※この作品はR-18です。

『プリズムの瞳』 機動戦士ガンダムビルドダイバーズ   作:ビルダー林檎

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第14話『旗艦ニュークリアス』

「これはすげぇ!」

 

 

「小狼さん。はしゃぎすぎですよ!気持ちはわかりますけど。」

 

 白の国旗艦 「戦艦ニュークリアス」のブリッジにて、ガンダムパイロット達ははしゃいでいた。無理もない。窓の外にはムラサメガンダムの量産改良型 “アキサザメ”が50機 青の国の量産型MS”ナラワシ”50機 白の国の量産型MS ニベアル50機。計150機が各国の随伴艦に搭載され、更に彰人本人によって改良された各国のガンダムがニュークリアスの格納庫に収まっていた。

 ムラサメガンダムは完全修理に加え、ビームサーベルを出力の高いフリーダムのラケルタビームサーベルに変更。

 ツァーリガンダムは太陽炉(この世界ではなんと呼ばれていたのかは分からない)を追加でもう一機。

 ガンダムファルシオンには脚部にブースターを追加して、更に背面に超大型のランチャーを追加。火力面の底上げを図る。

どれも彰人が持っていたパーツから作った(スクラッチ)ものだが、効果はありそうだった。更にガンダムパイロットには内緒で面白い装置も取り付けておいたと彰人は語る。

 

「あの怪しい兄ちゃんもやるよなぁ。まさか俺達のガンダムも改修するとは。」

 

「信じて良かったですよね。」

 

 

と、カイネが満面の笑みを浮かべながら小狼の隣に座る。

 

「ああ、これを見せられるとな。流石に認めざるを得ねぇな。」

 

ニュークリアス内のシートに座りながら、小狼はカイネの顔を眺めた。

 

 

「彰人兄さんはすごいだろう?」

 

後方から、歩いて来たハヤトが2人に声をかけた。その声には、抑えられない興奮が滲んでいた。ムラサメガンダムにもファンネルミサイルが追加で搭載されていたからだ。その火力の向上は目を見張るものがある。

 

 

「すごいです!」

 

「俺様の機体を弄ると聞いた時はどうかと思ったがな。」

 

「予想以上だろう?」

 

「ああ、悪くねぇ。」

 

「ガンダムパイロットの皆様。一度ブリーフィングを行います。席について下さい。」

 

 

と、フランの声が通信越しに響いた。

 

「我々三国同盟はこれより、黒の国のMSの謎を解くべく只今から黒の国に攻め入ります。」

 

「作戦名は “黒影落とし “ 我が三国同盟の民を虐殺する黒の国のガンダムの謎を解き、更に黒の国の戦力を叩きます。」

 

「本作戦が成功の暁には、これまで防戦一方だったこの戦況を変えることが可能です。」

 

「みなさまガンダムパイロットには、黒の国のガンダムの相手をして頂きます。他の量産型には、こちらの量産型をぶつけ、敵のガンダムタイプを孤立させるのが目的です。無理はなさらぬ様に。」

 

「ようやく、ぶっ叩けるって訳だな!」

 

 

小狼が拳を震わせる。武者震いが止まらないらしい。戦いたくてうずうずしているしているようだ。本当に戦うのが好きらしい。

 

 

「あくまで黒のガンダムの分析がメインとはいえ、あえてそれを悟らせないために各国の量産型MSも派遣するとは……。」

 

ハヤトが腕を組んで考え込んでいる。

MS150機とは思い切ったものだ。本国にまだ100機ばかりMSを置いたとはいえ、このMSが全滅した場合の損害もかなり大きい。リスクの多い作戦だった。

 

「だからこそです。ボク達が頑張って作戦を成功させましょう。」

 

「ああ、そうだな。」

 

「レーダーに感あり!前方に敵MS多数!」

 

オペレーターの声が響く。どうやら来たようだ。

 

「おいでなすったな!」

 

 

小狼が臨戦態勢を取ろうとするのを抑える。

 

「いや、まだだ。量産型の相手は量産型に任せる。僕達は黒の国のガンダムの相手をしないといけない。」

 

「そうです。消耗は抑えないとですよ!」

 

「チッ‥‥!分かっているさ。」

 

随伴艦の発艦ラッチからMSが次々と発進していく。量産型といえど、これだけの数がいるのだ。部隊展開さえ済んでしまえば、易々とは破られない。

発艦したアキサザメが編隊を組んで空を飛ぶ。どうやら最初の部隊がガフランとの戦闘に入ったようだ。爆発音、閃光。発せられる戦闘の音が耳に響く。時折ニュークリアスにも被弾するのか、ブリッジがその度に揺れた。もどかしい時間が流れる。

