相変わらず令音さんはエロいからゆるして
唐突な話になるが、村雨令音の趣味は決して多くはない。つまるところ、私服の持ち合わせが見苦しくない最低限のものしかない、ということである。
「…………」
ペラ、ペラ、と雑誌をめくる。買い物の途中、目に付いたものを適当に手に取ってきたものの、これがなかなかに目を引いた。
令音は反省していた。士道のことを引き受けると決め、受け入れるとも言った。だというのに、性的欲求の肥大化ばかりに目を光らせた結果、普段の士道をどこかで蔑ろにしていたのではないか、と。
厳密に言えば、
「……ん」
ゴシック・アンド・ロリータ。通称ゴスロリ。本来異なる二つの要素を融合させたファッションスタイル。お姫様、あるいはお人形のイメージファッションと言ってもいいかもしれない。
想像してみた。
『とっても似合いますね。可愛いです、令音さん!』
多分、本物はもっと丁寧に言葉を重ねてくれるはずだが、基本的に全肯定なのは容易に想像できた。
そして、この手のファッションは令音より『私』の親愛なる親友殿が好み、さらに似合うもの。まあ、この表現を本人の前でした瞬間には銃弾の雨あられなのだろうけれど。
「…………」
「んんー……?」
どこからか唸り声のようなものが聞こえてきたが、すっかり雑誌に目を向けた令音には右から左へ流れていく。
装飾過多なコーデ……これは耶倶矢向け。士道に向けたら別の意味でダメージになりかねない。
小柄な体躯向けのコーデ……どう考えても令音の年齢設定にはキツいものがある。これを着るなら、いっそ『私』の容姿でも完璧に再現した方がマシだ。
その他、幾らか眺めてみるが、これといって目新しいものは見つからない。そもそも、令音の知識には相応のものが収められているため、新たに見つかるものはないと考えるべきか。時代は日々進歩しているというけれど、男の子に喜んでもらうというのはなかなかに難しいものだった。
「……ふむ」
そう。単純、端的に言えば、士道に喜んでほしい。士道の罪悪感を和らげ、少しでも気持ちを楽にすることができるなら、令音は努力を欠かすつもりはない。
性欲処理が新たに生まれた……あの奴隷である令音の仕事ならば。それによって伴われる士道の精神的なストレスの解消は今の令音の仕事だ。
そこに、『令音』の個人的な感情が含まれているか否か――――――どのみち『私』の感情が多分に含まれている〝私〟のことだ。今さら、わかったものではなかった。
「ねぇ、令音」
ふと、艦橋の上段から声をかけられる。特別なことがなければ、艦橋上段は司令と副司令の居場所だ。自ずと、令音を呼ぶような者は決まってくる。
「……なにかな、琴里」
今は休憩時間。普通であれば精霊関係の仕事で休む間もない〈ラタトスク〉だが、昨今はそういったことにご無沙汰で、常に気を張っていては潰れてしまうと艦内には比較的カジュアルな雰囲気が漂っていた。無論、いざとなればいつだって私の部下は私と働けるわよね? という五河司令の信頼を裏切らない前提があればこそ、だが。
そういうこともあり、各人自由な空気感でそれぞれの仕事をこなしている。まあ、私用や私物を持ち込んでマリアに鋭い目を向けられるクルーと違って、今まで面白みという面白みがなかった令音がお茶を入れて雑誌を読んでいたところでとやかく言われる心配はない。強いていえば、司令席を乗り出してこうして声をかけてくる琴里に目をつけられてはいたが。
雑誌から目を離し、会話に応じた令音へ琴里が訝しげな視線を向けてくる。
「どういう風の吹き回しよ、それ」
「……? 私とて人の子だよ。雑誌の一つは嗜んでもおかしくないだろう」
「今まで読んでたって、ポケーっとした顔で読んでるふりしてるだけだったじゃない。それなのに、真面目な顔してファッション雑誌なんて読んじゃって」
「……最近、私がどう見られているかを再認識させられているな」
令音自身の感覚では違和感のないように『人間の行動』に取り組んでいたつもりだったのだが、今後は考え直す必要がありそうだった。
