誰の目にも明らか――――それを変えたのは、間違いなく四糸乃と折紙が動いたからこそ、だ。
「…………」
七罪はふと、言葉を無くした。もし仮に、あの日手を尽くしても士道が立ち上がらなかったら。もし琴里の〝策〟が実行されていたのなら。もしそれ以外のことがあったとしたら。
ネガティブな想像は悪い癖だとわかっていても、これが七罪の性分だ。もしそうなっていたら、身を呈していたのは琴里だけではなく――――そうならなかった結果に、七罪は安堵してらしくもない笑みを浮かべた。
が、それは即座に凍り付くことになった。
「あの二人は、具体的にどのようなことをしたのじゃ? 思えば、むくたちは何も知らんの」
「え゛」
一瞬七罪が余分な想像に思考を割いている間に、何やら話がまずい方向に動いていた。六喰が無邪気な疑問を発し、それに四糸乃がキョトンとした顔で
「そういえば……琴里さんや令音さんは、教えてくれませんでした」
『むむ、これは……七罪ちゃーん、何か知ってるんじゃなーい?』
「ひぇっ」
唐突に、それでいて恐ろしいキラーパスが飛び、七罪は素っ頓狂な声を上げてソファーからお尻を跳ねさせてしまった。
「七罪さん?」
「ふむん?」
「………………」
それがよくなかった。いや、これで誤魔化せていたら、七罪は道化としての才能は素晴らしいものであると言えるだろう。ある意味では、二人から無垢な視線を向けられる道化とも言えるけれど。
嫌な汗が流れ始め、目の前のものが眩しすぎて顔が溶けてしまいそうになる。七罪は属性陰キャ祖先の種族は吸血鬼(貧弱)なのだ。光属性に勝てる道理はない。
知っている、知らない。あの二人が具体的に何をしているのかとなれば、必然的にその二択になる。精霊たちの中では、知っているないし想像はできる前者が半数以上の割合を占めている、と七罪は読んでいる。何故かといえば、七罪自身その前者、
士道に生じた異変が彼にデレた精霊に関わること。それは誰しもが知っている。それを狂三が身を呈して抑えている。これも教わっている。が、
具体的に二人が何をしているのか。それは精霊の精神状態を安定させるため、言葉を巧みに操り意図的に誤魔化されていた。それでも、大半の者が悟り、或いは琴里を頼り具体例をそれとなく聞いている。では、過半数以外とは――――――
「七罪よ、知っておるのか」
「あ、あの……七罪さんが、お話できることなら……教えてほしい、です」
「あ、あは……は、は……そ、それはぁ……」
六喰、四糸乃、あと十香。精霊として過ごし、精神的には成長をしても
――――あんな方法で精霊の霊力封印するなら、ちゃんと
七罪の叫びは虚しく心で響くばかりで、現実はお年頃で知りたがる六喰と四糸乃から僅かに目を逸らすことしかできない。あの二人の関係性が変化したことで、踏み込めるラインが増えた。無関係ではない二人もまた、七罪が知っているのなら知りたいということだろう。
『ほらー、吐いちゃった方が楽だよーん?』
「ぐ……よ、よしのん……っ!」
ちなみに、このウサギのパペットは確信犯で知っている。認識情報は四糸乃と共有しているはずなのだが、なぜ知識は先行しているのか永遠の謎である。
久しぶりにからかいの種が増えたとばかりに、最近は自重していたアップテンポな『よしのん』が七罪を追い詰める。
ただ――――ここまでなら、幾らでも誤魔化しようがあったのだ。六喰と四糸乃も、七罪を困らせてまで知りたいとは考えていない。実際『よしのん』が追い詰めるようなことを口にしたのも、二人に引き際を作るためだったのだろう。
ここで計算外だったのは、
「――――ただいまー」
「――――ッ!?」
留守にしていた
気づけば振り上げた手に掴み慣れた大きさのものがあって――――光が、三人を包み込んだ。
「あれ?」
「如何されましたの?」
リビングの戸を開けて、首を傾げた士道に狂三が小首を傾げた。ああ、と足を止めずにリビングへと入りながら、士道は言葉を続ける。
「七罪たちの靴があったし、いると思ったんだけど……」
「ええ、鍵も開いていましたし、開けて家を出ていけるほど不用心ではないと思いますけれど……」
「ていうか、七罪は出来なそうだよな」
「警戒心の塊ですものねぇ」
――――臆病で悪かったわねぇ!