 

「我慢だ、我慢。」

 

 

小狼が暴発しないよう、隼人と彰人が諌める。小狼の焦りと苛立ちが募るのが傍目から見てもわかった。

 

「‥‥‥」

 

 

 無言で腕を組んだままの小狼。何ともつまらなそうに見える。ニュークリアスが戦場の空をひたすらに進む。もう少しすれば黒の国本国に到着するだろう。

 その際も随伴艦から何機もMSが発艦し、艦載機はもはや3分の1までに減っていた。発艦したMSがどうなったのかは、もう確認しようがない。生きていれば帰り際に拾えるだろうが、そうでなければ‥‥。

 

 戦うという道を選んだ以上、しょうがないことではあった。これは命のやり取りであり、向こうの遊び(ガンプラバトル)とは違う。

 

「見えた!黒国本国だ!全員ガンダムに乗れ!」

 

 

彰人の号令で3人はガンダムに乗りこむ。

 

 

「神取彰人。オルタナガンダム!出るぞ!」

 

 

彰人はそう言い放つと、オルタナガンダムで先導を切るように発進する。

 

「さて、鬼が出るか蛇がでるか‥‥。」

 

「‥‥どきどき。」

 

「全員、死ぬなよ!まだ死ぬべき場面じゃない。」

 

 

「「「おう!」」

」

力強い言葉の後に各国のガンダムが発艦して行く。オルタナガンダムの後にはムラサメ、ツァーリ、ファルシオンの三機が続々と出る。

 

「金色のガンダムだと?」

 

彰人のオルタナガンダムのカラーに驚いたのか、小狼が不思議そうな表情のままモニター越しにオルタナガンダムを眺めた。

 

 

「なんでも、あのアキトさんの機体だそうですよ。」

 

ツァーリガンダムの回線からカイネの声が響く。

 

 

「金か!派手だが、良い色だな。悪くねぇ。」

 

 小狼は彰人とオルタナガンダムに満足しながら、ツァーリガンダムのブースターを点火し加速した。黒の国の青く晴れ渡った空を4機のMSが舞う。ニュークリアスは後方で援護射撃を行う。後方からニュークリアスの艦砲射撃が開始され、主砲からビームの火線が空を焼いていく。

 

 数十分後、4機が飛び続けていると、遠方に見覚えのある影が映った。例の黒いガンダムか。その黒い機体は無言のままライフルを片手で構え、同時にこちらへと射撃してきた。当然だが、その様相は明らかに敵対の意思がある。

 

「各機散開!作戦の目的を忘れるな!」

 

「「「了解!」」」

 

 三機がフォーメーションを組んで黒のガンダムと正対する。ライフルを回避した後、ムラサメガンダムがビームライフルを放ち、次にツァーリガンダムがGNミサイルを放つ。黒のガンダムはミサイルを腕に取り付けられているブレードで一閃。ミサイルを全弾叩き落とした。やはり強い。

 しかし三国同盟にも策はあった。相転移粒子を纏ったファルシオンが爆風を縫うかのように突撃。

体当たりで黒の国が持っていたライフルを破壊。そのまま黒のガンダムの後方へ加速する。黒のガンダムもその巨大なブレードを振るうも、三国同盟の機体は上手くそれを回避していく。掠りもしなかった。

 

(こいつら強いな。流石は歴戦の勇士。)

 

三国同盟の強さと言うものを改めて感じ取る彰人。あの巨大なブレードには圧倒されたが、あの三人は器用に攻撃を回避していく。

 

 

(だがあの8枚羽根が気になるな‥‥?何の能力を持っている?)

 

「うふ。うふふふふふ。強いね。君達は。」

「流石だよぉ〜ガンダム君達。」

 

(ッ!?この声は!)