いっそ士道に自身の印象を聞いてみようか。非常に答えづらそうな反応が返ってきそうだと、令音は無意識に上げた口角を誤魔化すように洒落たデザインの湯飲みをクイッと煽り、
「何よ何よ――――――ついに気になる人でもできちゃった?」
ぶはっ、と傾けた湯飲みに含んだお茶を吹き出した。
『え』
「…………」
クルー全員が信じられない、と顔で語ってくる。ちなみに、令音が一番自分の行動に驚いている。残念(?)ながら顔には出ないけれど。
若干、お茶の中身が冷めていてで助かった、と何事もなくハンカチでジャケットとシャツと顔を拭く。幸い、胸ポケットまでは及んでいなかったことに安堵して、湯飲みも綺麗にして端に置き……何事もなかったかのようにファッション雑誌で顔を隠した。
『ちょっと待て!!』
それで誤魔化し切れるのは面の皮が厚さ以外に、盤面を掌握できる余裕の微笑みが必要だったかもしれない。具体的にいえば、ゴスロリ霊装が似合いそうなまだ見ぬあの子とか。
少なくとも、詰め寄ってくるクルー各位を押し返せる胆力は、村雨令音にはなかったと記しておこう。
「村雨解析官、今頭に思い浮かべた人のことを詳しく!」
浮かべていない。令音は年下の中性的な顔で家庭的な少年のことなどこれっぽっちも浮かべていない。
「令音。貴重なサンプルデータを採取します。具体的に話してください。いえ、話しなさい」
少なくとも、令音をサンプルにするよりは精霊たちのデータをサンプルにした方がよほど現実的だと考えている。
「令音、答えなさい! 一体どこの馬の骨!? 私がとっちめてやるわ!!」
あなたの兄です、司令官。親友としても解析官としても、できれば墓の下まで持っていきたい秘密を内心だけに留めた。
『令音』に墓があるのなら、だが。
件の秘密部屋に集ったのは、そんな日の夜のことだった。
「あ、おかえりなさい令音さん」
「……ああ。ただいま」
部屋広しとはいえ、まるで同棲相手にかけるような言葉を受け止め、令音は得も言えぬ感覚にぽりぽりと頬をかいた。
士道が先に部屋の中に入ることができているのは、もちろん令音の処置だ。誰に見つかるとも知れず、士道と令音が揃って行動しなければならない状態を繰り返すわけにはいかない。認証関連は全て彼用のものを用意し――――ついでにマンション裏手に隠し扉を用意した。この件に関してだけは、何事もやりすぎということはないだろう。
まあ士道が令音を出迎えた理由にこれで不思議はないわけだが、士道の行動自体に不思議なものはあった。……フローリングにカーペットを敷いていれば、誰だって不思議に思う。小首を傾げ、問いかけた。
「……シン。それは、どこから持ってきたんだい?」
「あ、これですか? 吸水性のカーペット探してみたんですよ。物は自由に持ち込んでいいって言われてたんで、掃除するときに楽できたらなって」
確かに自由にとは言ったが、いきなり機能性のあるものを持ち出してくるのは、実に所帯染みた士道らしい選択肢だった。……そのうち、殺風景な部屋がちょっとした秘密基地のような見た目になりそうな予感がした。
「まあ、さすがに市販のじゃ令音さんのモノを吸水しきれないと思ったので、〈
「…………」
どちらに指摘を入れれば良いのだろうか。少なくとも前者はやぶ蛇だが、後者は後者で〈ラタトスク〉として対応しなければならない案件だった。
ただ、まあ。今日はどこか疲れもあったのだろうか。士道がカーペットを設置している間、フラ〜っと足がベッドまで伸び、転ぶように倒れ込む。
「おお。……令音さん、お疲れですか?」
「……行動に支障はない。だが、精神的な責めに疲れたのかもしれないね。あれは一種の拷問だよ」
「令音さんがそこまで言うの、初めてですね……」
「……初めての経験だったからね」
初めてのことだったとしても、以前の令音であればもっと上手くやれた。そう断言しても構わない。