「けど、それが七罪の凄いところでもあるからな。俺なんかじゃ気が付かないことだって、いつの間にか見抜いてたりさ」
「ええ。本人にその自覚がないことだけが残念ですわ。もう少し自信を持つべきだと思うのですけれど……」
――――うぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!?
「七罪さん、大丈夫ですか……?」
「むん、顔が真っ赤なのじゃ」
『いないと思われてるところで褒め殺しだからねぇ。仕方ないんじゃないかなー』
『ていうかさー、この
「うん……まるで、私たちが見えてないみたい……」
「左様じゃ。隠れんぼならば負け無しじゃの」
「……いや、反則でしょ」
段々方向性がズレているところにツッコミを入れながら、七罪は現状を再確認する。
リビングには買い物用のバッグから物を出して談笑を続ける士道と狂三。誰もいないと思い、素で会話をする二人からは確かに以前の空気は見られない。完全に違和感が消えたわけではないが、少なくとも過剰な気遣いのようなものはなくなっていた。
対して、七罪たちはリビングの
『七罪ちゃん、どうやってこんなの作ったのさー』
「さ、さあ……?」
「うぬに判らぬのなら、誰に判るのじゃ?」
……さあ?
内と外で一致する疑問だが、七罪にも理屈がわかるとは言いきれない。ただ咄嗟に
「あの、ここから出た方がいいんじゃ……」
「ん、まあ……別に隠れる理由はないか。――――さぁて、どうやって驚かしてやろうかしら」
「ふぇ……?」
「すごく悪い顔をしておるのじゃ。まるで七罪ではないような……っ!」
何だか六喰が大仰な顔をしているが、七罪は意地の悪い笑みを止められなかった。元来の性というべきものか。普段は抑えているが、こういう状況は七罪としてもなかなか楽しい。
ちょっとした悪戯心というもの。手をワキワキとさせ、七罪たちに気が付く様子のない二人を驚かせる手段を思案し――――実行の直前で、逆に七罪が
「狂三」
「はい? どう――――っ!?」
「はへぇっ!?」
「っ、っ!!」
「な……」
ちょうど狂三が何かを取りに行くために振り向いて、士道に呼ばれてまた振り返る――――そこに不意打ちで、士道が狂三の唇を奪い取った。
それだけなら、七罪たちもひっくり返り、もといびっくり返されることなどない。驚きこそすれど、キスならしたことがあるからだ。しかし、士道から求めた狂三とのキスは、それはそれは
「ん……ふっ……んんっ!♡♡」
都合が良すぎるくらいに二人の口づけが見えてしまう。突如として口を塞がれ、空気を求めて開かれた狂三の咥内に士道の舌が割って入る。
「ちゅ、る……ちゅっ♡ し、ど……♡」
隙間から零れ落ちる空気と舌が絡み合う淫靡と言う他ない水音。行き場を失っていた狂三の手が弛緩して、優雅な立ち振る舞いの腰が崩れて士道に支えられる。その士道を舌足らず、言葉足らずに呼ぶ狂三の顔は――――見たことがない
「……はっ! ふ、二人とも、見ちゃダメ!」
「え、あ……っ」
「む、む……は、離すのじゃ七罪」
これはマズイ。最高にマズイ。余計なことを考えず、さっさと出てしまえばよかったと後悔先に立たずだ。
四糸乃を抱き込みついでに『よしのん』の口を塞ぎ、六喰の目を隠してどうにか視覚情報の遮断には成功する。抵抗はあるが、七罪は見せるわけにはいかない。
だって、女の顔をした狂三とキスをする士道の顔は、別人と思えるほど獰猛で――――ここで
「……ぷ、は♡ しどう、さん……?」
「ああ、ごめん。そういえば、ここではあんまりシたことないなぁって」
「その物言い……今日はそういう気分ですの?」
「ん、そういう気分だな。まあ前に比べたら全然軽いもんだけど――――悪い、止まらないのは同じみたいだ」
艶やかな光を帯びた唇を動かし、何やら意味深な会話をする士道と狂三。日常で見せる顔とは違うモノ。
言うなれば、
「あ、あ……♡ んあっ♡♡」
キスで全身から力が抜けた狂三を士道は手早く背面から抱き締め、否、
「あっ、あぁ……はぅっ♡」
「まだ服の上からなのに、はしたないな」