 

 

彰人はこの声に聞き覚えがあった。ぞくり、と寒気を覚えた。鼓膜に響く気色悪い声。あの時のあいつだと瞬時に把握する。

 

 

「お前っ!お前が何故ここに居るんだ!答えろ!」

 

 

彰人の焦りが思わず声となる。何故、向こうの世界の奴がこの世界にいるのか?純粋に疑問が浮かんだ。

 

「うふふ。彰人君。やっぱり君もこの世界に来てくれたんだね。嬉しいよ。」

 

三国同盟の機体の攻撃を捌きつつあの男が答える。あの男が喋るたびに苛立ちが募るのが分かる。こいつは、殺さなくては。

 

 

「教室に盗聴器を仕掛けたのもお前なのかっ!?」

 

「流石彰人君。勘が鋭いね。そうさ。だけどそれだけじゃない。バトルの最中に感電したろう?ありえないはずの痛みを感じだろう?君もそのムラサメガンダムに乗る子も____僕と同じなのさ。」

 

「隼人も!?だが何故そんな事をする!何故お前達は虐殺を続けるんだ!」

 

「僕達が殺しあうことなんてないよ〜。僕達は同じ瞳を持つ仲間じゃないか。それに、黒国から虐殺の命を受けているのは僕じゃない。もっと」

 

 言い終わらないうちに黒の国のガンダムにツァーリガンダムのビームサーベルが突き刺さる。熱が装甲を焼き、コックピットと思われる部分に空洞が空いた。しかしその傷口も瞬時に治っていく。構わず、ツァーリガンダムはそのままビームサーベルで黒の国のガンダムを切り裂く。攻撃が功を成し、黒国のガンダムの身体の一部である先程ライフルを構えていた右手を奪い取る事に成功した。

 

「作戦目的は達した!小狼!!」

「応よ!」

 

ツァーリガンダムが右手を放り投げムラサメガンダムに渡す。作戦達成だ。

 

「ああ、折角彰人君とお話出来てたのに、お前ら邪魔するんだ。そうか。死んでくれないかな。」

 

 喜ぶのもつかの間、黒の国のガンダムが背部から信号弾を打ち上げると、たちまち数千はあろうかと言う数のMSが彰人達を囲った。とてもじゃないが、逃げ切れる数ではなかった。

「君達の量産型MS。あれは悪くないけど、僕達黒国の態勢を甘く見ていたね。こちらはガフランならそれこそ10万はだせるよ。で、どうする?続ける?」

 

(くっ!いくらなんでも数が多過ぎる。これでは強行突破は無理か……?)

 

 

画面上に映る機体に押し潰されそうになり、隼人は心の中で悔しがった。

 

 

「あわわわわ。まだこんなに数を用意できるなんて。」

 

 

一方、カイネは戦意喪失しつつあった。

 

 

「まだだ!諦めるな!まだこちらは3機。敵が何台居ようが国に帰るんだ!」

 

 

隼人が檄を飛ばすも、不可能であることは百も承知だった。

 

「あ〜お前らいいよそんなの。無理だろ無理。僕達はそっちの戦艦だって落とすのは容易なんだよ。だからさ。取引しない?」

 

「お前らを見逃してやる代わりに、彰人君をくれないかな。」

 

「何だと!」

 

 

 隼人がいち早く反応する。嫌に決まっていた。兄の様に慕う彰人を売り渡すなんて真似は出来るはずが無かった。その答えすら男は一蹴する。

 

「ああ、いいからいいからそういうのも。彰人君は傷付けないし。どうせお前らアレだろ?この僕のテンペストを分析しに来たんだろどうせ。やるよ。そんなもん。好きなだけ分析しろよ。」

 

「は?お前ぇらの大事な機体じゃねぇのかよ?」

 

 

小狼が訝しむ。当然の反応だった。

 

「いらんよ。お前らではどうせ解析なんぞ無理だ。それよりどうする?ここで無理にみんな死ぬか。僕の要求を飲むか。答えは一つしか無いと思うけど?」

 

「隼人、みんな。ここは下がるんだ。俺が何とかする。」

 

 

目を瞑り、意を決する彰人。このままでは全滅は避けられない。みんな死ぬ必要はないと判断し、言い放つ。

 

「彰人さん!駄目ですそんな!」

 

 

「いいからいう通りにしろ!みんな死ぬんだぞ!可能性をゼロにするな!」

 

 

「彰人さん‥‥」

 

「こちらは要求を飲む。俺を連れていくいい。」

 

 

黒国のガンダムに向かい合い。はっきりと伝える。こちらの完敗だったが、まだ生きていればやり直しがきくと踏んでいた。彼等ならやりとげると確信していた。

 

「流石彰人君は話がわかるぅ〜!いや〜感動の嵐だね。仲間のために身を呈するその姿!カッコいいよ!」

 

その声には明らかに勝ち誇った色を感じ不快だったが、背に腹は変えられない。

 

「茶化すな。早く連れて行け。」

 