それを考えると……ムクリと起き上がって、恨みがましい視線を士道に向けることくらいは許してほしい。
「え、何か令音さんから感じたことないような種類の視線が……」
「……気のせいだろう。そうでないとすれば、君が悪い」
「初めて令音さんから一方的な理不尽を押し付けられた気がしますね!?」
理不尽に叫びを上げる士道を後目に、令音はキュッと胸元に手を当て、まるで自分ではないような感覚を確かに感じていた。
「……君は」
「はい?」
「――――君は、私を変えた責任を取ってくれるんだろう?」
――――ただ時を〝彼〟待つために生まれた偽りの世界に、確かな色をくれた人。
無色だった世界に。色を無くし、ある一つの記憶を大事に抱えていた『私』から、〝私〟を連れ出してくれた人。
だから、だから――――ぽかんと目を丸くした士道に、令音はハッと目を見開く。
「……私は何を言っているんだろうね。すまないな、シン。聞かなかったことにしてくれ」
「――――取りますよ、責任」
ふと、抱き寄せられた。冷たい令音の身体が、温かい士道の身体で満たされる。きっと、それだけではない。込み上げる熱は、〝私〟が体験したことのないもの。
「自分が変わることが嫌だったなら、変わって良かったって思ってもらえるように頑張ります。みんな変わってきたから……令音さんに、それが出来ないとは思いませんしね」
「……どうかな。私は、想像するよりずっと頑固で、どうにもならない想いを抱えているかもしれないよ?」
「望むところですよ。恋は障害が多いほど燃え上がるってやつです」
そう言って屈託のない笑みを士道が見せるものだから、令音も釣られるように唇を僅かに引き上げた。
ああ、そうか。もう、〝私〟にはわからなくなってしまったものだけど――――あの日の『私』も、〝彼〟に同じものを抱いていたのかもしれないと思った。
「じゃあ令音さん」
「……ん?」
「責任を取りたいので、ちょっと立ってみてくれませんか?」
……彼の笑顔という点は同じなのに、この胸の高鳴りはどうにも嫌な感じがしてならなかった。具体的に述べるのなら、途方のない不安感、だろうか。
ただ、素面の令音は士道からの頼みに拒否という選択を突き付けられない。そう
拭い切れない不安感を振り切り、士道の言う通り敷いたばかりのカーペットの上に立ち上がる。
「……これでいいかい?」
「はい。それじゃ、ちょっと失礼して……」
そっと令音の背後に立った士道の手が、令音の下半身に伸びた。特に……スカートに包まれた令音の臀部を中心にして。
「おお……令音さんのお尻、大きいのに引き締まってて、なのにめちゃくちゃ柔らかい……」
「……ありがとう?」
身体的特徴、それも普通は褒めないだろうという箇所を褒められ感謝をするべきなのだろうか、と疑問符が付いた。まあ、士道に自分の身体を褒めてもらえること自体は、悪い気はしないと少し気分がよくなる。
しかし、士道は何がしたいのだろうか。お尻を撫でられるくすぐったさと快感の境界で揺れながら、令音は訝しみ目を細める。
そして、士道が令音の耳元に唇を近付けて――――――
【足から力を抜いてください】
――――すとん。
呆気なく、令音は地面に崩れ落ちた。
「……な」
見上げる。見上げた顔を覗き込むように、士道の笑みが覗いた――――ぞわりと鳥肌が立つ。
これは、
「お、上手くいったみたいですね」
士道は酷く楽しげだ。令音を見て、仕掛けたイタズラが成功したような声色を聞かせてくる。実際、それは上手くいっているのだろう。両膝を曲げ、ペタンと座り込んだ令音の足、下半身は令音が脳から下す指令を
まるで、令音の脳から士道の声へと生体の電気信号が指令の
「――――〈
答えは、意図も容易く。声の天使・〈
愕然と名を謳った令音に、士道がクイズの解答者を賛美するような軽さで拍手をする。
「ぴんぽーん。さすが令音さん、冷静ですね。〈
「……っ、だが、これは……!」