「っ……ええ。こんなところで盛ってしまうあなた様に相応しい雌奴隷だと思いませんこと?」
士道の囁きに蕩けた目を締め直した狂三が、即座に返す。それは七罪が思う狂三の〝らしさ〟が滲み出たものだと思ったが、士道は意外そうに、同時に嬉しげに声を弾ませる。
「あの演技、やめたんだな」
「演技ではありません……わたくしは、あなた様がわたくしに求めるものであれば何でも受け入れると誓いましたわ。ただ――――対等な立場であれば、遠慮など必要ありませんもの」
士道に好き放題されていた顔つきとは、まるで別人だと七罪は目を見開く。
悠然と、超然と。男の腕に抱かれながら、屈することなく美しく気高い――――その時崎狂三に、士道はむしろ喜びを顕にしているように見えた。
「おまえの言う通りだ。そんな狂三だから、最高に楽しいんだ。嬉しいよ、わざわざ手を尽くさなくても――――
何に――――受け入れながら屈しない。羞恥を感じる時崎狂三という至極の女に。
何故か理解できた。七罪の病的なまでの観察眼か、士道と繋がる
あれは羨望。あれは渇望。女の中でも定めた者のみに見せる情欲。士道の中で荒れ狂う獣は、きっと変わっていない。変わったのは士道の意識だ。
「――――あっ、あぁぁぁ……っ♡」
「っ!」
見慣れない士道の姿に意識を奪われていた七罪は、狂三の艶声にハッと視線を向けた。
狂三を抱えてソファーに座った士道が、彼女の乳房を嬲る。執拗に、揉みしだく。
「ふ……っ、あ♡ っ、っ……んんっ♡♡」
初めは服の上から。しばらくしてから、品のある意匠のブラの上から丁寧に――――最後は、そのブラさえ取り除いて生の乳房を。
『っ!』
剥き出しになった狂三の胸部に、士道の大きな手が触れ、思わず七罪たちは息を呑んだ。いつの間にか目を離せず、その生唾の音が七罪だけではないことに意識が向けられない。
「ふー……ふー、ふ――――いあぁぁぁっ!♡♡」
羨ましくなるほど大きく白い果実。その先端を士道の指が抓り、明らかに痛みとは異なる声色がリビング中に響き渡った。
あの狂三が声を堪えられない。士道の身体に抱き込まれながら、赤面の貌を蕩けさせ、口の端からは美しい透明な液体を零し、感じる。七罪の知識にある行為が遊びに思える本気の愛撫。
生々しいまでのリアリティに言葉が出ない。乳首を強く抓られ、深く呼吸をする狂三――――そんな彼女の肩口で結ばれた髪を士道が解いた。
「っ……士道さん……?♡」
「たまには、いいだろ」
そっと、髪を掻き上げる。ストレートに下ろされ、まるで印象を別にした狂三の黒髪を掬い――――七罪はそこで、士道が彼女の
「狂三」
「あ……♡」
狂三が快楽とは異なる
背面から対面になり、じっと見つめ合う。それだけの時間に、七罪たちはゴクリと何度目かの喉を鳴らす。
七罪の知識が正しいのなら、この後は――――その予想は正しく、狂三は胸元に手を当てると、どういう理屈か残された衣服が散り散りになって美しすぎる裸身を晒した。
「な、なに?」
「紋様、かの……?」
士道に正面から抱えられていて見づらいが、狂三の下腹部に輝く光に三人は目を丸くした。七罪の手を退けて前のめりに見る六喰が言うように、何かの紋様に思える。だが、その光は妖しくもあり美しくもあり――――――思考が遮られたのは、直後に飛び出した士道の
「え、えっ!?」
「…………」
「お、きい……」
七罪の驚愕、六喰の絶句、四糸乃の呆然。
当然といえば、当然だったのかもしれない。士道に臀部を持たれ、その真下に突きつけられた士道のモノ。それはあまりにも大きく、硬く、血が滾る現実味のない陰茎。
入る? あれが? 狂三の膣内に? あの華奢な狂三があれを呑み込む? そんなまさか、ありえない。だが、現実に――――思考の渦と、前後する足。興味と恐怖が綯い交ぜになった少女たちの行動。
「……っ!!」
その時、七罪は確かに
「士道さん、ま――――あぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁっ!!♡♡♡♡」