「彰人君〜。君はやっぱり優しいね。うんいいよ。さあ、オルタナガンダムと一緒においで。僕達の国へ。」

 

「分かった。だから3人には手を出すな!」

 

「いいよ〜!!僕は手を出さない。」

 

「……………………僕は、ね。」

 

 

 先程までの人を食ったかのような声色では無く、途端に冷たく、人を蔑むかの様な話し方をする。周辺の空気が凍ると同時に、圧倒的な殺意が彼らを覆った。

 

嫌な予感がしていたのが、的中してしまったと隼人は感じた。

 

 

「ほら、そこのゴミ共と戦艦はお前達の好きにしろ。全員殺しても構わん。」

 

 先程まで囲っていただけのMSの挙動が変わる。敵意を剥き出しにした野獣めいた姿。ガフランの頭部のスリットマスクから覗く眼差しが怪しく光る。同時に、生魂の閃光が隼人達に襲いかかった。

 

「くそっ。やはり数が多過ぎるッ!ざっと1000体以上はいるぞ。」

「あわわわわ。ボク達もうおしまいですっ!」

 

「馬鹿ッ!諦めるなッ!」

 

 そうやって話している最中にもガフランから放たれるビームライフルによる閃光が止まない。その度にシールドで受け止めたり、回避するが、全滅は時間の問題だった。

 

「彰人様ッ!ハヤト様ッ!」

「フランッ!君達だけでも逃げろっ!この数はッ!」

 

 

ハヤトが叫ぶ。

 

 

「嫌ですッ!!私だけ逃げてそれでどうなるんですかっ!」

 

ニュークリアスの艦砲射撃で弾幕を張りながら、フランが叫んだ。

必死に弾幕を貼り戦艦を守っているが、厳しそうな事は誰の目からも明らかだった。

 

 

「フランッ!僕の言うことが聞けないのか!」

 

逃げて欲しい。そんな思いを口に出せず、強い口調で叫んだ。

 

 

「聞けませんッ!!」

 

「おいっ!お前ら。話を聞け!まだ俺達は死んでねぇ。ここは俺が突破口を開いてやる!」

 

「たった1000体だ!俺達……嫌、俺ならやれる。お前らは邪魔だ!!」

 

覚悟を決めたのだろうか。大太刀を構えながら、小狼が力強く言い放つ。

そのぶっきらぼうな言いようが彼なりのケジメであることも、隼人は理解していた。

 

 

「小狼ッ!君はまさかッ!」

 

 

だからこそ彼の意図を汲んだハヤトは驚きの声を上げた。自己犠牲などしない男だと思っていたのに。自分のことしか考えていないと評価していたのに。昨日まで敵だと思っていたのに。隼人の中で、小狼に対する想いが変わっていく。

 

「うるせぇ!!しゃべっている暇はねぇぞ!この数、この状況……俺にとっては最高の晴れ舞台だ!思い切りやらせてもらうぜ!!」

 

 

「トランザム_________起動!!!」

 

 

 

叫ぶと同時に、ツァーリガンダムの機体がこれまでに無いくらいに赤く強い光を放つ。トランザム。強力だが、パイロットの消耗や機体のダメージは避けられない。この満身創痍の状態で使用すれば確実に機体が崩壊する諸刃の剣だった。

 

「はっ!最高の戦場に、華を添えさせてもらうぜ!」

 

 ビームサーベルを構えたツァーリガンダムが空をかける。瞬きの暇もなくガフランを次々に落としていく。正に無敵とも言える程のスピードだが、それは消えかけの蝋燭の火の様にも映った。強力だが、実際はいつまで保つかは誰にも分からない。

 

「小狼さん!」

 

「‥‥行くぞカイネ!あいつの覚悟を無駄にするな!逃げるんだ!」

 

「一度本国に戻る!撤退だ!」

 

 

ニュークリアスを守りながら後方へ下がっていく隼人達。そのボロボロの状態で、果たして生き残れるかどうかは分からない。

 

 

「うふふ。彰人君の大事な仲間達。生きて帰れるかな〜!」

 

「お前……!」

 

「おっと。大人しくしなよ。動いたら、本気であいつら皆殺しにするよ〜!これだけ戦力に差があるのにさ、何で僕達が殲滅戦を仕掛けないか分かる?分からないか。」

 

「お前……まさか、遊んでいるのか?」

 

「うふふ〜!どうだろうね。」

 

黒の国のガンダムに牽引されるオルタナガンダム。絶望的な気分になりながら、彰人は黒国へと連行されていった。

 

 

 

 

続く

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