「令音さんが教えてくれたんでしょう? 令音さんの身体は、俺の体液や声を受けて、俺が望むように変わっていくって。まあ、俺の声を聞いただけであんなに身悶えするくらいだったし――――そこに天使を載せたら、これくらいは出来るかなって」
だから、試してみちゃいました、と。
本当に、目の前の少年は士道なのか。士道だろうとも。ただし、
――――危険すぎる。令音の直感と計算が、予想外の事態に危険信号を灯す。
この瞬間、令音は生まれて初めて――――雌が雄に支配されるだけでなく、霊力という絶対的な土俵で士道に上をいかれた。
「……!!」
こんな恐怖は、知らない。たとえ『私』の存在を完全に引き継いでいたとしても、わかりはしない。彼女は知らないからだ。自分より上の存在など、この世のどこにもいはしなかったのだから。
怖い。肉体が自分のものでなくなる恐怖。支配される恐怖。怖い、怖い、怖いと、令音の身体が震えを伴い始める。
初めて、令音は士道から逃げ出そうと腕に力を込めて。
【じゃあ、全身から力を抜いてください】
全ての抵抗を、禁じられた。
「……ぁ」
垂れ下がった腕は、もう令音のものではない。辛うじて、首より上だけは令音の意志のまま。けれど、それで何をしようというのか。
【うわ……令音さん、凄い精神力ですね。ま、令音さんと喋れなくなったら嫌だし、結果オーライか。指示がちょっと大雑把すぎましたね。要改善だな】
「……シン。これ、は……駄目、だ。いま、すぐ……」
「――――怖いんですね、令音さん」
射抜かれる。正面から、その星の輝きを灯した瞳に。
「自分でなくなることじゃなくて、
じわりじわりと追い詰める、その言葉に。
心の全てを、暴かれる。
「……シン。こんな、ことは……」
「止めろ、ですか。そうですねぇ……いくら何でも、これは酷すぎますよね。天使までこんな使い方して、美九に知られたら大目玉だなぁ」
「……なら……っ」
「安心してください――――令音さんにしか、しませんから」
そう言って、少年は令音の感情を支配する。恐怖でさえも、掌握せしめる。
「怖がらないで。全部、俺に委ねてくれればいい。俺を信じてくれればいい。令音さんは、俺のこと、
問いかけられた。妖しいまでの微笑みで。令音の答えが一つしかないと、わかっているはずなのに。
そうまでして、士道は令音を徹底的に屈服させようとする。微かに目を逸らして、令音は最後の
「……狡い言い方だね」
「いいでしょう? その方が令音さんの心が楽になるし――――――俺は、令音さんが俺のモノだって実感できる」
肉体だけが意識を失った膝裏に手を回され、肩を抱かれて令音は容易く抱えあげられた。令音の身体には一切の力が入っていないというのに、どこにそのような力があるのだろうか。
霊力の支配がなせる技か。確かに令音にわかることは――――――抱かれた令音の心から、恐怖が消えたということだけだった。
「じゃあ、お疲れの令音さんに……今日は俺が、特別なマッサージをしてあげますよ」
ニコリと笑った士道の顔を腕の中で見た令音は、今日も自分は
ベッドに寝かされる。誰かに身を委ねて……委ねるしかないというのは、令音の胸中に様々な想いの渦を巻かせる。
恐怖、困惑、絶望――――歓喜と、安心感。矛盾している。その矛盾が、真横に座った士道が令音の身体に触れる度に解消されていく。
「令音さんの肌、びっくりするくらい綺麗ですね。逆に、不健康に見える部分が隈だけってのも不思議な感じだなぁ……」
「……君は、嫌かい?」
「全然。健康に気を使ってほしいとは思ってますけどね」
指が這う。ストッキングに包まれた足先から、ゆっくりと撫で上げる。それは触れているとも言えぬソフトタッチのような指使いだった。
大腿部を抜け、鼠径部へ。するりと、股座を掠めるように。
「……っ」
「ふーん……」
微かに漏れた吐息に、士道が酷く楽しげな笑みで行為を続ける。
腹部を執拗に撫で上げる。さわり、さわり。ゆっくり、ゆっくりと。そして一息に登った士道の手が胸郭まで――――令音の人より大きい胸部を掠めた。