貫かれる。太ましく勇ましいモノ。対面で抱えられた狂三に拒否や選択の権利はなく、強烈な熱を感じさせる士道の肉棒の全力を膣内で、子宮で受け止めて絶頂した。
絶頂の液が吹き出して士道を、リビングのソファーを汚す。琴里に後で謝らないと、いや、そんなことより――――ああ、気持ちいい。
「あっ♡ あひっ♡ らめっ♡♡ しどうさん、しどうさんっ!♡♡」
「どうした、狂三。いつもより、締め付けて……っ!」
「〜〜〜〜〜〜っ!♡♡」
言わなければ。だけど、伝えるべき手は士道の首に回されてしがみついて。足は背中にはしたなく絡み、声は恥ずかしさを感じる喘ぎのそれにしかならない。
視線が刺さる。敏感な肌は、視線がもたらす空気すら感じ取って狂三に伝えている。そこに誰かいる。時崎狂三を見ている。士道に女に、雌にされている狂三を見られている。
「あっ♡ あ゛っ!♡ あ゛ーッ!!♡♡」
「もっと、叫べ!」
「ひゃああああああああ――――ッ!!♡♡♡♡」
止まらない。立ち上がって、突き上げられた。首を逸らして叫びを上げて、絶叫と絶頂を織り交ぜる。
琴里たちのように映像ではない。この場にいる。間違いなく、精霊たちの誰かが。士道を止めなくてはいけないのに、むしろ士道を悦ばせる声と行動を取ってしまう。
前のように内心で反抗している方が、屈服していない方がこの瞬間だけはマシだった――――感じている。
「イクっ♡ やらっ♡ きもちいいですわ♡ あ、あー、あぁぁぁぁぁっ!?♡♡」
「はっ、可愛すぎ、かよ……っ! 狂三――――
感じている。視線を受けて、士道に抱かれて。完全に通じ合えたわけではないけど、以前より深く、
「きてっ♡ 膣内に♡ 士道さん、士道さんのモノ、たくさんだして♡ い、く――――ッ♡♡♡♡」
――――膣内に溢れた。
温かい。流し込まれて、満たされる。前のような正気を奪われる快楽の濁流ではなく、多幸感を覚える狂おしいまでの熱量。
契約一つでこんなにも変わることに驚きと悦びをを。士道がいる。五河士道がいる。狂三を抱いて、狂三を想って――――それがたとえ、まだ罪悪感を無くすことができないものだとしても。
「しどう、さん……もっと♡ あなた様の、お部屋で……♡」
結合を支えに、士道の耳ともで媚を売る。結合部から滴る液が
そんなことをして――――支配欲に駆られた士道の返答がどんなものかを知りながら、狂三は選んでしまった。
「……ああ、先に言っとく――――覚悟しろよ。甘えてきたのは、狂三が先だからな」
「っ――――あっ、あっ♡」
ピストンが再開した。膣内の支えが動いて、激しく感じる体位で運ばれる。何もかもを隠せない姿で、下ろした髪が背をくすぐる感覚すら鋭く。
心の距離は近くて、まだ遠い。けれど、ゆっくりでいい。
快楽は変わらず激しくても、変わってくれた士道がいれば、優しく狂三を想う士道がいてさえくれれば――――狂三はそれだけで、狂三のままでいられるような気がした。
「……………………………………」
本物の放心。七罪はそれを味わっていた。嵐のような交合い。二人が立ち去ったリビングに立ち込める濃密な臭いが、先の光景を嘘にはしない。
月並みで陳腐な表現だが、
「っ……」
『ぷはぁっ! やーっとよしのん解放ー!』
「ひゃあっ!?」
『おんやぁ、可愛い悲鳴だねぇ七罪ちゃーん。――――そんな可愛い七罪ちゃんに、ちょっと頼りたいことがあるんだけどさー』
「……え?」
そういえば情事の最中は喋っていなかった『よしのん』が、七罪の背に向かって声を届けた。恐らく、四糸乃を抱き込んだ――今に思えばすごく恐れ多いし土下座したい――ときに口を抑えられたままだったのだろう。
能力が解除され、七罪一人前のめりに倒れてから振り返っていない。と言うか、振り返りたくなかった。
『頼みごとっていうか……頼らないと不味い感じかなぁ』
「…………はい」
よしのんにしては珍しく言葉を濁し、曖昧な表現。七罪の心は、それはそれはもう祈る思いだった。
なぜかといえば――――七罪がこうなっているのなら、先行知識がない二人はどうなると思う?