「……あっ」
声が、零れた。それは紛れもなく嬌声。ただ下着を重ねた服の上から、ほんの僅かに撫でられた。それだけで、令音の敏感すぎる身体は反応を示した。
動けない。動けないから、嫌でも彼の指使いに意識を向けて、それがまた過敏な肉の悦びを誘う。
そんな令音を見て、彼が笑う。加虐的、というのは少し異なる。だってこれは、令音にとって
「はは、ちょっと触れただけなのに……令音さんは、エッチな人だなぁ」
「…………君の、せいだろう」
そうだ。彼に、士道に変えられた。そんな負け惜しみじみた反論も、以前までの令音であればしなかった。
果たしてこれは誰の意志? 変わっていく令音の意志か――――それとも、支配されるだけの雌でも面白くないという
ペロリ。抵抗できない獲物を前に唇を舌なめずりした士道を見て、令音は変えられていく自分をまた一つ自覚する。変わっていく彼を
「いいです、いいですよ令音さん。そうでなきゃ――――俺の雌である価値がない」
ぷつ。在り来りな音を立てて、令音の軍服のボタンが外された。
「っ……」
一つ、二つ、三つ。はらりと開いて。白いシャツのボタンが一つ、また一つ、開く。そうして、開き暴かれた下着。その背に士道の手が伸びる。地肌に触れる士道の熱い手が、
プツンと。音を立てて、令音の上半身を守る最後の砦は崩れ去り、微かに上下する令音の心拍と同期して揺れる乳房が外気と士道の視線に晒された。
「おぉ……服を半端に脱いだ姿っていうのも、なかなか乙ですね」
「……シン。それは高校生が言う台詞じゃあないな」
「ぐぬっ、それはちょっと傷付くなぁ……」
わざとらしく呻いて戯れたりして――――士道の手が、収まり切らない令音の双丘を掴んだ。
「……んんっ♡」
「じゃあ……マッサージ、していきますね」
ぐっ、ぐっ、ぐっ。一定のリズムを刻んで揉みしだかれる。
それは、マッサージと呼ぶにはあまりに幼稚だ。普通なら、何も感じることはないただの手付き。
「……あっ、ふ……っ♡」
令音は普通ではない。彼の手付きが、触れる指先が、落ちる手のひらが。どんな一流のマッサージより、気持ちいい。
「どうですかお客さん。これでも結構自信あるんですけど……」
「……んっ、んんっ♡ひぅ……っ♡」
聞かなくてもわかること。身悶えする令音を見れば、令音がどれほどの快感を得ているかわかるはずなのに。
【答えてください、令音さん】
令音に、沈黙は許されなかった。
「…………っっ」
ガチガチと令音の歯がかち合う。それは、必死に抵抗を見せる令音の思考回路そのもの。首を振る。嫌だ、嫌だと首を振る。今さらでも、手遅れだとしても、嫌だ。
こんな私を、見ないで。
【大丈夫です。俺はどんな令音さんも、素敵だと感じますから】
「……っ、ぅぅぅぅぅ♡」
酷い。酷い、酷い、酷い――――好き。
「……気持ち、いい」
勝てない。
「……気持ちいい、から……」
【だから?】
また、堕ちて、しまう。
「――――もっと、激しくしてくれ♡♡」
瞬間、士道の手が目一杯に開かれ、令音の胸を力いっぱい掴み上げた。
「……ひっ、くひぃぃぃぃぃっ♡♡」
胸いっぱいの快感が脳を刺激して、物足りなさを感じていた令音の膣から愛液がこれでもかと流れ出す。
「……は、ぅ♡ひゃっ♡」
揉まれる。掴まれる。胸が、犯される。普段は揺れたところで何を感じることもないはずの部位が、今は立派な性器の一つ。士道を悦ばせ、令音を悦ばせる快楽機関。
そして、やはりその時は唐突だった。嵐のように揉みしだかれた胸の波が一瞬だけ止んで――――――
「――――イケ」
ピンッ、と。双丘の頂点が、指先で強く弾かれた。
一瞬、思考が停止する。そして、
「……あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡♡」
――――ぷしゃっ。
耐えていた糸が千切れ飛び、呆気なくイカされた。
弾かれた乳首が痺れて、快感が脳を駆け巡り、膣が歓喜のあまり潮を吹く。
「……ふっー♡ふーっ♡……ふぁ♡」
「どうです? 最高に気持ちよかったでしょう」
「……ん」
余韻に浸りながら、士道の声が耳に届く。快楽の余韻まで楽しむ自分が恥ずかしくて、ほんの僅かに首を倒すことしか令音にはできなかった。
けれど、
「さて、胸で気持ちよくなってもらったところで、次は……」
「……!!」
手が伸びる。それも、初めに戻るように。
そこには、令音の愛液が染み込んだスカートがある。手で制止をかけようとして、その権利が令音にないことを脳が簡潔に告げる。
「……シン。待つんだ。そこは……っ」
「俺に胸をマッサージされて、はしたなく潮を吹いてイッた令音さんの雌まんこ、ですよね?」
「……っ♡」
天使を扱っていないただの言葉だ。それなのに、令音の子宮がキュンと脈動して、士道の手を今か今かと待ちわびるような感覚を持つ。
「平気です。絶対に、最高に……気持ちよくしてあげますから」
「……あ」
手にかけたスカートを、残りの二枚ごと下ろす。抵抗できない令音の身体は、それをあっさりと受け入れた。
膝下まで下げられ、粘り気のある液体が令音と恥部とショーツを長く繋いでいる。見てられなくて、せめてと目を逸らした。そんな令音を、士道は嗤う。
「ああ、いい反応です。さあ令音さん、存分に――――ただの女の子のみたいに、
開き切った令音の雌まんこが、士道の硬い指を一瞬にして受け入れた。
「……ぎっ、あ……っ♡♡」
だけど、快感は一瞬では終わらない。逃げようとした、逃がそうとした。逃げられなかった。身体は逸れることもできず、快楽に震えることしかできなかった。
逃げる必要がないと――――与えられる快楽は、極上のものだからと。
「っ……キツキツだ。令音さんの中、俺の指を絶対離さないって動いてるの、わかりますよね?」
「……や、っ♡いやっ♡だって♡きもち、いい、から……っ♡♡」
離せるわけがない。力を抜けと言われても、これだけは変わらない。
士道の指先が膣内で暴れ回る。上に下に、時に突いて。手首を使って、令音の膣の蠢きに合わせて愛撫する。
「……あ、あぁっ♡だ、め……っ♡♡」
耐えられない。快楽が上ってくる。また、はしたなく愛液を撒き散らして――――――
【――――イッたら駄目ですよ】
止まる。絶頂だけが止められて、快感だけが全身を駆け巡る。
「……ぇ」
【どんなに気持ちよくても、どんなにイキそうでも――――俺がいいって言うまで、耐えてくださいね?】
それは、遠回しな死刑宣告。疼く身体、塞き止められた肉の内側を――――士道の指が激しく削る。
「……イッ♡」
【ちゃ駄目ですって。さあ、耐えて、耐えて……耐え続けて、めちゃくちゃになってください】
――――ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ。
時に速く、時に遅く。令音の雌の部分を犯し続ける。長く、長く、永遠とも思える時間、ひたすらに。
「……あ゛、あ゛あ゛あ゛っ♡♡」
ケモノのように喘ぐ。極上の快感が体中を駆け巡る――――でも、イケない。
「……ううううううううぅぅぅぅぅっ♡♡」
もどかしい。気持ちがいい。歯痒い。怖い、怖い、怖い。このまま最後は――――――なのに、ホシイ。
「……っ、シンっ♡たすけてっ♡こわいからっ♡やだっ、やだぁ♡♡」
ぐちゅぐちゅぐじゅ。膣を荒々しく掻き回される音が、ただ令音の精神を蝕む。せり上がり、今か今かと押し寄せる絶頂の波が、令音の尊厳やプライドを呑み込んでいく。
【っ……それです。それをもっとさらけ出して。いつもの令音さんは綺麗ですけど……そういう少女みたいな令音さんも、素敵なんですから】
「……あっ♡」
【――――じゃあ、
そのとき、
「――――へっ?♡」
永遠のように続いた時が、終わった。
「……い、ああああああああああああ――――っ!!♡♡♡♡」
――――ぶしゃああああああああああっ!!