「あ、あの……七罪さん……私、身体が……」
「熱い……もどかしい……のじゃ……」
可憐な顔を真っ赤にして、目を潤ませた四糸乃と六喰がその答え。
「…………………………だれか、たすけて」
辛うじて出たのが、叫びにならない叫びだったことを――――誰も責められはしないだろうと思った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「……なるほど、ね」
「…………ごめんなさい」
一通りの聴取、というのは少し堅苦しい。事情を聞き終えた琴里が、背もたれに力を入れた途端、七罪が萎縮したように肩をすぼめて謝罪を口にした。
さながら極刑を待つ罪人のようで、琴里は苦笑しながら声を明るくして返した。
「怒ってないわ。むしろ、私が謝らなきゃいけない立場なんだから。こういうことを無くすために私たちがいるのに、巻き込んだのは私の責任よ」
「いや、完全に事故だし……私がいなかったら、こんなことには……」
「はいそこまで。ネガティブ禁止。なっちゃったものは仕方ないでしょ? あの二人は令音が上手くやってくれるわ。そういう経験は、遅かれ早かれよ」
「……うん」
事故だということは本人も理解しているのだろうが、あれを見たら仕方がないかと琴里は息を吐いた――――
もし狂三を虐め抜くものであったのなら、彼女たちも琴里のような受け止め方をしてしまったかもしれない。最悪の場合、あの時の士道に――――嫌な想像を頭を振って追い出した琴里に、ふと七罪がおずおずと声を発した。
「あの……だ、ダメだったら、殴ってくれてもいいから」
「え、何よ。ていうか私そういう風に見られてるわけ?」
「ち、ちが……その――――琴里は、
「…………………………………………」
質問の意味がわからないわけではないが、固まる。まさか四糸乃と六喰のように知識が欠けているわけでもない七罪から、そのような問いかけが飛んでくるとは思ってもみなかった。
「ふ、普通に?」
「普通じゃ、治まらなかったら……?」
「……………………………………………………………………………………」
女は秘密を着飾って美しくなるのよ。
思わずそう煙に巻きたくなったが――――いつになく切実そうな七罪の目に、琴里は痛すぎる沈黙で次の言葉を探す他なかった。
顔を真っ赤にした少女が二人。執務室に落ちるえも言えぬ空気――――ちょっとだけ兄を恨みたくなった気がするくらいには、もしかしたら平和なのかもしれない。以前に比べれば、だが。
髪ストレートみんが最近のトレンドなのかもしれない。ド清楚美人好き。
何かもうちょい重くなるかなとか思ってたんだけど思ったんと違うってなった。まあ明るめで流せたからヨシ!別に解決してるわけじゃないんだけどイチャイチャし出すの困る。ここまでの反動で制御ができなくなってる感ある。
単純な話、理性側がある程度制御できれば何とかはなるんですよね。くるみんほどの精神力があればの話ですけれど。生じる感情面のバグが元々好感度高いから誤魔化されてる感ある。本能だけが先行して何とかなるのは令音さんか澪くらいなのは変わらずです。
これ現在の時系列だから半ギャグになれてるけど本能暴走だったらマジでシャレになってないやつ。なっつんが知識豊富なのはデフォルトみたいなもんですけど、相変わらず苦労人させちゃってる気がする。そろそろ士道くんや四糸乃と純粋なイチャラブエッチさせてあげたい。
感想、評価、リクエストありがとうございます!最近は本当にのんびり書いてる。モチベ(感想と評価)はいつでも求めてます。
ではではまた次回〜
そういえばやったことないなーとリクエストから拝借してオーバードーズでラバー回。けどなんというか……まあ次回でお会いしましょう。