耐えかねた絶頂が、耐えさせられた代償を自ら支払う。
意識が、飛ぶ。首を逸らし、絶望的な快感の津波が令音を襲う。イク、イキ狂う。間違いなく、今までで一番の快楽の渦。
なのに、
「……な、んでっ♡いくっ♡イッてる♡イッてる、からっ♡♡もうイキたくないっ♡やめてっ、やめてぇぇぇぇぇぇぇっ♡♡♡♡」
どこにも行けない。イくしかない。逃がせない快楽が、令音の思考に全て叩きつけられていく。視界が明滅する。その中で、
【――――俺が満足するまで、イキ続けろ】
嗤う、魔王がいた。
「……いやっ♡やだっ♡たす、けっ――――イクッ♡イグッ♡イグゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ♡♡♡♡」
雌の嬌声は、雄の欲望が続く限り、響き渡り続けた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「……コロ、シテ。コロ……シテ」
枕を涙で濡らした少年の姿は、何とも同情を誘うものであった。いつの間には裸に剥かれていたものの、とりあえずは自由になった身体にシーツを巻き付け、令音はほぅと息を吐く。
「……大丈夫かい、シン」
「なんで令音さんが心配する側なんですかぁ……」
同情は必ずしも救いになるわけではない好例だろうか。ポリポリと頬をかいて、仕方がないと令音は声を発した。
「……気にしすぎないでいい。――――私も、嫌というわけでは、なかった」
その言葉で起き上がった
が、
「……じゃあ、またやっていいですか?」
「………………それは、あまり」
【……〈
「……ひゃっ♡」
本日の教訓、口は災いの元。――――口だけではなく態度に出てしまう今の令音には、無意味な教訓なのだろうけれど。
本当ならこれが前座のはずだった。自分の性癖は隠せないと被告は供述しており。
ちょっとニッチ過ぎない?本当なら本番騎乗位責めて責められての予定だったんですけど、鬼畜士道くんの楽しい楽しい寸止め調教回になってしまった。なんで……?こんな使い方してたら美九にガチギレされそう。
なんで全身から力抜いたのに失禁なかったのってのは令音の抵抗力、後まあ普通じゃない令音さんの身体的な神秘的構造と士道の〝声〟がある程度コントロールしてたから。まあ慌てんなって、ふふふ。
あとフローリングだった理由は愛液を漏らして水溜まりの中に尻もちつく3話のがやりたかっただけでした。ニッチだね本当にね。
すごい人間くさい令音さんは入れたくなる。まあ1巻からわざととはいえ紅茶吹き出したりコミカルな人ではあるし……隠す気あるんだろうかこの人。
感想と高評価は力に以下略。いやほんと、ヤバい力になるのでガンガン積み上げてってください。その分私は投稿を続けていくつもりですので。いつもありがとうございます!!
ではではまた次回〜。
令音さん、ちょっとコスプレいってみようか?